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1. WO2020137545 - METHOD FOR PRODUCING AMIDE

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明 細 書

発明の名称 アミドの製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

先行技術文献

非特許文献

0006  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0007   0008   0009   0010  

課題を解決するための手段

0011   0012  

発明の効果

0013  

図面の簡単な説明

0014  

発明を実施するための形態

0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109  

実施例

0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129  

符号の説明

0130  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17  

図面

1  

明 細 書

発明の名称 : アミドの製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、アミドの製造方法に関する。
 本願は、2018年12月25日に日本に出願された特願2018-241598に基づく優先権を主張し、その内容をここに援用する。

背景技術

[0002]
 ペプチド合成では、アミノ酸のカルボキシル基を活性化させて、アミノ酸のアミノ基と反応させ、カップリング反応を起こしてアミド結合を形成させ、これを繰り返すことでアミノ酸を逐次伸張させることが行われている。カルボキシル基を活性化させる方法としてはいくつかの方法が知られている。活性化度の弱い縮合剤を使って、異性化や副生成物の生成を抑制しつつペプチドを合成する手法や、活性化剤を使い短時間でペプチドを合成する方法がある。
 高活性な活性化剤を使って前記カルボキシル基を活性化させる方法として、酸塩化物法や酸無水物法がある。これら酸塩化物法や、酸無水物法は、活性化度の弱い縮合剤を使った活性法と比較して、活性化剤の構造が簡単であるため、単価が安く、更には活性化剤由来の副生成物の生成が少ない等の利点がある。
[0003]
 酸無水物法は、対称酸無水物法と混合酸無水物法に分けられる。
[0004]
 例えば非特許文献1~2では、カルボン酸の活性種として対称酸無水物を用いたアミドの合成法が開示されている。
 非特許文献1~2で開示される対称酸無水物法は、
 カルボン酸同士の縮合反応による対称酸無水物の生成の第1のステップと、
 前記対称酸無水物とアミンとのカップリング反応を行う第2のステップと、
 を備える方法ということができる。
[0005]
 また、例えば非特許文献3では、カルボン酸の活性種として混合酸無水物を用いたアミドの合成法が開示されている。
 非特許文献3には、カルボン酸とクロロギ酸イソプロピルを第1のマイクロミキサーで混合し、混合酸無水物を短時間で合成し、続いて、合成した混合酸無水物がラセミ化しないよう、すぐさま混合酸無水物を含む溶液とアミンおよび触媒(塩基)を第二のマイクロミキサーで混合しアミド化を行うことが記載されている。
 非特許文献3で開示される混合酸無水物法は、
 カルボン酸とクロロギ酸エステルとを反応させて混合酸無水物を得る第1のステップと、
 前記混合酸無水物に塩基を添加してアシルピリジニウム種を得る第2のステップと、
 前記アシルピリジニウム種とアミンとのカップリング反応を行い、アミドを得る第3のステップと、
 を備える方法ということができる。

先行技術文献

非特許文献

[0006]
非特許文献1 : “Efficient Amide Bond Formation through a Rapid and StrongActivation of Carboxylic Acids in a Microflow Reactor”, Fuse, S. Mifune, Y. Takahashi, T., Angew Chem. Int. Ed. 53, 851-855 (2014).
非特許文献2 : “Total synthesis of feglymycin based on a linear/convergent hybrid approach using micro-flow amide bond formation”, Fuse, S. Mifune, Y. Nakamura, H. Tanaka, H. Nat.Commun. 7, 13491 (2016).
非特許文献3 : 小竹佑磨、中村浩之、布施新一郎、「マイクロフロー法を駆使するN-メチル化ペプチドの効率的合成」、2017年3月16日、日本化学会第97春季年会、3F4-14

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0007]
 しかし、対称酸無水物法では、対称酸無水物のアミンとの反応性が低いため、求核性の低いアミンとのカップリング反応に時間がかかる又は反応が進行しないという問題があった。
[0008]
 一方、混合酸無水物法では、求核性の低いアミンとであってもカップリング反応が進行し得る。
[0009]
 しかし、対称酸無水物法であっても、混合酸無水物法であっても、望まない副反応生成物であるエピマーが生成される場合がある。これは、求核性の低いアミンとのカップリング反応において特に問題となる。例えば、天然アミノ酸に代表される通常のカップリング反応では、アミノ酸のラセミ化の反応速度と目的物が生成する反応速度の差は十分にあり、エピマー生成はほとんど起きない。しかし、求核性の低いN-メチルアミノ酸等との反応の場合、ラセミ化の反応速度と目的物が生成する反応速度の差が十分でなく、エピマー生成を抑えきれない場合がある。特に、ラセミ化が起こりやすいフェニルグリシンやシステイン等をカルボン酸に、求核性の低いN-メチルアミノ酸等をアミンに使用する場合ではアミドのエピマー生成が顕著に生じるという問題があった。
[0010]
 本発明は、上記のような問題点を解消するためになされたものであり、カルボキシル基を活性化させて、アミノ基と反応させ、カップリング反応を起こしてアミド結合を形成させる反応において、反応効率が良好であり、エピマー生成等の副反応が生じ難い、アミドの製造方法の提供を目的とする。

課題を解決するための手段

[0011]
 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、反応系に酸を添加することにより、エピマー生成が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
 すなわち、本発明の一態様は、下記のとおりである。
[0012]
(1)カルボン酸同士を脱水縮合させた後に、又は、カルボン酸とハロゲン化ギ酸エステルとを反応させた後に、第1の塩基と反応させ、アミンと反応させてアミドを得ることを含み、
 前記第1の塩基との反応及び/又はアミンとの反応を、酸を添加して行う、アミドの製造方法。
(2)第一のカルボン酸及び第二のカルボン酸を混合して得られた混合物を反応させた生成物と、又は
 カルボン酸及びハロゲン化ギ酸エステルを混合して得られた混合物を反応させた生成物と、
 第1の塩基と、酸と、アミンとを混合させることを含む、アミドの製造方法。
(3)ホスゲン、又は反応系内で分解してホスゲンを生成するホスゲン等価体を反応させて、前記カルボン酸同士を脱水縮合させる、前記(1)又は(2)に記載のアミドの製造方法。
(4)同じ種類の前記カルボン酸同士を脱水縮合させる、前記(1)~(3)のいずれか一つに記載のアミドの製造方法。
(5)前記ハロゲン化ギ酸エステルが、クロロギ酸イソプロピル、クロロギ酸イソブチル、クロロギ酸エチル、ブロモギ酸イソプロピル、ブロモギ酸イソブチル及びブロモギ酸エチルからなる群から選択されるいずれか一種以上である、前記(1)又は(2)に記載のアミドの製造方法。
(6)前記ハロゲン化ギ酸エステルを活性化する第2の塩基と、前記ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させることを含む、前記(1)、(2)又は(5)に記載のアミドの製造方法。
(7)前記第2の塩基が、第三級アミン、4-メチルモルホリン、ピリジン、ピリジン誘導体、イミダゾール、イミダゾール誘導体及び1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンからなる群から選択されるいずれか一種以上である、前記(6)に記載のアミドの製造方法。
(8)前記酸は、ハロゲン化水素、過塩素酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロスルホン酸及びパラトルエンスルホン酸からなる群から選択されるいずれか一種以上である、前記(1)~(7)のいずれか一つに記載のアミドの製造方法。
(9)前記カルボン酸が、アミノ酸又はアミノ酸誘導体である、前記(1)~(8)のいずれか一つに記載のアミドの製造方法。
(10)前記カルボン酸が、フェニルグリシン、システイン、セリン、アスパラギン酸、ヒスチジン又はそれらの誘導体である、前記(1)~(9)のいずれか一つに記載のアミドの製造方法。
(11)前記第1の塩基が、ピリジン、ピリジン誘導体、イミダゾール、イミダゾール誘導体及び1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンからなる群より選択されるいずれか一種以上である、前記(1)~(10)のいずれか一つに記載のアミドの製造方法。
(12)前記第1の塩基が、4-モルホリノピリジン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、4-ピロリジノピリジン、ピリジン、4-メトキシピリジン、イミダゾール、N-メチルイミダゾール及び1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンからなる群より選択されるいずれか一種以上である前記(1)~(11)のいずれか一つに記載のアミドの製造方法。
(13)前記アミンが、アミノ酸又はアミノ酸誘導体である、前記(1)~(12)のいずれか一つに記載のアミドの製造方法。
(14)前記アミンの求核性が、タンパク質を構成し遺伝情報としてコードされる20種のアミノ酸からバリン及びイソロイシンを除いた18種のアミノ酸の求核性よりも低い、前記(1)~(13)のいずれか一つに記載のアミドの製造方法。
(15)前記アミンが、バリン、イソロイシン若しくはN-アルキル化されたアミノ酸、又はそれらの誘導体である、前記(13)又は(14)に記載のアミドの製造方法。
(16)前記アミンと反応させることを、流通系反応装置で行う、前記(1)~(15)のいずれか一つに記載のアミドの製造方法。
(17)さらに、前記カルボン酸同士を反応させること、又は、前記カルボン酸と前記ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させること、及び、前記第1の塩基と反応させることを、流通系反応装置で行う、前記(16)に記載のアミドの製造方法。

発明の効果

[0013]
 本発明によれば、反応効率が良好であり、エピマー生成等の副反応が生じ難い、アミドの製造方法を提供できる。

図面の簡単な説明

[0014]
[図1] 流通系反応装置1の概略的な構成を示す模式図である。

発明を実施するための形態

[0015]
 以下、本発明のアミドの製造方法の実施形態を説明する。
[0016]
≪アミドの製造方法≫
 実施形態のアミドの製造方法は、以下の1)又は2)の方法である。
1)カルボン酸同士を脱水縮合させた後に、第1の塩基と反応させ、アミンと反応させてアミドを得ることを含み、前記第1の塩基との反応及び/又はアミンとの反応を、酸を添加して行う、アミドの製造方法。
2)カルボン酸とハロゲン化ギ酸エステルとを反応させた後に、第1の塩基と反応させ、アミンと反応させてアミドを得ることを含み、前記第1の塩基との反応及び/又はアミンとの反応を、酸を添加して行う、アミドの製造方法。
 上記1)に係る、実施形態のアミドの製造方法は、第一のカルボン酸及び第二のカルボン酸を混合して得られた混合物を反応させた生成物と、第1の塩基と、酸と、アミンとを混合させることを含む、アミドの製造方法であってもよい。上記1)に係る実施形態のアミドの製造方法は、第一のカルボン酸、第二のカルボン酸及びホスゲン又は反応系内で分解してホスゲンを生成するホスゲン等価体を混合して得られた混合物を反応させた生成物と、第1の塩基と、酸と、アミンとを混合させることを含む方法であってもよい。ここで、第一のカルボン酸及び第二のカルボン酸を混合して得られた混合物を反応させた生成物は、第一のカルボン酸及び第二のカルボン酸を脱水縮合させた酸無水物を含むことができる。
 上記2)に係る、実施形態のアミドの製造方法は、カルボン酸及びハロゲン化ギ酸エステルを混合して得られた混合物を反応させた生成物と、第1の塩基と、酸と、アミンとを混合させることを含む、アミドの製造方法であってもよい。上記2)に係る実施形態のアミドの製造方法は、カルボン酸、ハロゲン化ギ酸エステルを活性化する第2の塩基、及びハロゲン化ギ酸エステルを混合して得られた混合物を反応させた生成物と、第1の塩基と、酸と、アミンとを混合させることを含む、アミドの製造方法であってもよい。ここで、カルボン酸及びハロゲン化ギ酸エステルを混合して得られた混合物を反応させた生成物、又は、カルボン酸、ハロゲン化ギ酸エステルを活性化する第2の塩基及びハロゲン化ギ酸エステルを混合して得られた混合物を反応させた生成物は、混合酸無水物を含むことができる。
 なお、当該第1の塩基は、カチオン性活性種を生成させるものであってよく、塩基(ただし、当該アミンを除く)であってよい。
 なお、ここでいう混合とは、反応系に原料等の物質を添加する動作を指すものであり、反応系内でこれらが混合されたときには、原料等が添加前とは別の物質に変化していてもよい。
[0017]
 酸無水物の調製にあたっては、上記のとおり、1)の方法で酸無水物を得る場合と、2)の方法で酸無水物を得る場合とを例示できる。1)及び2)のアミドの製造方法は、どちらも、カルボン酸から“酸無水物”を得た後に、それを第1の塩基と反応させることについて共通であるとして、すなわち、1)又は2)のアミドの製造方法は、以下の工程1~3を含んでいてもよい。なお、本発明に係るアミドの製造方法の反応は、下記の各工程に例示される反応に限定されるものではない。
 工程1:カルボン酸から、酸無水物を得る工程。
 工程2:前記工程1で得られた前記酸無水物と、第1の塩基と、を反応させてカチオン性活性種を得る工程。
 工程3:前記工程2で得られた前記カチオン性活性種と、アミンと、を反応させてアミドを製造する工程。
[0018]
 ただし、上記1)及び2)のアミドの製造方法は、以下の反応で酸を添加して行うこととする。
 前記工程2の反応を、酸を添加して行う、
 前記工程3の反応を、酸を添加して行う、又は
 前記工程2及び前記工程3の反応を、酸を添加して行う。
[0019]
 また、酸の添加は、工程1の段階で予め行ってもよいが、反応効率の観点からは、工程1の後に酸を添加することが好ましく、第1の塩基とともに酸を添加することがより好ましい。
 なお、工程1の後に酸を添加すると、工程2の反応、又は、工程2及び工程3の反応が、酸の存在下での反応になるものと考えられる。酸の存在下とは、例えば、酸を添加した溶媒中のことを意味する。
 なお、後述の実施例に示す方法においては、工程1の後に第1の塩基とともに酸を添加して、アミドの製造を行っている。
[0020]
 すなわち、酸の添加については、以下の1’)又は2’)のアミドの製造方法が好ましい。
1’)カルボン酸同士を脱水縮合させた後に、酸を添加して第1の塩基と反応させ、アミンと反応させてアミドを得ることを含み、前記第1の塩基との反応及び/又はアミンとの反応を、酸を添加して行う、アミドの製造方法。
2’)カルボン酸とハロゲン化ギ酸エステルとを反応させた後に、酸を添加して第1の塩基と反応させ、アミンと反応させてアミドを得ることを含み、前記第1の塩基との反応及び/又はアミンとの反応を、酸を添加して行う、アミドの製造方法。
 以下の実施形態では、主に、第1の塩基とともに酸を添加する場合について説明する。
 第1の塩基とともに酸を添加する場合には、第1の塩基と酸との混合物を添加してもよい。
[0021]
 以下、<第1実施形態>として、1’)における方法でカルボン酸同士を脱水縮合させて、酸無水物を得る場合を説明する。本実施形態において、上記工程1、工程2、及び工程3は、それぞれ工程1-1、工程2-1、及び工程3-1に対応する。
 また、<第2実施形態>として、2’)における方法でカルボン酸とハロゲン化ギ酸エステルとを反応させて、混合酸無水物を得る場合を説明する。本実施形態において、上記工程1、工程2、及び工程3は、それぞれ工程1-2、工程2-2、及び工程3-2に対応する。
 以下、工程1-1及び工程1-2の両方を指して、単に工程1と略することがあり、工程2-1及び工程2-2の両方を指して、単に工程2と略することがあり、工程3-1及び工程3-2の両方を指して、単に工程3と略することがある。
[0022]
<第1実施形態>
 前記1’)の製造方法は、以下の工程1-1~3-1を含んでいてもよい。
 工程1-1:カルボン酸同士を脱水縮合させて、酸無水物を得る工程。
 工程2-1:酸を添加して、前記工程1-1で得られた前記酸無水物と、第1の塩基と、を反応させてカチオン性活性種を得る工程。
 工程3-1:前記工程2-1で得られた前記カチオン性活性種と、アミンと、を反応させてアミドを製造する工程。
 以下、上記の各工程について説明する。なお、本発明に係るアミドの製造方法の反応は、下記の各工程に例示される反応に限定されるものではない。
[0023]
<工程1-1>
 工程1-1は、カルボン酸同士を脱水縮合させて、酸無水物を得る工程である。
 前記カルボン酸同士は、ホスゲン、又は反応系内で分解してホスゲンを生成するホスゲン等価体を反応させて、前記カルボン酸同士を脱水縮合させることができる。
 カルボン酸は、分子の末端にカルボキシル基を有するものであればよく、下記一般式(1)で表すことができる。
[0024]
[化1]


 (式中、R は水素原子又は一価の有機基である。)
[0025]
 カルボン酸は、脱プロトン化されてカルボキシラートイオンとなってもよく、下記一般式(1i)で表すことができる。
[0026]
[化2]


 (式中、R は水素原子又は一価の有機基である。)
[0027]
 カルボン酸の脱プロトン化は、例えば、反応系内のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)等の求核性の低い塩基の存在下に、カルボン酸を置くことで達成できる。
塩基の存在下とは、例えば、塩基を添加した溶媒中のことを意味する。当該塩基の種類は、反応系内でカルボン酸の脱プロトン化を可能とするものであれば、特に限定されない。
[0028]
 実施形態に係るアミドの製造方法の工程1-1は、下記一般式(1)で表されるカルボン酸及び下記一般式(1)’で表されるカルボン酸同士を脱水縮合させて、下記一般式(2)で表される酸無水物を得るものである。前記酸無水物は、例えば、カルボン酸にホスゲン又は反応系内で分解してホスゲンを生成するホスゲン等価体を反応させて得ることができる。
[0029]
[化3]


 (式中、R 及びR は、それぞれ独立に水素原子又は一価の有機基である。)
[0030]
 ホスゲン等価体は、反応系内で分解してホスゲンを生成するものであり、合成反応上、ホスゲンと実質的に同等なものとして使用できる。ホスゲン等価体としては、ジホスゲン、トリホスゲン等が挙げられる。
[0031]
 前記脱水縮合は、異なる種類のカルボン酸同士を脱水縮合させてもよく、同じ種類のカルボン酸同士を脱水縮合させてもよい。即ち、前記式(1)及び(1)’におけるR とR とは同一でもよく、互いに異なっていてもよい。
[0032]
 R とR とが同一である場合は、一般式(2)で表される酸無水物は、対称酸無水物である。R とR とが同一である場合は、後述の工程2-1で生成するカチオン性活性種のカウンターアニオンが活性化前のカルボキシラートイオンと同一となる。カウンターアニオンはカチオン性活性種と自己反応してしまう場合があるが、カウンターアニオンが活性化前のカルボキシラートイオンと同一であれば、自己反応しても生成物はカチオン性活性種に活性化される前の対称酸無水物と同一となる。
 したがって、R とR とが同一である場合には、反応系中に得られるアミドの種類が均一化され、目的とする種類の反応生成物の計画的な取得が容易であるという利点がある。
[0033]
 前記カルボン酸は、アミノ酸又はアミノ酸誘導体であることが好ましい。ここでのカルボン酸とは、酸無水物の前駆体であるカルボン酸を包含する。前記アミノ酸は、α-アミノ酸が好ましい。また、通常、生体内でのペプチド又はタンパク質を構成するアミノ酸がL型であることから、前記アミノ酸はL型であってよい。前記α-アミノ酸は、下記一般式(1-1)で表される化合物であってよい。
[0034]
[化4]


 (式中、R はアミノ酸の側鎖を表わす。)
[0035]
 前記アミノ酸は、生体内でペプチド又はタンパク質を構成し遺伝情報としてコードされている20種類のアミノ酸であってよい。これらのアミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンが挙げられる。また、前記アミノ酸は、シスチン等の遺伝情報としてコードされていない種類のアミノ酸であってもよい。
 例えば、前記式(1-1)中のR は、前記アミノ酸がアラニンの場合には「-CH 」であり、グリシンの場合には「-H」であり、バリンの場合には「-CH(CH 」であり、イソロイシンの場合には「-CH(CH )CH CH 」である。他のアミノ酸についても同様である。
 前記式(1)及び(1)’がアミノ酸である場合、-R 及び-R は、それぞれ、-CH(R )NH であってよい。
[0036]
 前記アミノ酸はα-アミノ酸でなくともよい。例えば、β-アラニン等のβ-アミノ酸であってもよい。
[0037]
 前記カルボン酸は、アミノ酸誘導体であってもよい。アミノ酸誘導体とはアミノ酸と実質的に同等の性質を有する化合物であってよく、天然に存在する天然型のものであってもよく、天然型とは異なる修飾、付加、官能基の置換等の改変等を有するものであってもよい。
 アミノ酸と実質的に同等の性質を有する場合の一例として、アミノ酸を基質とする酵素に取り込まれ得る、又はアミノ酸と結合する分子と結合し得る場合が挙げられる。
 アミノ酸誘導体としては、アミノ酸において、1個以上の水素原子又は基が、それ以外の基(置換基)で置換されたものが挙げられる。アミノ酸誘導体の一例として、官能基が保護基で保護された、保護アミノ酸が挙げられる。保護基は、反応性の官能基を不活性化する作用を有する。保護基を脱保護して、保護された官能基を保護される前の状態に戻すことも可能である。ここで官能基が保護されたとは、前記官能基を構成する原子が、保護基で置換されていることをいう。保護基で保護される部位としては、アミノ基、カルボキシル基、及び側鎖からなる群から選択されるいずれか一種以上の部位が挙げられる。側鎖に含まれる官能基は1箇所又は2箇所以上が保護基で保護されていてもよい。当該工程1においては、カルボキシル基以外の反応性の官能基の反応を防止するよう、アミノ基及び/又は側鎖の官能基が保護されていることが好ましい。
[0038]
 保護基の種類としては、特に制限されず、保護される官能基の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、アミノ基の保護基としては、カルバメート系やスルホンアミド系、アシル系、アルキル系等の保護基が挙げられ、これらに制限されない。
 カルバメート系の保護基としては、2-ベンジルオキシカルボニル基(-Z又は-Cbzと略されることがある。)、tert-ブトキシカルボニル基(-Bocと略されることがある。)、アリルオキシカルボニル基(-Allocと略されることがある。)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(-Trocと略されることがある。)、2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル基(-Teocと略されることがある。)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(-Fmocと略されることがある。)、p-ニトロベンジルオキシカルボニル基(-Z(NO )と略されることがある。)、p-ビフェニルイソプロピルオキシカルボニル基(-Bpocと略されることがある。)等が挙げられる。
 スルホンアミド系の保護基としては、p-トルエンスルホニル基(-Ts又は-Tosと略されることがある。)や、2-ニトロベンゼンスルホニル基(-Nsと略されることがある。)、2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル(-Pbfと略されることがある。)、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル(-Pmcと略されることがある。)、1,2-ジメチルインドール-3-スルホニル(-MISと略されることがある。)等が挙げられる。
[0039]
 実施形態のアミドの製造方法によれば、アミドのエピマー生成を抑制可能であるため、実施形態のアミドの製造方法は、アミドのエピマー生成を起こしやすい原料カルボン酸との反応に好適である。アミドのエピマー生成を起こしやすいカルボン酸とは、具体的には、フェニルグリシン、システイン、セリン、アスパラギン酸、ヒスチジン又はそれらの誘導体を例示できる。
[0040]
<工程2-1>
 工程2-1は、酸を添加して、前記工程1-1で得られた前記酸無水物と、第1の塩基と、を反応させてカチオン性活性種を得る工程である。
 実施形態に係るアミドの製造方法の工程2-1は、下記一般式(2)で表される酸無水物と、Bで表される第1の塩基とを、Aで表される酸を添加して反応させて下記一般式(4)で表されるカチオン性活性種を得るものである。なお、当該反応においては、カチオン性活性種のカウンターアニオンとして、下記一般式(5)で表される化合物が生成される。
[0041]
[化5]


 (式中、R 及びR は、それぞれ独立に水素原子または一価の有機基である。)
[0042]
 工程2-1で添加する酸は、無機酸又は有機酸のいずれでもよく、例えば、塩酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、次過塩素酸、臭化水素酸、次亜臭素酸、臭素酸、フッ化水素酸、硝酸、硫酸、過硫酸、リン酸、過リン酸、ヘキサフルオロリン酸、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、ヘキサフルオロアンチモン酸、ヨウ素酸、次亜ヨウ素酸、過ヨウ素酸、ホウ酸、テトラフルオロホウ酸、炭酸、過炭酸、過マンガン酸、クロム酸、チオシオン酸、酢酸、過酢酸、トリフルオロ酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、安息香酸、過安息香酸、メタクロロ安息香酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、クエン酸、ギ酸、グルコン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸等、またはそれらと反応して得られる塩が挙げられるが、これらに限られない。
 なお、ここで添加する酸はカルボン酸であってもよい。工程1-1では、予めカルボン酸を用いているが、工程1-1のカルボン酸は酸無水物となって活性種に変換されている。工程2-1でカルボン酸を添加したとしても、添加したカルボン酸が活性種とはなり難く、工程2-1で添加したカルボン酸は、アミドの構成単位として組み込まれ難いため、ここで添加する酸はカルボン酸であっても構わない。とはいえ、当該酸としては、カルボン酸を除く酸であることが好ましい。
 収率の観点からは、当該酸としては、ハロゲン化水素、過塩素酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロスルホン酸及びパラトルエンスルホン酸からなる群から選択されるいずれか一種以上が好ましく、ハロゲン化水素がより好ましく、なかでも塩酸がより好ましい。
 酸の添加により、アミドのエピマー生成を抑制できるとともに、カルボン酸とアミンとのカップリング反応速度が向上し、非常に高効率に、アミドを製造可能となる。
[0043]
 工程2-1における当該第1の塩基は、前記酸無水物と反応してカチオン性活性種を生成させるものであり、求核性の高いものが好ましく、ピリジン、ピリジン誘導体、イミダゾール、イミダゾール誘導体及び1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンからなる群より選択されるいずれか一種以上であることがより好ましい。
[0044]
 ピリジン誘導体は、ピリジンの一個以上の水素原子が、他の基で置換されたものであってよく、塩基の性質を有しているものであれば特に限定されないが、ピリジン及びピリジン誘導体は、下記一般式(3-1)で表される化合物であることが好ましい。
[0045]
[化6]


 (式中、X は水素原子、又は下記式(a)~(c)で示される群から選択されるいずれかの基を表す。)
[0046]
[化7]


 (式中、R 31、R 32、R 33及びR 34は、それぞれ独立にアルキル基を表す。R 33及びR 34は相互に結合して環を形成していてもよく、前記アルキル基中の、R 33又はR 34に直接結合していない1個のメチレン基は、酸素原子で置換されていてもよい。)
[0047]
 R 31、R 32、R 33及びR 34における前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよい。環状である場合、前記アルキル基は、単環状又は多環状のいずれでもよい。前記アルキル基は、炭素数が1~20であってもよく、1~15であってもよく、1~10であってもよい。
[0048]
 直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が例示できる。
[0049]
 一般式(3-1)で表される化合物は、下記一般式(3-1-1)で表される化合物であることが好ましい。X が水素原子以外の前記式(a)~(c)で示される群から選択されるいずれかの基である場合、係る位置に結合していることでX は電子供与性基として効果的に作用し、ピリジン環のN原子の求核性がより良好なものとなる傾向がある。
[0050]
[化8]


(式(3-1-1)中、X は、上記式(3-1)におけるX と同一の意味を表す。)
[0051]
 一般式(3-1)で表される化合物は、X が前記式(c)で示される基であり、R 33及びR 34は相互に結合して環を形成しており、前記アルキル基中の、R 33又はR 34に直接結合していない1個のメチレン基が酸素原子で置換されている場合として、下記式(3-1-2)で表される4-モルホリノピリジンを含む。
[0052]
[化9]


[0053]
 前記ピリジン及びピリジン誘導体としては、ピリジン、上記の4-モルホリノピリジン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、4-ピロリジノピリジン及び4-メトキシピリジンを好ましいものとして例示できる。なかでも、4-モルホリノピリジン及びN,N-ジメチル-4-アミノピリジンは、これらを用いることで、単位時間当たりでのアミドの合成収率が高く、かつ、且つ副反応物の生成を著しく低減させることが可能であるという点で、特に好ましい。
[0054]
 上記で例示したピリジン及びピリジン誘導体を用いた場合のカチオン性活性種とは、アシルピリジニウムカチオン(アシルピリジニウム種)である。アシルピリジニウム種は、求電子性が高いという特徴を持つ。そのため、後述する求核性の低いアミンとの反応であっても、非常に早い速度で反応を進めることができ、且つ副反応物の生成を著しく低減させることが可能である。
[0055]
 イミダゾール誘導体は、イミダゾールの一個以上の水素原子が、他の基で置換されたものであってよく、塩基の性質を有しているものであれば特に限定されないが、イミダゾール及びイミダゾール誘導体は、下記一般式(3-2)で表される化合物であることが好ましい。
[0056]
[化10]


 (式中、R 35及びR 36は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基である。)
[0057]
 R 35及びR 36におけるアルキル基としては、R 31、R 32、R 33及びR 34における前記アルキル基で例示したものが挙げられる。
[0058]
 前記イミダゾール及びイミダゾール誘導体としては、イミダゾール及びN-メチルイミダゾールを好ましいものとして例示できる。
[0059]
 一般式(3-2)で表される化合物は、R 36が水素原子であり、R 35がメチル基である場合、下記式(3-2-1)で表されるN-メチルイミダゾールを含む。
[0060]
[化11]


[0061]
 また、ピリジン、ピリジン誘導体、イミダゾール、イミダゾール誘導体の他に、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)を好ましいものとして例示できる。
[0062]
<工程3-1>
 工程3-1は、前記工程2-1で得られた前記カチオン性活性種と、アミンと、を反応させてアミドを製造する工程である。
 実施形態に係るアミドの製造方法の工程3-1は、下記一般式(4)で表されるカチオン性活性種と、下記一般式(6)で表されるアミンと、を反応させて下記一般式(7)で表されるアミドを得るものである。なお、下記式では示していないが、反応系内に上記工程2-1で添加された酸が存在していてもよい。
[0063]
[化12]


 (式中、R 、R 、R 及びR は、それぞれ独立に水素原子または一価の有機基である。)
[0064]
 前記アミンは、アミノ酸又はアミノ酸誘導体であることが好ましい。
 アミノ酸及びアミノ酸誘導体としては、前記カルボン酸において例示したものが挙げられる。
 前記式(6)がアミノ酸である場合、-R と-R は、例えば、-Hと-CH(R )COOHであってよい。
 アミノ酸誘導体の一例として、官能基が保護基で保護された、保護アミノ酸が挙げられる。保護基で保護される部位としては、アミノ基、カルボキシル基、及び側鎖からなる群から選択されるいずれか一種以上の部位が挙げられる。側鎖に含まれる官能基は1箇所又は2箇所以上が保護基で保護されていてもよい。当該工程3-1においては、アミノ基以外の反応性の官能基の反応を防止するよう、カルボキシル基及び/又は側鎖の官能基が保護されていることが好ましい。
[0065]
 保護基の種類としては、特に制限されず、保護される官能基の種類に応じて適宜選択することができる。カルボキシル基の保護は、中和して塩の形にするだけでよい場合もあるが、通常はエステルの形にして保護する。エステルとしては、メチル、エチル等のアルキルエステルのほか、ベンジルエステル(Bn又はBZlと略されることがある。)等が挙げられ、これらに制限されない。
[0066]
 実施形態のアミドの製造方法は、工程3-1で前記カチオン性活性種とアミンとを反応させる。ここで実施形態のアミドの製造方法は、前記カチオン性活性種の求電子性が高いため、反応速度がアミンの求核性に左右されないという利点を有する。
 したがって、実施形態のアミドの製造方法は、求核性の低いアミンとの反応に好適である。求核性の低いアミンとは、具体的には、タンパク質を構成し遺伝情報としてコードされる20種のアミノ酸からバリン及びイソロイシンを除いた18種のアミノ酸の求核性よりも低いアミンであってもよく、より具体的には、バリン、イソロイシン若しくはN-アルキル化されたアミノ酸、又はそれらの誘導体を例示できる。N-アルキル化されたアミノ酸とは、α炭素に結合したアミノ基の1又は2つの水素原子がアルキル基に置換されているものであってよく、1又は2つの水素原子がメチル基に置換されたN-メチルアミノ酸が好ましい。これらの求核性の低いアミンは、従来、酸無水物法で合成に用いることが困難であった。しかし、実施形態のアミドの製造方法によれば、従来、酸無水物法で合成に用いることの困難であった求核性の低いアミンであっても使用することができ、かかる点においても実施形態のアミドの製造方法は画期的である。
[0067]
 ここでのアミンの求核性は、例えば、実施例1に示す条件下で酸無水物法を行い、実施例1で生成した酸無水物と、求核性を求めたいアミンとを反応させて、その反応効率の程度から求めることができる。
[0068]
<第2実施形態>
 前記2’)の製造方法は、以下の工程1-2~3-2を含んでいてもよい。
 工程1-2:カルボン酸とハロゲン化ギ酸エステルとを反応させて、混合酸無水物を得る工程。
 工程2-2:酸を添加して、前記工程1-2で得られた前記混合酸無水物と、第1の塩基と、を反応させてカチオン性活性種を得る工程。
 工程3-2:前記工程2-2で得られた前記カチオン性活性種と、アミンと、を反応させてアミドを製造する工程。
 以下、上記の各工程について説明する。なお、本発明に係るアミドの製造方法の反応は、下記の各工程に例示される反応に限定されるものではない。
[0069]
<工程1-2>
 工程1-2は、カルボン酸とハロゲン化ギ酸エステルとを反応させて、混合酸無水物を得る工程である。
[0070]
 実施形態に係るアミドの製造方法の工程1-2は、下記一般式(I)で表されるカルボン酸と、下記一般式(I)’で表されるハロゲン化ギ酸エステルとを反応させて、下記一般式(II)で表される混合酸無水物を得るものである。
[0071]
[化13]


(式中、R 11は水素原子又は一価の有機基を表し、R 12は水素原子又は炭化水素基を表し、Yはハロゲン原子を表す。)
[0072]
 前記カルボン酸としては、上記<第1実施形態>において例示したものが挙げられる。
[0073]
 ハロゲン化ギ酸エステルにおけるハロゲン化とは、ハロゲン原子がカルボニル基に結合していることを指す。
[0074]
 R 12の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基であってもよく芳香族炭化水素基(アリール基)であってもよい。前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基)であってもよく、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、アルキル基が好ましい。
 前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1~20であってもよく、1~15であってもよい。
前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよい。環状である場合、前記アルキル基は、単環状又は多環状のいずれでもよい。前記アルキル基は、炭素数が1~20であってもよく、1~10であってもよく、1~5であってもよい。
[0075]
 直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が例示できる。
[0076]
 Yの前記ハロゲン原子は、F,Cl,Br,I等の周期表において第17族に属する元素であり、Cl又はBrが好ましい。
[0077]
 副反応をより効果的に抑制するという観点からは、前記一般式(I)’で表されるハロゲン化ギ酸エステルは、Yの前記ハロゲン原子がCl又はBrであり、R 12の炭化水素基が分岐鎖状の炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、クロロギ酸イソプロピル、クロロギ酸イソブチル、クロロギ酸エチル、ブロモギ酸イソプロピル、ブロモギ酸イソブチル及びブロモギ酸エチルからなる群から選択されるいずれか一種以上であることがより好ましい。
[0078]
 なお工程1-2の反応は、前記ハロゲン化ギ酸エステルを活性化する第2の塩基と、前記ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させ、反応をより進めやすくすることもできる。ここでは、活性化されたハロゲン化ギ酸エステルも、ハロゲン化ギ酸エステルの概念に包含されるものとする。
 前記第2の塩基は、前記ハロゲン化ギ酸エステルと反応してカチオン性活性種を生成させるものであり、工程1-2の生成物である前記混合酸無水物よりも前記ハロゲン化ギ酸エステルと優先的に反応するものが好ましく、第三級アミン、4-メチルモルホリン、ピリジン、ピリジン誘導体、イミダゾール、イミダゾール誘導体及び1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンからなる群より選択されるいずれか一種以上であることがより好ましい。ピリジン誘導体及びイミダゾール誘導体としては、前記工程2-1で例示したものが挙げられる。第三級アミンについてはアミンのN原子に結合する基の少なくとも一つがメチル基であることが好ましい。アミンのN原子に結合する基の二つがメチル基であるものはより好ましい。第三級アミンのN原子に結合する基の少なくとも一つをメチル基とすることで、N原子周囲の立体障害が小さくなり、前記ハロゲン化ギ酸エステルとの反応効率を向上させることができる。
 上記の観点により、第2の塩基として好ましいものとしては、4-メチルモルホリン、N-メチルイミダゾール、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジメチルブチルアミン、N,N-ジメチルアリルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)、N-メチルピペリジンが挙げられるが、これらに限られない。
 収率の観点からは、N,N-ジメチルベンジルアミンを用いることが好ましい。反応系への過剰な第2の塩基の添加は、酸の添加による析出(塩の形成)が生じるおそれがある。その点、N,N-ジメチルベンジルアミンは、反応性が良好であるため、当量を下げても反応が進みやすいために析出の問題が生じ難い。そのため、N,N-ジメチルベンジルアミンは、析出の影響を受けやすい流通系反応装置を使用した製造方法に好適である。
[0079]
<工程2-2>
 工程2-2は、酸を添加して、前記工程1-2で得られた前記混合酸無水物と、第1の塩基と、を反応させてカチオン性活性種を得る工程である。
 実施形態に係るアミドの製造方法の工程2-2は、下記一般式(II)で表される混合酸無水物と、Bで表される第1の塩基とを、Aで表される酸を添加して反応させて下記一般式(IV)で表されるカチオン性活性種を得るものである。なお、当該反応においては、カチオン性活性種のカウンターアニオンとして、下記一般式(V)で表される化合物が生成される。
[0080]
[化14]


 (式(IV)及び式(V)中、R 11及びR 12は、上記式(II)におけるR 11及びR 12と同一の意味を表す。)
[0081]
 前記酸としては、上記<第1実施形態>において例示したものが挙げられる。
 前記第1の塩基としては、上記<第1実施形態>において例示したものが挙げられる。
[0082]
 酸の添加により、アミドのエピマー生成を抑制できるとともに、カルボン酸とアミンとのカップリング反応速度が向上し、非常に高効率に、アミドを製造可能となる。
[0083]
<工程3-2>
 工程3-2は、前記工程2-2で得られた前記カチオン性活性種と、アミンと、を反応させてアミドを製造する工程である。
 実施形態に係るアミドの製造方法の工程3-2は、下記一般式(IV)で表されるカチオン性活性種と、下記一般式(VI)で表されるアミンと、を反応させて下記一般式(VII)で表されるアミドを得るものである。なお、下記式では示していないが、反応系内に上記工程2-2で添加された酸が存在していてもよい。
[0084]
[化15]


 (式(IV)及び式(VII)中のR 11は、上記式(II)におけるR 11と同一の意味を表す。式(VI)及び式(VII)中のR 13及びR 14は、それぞれ独立に水素原子または一価の有機基である。式(V)中のR 12は、上記式(II)におけるR 12と同一の意味を表す。)
[0085]
 前記アミンとしては、上記<第1実施形態>において例示したものが挙げられる。
 なお、上記工程2-2及び工程3-2において、式(V)に代えてアルコキシド(O ―R 12)及びCO が生成してもよい。
[0086]
<反応条件>
 実施形態において、工程1~3の反応時の各化合物の使用量は、これらの化合物の種類を考慮し、目的とする反応に応じて適宜調節すればよい。
 活性化したカルボン酸とアミンとの、反応系内のモル当量比(活性化したカルボン酸:アミン)は、10:1~1/10:1であってよく、5:1~1/5:1であってよく、3:1~1/3:1であってよい。活性化したカルボン酸とは、例えば前記一般式(4)又は(IV)で表される化合物である。実施形態のアミドの製造方法によれば、活性化したカルボン酸に対して、等量に近い比較的少量のアミンを反応させた場合であっても、高効率でアミドを製造可能である。
[0087]
 実施形態において、活性化したカルボン酸と酸との、反応系内のモル当量比(活性化したカルボン酸:酸)は、反応効率の観点から、10:0.1~10:5であってよく、10:0.5~10:4であってよい。
[0088]
 実施形態において、各工程の反応時間は、反応温度等、その他の条件に応じて適宜調節すればよい。一例として、工程1の反応時間は0.05秒~30分であってもよく、0.1秒~5分であってもよく、0.5秒~30秒であってもよい。工程2及び工程3を同時に行う場合、工程2及び工程3の反応時間は、1秒~60分であってもよく、5秒~30分であってもよく、1分~10分であってもよい。
[0089]
 実施形態において、工程1~3の反応時の温度(反応温度)は、工程1~3で使用する化合物の種類に応じて適宜調節すればよい。一例として、反応温度は0~100℃の範囲であることが好ましく、20~60℃の範囲であることがより好ましい。
[0090]
 本実施形態において、工程1~工程3の反応は、溶媒の共存下で行ってもよい。前記溶媒は特に限定されないが、化合物の反応を妨げないものが好ましく、反応で用いる原料の溶解性が高いものが好ましい。例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、ジメトキシエタン等が挙げられる。
[0091]
 本実施形態において、工程1~工程3の反応は、アミドの生成を達成可能な範囲において、上記に例示した化合物に該当しないその他の化合物を、反応系内にさらに含んでもよい。
[0092]
 本実施形態において、工程1~工程3の反応は、それぞれを別々に行ってもよく、同時に行ってもよい。副反応物の生成をより効果的に抑制するという観点から、工程2及び工程3を同時に行うことが好ましい。
[0093]
 以上で説明した実施形態のアミドの製造方法において、生成物の存在及び構造は、NMR、IR、マス等の解析により得られたスペクトルの測定や、元素分析等によって確認可能である。また、必要に応じて、生成物を精製してもよく、精製方法としては、蒸留、抽出、再結晶、カラムクロマトグラフィー等によって精製可能である。
[0094]
 実施形態のアミドの製造方法によれば、非常に高効率にアミドを製造可能である。工程1で得られる酸無水物であっても活性種として求核種(アミン)を受け入れる状態ではある。本方法では、さらに工程2でカチオン性活性種を形成させ、これに対して初めてアミンを反応させる。ここで生成されるカチオン性活性種は、酸無水物と比較して著しく活性が高いため、非常に速い速度で反応を進行させることができ、従来法と比較して副生成物の生成をも劇的に抑制可能である。さらには、従来法では反応の困難であった反応性の低いアミンとであっても、容易に反応を進行させることが可能である。
[0095]
 実施形態のアミドの製造方法によれば、反応系への酸の添加によって、おそらく、カルボン酸に由来する中間体(例えばカチオン性活性種)の生成を効率化させることができるとともに、アミドのエピマー生成を抑制可能である。これらの効果が生じるメカニズムについては、例えば、以下のように考察できる。
 一つは、酸の添加により、反応系にプロトンが供給され、原料のカルボン酸に由来する中間体におけるラセミ化が抑制されることが考えられる。ラセミ化はプロトンが脱離したアニオンが安定的な構造であり、そこに再びプロトンが付加されるときに生じ得る。すなわち、ラセミ化は塩基性条件でより発生しやすく、酸を添加して中性条件に近づけることで、ラセミ化が抑制されると考えられる。
 このことについては、酸の添加により、過剰な塩基が中和され、原料のカルボン酸に由来する中間体におけるラセミ化が抑制されることも考えられる。この場合のラセミ化は、原料カルボン酸に由来する中間体(例えばカチオン性活性種)が塩基と反応して生じた中間体で、プロトンが脱離したアニオンが安定的な構造である場合に、酸の添加によって塩基との反応を阻害することにより、ラセミ化が抑制されると考えられる。これは、工程2及び/又は工程3において副反応が抑制される場合と理解される。
 あるいは、酸の添加による複合的要因により、カルボン酸とアミンとのカップリング反応の効率が高められたことで、相対的に、アミドのエピマー生成反応が抑制されることが考えられる。これは、工程3において副反応が抑制される場合と理解される。
[0096]
 上記のとおり、実施形態のアミドの製造方法によれば、エピマー生成を抑制でき、非常に高効率にアミドを製造可能である。
[0097]
≪ペプチドの製造方法≫
 実施形態のアミドの製造方法は、前記カルボン酸が、アミノ酸又はアミノ酸誘導体であり、且つ、前記アミンが、アミノ酸又はアミノ酸誘導体である場合、ペプチド又はタンパク質を合成できる。ペプチド又はタンパク質の製造方法は、アミドの製造方法に包含される。
 上記工程3で得られたアミドを、工程1におけるカルボン酸として用い、工程1~3の後に、さらに工程1~3を繰り返すことで、ポリペプチド鎖を伸長させることができる。
 即ち、前記カルボン酸としてはポリペプチドも含まれ、実施形態に係るアミノ酸又はアミノ酸誘導体(カルボン酸)として、ポリペプチドの構成単位としてC末端に位置するアミノ酸又はアミノ酸誘導体(カルボン酸)も含まれる。このように、実施形態のアミドの製造方法は、ペプチド又はタンパク質の製造方法として好適である。
[0098]
≪流通系反応装置≫
 実施形態のアミドの製造方法は、流通系反応装置を使用して実施することができる。流通系反応装置は、実施形態のアミドの製造方法における反応に用いられる原料又は中間体を含む流体を輸送する流路と、該流体を混合するための混合機と、を備えるものを例示できる。流通系反応装置の使用について、例えば、少なくとも前記工程3における、アミンとの反応を流通系反応装置で行うのであってもよく、前記工程2及び工程3における、第1の塩基と反応させ、アミンと反応させる反応を流通系反応装置で行うのであってもよく、前記工程1~3における、酸無水物を得た後に、第1の塩基と反応させ、アミンと反応させる反応を流通系反応装置で行うのであってもよい。なお、実施形態のアミドの製造方法は、流通系反応装置を使用して実施するものに限定されない。例えば、容積が小さく高速な攪拌速度が得られるバッチ容器を用いてもよい。バッチ容器の混合部の体積は、1~100mLであってもよく、5~50mLであってもよい。
[0099]
 以下、実施形態に係る流通系反応装置の形態と、それを用いた上記第2実施形態のアミドの製造方法を、図1を参照して説明する。
 図1は、流通系反応装置1の概略的な構成を示す模式図である。流通系反応装置1は、第1の液を収容するタンク11と、第2の液を収容するタンク12と、第3の液を収容するタンク13とを備える。
 一例として、第1の液はカルボン酸を含み、第2の液はハロゲン化ギ酸エステルを含み、第3の液は第1の塩基、酸、及びアミンを含むことができる。他の一例として、第1の液はカルボン酸及びハロゲン化ギ酸エステルを活性化する第2の塩基を含み、第2の液はハロゲン化ギ酸エステルを含み、第3の液は第1の塩基、酸、及びアミンを含むことができる。より具体的な一例としては、図1に示すように、第1の液は、カルボン酸、N,N-ジメチルベンジルアミン(第2の塩基)及びDIEAを含み、第2の液はクロロギ酸イソプロピルを含み、第3の液はN-メチルイミダゾール(第1の塩基)、塩酸(酸)及びアミンを含む。
 流通系反応装置の使用について、例えば、少なくとも第1の液と第2の液との混合物と、第3の液との混合を流通系反応装置で行うのであってもよく、更には、第1の液と第2の液との混合を流通系反応装置で行うのであってもよい。
[0100]
 流通系反応装置1は流体を輸送するための流路f1,f2,f3,f4,f5を備える。流路の内径は、一例として0.1~10mmであってもよく、0.3~8mmであってもよい。流通系反応装置1は流体を混合するための混合機31,32を備える。混合機内部の流路の内径は、一例として0.1~10mmであってもよく、0.3~8mmであってもよい。混合機としては、駆動部を有さないスタティックミキサーが挙げられる。駆動部とは、動力が与えられて動く部分のことを指す。
 上記の流路の内径とは、流路の長さ方向と直角に交わる方向での流路断面における、流路内部分(流体が通る部分)の直径とすることができる。流路内部分の形状が真円形でない場合には、上記の流路の内径とは、上記流路内部分の形状を面積基準で真円換算したときの直径とすることができる。
 タンク11,12,13,14、混合機31,32及び流路f1,f2,f3,f4,f5は、一例として、プラスチックやエラストマー等の樹脂や、ガラス材、金属、セラミックなどで形成されている。
[0101]
 タンク11はポンプ21に接続し、ポンプ21の作動により、タンク11に収容された第1の液は、流路f1内を移動して混合機31に流入する。タンク12はポンプ22に接続し、ポンプ22の作動により、タンク12に収容された第2の液は、流路f2内を移動して混合機31に流入する。そして、第1の液及び第2の液は、混合機31により混合されて第1の混合液となり、流路f4へと送られる。この混合後の過程で、第1の液に含まれるカルボン酸と第2の液に含まれるクロロギ酸イソプロピルとで脱水縮合が生じ、混合酸無水物が得られる(アミドの製造方法の工程1-2)。得られた酸無水物を含む第1の混合液は、混合機32へと流入する。
[0102]
 一方、タンク13はポンプ23に接続し、ポンプ23の作動により、タンク13に収容された液は、流路f3内を移動して混合機32へと流入し、第1の混合液と混合されて第2の混合液となり、流路f5へと送られる。この混合後の過程で、工程1-2で得られた混合酸無水物と、第3の液に含まれるN-メチルイミダゾールとが反応してカチオン性活性種となり(アミドの製造方法の工程2-2)、続いて得られたカチオン性活性種と第3の液に含まれるアミンとが反応してアミドが得られる(アミドの製造方法の工程3-2)。製造されたアミドを含む第2の混合液は、タンク14に貯留される。
[0103]
 実施形態に係る流通系反応装置1によれば、反応溶液の体積あたりの熱交換を行う面積を大きくすることができる。加えて、流量や流路の長さによって反応時間を制御することができる。このため、反応溶液の厳密な制御を可能とし、結果、望まない副反応の進行を最小化でき、目的物の収率を向上させることができる。
[0104]
 前記工程2で得られるカチオン性活性種は、活性度が高いため反応性の低いアミンであっても反応させることができるという利点がある一方、反応のコントロールが重要となる。また、工程1で得られる酸無水物であっても十分に活性度が高いため、反応のコントロールが重要となる。
 実施形態に係る流通系反応装置1によれば、流路を通じて液を連続的に流通させることで化合物の衝突の機会が向上し、より高効率に反応を進めることができ、副反応の抑制も容易となる。例えば、工程1で生じた酸無水物を、すぐさまN-メチルイミダゾール(第1の塩基)と反応させることが可能となるので、酸無水物が活性化状態でいる時間を短くでき、異性化等の副反応が生じる確率を低減できる。
[0105]
 なお、本実施形態に係る流通系反応装置では、混合機により液が混合される形態を例示したが、液の混合は流路同士が連通することのみで達成され得るため、実施形態の流通系反応装置は、必ずしも混合機を備えていなくともよい。
 なお、上記に例示した流通系反応装置では、第2実施形態のアミドの製造方法を例に説明したが、アミドの製造方法の第1実施形態も、同様に実施することができる。
 一例として、第1の液は第一のカルボン酸及び第二のカルボン酸を含み、第2の液はホスゲン又は反応系内で分解してホスゲンを生成するホスゲン等価体を含み、第3の液は第1の塩基、酸及びアミンを含むことができる。より具体的な一例としては、第1の液はカルボン酸及びDIEAを含み、第2の液はトリホスゲン(ホスゲン等価体)を含み、第3の液は4-モルホリノピリジン(第1の塩基)、塩酸(酸)及びアミンを含むことができる。
[0106]
 ここで示したように、実施形態のアミドの製造方法は、液相法により実施できる。例えば、現在主流となっているペプチド(アミド)の製造方法は固相法であり、固相上でペプチドを合成していく。一方、液相法は、ラージスケールの合成に適しており、分子の自由度が高まるために反応性も良好である。液相法は、反応性の低いアミンとの反応にも効果を発揮する。
[0107]
 なお、本実施形態に係る流通系反応装置では、反応させる5種類の化合物を3つのタンクに分けて収容したが、例えば、それぞれを計5つの別々のタンクに収容しておき、順次混合させてもよい。
 しかし、上記実施形態の第3の液として示したように、N-メチルイミダゾール(第1の塩基)とアミンとは、あらかじめ同じ液中に存在させることが好ましい。即ち、工程2及び工程3は同時に行ってもよく、これにより、工程2で生じた反応性の高いカチオン性活性種を、すぐさま目的のアミンと反応させることが容易となり、カチオン性活性種が活性化状態でいる時間を短くでき、望まない副反応物の生成を効果的に抑制できる。
[0108]
 また、上記実施形態の第3の液として示したように、N-メチルイミダゾール(第1の塩基)と酸とは、あらかじめ同じ液中に存在させることが好ましい。これにより、望まないエピマー生成を効果的に抑制できる。
[0109]
 以上、この発明の実施形態について化学式及び図面を参照して詳述してきたが、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。
実施例
[0110]
 次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[0111]
<実施例1>混合酸無水物法におけるHClの添加
〔原料〕
 カルボン酸として用いたアミノ酸には、アミノ基がFmoc基によって保護された、フェニルグリシンである、Fmoc-2-Phenylglycine-OH(市販品)を用いた。アミンとして用いたアミノ酸には、カルボキシル基がメチル基で保護され、かつアミノ基がメチル化されたフェニルアラニンである、H-MePhe-OMe(市販品)を用いた。
[0112]
〔酸アミドのフロー合成〕
 カルボン酸として用いたアミノ酸と、アミンとして用いたアミノ酸とのカップリング反応を行った。カップリング反応は、PTFE製チューブ(内径0.8mm,外径1.59mm)とSUS製チューブ(内径0.8mm、外径1.58mm)とSUS製継手とT字型ミキサーで構成された流通系反応装置を用いた。反応前の溶液は3つに分けて調整した。第1の溶液は、カルボン酸として用いたFmoc-2-Phenylglycine-OHと、DIEAと、第2の塩基として用いたN,N-ジメチルベンジルアミンとを1,4-ジオキサンに溶解して得た。第2の溶液は、クロロギ酸イソプロピルを1,4-ジオキサンに溶解して得た。第3の溶液は、アミンとして用いたH-MePhe-OMeと、第1の塩基として用いたN-メチルイミダゾールと、HClとを1,4-ジオキサンとMeCNの混合溶媒に溶解して得た。流通系反応装置中でのそれぞれのモル濃度の比は、H-MePhe-OMe(アミン)1.0に対して、Fmoc-2-Phenylglycine-OH(カルボン酸)が1.1、DIEAが1.1、N,N-ジメチルベンジルアミンが0.055、クロロギ酸イソプロピルが1.05、N-メチルイミダゾールが0.1、HClが0.155とした。
[0113]
 流通系反応装置中でカップリングを行うために、初めに、第1の溶液と第2の溶液とをT字型ミキサーにて混合し、流通系反応装置中で5秒間反応させることで混合酸無水物を得た。その後すぐさま混合酸無水物を含む反応溶液と第3の溶液とを新たなT字型ミキサーを用いて混合し、流通系反応装置中で120秒間反応させた。これらの反応は全て60℃で実施し、それぞれの反応前の溶液がミキサーへ到達する前に熱交換を行うための時間として10秒を設定した。各種溶液はシリンジポンプを用いて流出した。各ポンプの流量はそれぞれ、第1の溶液が2.0mL/min、第2の溶液が1.2mL/min、第3の溶液が2.0mL/minとした。
[0114]
 実施例1における、アミドの製造方法の工程1の反応を以下に示す。
[0115]
[化16]


 〔式中、R pgはフェニルグリシン側鎖を表す。〕
[0116]
 実施例1における、アミドの製造方法の工程2及び工程3の反応を以下に示す。
[0117]
[化17]


 〔式中、R pgはフェニルグリシン側鎖を表し、R はフェニルアラニン側鎖を表す。〕
[0118]
〔分析法〕
 目的物の単離にはシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用い、NMR解析にて同定した。
[0119]
 目的物の収率は、単離精製した目的物の重量から算出した。即ち、アミンのモル当量比を1.0とし、単離されたジペプチドの重量から、アミンがカップリングした割合を算出した。
[0120]
 エピマー生成率は、単離精製したアミドの異性体をHPLCによって分離し、目的物のアミドとエピマーのUV吸収強度の面積比からエピマー生成率を算出した。目的物は、保持時間35.576分(面積比73.58)に検出され、エピマーは、保持時間39.658分(面積比26.42)に検出された。
[0121]
〔結果〕
 得られたジペプチドのNMRデータを以下に示す。
H NMR(500MHz、CDCl ):δ7.78-7.70(m、2H)、7.59-7.51(m、2H)、7.46-6.84(m、14H)、6.28(d、J=7.5Hz、1H)、5.48(d、J=7.5Hz、1H)、5.17-5.11(m、1H),4.36-4.23(m、2H)、4.20-4.14(m、1H)、3.68(s、3H)、3.42-3.35(m、1H)、3.05-2.95(m、1H)、2.70(s、3H)
[0122]
 反応後の生成物を分析した結果、目的物であるジペプチドは、カップリング収率が86%であり、そのうちエピマー生成率は23%程度であった。
[0123]
 実施例1の方法によれば、アミンに対するカルボン酸のモル濃度の比が1:1.1であり、反応時間が120秒という短い時間であるにもかかわらず、86%の高いカップリング収率が達成できた。また、非常にエピマー生成を生じやすいフェニルグリシンをカルボン酸として用いたにもかかわらず、後述の比較例1と比較し、エピマーの生成率を大幅に削減できた。
[0124]
<比較例1>混合酸無水物法
〔原料〕
 カルボン酸として用いたアミノ酸には、アミノ基がFmoc基によって保護された、フェニルグリシンである、Fmoc-2-Phenylglycine-OH(市販品)を用いた。アミンとして用いたアミノ酸には、カルボキシル基がメチル基で保護され、かつアミノ基がメチル化されたフェニルアラニンである、H-MePhe-OMe(市販品)を用いた。
[0125]
〔酸アミドのフロー合成〕
 カルボン酸として用いたアミノ酸と、アミンとして用いたアミノ酸とのカップリング反応を行った。カップリング反応は、PTFE製チューブ(内径0.8mm,外径1.59mm)とSUS製チューブ(内径0.8mm、外径1.58mm)とSUS製継手とT字型ミキサーで構成された流通系反応装置を用いた。反応前の溶液は3つに分けて調製した。第1の溶液は、カルボン酸として用いたFmoc-2-Phenylglycine-OHと、N-メチルモルホリンと、DIEAとを1,4-ジオキサンに溶解して得た。第2の溶液は、クロロギ酸イソプロピルを1,4-ジオキサンに溶解して得た。第3の溶液はアミンとして用いたH-MePhe-OMeと、4-モルホリノピリジンとを1,4-ジオキサンに溶解して得た。流通系反応装置中でのそれぞれのモル濃度の比は、H-MePhe-OMe(アミン)が1.0に対して、Fmoc-2-Phenylglycine-OH(カルボン酸)が1.3、DIEAが1.3、N-メチルモルホリンが1.3、クロロギ酸イソプロピルが1.25、4-モルホリノピリジンが0.01とした。
[0126]
 流通系反応装置中でカップリングを行うために、初めに、第1の溶液と第2の溶液をT字型ミキサーにて混合し、流通系反応装置中で5秒間反応させることで混合酸無水物を得た。その後すぐさま混合酸無水物を含む反応溶液と第3の溶液とを新たなT字型ミキサーを用いて混合し、流通系反応装置中で150秒間反応させた。これらの反応は全て60℃で実施し、それぞれの反応前の溶液がミキサーへ到達する前に熱交換を行うための時間として10秒を設定した。各種溶液はシリンジポンプを用いて流出した。各ポンプの流量はそれぞれ、第1の溶液が1.2mL/min、第2の溶液が1.2mL/min、第3の溶液が2.0mL/minとした。
[0127]
〔分析法〕
 実施例1と同様の方法により行った。
[0128]
〔結果〕
 反応後の生成物を分析した結果、目的物であるジペプチドは、カップリング収率が93%であり、そのうちエピマー生成率は41%程度であり、半数近くがエピマーであったことから、エピマー生成がほとんど抑制されていないことが判明した。
[0129]
 結果、比較例1では、フェニルグリシンをカルボン酸に用いた場合、エピマー生成を抑えることが困難であった。

符号の説明

[0130]
1…流通系反応装置、11,12,13,14…タンク、21,22,23…ポンプ、31,32…混合機、f1,f2,f3,f4,f5…流路

請求の範囲

[請求項1]
 カルボン酸同士を脱水縮合させた後に、又は、カルボン酸とハロゲン化ギ酸エステルとを反応させた後に、第1の塩基と反応させ、アミンと反応させてアミドを得ることを含み、
 前記第1の塩基との反応及び/又はアミンとの反応を、酸を添加して行う、アミドの製造方法。
[請求項2]
 第一のカルボン酸及び第二のカルボン酸を混合して得られた混合物を反応させた生成物と、又は
 カルボン酸及びハロゲン化ギ酸エステルを混合して得られた混合物を反応させた生成物と、
 第1の塩基と、酸と、アミンとを混合させることを含む、アミドの製造方法。
[請求項3]
 ホスゲン、又は反応系内で分解してホスゲンを生成するホスゲン等価体を反応させて、前記カルボン酸同士を脱水縮合させる、請求項1又は2に記載のアミドの製造方法。
[請求項4]
 同じ種類の前記カルボン酸同士を脱水縮合させる、請求項1~3のいずれか一項に記載のアミドの製造方法。
[請求項5]
 前記ハロゲン化ギ酸エステルが、クロロギ酸イソプロピル、クロロギ酸イソブチル、クロロギ酸エチル、ブロモギ酸イソプロピル、ブロモギ酸イソブチル及びブロモギ酸エチルからなる群から選択されるいずれか一種以上である、請求項1又は2に記載のアミドの製造方法。
[請求項6]
 前記ハロゲン化ギ酸エステルを活性化する第2の塩基と、前記ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させることを含む、請求項1、2又は5に記載のアミドの製造方法。
[請求項7]
 前記第2の塩基が、第三級アミン、4-メチルモルホリン、ピリジン、ピリジン誘導体、イミダゾール、イミダゾール誘導体及び1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンからなる群から選択されるいずれか一種以上である、請求項6に記載のアミドの製造方法。
[請求項8]
 前記酸は、ハロゲン化水素、過塩素酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロスルホン酸及びパラトルエンスルホン酸からなる群から選択されるいずれか一種以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載のアミドの製造方法。
[請求項9]
 前記カルボン酸が、アミノ酸又はアミノ酸誘導体である、請求項1~8のいずれか一項に記載のアミドの製造方法。
[請求項10]
 前記カルボン酸が、フェニルグリシン、システイン、セリン、アスパラギン酸、ヒスチジン又はそれらの誘導体である、請求項1~9のいずれか一項に記載のアミドの製造方法。
[請求項11]
 前記第1の塩基が、ピリジン、ピリジン誘導体、イミダゾール、イミダゾール誘導体及び1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンからなる群より選択されるいずれか一種以上である、請求項1~10のいずれか一項に記載のアミドの製造方法。
[請求項12]
 前記第1の塩基が、4-モルホリノピリジン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、4-ピロリジノピリジン、ピリジン、4-メトキシピリジン、イミダゾール、N-メチルイミダゾール及び1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンからなる群より選択されるいずれか一種以上である請求項1~11のいずれか一項に記載のアミドの製造方法。
[請求項13]
 前記アミンが、アミノ酸又はアミノ酸誘導体である、請求項1~12のいずれか一項に記載のアミドの製造方法。
[請求項14]
 前記アミンの求核性が、タンパク質を構成し遺伝情報としてコードされる20種のアミノ酸からバリン及びイソロイシンを除いた18種のアミノ酸の求核性よりも低い、請求項1~13のいずれか一項に記載のアミドの製造方法。
[請求項15]
 前記アミンが、バリン、イソロイシン若しくはN-アルキル化されたアミノ酸、又はそれらの誘導体である、請求項13又は14に記載のアミドの製造方法。
[請求項16]
 前記アミンと反応させることを、流通系反応装置で行う、請求項1~15のいずれか一項に記載のアミドの製造方法。
[請求項17]
 さらに、前記カルボン酸同士を反応させること、又は、前記カルボン酸と前記ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させること、及び、前記第1の塩基と反応させることを、流通系反応装置で行う、請求項16に記載のアミドの製造方法。

図面

[ 図 1]