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1. WO2019187356 - RECORDING METHOD, RECORDING DEVICE, REPRODUCTION METHOD, REPRODUCTION DEVICE, AND HIGH-SPEED RESPONSE ELEMENT

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明 細 書

発明の名称 記録方法、記録装置、再生方法、再生装置、及び、高速応答素子

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

非特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007   0008   0009   0010  

課題を解決するための手段

0011   0012   0013   0014   0015  

発明の効果

0016   0017   0018  

図面の簡単な説明

0019  

発明を実施するための形態

0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088  

符号の説明

0089  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21  

明 細 書

発明の名称 : 記録方法、記録装置、再生方法、再生装置、及び、高速応答素子

技術分野

[0001]
 本発明は、記録方法、記録装置、再生方法、再生装置、及び、高速応答素子に関し、イプシロン酸化鉄粒子を使用した磁気記録媒体等に適用して好適なものである。

背景技術

[0002]
磁気記録媒体では、記録の高密度化に向けて磁性粒子の微小化が望まれており、近年、磁性粒子の微小化が可能なイプシロン酸化鉄粒子を使用した磁気記録媒体が注目されている。磁性粒子の微小化に伴い、信号のS/N比を増大させることができる一方で、熱に対する磁化の安定性は、磁気異方性定数と粒子体積とに比例すると考えられているため、微小化により磁化の熱安定性が損なわれてしまう。 
[0003]
ここで、磁気異方性定数は、磁気記録媒体の保磁力を高めることにより、高くすることができると考えられている。従って、粒子体積(粒径)が小さく熱安定性の高い粒子を得るためには、保磁力の高い物質を磁性材料として用いることが有効となる。例えば、発明者らは特許文献1および非特許文献1~4において、磁化容易軸の配向方向に対して平行方向の外部磁場を印加することにより測定される磁気ヒステリシスループにおいて、20kOe(1.59×10 A/m)を超える保磁力Hcが観測されたイプシロン酸化鉄粒子を開示している。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 特許第5124825号公報

非特許文献

[0005]
非特許文献1 : S. Ohkoshi, A. Namai, K. Imoto, M. Yoshikiyo, W. Tarora, K. Nakagawa, M. Komine, Y. Miyamoto, T. Nasu, S. Oka, and H. Tokoro, Scientific Reports, 5, 14414/1-9 (2015).
非特許文献2 : S. Sakurai, A. Namai, K. Hashimoto, and S. Ohkoshi, J. Am. Chem. Soc., 131, 18299-18303 (2009).
非特許文献3 : A. Namai, S. Sakurai, M. Nakajima, T. Suemoto, K. Matsumoto, M. Goto, S. Sasaki, and S. Ohkoshi, J. Am. Chem. Soc., 131, 1170-1173 (2009).
非特許文献4 : A. Namai, M. Yoshikiyo, K. Yamada, S. Sakurai, T. Goto, T. Yoshida, T Miyazaki, M. Nakajima, T. Suemoto, H. Tokoro, and S. Ohkoshi, Nature Communications, 3, 1035/1-6 (2012).

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 しかしながら、磁気記録媒体の保磁力Hcを高くした場合には、高レベルの飽和磁束密度を有する磁気ヘッドを使用して高い外部磁場を発生させて、磁気記録媒体に情報を記録することが必要となる。磁気ヘッドの発生外部磁場は、一般的には、使用される軟磁性膜の飽和磁束密度に比例するともいわれており、現在、1.5~4.5kOe(1.19~3.58×10 A/m)程度の保磁力Hcをもつハードディスクが報告されているが、これらのハードディスクの記録書き込み用の磁気ヘッドでは、飽和磁束密度が2.4Tのような高い飽和磁束密度をもつ材料が使用されている。
[0007]
 上述した特許文献1に見られるように、20kOe(1.59×10 A/m)レベルの巨大な保磁力Hcを持つイプシロン酸化鉄粒子を磁気記録媒体の磁気記録材料に用いた場合、現状よりもさらに高い飽和磁束密度をもつ材料が存在しないと、磁気記録媒体に対して情報を記録することは難しいという問題があった。
[0008]
 そこで、本発明は以上の点を考慮してなされたもので、高い保磁力を有したイプシロン酸化鉄粒子を磁気記録材料として使用した磁気記録媒体でも、容易に情報を記録できる記録方法及び記録装置を提案することを目的とする。
[0009]
 また、イプシロン酸化鉄粒子を磁気記録材料として使用した磁気記録媒体に多値的に情報が記録されていても、当該情報を再生できる、再生方法及び再生装置を提案することを目的とする。
[0010]
 また、近年では、イプシロン酸化鉄粒子の新たな特性を見出し、この特性を利用した新規な素子の開発についても望まれている。本発明は以上の点についても考慮してなされたものであり、イプシロン酸化鉄粒子を用いた新規な高速応答素子を提案することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0011]
 かかる課題を解決するため本発明による記録方法は、イプシロン酸化鉄粒子を磁気記録材料として使用した磁気記録媒体に対して、外部磁場の印加と、光の照射と、を行うことで、前記イプシロン酸化鉄粒子の磁化を反転させるものである。
[0012]
 また、本発明の記録装置は、イプシロン酸化鉄粒子を含む磁気記録媒体に、外部磁場を印加する磁場印加部と、前記磁気記録媒体に、光を照射する光照射部とを備え、前記外部磁場と前記光とにより前記イプシロン酸化鉄粒子の磁化を反転させるものである。
[0013]
 また、本発明の再生方法は、イプシロン酸化鉄粒子を磁気記録材料として使用し、かつ多値的に情報が記録可能な磁気記録媒体について、前記磁気記録媒体の磁化を検出し、前記磁気記録媒体から検出した前記磁化の強度に基づいて、前記磁化の強度に応じた情報を再生するものである。
[0014]
 また、本発明の再生装置は、イプシロン酸化鉄粒子を磁気記録材料として使用し、かつ多値的に情報が記録可能な磁気記録媒体について、前記磁気記録媒体の磁化を検出する検出部と、前記磁気記録媒体から検出した前記磁化の強度に基づいて、前記磁化の強度に応じた情報を再生する情報再生部と、を備えるものである。
[0015]
 また、本発明の高速応答素子は、イプシロン酸化鉄粒子を含み、テラヘルツ光が照射されたタイミングに合わせて磁化状態が応答する、ものである。

発明の効果

[0016]
 本発明によれば、イプシロン酸化鉄粒子を使用した磁気記録媒体に光を照射することで、光を照射しないときよりも、磁化を反転させる際に必要となる外部磁場を下げることができる。よって、高い保磁力を有したイプシロン酸化鉄粒子を使用した磁気記録媒体でも、光を照射することで、低い外部磁場で容易に情報を記録できる。
[0017]
 また、本発明の再生方法及び再生装置によれば、外部磁場と光とで情報を記録する際に、光の強度を変えて磁気記録媒体に多値的に情報が記録されていても、磁化の強度を検出することで多値的な情報を再生できる。
[0018]
 また、本発明によれば、テラヘルツ光が照射されたタイミングに合わせて磁化状態が高速で応答する、新規な高速応答素子を実現できる。

図面の簡単な説明

[0019]
[図1] 本発明による記録装置の全体構成を示す概略図である。
[図2] 外部磁場が印加されたときの粒子分散体を説明するための概略図である。
[図3] 光が照射されたときの粒子分散体を説明するための概略図である。
[図4] 磁化が反転して情報が記録された粒子分散体の構成を示す概略図である。
[図5] 磁化反転プロセスのエネルギーポテンシャル(光照射前)を示す概略図である。
[図6] 磁化反転プロセスのエネルギーポテンシャル(外部磁場印加時)および光照射による磁化反転を示す概略図である。
[図7] 分級後の粉末試料の粒径のバラツキを示すグラフである。
[図8] 粒子分散体のX線回析パターンを示すグラフである。
[図9] 300Kのときの粒子分散体における磁気ヒステリシスの測定結果を示したグラフである。
[図10] 粒子分散体のUV-vis吸収スペクトルの波長依存性を示すグラフである。
[図11] 粒子分散体における磁化の外部磁場依存性と、光照射後における磁化の変化とを示したグラフであり、図11Aは、外部磁場±50kOeの領域のグラフであり、図11Bは図11Aの一部を拡大したグラフである。
[図12] 粒子分散体におけるファラデー楕円率の波長依存性を示したグラフである。
[図13] 波長390nmにおけるファラデー楕円率の外部磁場依存性と、8.1mJ/pulseの光照射後におけるファラデー楕円率の変化とを示したグラフである。
[図14] 波長390nmにおけるファラデー楕円率の外部磁場依存性と、12.7mJ/pulseの光照射後におけるファラデー楕円率の変化とを示したグラフである。
[図15] 波長390nmにおけるファラデー楕円率の外部磁場依存性と、16.0mJ/pulseの光照射後におけるファラデー楕円率の変化とを示したグラフである。
[図16] 再生装置の構成を示すブロック図である。
[図17] 高速応答素子の構成を示す概略図である。
[図18] 高速応答素子に対してテラヘルツ光を照射したときの様子を示す概略図である。
[図19] 高速応答素子にパルステラヘルツ光を照射する検証試験を説明するための概略図である。
[図20] 高速応答素子に対して2つの磁化方向からパルステラヘルツ光を照射したときのファラデー回転角の測定結果を示したグラフである。
[図21] パルステラヘルツ光に対するファラデー回転角の応答性を示したグラフである。

発明を実施するための形態

[0020]
 以下図面に基づいて本発明の実施の形態を詳述する。
[0021]
 (1)本発明の記録装置において磁気記録材料として使用するイプシロン酸化鉄粒子
 本発明の記録装置では、磁気記録媒体として、高い保磁力Hcを有するイプシロン酸化鉄粒子が磁気記録材料として使用されている磁気記録媒体を適用することが望ましい。本発明では、高い保磁力Hcを有するイプシロン酸化鉄粒子を磁気記録材料として使用していても、光を照射することで、高レベルの飽和磁束密度を有する磁気ヘッドを用いずに、低い外部磁場で磁化を反転させ、情報を記録することができる。
[0022]
 ここでは、始めに本実施形態で使用する、高い保磁力Hcを有するイプシロン酸化鉄粒子について以下説明する。イプシロン酸化鉄粒子としては、一般式がε-Fe 、ε-A Fe 2-x(AはFeを除く元素、xは0<x<2の範囲)、ε-B Fe 2-y-z(ここでのB及びCは、A及びFeを除く元素であり、かつ互いに異なる元素、yは0<y<1の範囲、zは0<z<1の範囲)、ε-D Fe 2-U-V-W(ここでのD、E及びFは、A及びFeを除く元素であり、かつ互いに異なる元素、Uは0<U<1の範囲、Vは0<V<1の範囲、Wは0<W<1の範囲)で表される結晶のいずれかであることが望ましい。
[0023]
 ε-A Fe 2-xは、結晶系と空間群がε-Fe と同じであって、ε-Fe 結晶のFeサイトの一部がFe以外の元素Aで置換されたものである。ε-Fe の結晶構造を安定に保つため、Aとしては、3価の元素を用いることが好ましい。さらにAとしては、Al,Sc,Ti,V,Cr,Ga,In,Y,Rhから選択される1種の元素を挙げることができる。
[0024]
 ε-B Fe 2-y-zは、結晶系と空間群がε-Fe と同じであって、ε-Fe 結晶のFeサイトの一部が、Fe以外の2種の元素B,Cで置換されたものである。ε-Fe の結晶構造を安定に保つため、Bとしては4価の元素、Cとしては2価の元素を用いることが好ましい。さらに、BとしてはTi、Cとしては、Co,Ni,Mn,Cu及びZnから選択される1種の元素を挙げることができる。
[0025]
 ε-D Fe 2-U-V-Wは、結晶系と空間群がε-Fe と同じであって、ε-Fe 結晶のFeサイトの一部が、Fe以外の3種の元素D,E,Fで置換されたものである。ε-Fe の結晶構造を安定に保つため、Dとしては3価の元素、Eとしては4価の元素、Fとしては2価の元素を用いることが好ましい。Dとしては、Al,Sc,Ti,V,Cr,Ga,In,Y,Rhから選択される1種の元素を挙げることができる。また、EとしてはTi、Fとしては、Co,Ni,Mn,Cu及びZnから選択される1種の元素を挙げることができる。
[0026]
 なお、上述したA、B、C、D、E及びFからFeを除くのは、ε-Fe のFe 3+イオンサイトの一部を、1種類、又は、互いに異なる2種類、3種類の元素で置換するためである。ここでイプシロン酸化鉄粒子の粒径は特に限定されないが、例えば、TEM(透過型電子顕微鏡)写真から計測した平均粒径が5~200nmの範囲であることが望ましく、磁気記録媒体の記録密度を高めるためには、平均粒径が100nm以下であることがより望ましく、50nm以下であることがより望ましく、20nm以下であることがより望ましい。
[0027]
 これらイプシロン酸化鉄粒子は、公知のものである。Feサイトの一部がFe以外の1種の元素A、2種類の元素B、C、3種の元素D、E、Fでそれぞれ置換されたε-A Fe 2-x、ε-B Fe 2-y-z、又はε-D Fe 2-U-V-Wのいずれかの結晶からなるイプシロン酸化鉄粒子は、例えば、逆ミセル法及びゾル-ゲル法を組み合わせた工程と、焼成工程とによって合成することができる。また、特開2008-174405号公報に開示されるように、直接合成法及びゾル-ゲル法を組み合わせた工程と、焼成工程とによって合成することができる。
[0028]
 なお、より具板的な製造方法については、例えば、公知文献である「Jian Jin,Shinichi Ohkoshi and Kazuhito Hashimoto,ADVANCED MATERIALS 2004,16,No.1、January 5,p.48-51」や、「Shin-ichi Ohkoshi,Shunsuke Sakurai,Jian Jin,Kazuhito Hashimoto,JOURNAL OF APPLIED PHYSICS,97,10K312(2005)」に開示されているため、ここではその説明は省略する。
[0029]
 (2)イプシロン酸化鉄粒子を含んだ粒子分散体
 本実施形態の記録装置に用いる粒子分散体は、例えば下記のようにして製造する。上述したイプシロン酸化鉄粒子を所定の溶媒に分散させて得られた分散液を、基体上に設ける。例えば、ガラス基板上にポリエステルフィルムを貼り付け、当該フィルム上へ分散液を滴下する。基体上に設けられた分散液を、配向の確実性を高める観点から2テスラ以上の磁束密度下に置き、分散液を硬化させることでフィルム状の粒子分散体を得ることができる。なお、このようなフィルム状の粒子分散体の詳細な製造方法は、特開2016-135737号公報に開示されているため、ここではその説明は省略する。
[0030]
 このようにして製造される粒子分散体は、例えば、配向度=SQ(磁化容易軸方向)/SQ(磁化困難軸方向)にて定義される磁性粒子の配向度の値が、0.6を超えることが望ましい。また、イプシロン酸化鉄粒子の磁化容易軸を所定方向に向けて配向させた粒子分散体は、室温での保磁力Hcが3kOe(2.39×10 A/m)以上であることが望ましい。
[0031]
 (3)光を利用した記録装置
 (3―1)光を利用した記録装置の構成
 次に、上述した、高い保磁力Hcを有した粒子分散体に対して情報を記録可能な記録装置について以下説明する。図1は本発明による記録装置10を示す。記録装置10は、磁場印加部11と光照射部12とを備えており、これら磁場印加部11及び光照射部12を使用して、粒子分散体1の磁化方向を変えて情報を記録することができる。
[0032]
 磁場印加部11は、第1コイル部11a及び第2コイル部11bを有しており、第1コイル部11a及び第2コイル部11bに電流を流すことで、例えば、第1コイル部11aから第2コイル部11bに向かう外部磁場Hoを形成する。また、本実施形態の場合、第1コイル部11a及び第2コイル部11bには、記録面と対向する対向面に厚みを貫通した貫通孔13を有しており、第1コイル部11aの貫通孔13と第2コイル部11bの貫通孔13とが対向配置されている。
[0033]
 第1コイル部11a及び第2コイル部11bの間には、粒子分散体1における記録面の面方向が外部磁場Hoの外部磁場方向xと垂直に位置するように配置される。これにより、粒子分散体1には、記録面に対して垂直に外部磁場Hoが印加される。また、本実施形態の場合、粒子分散体1は、第1コイル部11a及び第2コイル部11bの対向する貫通孔13間に配置される。
[0034]
 光照射部12は、磁気記録材料として使用するイプシロン酸化鉄粒子が吸収可能な波長の光L1を照射する。光照射部12から出射される光L1は、連続的なレーザ光の他、パルスレーザ光でもよく、また紫外線(280nm以上400nm未満)又は可視光線(400nm以上780nm以下)でもよい。
[0035]
 光照射部12は、第1コイル部11a及び第2コイル部11bの貫通孔13に向けて光L1を照射し、第1コイル部11aの貫通孔13を介して粒子分散体1の記録面に光L1を照射する。第1コイル部11aの貫通孔13を介して粒子分散体1の記録面に照射された光L1は、記録面を透過し、第2コイル部11bの貫通孔13から外方へと出射される。
[0036]
 このように、記録装置10では、粒子分散体1の記録面に照射された光L1が、そのまま第2コイル部11bの貫通孔13から外方へ通過することで、第1コイル部11a及び第2コイル部11b間での光L1の乱反射が抑制され、照射箇所以外へ光L1の影響が生じることを防止できる。これにより、光照射部12は、粒子分散体1の記録面に対して、記録面の必要箇所にのみ光L1を照射することができる。このように、記録装置10では、磁場印加部11により外部磁場Hoを印加しつつ、外部磁場Hoを印加している粒子分散体1の所定領域に光L1を照射することができる。
[0037]
 なお、図1においては、四辺状の粒子分散体1としているが、例えば、帯状の粒子分散体1を用いてもよい。この場合、外部磁場方向xと直交する所定方向yに、粒子分散体1の長手方向を搬送させることで、粒子分散体1に対して情報の連続的な記録を行うことができる。
[0038]
 (3-2)光を利用した粒子分散体への情報の記録方法の概要
 次に、イプシロン酸化鉄粒子を含む粒子分散体1について情報を記録する記録方法の概要について、粒子分散体1内の磁化3の配向状態も含め、以下説明する。図1のエリアERは、粒子分散体1の一部領域を抜き出した断面構成を示し、断面に磁化3を簡略的に示した模式図である。図1のエリアER内に示すように、外部磁場Hoが印加されていないとき、イプシロン酸化鉄粒子の磁化3は、例えば、磁化方向が外部磁場方向xと逆方向(以下、初期配向方向と称する)x1に配向されている。
[0039]
 次いで、図2に示すように、外部磁場方向xに向けて外部磁場Hoが印加されると、粒子分散体1では、外部磁場Hoが印加された領域ER1における磁化3が、外部磁場Hoの影響を受けて、粒子分散体1の厚さ方向に対して所定角度傾く。本実施形態の場合、磁気記録材料として用いるイプシロン酸化鉄粒子は高い保磁力Hcを有しているため、磁場印加部11により印加される外部磁場Hoのみによっては磁化3を180度反転させることが難しく、磁化3が傾くに留まり、情報を記録することができない。
[0040]
 本実施形態の場合、外部磁場Hoの印加だけでなく、図3に示すように、外部磁場方向xに外部磁場Hoが印加された状態で、粒子分散体1に対して光照射部12から光L1が照射される。光L1の照射領域ER2内において外部磁場Hoにより傾いている磁化3は、光L1によって励起される。このようにして、記録装置10は、外部磁場Hoを印加して磁化3の方向を傾けておき、光L1の照射により磁化3を励起させることで、光L1が磁化反転をアシストし、図4に示すように、磁化方向が初期配向方向x1から180度反転する。
[0041]
 かくして、外部磁場Hoが印加され、かつ光L1が照射された領域ER3内における磁化3は、初期配向方向x1から180度反転した反転方向x2に磁化方向が向き、情報が記録された状態となる。
[0042]
 ここで、外部磁場Hoの印加と光L1の照射とにより磁化3を反転する現象(以下、磁化反転プロセスとも称する)について、図5及び図6を用いてポテンシャルエネルギーの観点から以下説明する。
[0043]
 図5は、外部磁場Hoが印加されておらず、かつ光L1が照射されていないときのエネルギーポテンシャルを示す。図5では、初期配向方向x1に向いている磁化安定位置での磁化方向を0度とし、磁化反転した磁化安定位置での磁化方向を180度として横軸に示す。この場合、エネルギー最小部箇所が0度付近と180度付近に現れており、これら0度と180度との間に磁化反転のエネルギー障壁が現れる。
[0044]
 0度付近の磁化はエネルギー障壁によって反転し得ない。その後、外部磁場Hoが印加されると、図6に示すように、エネルギーポテンシャルが変化し、0度付近のエネルギーポテンシャルが上がるとともに、180度付近のエネルギーポテンシャルが下がり、180度付近にエネルギー最小部箇所が現れる。しかしながら、0度と180度との間に未だ磁化反転のエネルギー障壁が存在しており、0度の磁化方向が維持される。
[0045]
 この状態において、光L1が照射されると、図6に示すように、磁化反転のエネルギー障壁を越えるエネルギーが与えられるために、磁化反転して反転方向x2である180度付近が磁化安定位置となる。
[0046]
 なお、上述した実施形態においては、粒子分散体1に外部磁場Hoを印加しつつ、当該粒子分散体1に光L1を照射するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らない。例えば、粒子分散体1に外部磁場Hoを印加し終えた直後、粒子分散体1内の磁化3が傾いている間に光L1を照射することで、磁化3の反転を光L1でアシストすることができる。
[0047]
 また、上述した実施形態においては、粒子分散体1に対して最初に外部磁場Hoを印加し、外部磁場Hoを印加している粒子分散体1に光L1を照射するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らない。例えば、粒子分散体1に対して最初に光L1を照射し、光L1を照射している粒子分散体1に外部磁場Hoを印加することで、磁化3の反転を外部磁場Hoでアシストするようにしてもよい。このように、外部磁場Hoの印加と光L1の照射の順番を逆にしても、磁化3を反転させる際に必要となる外部磁場Hoの値を下げることができる。
[0048]
 なお、外部磁場Hoの印加と光L1の照射の順番を逆にした場合でも、例えば、粒子分散体1に光L1を照射し終えた直後、粒子分散体1内で磁化3が光励起されている間に外部磁場Hoを印加することで、磁化3の反転を外部磁場Hoでアシストすることもできる。
[0049]
 (3-3)作用及び効果
 以上の構成において、記録装置10では、イプシロン酸化鉄粒子を磁気記録材料として使用した粒子分散体1に情報を記録する際、粒子分散体1に対して、イプシロン酸化鉄粒子の磁化3を傾けさせる外部磁場Hoを印加し、さらに、光L1を照射する。これにより、記録装置10は、磁化3の傾きと磁化3の光励起との相乗効果によって、外部磁場だけでは反転させることができない磁化3を反転させることができる。
[0050]
 このように、記録装置10では、イプシロン酸化鉄粒子を使用した粒子分散体1に光L1を照射することで、光L1を照射しないときよりも、磁化3を反転させる際に必要となる外部磁場Hoの値を下げることができる。よって、高い保磁力Hcを有したイプシロン酸化鉄粒子を使用した粒子分散体1であっても、低い外部磁場Hoにより容易に情報を記録できる。
[0051]
 (3-4)検証試験
 次に、高い保磁力Hcを有したイプシロン酸化鉄粒子を磁気記録材料として用いたフィルム状の粒子分散体を作製し、光を照射することで、磁化反転させる際に必要となる外部磁場Hoを下げることができるか否かの検証試験を行った。ここで、先ずは、次の手順により、ε-Ga 0.27Ti 0.05Co 0.07Fe 1.61の結晶からなるイプシロン酸化鉄粒子を作製した。
[0052]
 (3-4-1)粉末試料
 既知の方法により合成されたε-Ga 0.27Ti 0.05Co 0.07Fe 1.61の結晶からなるイプシロン酸化鉄粒子を、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH:tetramethyl ammonium hydroxide)からなる分散液中に分散させ、遠心分離処理により分級を行い、粒径を揃えた粉末試料を得た。この粉末試料について透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、球状粒子であることが確認できた。
[0053]
 また、この粉末試料の粒径を調べたところ、図7に示すような結果が得られた。図7に示すように、粉末試料の平均粒径は19.2±4.2nmであり、良好な均一粒径分布であることが確認できた。
[0054]
 (3-4-2)粒子分散体の作製
 次に、分級した粉末試料を用いて、検証試験に用いる粒子分散体1を作製した。粒子分散体1の作製には、粒子分散体用の樹脂として、ウレタン樹脂と塩化ビニル樹脂とを混合させた混合物を用意し、この混合物と、分級した粉末試料とを所定溶媒中に分散させた分散液を作製した。次いで、ポリエステルフィルム(単に、フィルムとも称する)に分散液を滴下してゆき、2Tの磁束密度下に置き、分散液を乾燥させることで、分散液が硬化した透明な粒子分散体1を得た。なお、この際、フィルムは、磁束密度が垂直方向にかかるように配置した。
[0055]
 得られた粒子分散体1のX線回析パターンを調べたところ、図8に示すような結果が得られた。図8に示すように、200反射に帰属されるピークが検出された。また、得られた粒子分散体1について配向度を調べたところ、ロットゲーリング値で0.84という高い値であり、優れた配向性を有することが確認できた。
[0056]
 次に、300Kで、外部磁場(H0)を、粒子分散体1の記録面に対して垂直方向に印加して、粒子分散体1の磁気ヒステリシスを測定したところ、図9に示すような結果が得られた。粒子分散体1の保磁力Hcは3.3kOe(2.63×10 A/m)であり、角型ヒステリシス比は0.737という高い値を示した。
[0057]
 次に、粒子分散体1の紫外線及び可視光線の吸収スペクトルを、日本分光株式会社製、紫外可視近赤外分光光度計JASCO V-670を用いて、測定したところ、図10に示すような結果が得られた。図10から、この粒子分散体1は紫外線から波長約600nmの可視光線までの光を吸収することが確認できた。
[0058]
 (3-4-3)超伝導干渉素子計(SQUID)を用いたレーザ光照射実験
 次に、得られた粒子分散体1について、SQUIDを用いたレーザ光照射実験を行った。ここでは、図10にて粒子分散体1が吸収することが確認された波長410nmのCWレーザ光を、光ファイバを用いてSQUIDに導入した。この光ファイバの先端には粒子分散体1を取り付け、CWレーザ光を粒子分散体1に照射可能な構成とした。
[0059]
 先ずは、CWレーザ光を照射する前の300Kにおける粒子分散体1の磁気ヒステリシスを測定したところ、図11A及び図11Bに示すような結果が得られた。図11Bは、図11Aの一部を拡大したものである。図11A及び図11Bでは、CWレーザ光の照射前の測定結果を黒点で示す。図11A及び図11Bでは、一部、白丸で隠れているが、角型の磁気ヒステリシスが測定された。
[0060]
 続いて、外部磁場Hoを+50kOe(+3.98×10 A/m)まで印加した後、+50kOe(+3.98×10 A/m)から-2kOe(-1.59×10 A/m)まで掃引し、-2kOe(-1.59×10 A/m)の外部磁場Hoを印加した状態で波長410nmのCWレーザ光を粒子分散体1に照射した。その結果、図11A及び図11Bに示すように、磁化が減少し始め、磁化が反転したことが確認できた。そして、磁化反転した状態から、外部磁場Hoを-2kOe(-1.59×10 A/m)から-50kOe(-3.98×10 A/m)まで掃引した後、再び外部磁場Hoを上げてゆくと、光照射前とほぼ同じ磁気ヒステリシスが測定された。なお、図11A及び図11B中、白丸は光照射後の測定結果を示す。
[0061]
 以上の結果から、光照射前では、約-4kOe(-3.2×10 A/m)付近の外部磁場Hoで得られる磁化反転が、約-2kOe(-1.59×10 A/m)の外部磁場Hoで得られることが確認できた。よって、外部磁場Hoの絶対値を下げても、光照射を行うことで、CWレーザ光によって磁化反転がアシストされて磁化反転できることが確認できた。以上より、熱アシスト磁気記録(HAMR:Heat Assisted Magnetic Recording)の有効性を、高い保磁力Hcを有したイプシロン酸化鉄粒子を使用した粒子分散体1でも確認することができたと言える。
[0062]
 (3-4-4)ファラデー効果測定装置を用いたレーザ光照射実験
 ここで、粒子分散体1を用いた一般的な記録方式では、粒子分散体1を滑走させながら情報の記録が行われる。このため、粒子分散体1への記録速度も重要となる。例えば、粒子分散体1の滑走速度を考えると、粒子分散体1に20ns以内で情報を記録できることが望まれる。
[0063]
 そこで、ここでは、パルスレーザ光を用いて粒子分散体1の磁化反転の検証試験を行った。パルスレーザ光として、パルス幅が10nsで波長532nmのYAGレーザ光を用い、YAGレーザ光を粒子分散体1に対し照射するようにした。先ず、YAGレーザ光を粒子分散体1に照射し、ファラデー効果測定装置を使用して室温での粒子分散体1におけるファラデー楕円率の波長依存性を調べた。その結果、図12に示すような結果が得られた。
[0064]
 図12から、ファラデー楕円率は波長390nm付近が最も大きいことが確認された。次いで、この波長390nmにおいて、ファラデー楕円率のヒステリシスを測定したところ、図13に示すような結果が得られた。なお、波長390nmではファラデー楕円率の値が負であるため、ヒステリシスは、図13に示すように、SQUIDで測定した図11A及び図11Bの磁気ヒステリシスとはループが上下逆さまの形となる。図14に示すように、ファラデー楕円率のヒステリシスのループ形状は、SQUIDで測定した図11A及び図11Bの磁気ヒステリシスのループ形状とも対応がとれていた。
[0065]
 次いで、外部磁場Hoを+2.5kOe(+1.99×10 A/m)のままとし、8.1mJ/pulseのパルス状のYAGレーザ光を粒子分散体1に照射したところ、粒子分散体1の磁化反転が確認された。これにより、10ナノ秒のパルス光によっても、イプシロン酸化鉄粒子の磁化反転がアシストされ、外部磁場Hoを下げても磁化反転させることができることが確認できた。
[0066]
 次いで、光照射前と同様にして外部磁場Hoを上げた後に再び下げてゆき、ヒステリシスを測定したところ、光照射前のヒステリシスと同様のループに初期化できることが確認できた。
[0067]
 次に、再び、外部磁場Hoを+2.5kOe(+1.99×10 A/m)のままとし、12.7mJ/pulseのパルス状のYAGレーザ光を粒子分散体1に照射したところ、図14に示すように、粒子分散体1の磁化反転が確認された。また、外部磁場Hoを変化させ、光照射前の初期のヒステリシスとし、再び、外部磁場Hoを+2.5kOe(+1.99×10 A/m)のままとし、16.0mJ/pulseのパルス状のYAGレーザ光を粒子分散体1に照射したところ、図15に示すように、粒子分散体1の磁化反転が確認された。
[0068]
 図13、図14及び図15の結果から、1パルスあたりの光強度を上げてゆくと、磁化反転量も増えてゆくことが確認できた。
[0069]
 以上より、上述した実施形態において、磁気記録媒体への情報の記録として、外部磁場の印加と、所定強度の光の照射とにより、粒子分散体1に情報を記録する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、上述した図13、図14及び図15に示すように、外部磁場の印加と光の照射とにより粒子分散体1に情報を記録する際、記録する情報に応じて光の強度を変えてゆき、粒子分散体1に対して多値的(多段階の磁化状態により二値以上の多数の値が識別可能な状態)に情報を記録するようにしてもよい。
[0070]
 (4)再生装置について
 次に、多値的に情報が記録された粒子分散体1の情報を再生可能な再生装置について以下説明する。図16に示すように、再生装置15は、検出部16と情報再生部17と表示部18とを備えている。検出部16は、例えば、磁気ヘッドであり、粒子分散体1の記録面に近接又は接触して配置される。検出部16は、粒子分散体1上を走査し、粒子分散体1の磁化を検出して、得られた検出結果を情報再生部17に出力する。
[0071]
 情報再生部17は、粒子分散体1から検出した磁化の強度に基づいて、磁化の強度に応じた情報を再生し、表示部18に表示させる。ここで、光を照射するとともに、外部磁場を印加して粒子分散体1に情報を記録する際、光の強度を小さくした場合、磁化反転量もそれにともない小さくなる。その結果、再生装置15による再生時、粒子分散体1から検出される磁化の強度も小さくなる。
[0072]
 一方、光を照射するとともに、外部磁場を印加して粒子分散体1に情報を記録する際、光の強度を大きくした場合、磁化反転量もそれにともない大きくなる。その結果、再生装置15による再生時、粒子分散体1から検出される磁化の強度も大きくなる。
[0073]
 このように、粒子分散体1への情報記録時に光の強度を調整することで、粒子分散体1に対して多値的な情報の記録を行える。また、外部磁場と光とで情報を記録する際に、光の強度を変えて粒子分散体1に多値的に情報が記録されていても、再生装置15によって粒子分散体1の磁化を検出することで、検出時の磁化の強度の違いから多値的な情報を再生できる。
[0074]
 (5)テラヘルツ光を利用した高速応答素子
 (5-1)テラヘルツ光を利用した本発明による高速応答素子の構成
 上述した実施形態においては、光に応答し磁化3が反転する場合について述べたが、ここでは、テラヘルツ光を用いて磁化を高速に応答させる高速応答素子について説明する。
[0075]
 本発明において、磁性材料として使用するイプシロン酸化鉄粒子は、磁化の共鳴現象により、ミリ波(30~300GHz)領域のテラヘルツ光を吸収可能である。イプシロン酸化鉄粒子はテラヘルツ光を照射することで、磁化の高速運動が誘起される。
[0076]
 図17は、テラヘルツ光の照射に応じて磁化状態が高速に応答する高速応答素子25を示す。高速応答素子25は、図17に示すように、例えば、テラヘルツ光が照射されていないとき、初期配向方向x1に磁化3が向いている。図18に示すように、高速応答素子25は、テラヘルツ光L2が照射されると、テラヘルツ光L2が照射された領域ER2における磁化3の歳差運動が誘起され、磁化状態が変化する。
[0077]
 このような、磁化状態の変化は、テラヘルツ光L2が照射されているタイミングに合わせて生じる。具体的には、テラヘルツ光L2が高速応答素子25に対して照射され始めた直後に、磁化3の歳差運動が誘起され、即座に磁化状態が変化し始める。また、高速応答素子25に対するテラヘルツ光L2の照射が終了すると、即座に磁化3が歳差運動しなくなり、磁化状態が初期状態に戻る。
[0078]
 以上の構成において、この高速応答素子25では、イプシロン酸化鉄粒子を含み、テラヘルツ光L2が照射されたタイミングに合わせて磁化状態が応答する。よって、高速応答素子25は、テラヘルツ光L2が照射タイミングに合わせて磁化状態が高速に応答するため、高速応答を必要とする種々の回路素子に適用することができる。なお、ここでは、テラヘルツ光としては、パルス状のテラヘルツ光(以下、パルステラヘルツ光と称する)の他、高速応答素子25に連続的に照射されるテラヘルツ光であってもよい。
[0079]
 (5-2)パルステラヘルツ光の照射による磁化の応答性に関する検証試験
 次に、高速応答素子25に対してパルステラヘルツ光L2を照射した際に、パルステラヘルツ光L2に対する磁化の応答性について調べた。この検証試験では、ε-Fe の結晶からなるイプシロン酸化鉄粒子を磁気材料として用い、上述した「(2)イプシロン酸化鉄粒子を含んだ粒子分散体」と同じ手順で高速応答素子25を作製した。
[0080]
 また、この検証試験では、図19に示すように、高速応答素子25の一面に向けてパルステラヘルツ光L2を照射するようにした。なお、高速応答素子25に照射するパルステラヘルツ光L2は、パルス状の信号S1とした。
[0081]
 ここでは、パルステラヘルツ光L2として、高強度のパルステラヘルツ光L2を用い、磁化の応答についてファラデー効果測定装置を使用して観測した。測定に用いたパルステラヘルツ光L2は、最大でピーク振幅が400kV/cmであった。
[0082]
 図20に示すように、パルステラヘルツ光L2の照射方向とは逆向きに磁化が向くように高速応答素子31aを設置した場合と、パルステラヘルツ光L2の照射方向に磁化が向くように高速応答素子31bを設置した場合について、それぞれファラデー回転角を調べた。具体的には、テラヘルツ励起・光ファラデー検出によるポンププローブ法により、ファラデー回転角の高速分光測定を行った。
[0083]
 図20に示すように、パルステラヘルツ光L2の照射時間の原点において、いずれの場合においても大きなピークが現れ、ファラデー回転角が大きく変化することが確認でき、磁化の高速応答が観測された。このような変化は、パルステラヘルツ光L2の磁場成分によって、配向した磁化が、高速応答素子31a、31bの厚さ方向に対して少し倒れることにより、高速応答素子31、31baの厚さ方向での磁化の減少を検出したものである。また、磁化の向きを変えることで、現れる信号S2、S3が正負逆になることも確認された。
[0084]
 次に、パルステラヘルツ光L2の信号S1と、パルステラヘルツ光L2の電場を二乗した信号S4と、このとき得られた高速応答素子31aのファラデー信号S5と、高速応答素子31bのファラデー信号S6とを時間軸で並べたところ、図21に示すような結果が得られた。
[0085]
 ファラデー信号S5、S6は磁気モーメントが傾くことにより、垂直方向(高速応答素子31a、31bにおける照射面の面方向)での磁化の大きさが減少するものであり、パルステラヘルツ光L2のパルス幅と同等の時間で生じていることが確認できた。また、磁化の減少の緩和時間も速く、磁化の減少と同等の時間である数100フェムト秒(ファラデー信号S5、S6の最大ピークから戻るまで400fs)で磁化が回復することも分かった。かくして、パルステラヘルツ光L2に対して高速に応答して垂直方向における磁化の増減を誘起させることができることが確認できた。
[0086]
 (6)他の実施形態
 なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、磁気記録媒体として粒子分散体を適用して説明したが、例えば、磁気テープや、磁気ディスク等の種々の磁気記録媒体を適用してもよい。
[0087]
 また、上述した実施形態においては、電流を流すことで外部磁場Hoを発生させる第1コイル部11a及び第2コイル部11bからなる磁場印加部11を適用したが、本発明はこれに限らず、磁石等を磁場印加部としてもよい。さらに、電磁波は、磁気記録媒体の記録面に対して垂直に照射する必要はなく、種々の角度から照射するようにしてもよい。
[0088]
 また、上述した実施形態においては、磁気記録媒体に対して、外部磁場の印加と、光の照射とを行う順番として、外部磁場を印加した後に光を照射する場合と、光を照射した後に外部磁場を印加する場合とについて説明したが、本発明はこれに限らず、外部磁場の印加と、光の照射とを同時に行ってもよい。

符号の説明

[0089]
 1 粒子分散体(磁気記録媒体)
 10 記録装置
 11 磁場印加部
 12 光照射部
 15 再生装置
 16 検出部
 17 情報再生部

請求の範囲

[請求項1]
 イプシロン酸化鉄粒子を磁気記録材料として使用した磁気記録媒体に対して、外部磁場の印加と、光の照射と、を行うことで、前記イプシロン酸化鉄粒子の磁化を反転させる、記録方法。
[請求項2]
 前記磁気記録媒体に前記外部磁場を印加した後、前記光を照射する、請求項1に記載の記録方法。
[請求項3]
 前記磁気記録媒体に前記光を照射した後、前記外部磁場を印加する、請求項1に記載の記録方法。
[請求項4]
 前記光は、前記イプシロン酸化鉄粒子が有する吸収スペクトル内の波長である、請求項1~3のいずれか1項に記載の記録方法。
[請求項5]
 記録する情報に応じて前記光の強度を変え、前記磁気記録媒体に対して多値的に情報を記録する、請求項1~4のいずれか1項に記載の記録方法。
[請求項6]
 イプシロン酸化鉄粒子を含む磁気記録媒体に、外部磁場を印加する磁場印加部と、
 前記磁気記録媒体に、光を照射する光照射部と、を備え、
 前記外部磁場と前記光とにより前記イプシロン酸化鉄粒子の磁化を反転させる、記録装置。
[請求項7]
 前記磁場印加部は、前記磁気記録媒体の記録面と対向配置される対向面に厚みを貫通する貫通孔を備え、
 前記光照射部は、前記貫通孔を通して前記磁気記録媒体に前記光を照射する、請求項6に記載の記録装置。
[請求項8]
 イプシロン酸化鉄粒子を磁気記録材料として使用し、かつ多値的に情報が記録可能な磁気記録媒体について、前記磁気記録媒体の磁化を検出し、前記磁気記録媒体から検出した前記磁化の強度に基づいて、前記磁化の強度に応じた情報を再生する、再生方法。
[請求項9]
 イプシロン酸化鉄粒子を磁気記録材料として使用し、かつ多値的に情報が記録可能な磁気記録媒体について、前記磁気記録媒体の磁化を検出する検出部と、
 前記磁気記録媒体から検出した前記磁化の強度に基づいて、前記磁化の強度に応じた情報を再生する情報再生部と、を備える、再生装置。
[請求項10]
 イプシロン酸化鉄粒子を含み、テラヘルツ光が照射されたタイミングに合わせて磁化状態が応答する、高速応答素子。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]

[ 図 20]

[ 図 21]