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1. WO2013015152 - TECHNIQUE FOR CLEAVING OUT PART OF poly(A) CHAIN AND/OR 3'-TERMINAL SEQUENCE OF mRNA TO INHIBIT TRANSLATION REACTION

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明 細 書

発明の名称 mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断し、翻訳反応を抑制する技術

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

非特許文献

0006  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0007  

課題を解決するための手段

0008   0009  

発明の効果

0010   0011  

図面の簡単な説明

0012  

発明を実施するための形態

0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030  

実施例

0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066  

産業上の利用可能性

0067   0068  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12  

明 細 書

発明の名称 : mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断し、翻訳反応を抑制する技術

技術分野

[0001]
 本発明は、標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断し、標的遺伝子の翻訳反応を抑制する技術に関する。

背景技術

[0002]
 遺伝子発現を人為的に制限する方法としては、RNAi法(特許文献1、非特許文献1)、リボザイム法(特許文献2、3、非特許文献2)及びアンチセンス法(特許文献4、5、非特許文献3)がある。RNAi法やリボザイム法は、標的mRNAと特異的に結合する核酸等により標的mRNAの特異的分解を誘導することで、遺伝子発現を抑制する方法である。アンチセンス法は、標的mRNAと特異的に結合する核酸等により標的mRNAと二重鎖を形成させることにより、翻訳反応阻害や正常なスプライシング反応の阻害を誘導することにより遺伝子発現を抑制する方法である。
[0003]
 RNAi法やリボザイム法は、標的mRNA内の数十塩基からなる特異配列(標的配列)を介してmRNAの切断を誘導する活性に依存した方法である。mRNAの長さは普通1000塩基以上なので、目的の効果が得られる標的配列を選択しなければならない。ソフトウエアー等があるが実質的ではなく、現状では、複数個所を標的として予備実験し、その中から効果のある標的配列を選択している。
[0004]
 一方、アンチセンス法では、標的配列は翻訳開始コドン周辺とスプライシングジャンクション部位と限定されているものの、前者ではアンチセンス効果をmRNAレベルで検出できないため効果の判定を確認することが煩雑である。また、後者ではmRNAレベルで効果を検出できるものの、機能を喪失したタンパク質か否かの評価は難しい。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特開2009-291209
特許文献2 : WO92/03456
特許文献3 : 特許第2708960号
特許文献4 : WO88/04300A1
特許文献5 : 特許第2530906号

非特許文献

[0006]
非特許文献1 : Nature. 2009 Jan 22;457(7228):396-404.On the road to reading the RNA-interference code.Siomi H, Siomi MC.
非特許文献2 : Chem Senses. 1998 Apr;23(2):249-55.Current status of antisense DNA methods in behavioral studies.Ogawa S, Pfaff DW.
非特許文献3 : Trends Genet. 1996 Dec;12(12):510-5.Anti-gene therapy: the use of ribozymes to inhibit gene function.Couture LA, Stinchcomb DT.

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0007]
 本発明は、従来法(RNAi法・リボザイム法・アンチセンス法)よりも設計が簡便で、かつ効果の確認も容易な人為的遺伝子発現抑制方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0008]
 本発明者らは、mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を選択的に削除することにより翻訳反応を阻害するができ、これにより特異的な遺伝子発現抑制効果を達成することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
[0009]
 本発明の要旨は以下の通りである。
(1)標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断することを含む、標的遺伝子の翻訳反応を抑制する方法。
(2)標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部にハイブリダイズできるリボ核酸を用いて、標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断する(1)記載の方法。
(3)リボ核酸が、標的mRNAのpoly(A)鎖結合部位から上流40ヌクレオチドまでの領域の配列の全部又は一部に相補的なヌクレオチド配列からなる(2)記載の方法。
(4)標的mRNAのpoly(A)鎖結合部位から上流40ヌクレオチドまでの領域の配列の全部又は一部が、ポリAシグナル配列の全部又は一部を含む(3)記載の方法。
(5)リボ核酸が、20~25merである(3)又は(4)記載の方法。
(6)リボ核酸が天然型のヌクレオチドからなる(2)~(5)のいずれかに記載の方法。
(7)リボ核酸が二本鎖RNAである(6)記載の方法。
(8)リボ核酸が少なくとも1個のヌクレオチド類似体を含む(2)~(5)のいずれかに記載の方法。
(9)リボ核酸が一本鎖である(8)記載の方法。
(10)一本鎖リボ核酸がアンチセンスモルフォリノオリゴヌクレオチドである(9)記載の方法。
(11)標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断することができる試薬を含む、標的遺伝子の翻訳反応を抑制するためのキット。
(12)標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断することができる試薬がリボ核酸である(11)記載のキット。
(13)標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断することができる試薬が導入され、標的遺伝子の翻訳反応が抑制された細胞。
(14)標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断することができる試薬が導入され、標的遺伝子の翻訳反応が抑制された非ヒト生物。

発明の効果

[0010]
 本発明により、標的配列決定が簡便な遺伝子発現抑制が可能となった。また、遺伝子発現抑制の効果の評価をmRNAレベルで行えるため、効果の評価が容易となった。
[0011]
 さらに、本発明により、同一遺伝子から選択的スプライシング反応で作成される複数のmRNAの翻訳反応を同時または選択的に抑制することが可能となった。
 本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願2011‐160512の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。

図面の簡単な説明

[0012]
[図1] cdk9 MO(モルフォリノオリゴヌクレオチド)の注入では初期胚におけるzcdk9 mRNA のpoly(A)鎖伸長と翻訳は阻害されるが、cdk9m MOの注入ではそれらは生じない。 (A)MOがハイブリダイズするzcdk9 mRNA 3'UTR内の標的配列。 (B) cdk9 MOを注入した胚におけるzcdk9 mRNAのpoly(A)鎖の伸長阻害。 胚は表記されているそれぞれの時間で回収した。全RNAは未処理胚(WT)、cdk9 MO注入胚およびcdk9m MO注入胚から抽出した。PATアッセイはcdk9、 tbp、 cyclin B1、およびcyclin B2のPAT用primerを用いて行った。PCR産物は 2.2% のアガロースゲル電気泳動で解析した。右側、塩基長で示された長さのマーカー。 (C) cdk9 MOによるzcdk9 mRNAの特異的翻訳阻害。 cdk9 MOでは生じない。胚は表記されているそれぞれの時間で回収した。ウエスタンブロットは未処理胚(レーン1、4、7、10)、cdk9 MO注入胚(レーン2、5、8、11)およびcdk9m MO注入胚(レーン3、6、9、12)において図中に示された抗体で実施した。HeLa細胞の核抽出液(NE)(レーン13)はポジティブコントロールである。(D) cdk9 MOおよびcdk9m MOの注入された胚は受精後3時間、4時間および5時間で回収された。それらの胚抽出液((C)で用いたもの)はウエスタンブロット法で解析された。(EとF) random primer (E)とoligo-dT primer(F)を用いた逆転写と、その後実施したcdk9、biklf、tbp、およびactinのそれぞれのprimerを用いたPCR。産物は 2.2%アガロースゲルで解析された。 胚は表記されているそれぞれの時間で回収した。全RNAは未処理胚(WT、レーン1から3)、cdk9 MO注入胚(cdk9 MO、レーン4から6)およびcdk9m MO注入胚(cdk9m MO、レーン7から9)から抽出した。
[図2] zcdk9 3'UTRの末端から40ヌクレオチドはzcdk9 mRNAの発現抑制において重要である。 (A) zcdk9 mRNA 3'UTRの末端配列とアンチセンスMOがハイブリダイズする位置。本発明者らはpoly(A)鎖が連結している塩基を-1と定義し、番号を振った。全RNAは未処理胚(WT)、cdk9 MO注入胚およびcdk9m MO注入胚から抽出した。(B) cdk9 MO、 MO-5、MO-6およびMO-7の注入によるzcdk9 mRNA の十分な発現抑制。MOが注入された胚 (レーン 2 から8) あるいは未処理胚 (レーン1) は受精後3時間で回収され全RNAが抽出された。そして、cdk9 と tbpのPAT primerでPATアッセイを実施した。(C) それぞれの表記されたMOが注入された受精後5時間からの胚からの抽出液(レーン2から8)および未処理胚抽出液(レーン1)は7.5% SDS-ポリアクリルアミドゲルで解析された。ブロットでは抗zCdk9抗体、抗ヒトCdk9抗体(H-169)および抗actin抗体を用いた。 HeLa細胞核抽出液(NE)はポジティブコントロールとして使用した(レーン9)。
[図3] mRNA 3’ UTR末端配列の決定。(A) 本研究で採用したmRNA 3’UTR末端配列を決定する方法を図解した。(B) PCR産物はエチジウムブロマイド染色で可視化した。(C)それぞれのMO注入胚に由来するcDNAのDNAシークエンス結果。5クローンを選択しその3’末端配列を記載した。垂線はmRNAのpoly(A)鎖連結部位を表している。その連結部位の情報はNCBI nucleotide database (NM_212591.1.)より取得した。
[図4] MOによるpoly(A)鎖伸長阻害の特異性。(A) cyclin B1とcyclin B2 MOの配列。 (B) 全RNAはそれぞれの表記されたMOが注入された受精後5時間の胚(レーン2から4)および未処理胚(レーン1)から抽出した。PATアッセイをcdk9、cyclin Bおよびcyclin B2のPAT primerを用いて実施した。actin primer set によるPATアッセイも行った(actin)。 PCR産物は2.2%アガロースゲルで解析した。右側、塩基長で示された長さのマーカー。(C) 全RNAはそれぞれの表記されたMOが注入された受精後5時間の胚(レーン1から5)および未処理胚(レーン6)から抽出した。PATアッセイをcdk9、tbpおよびcyclin B1のPAT primerを用いて実施した。PCR産物は2.2%アガロースゲルで解析した。右側、塩基長で示された長さのマーカー。
[図5] zcdk9 3'UTRを標的とするzcdk9 mRNAの発現抑制の検討。(A) zcdk9 mRNA の3'UTR末端配列とアンチセンスMOがハイブリッド結合する部分。本発明者らは poly(A)鎖が連結している塩基を-1と定義し、図に示されたように数字を振った。(B) cdk9 MOのみがzcdk9 mRNAのpoly(A)鎖伸長に影響を与えた。それぞれのMOが注入された胚 (レーン1から5)あるいは未処理胚(レーン6)は受精後3時間で回収された。全RNAがそれぞれの胚から単離された。cdk9とtbpのPAT primerによりPATアッセイを実施し、PCR産物を2.2%アガロースゲルで解析した。右側、塩基長で示された長さのマーカー。(C) cdk9 MOのみzcdk9 のmRNAの翻訳を阻害した。胚は受精後5時間で回収された。ウエスタンブロット解析が、それぞれの胚抽出液で実施された。HeLa細胞核抽出液 (NE)はポジティブコントロールとして扱われた (レーン7)。抗zCdk9抗体と抗actin抗体を用いた。
[図6] MOのpoly(A)鎖短小化に対する特異的効果。(A) 図中に示されたそれぞれのmRNA 3'UTRの配列情報とアンチセンスMOがハイブリダイズする位置。 (B) PATアッセイで検出したMOが仲介するpoly(A)鎖伸長阻害。胚は図中に示された時間で回収した。全RNAは未処理胚 (WT、レーン21から24)、cdk9 MO注入胚(レーン1から4)、cdk9m MO注入胚(レーン5から8)、tbp MO注入胚(レーン9から12)、cyclin B1 MO注入胚(レーン13から16)、およびcyclin B2 MO注入胚(レーン17 から20)。PATアッセイは cdk9、tbp、cyclin B1と cyclin B2の PAT primerを用いて行った。oligo dTは逆転写反応でoligo dT primerを用いたことを示している。tbp randomとactin random はそれぞれ、逆転写反応でrandom primerを使用し、その後のPCR反応で tbpあるいはactinのPCR用primerセットを用いたことを示している。 PCR産物は2.2%アガロースゲルで解析された。
[図7] MOのハイブリダイゼーション後にmRNAの 3’ UTR末端配列が決定される仮想モデル。(A) mRNA の3’ UTR へのMOへのハイブリダイゼーションによりpoly(A)鎖短小化は活性化される。poly(A) 鎖短小化酵素によりpoly(A)鎖が取り除かれたのち、 エキソヌクレアーゼが3’UTRの末端配列を削るのかもしれない。このモデルでは、MO-mRNA 間のハイブリッドはさらなるエキソヌクレアーゼの侵入を阻害する。(B) MOとmRNA間のハイブリッドを認識するエンドヌクレアーゼがハイブリッド部分から下流のところでmRNAを切断する。
[図8] HeLa細胞において、mRNAの3’UTRを標的としたsiRNAにより、標的遺伝子mRNAのpoly(A)鎖の切断が誘導される。oligo-dT primerを用いた逆転写反応と、その後実施したRelA、Bcl-xL、Livin、PLK1およびActinのそれぞれのprimerを用いたPCR。産物は 2.0%アガロースゲルで解析された。全RNAはsiRNA導入から24時間後の細胞から抽出した。n/cはネガティブコントロールsiRNAを導入したものである。
[図9] HeLa細胞において、mRNAの3’UTRを標的としたsiRNAにより、標的遺伝子mRNAの分解が誘導される。random primerを用いた逆転写反応と、その後実施したRelA、Bcl-xL、Livin、PLK1およびActinのそれぞれのprimerを用いたPCR。産物は 2.0%アガロースゲルで解析された。全RNAはsiRNA導入から24時間後の細胞から抽出した。n/cはネガティブコントロールsiRNAを導入したものである。
[図10] HeLa細胞において、mRNAの3’UTRを標的としたsiRNAにより、標的遺伝子の翻訳阻害が特異的に誘導される。各siRNA導入から24時間後の細胞の抽出液を図中に示された抗体でウエスタンブロット法により解析した。n/cはネガティブコントロールsiRNAを導入したものである。
[図11] HeLa細胞において、tPA mRNAの3’UTRを標的としたsiRNAにより、tPA mRNAのpoly(A)鎖の切断およびmRNA自身の分解が誘導される。oligo-dT primer(上段)またはrandom primer(下段)を用いた逆転写反応と、その後実施したtPAおよびActinのそれぞれのprimerを用いたPCR。産物は 2.0%アガロースゲルで解析された。細胞は表記されているそれぞれの濃度のPMAで24時間処理した。全RNAはsiRNA導入から24時間後の細胞から抽出した。n/cはネガティブコントロールsiRNAを導入したものである。
[図12] RelA、Bcl-xL、Livin、PLK1およびtPAのそれぞれの mRNA 3'UTRの末端配列情報と実験で使用したsiRNAの標的配列(下線部分)。

発明を実施するための形態

[0013]
 以下、本発明の実施の形態についてより詳細に説明する。
[0014]
 本発明は、標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断することを含む、標的遺伝子の翻訳反応を抑制する方法を提供する。
[0015]
 翻訳反応を抑制する標的遺伝子は、いかなる遺伝子であってもよく、酵素遺伝子、癌関連遺伝子、免疫関連遺伝子、分化関連遺伝子、神経関連遺伝子、DNA修復遺伝子、疾患関連遺伝子などを例示することができるが、これらに限定されることはない。また、機能が知られていない遺伝子であってもよい。
[0016]
 標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断するには、標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部にハイブリダイズできるリボ核酸を用いるとよい。
[0017]
 標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部にハイブリダイズできるリボ核酸は、標的mRNAのpoly(A)鎖結合部位から上流45ヌクレオチドまでの領域の配列の全部又は一部に相補的なヌクレオチド配列からなるとよく、標的mRNAのpoly(A)鎖結合部位から上流40ヌクレオチドまでの領域の配列の全部又は一部に相補的なヌクレオチド配列からなることが好ましい。
[0018]
 また、標的mRNAのpoly(A)鎖結合部位から上流40ヌクレオチドまでの領域の配列の全部又は一部は、ポリAシグナル配列の全部又は一部を含んでもよい。
[0019]
 標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部にハイブリダイズできるリボ核酸は、20~25merであるとよい。リボ核酸が天然型のヌクレオチド(例えば、二本鎖RNA)であってもよいし、少なくとも1個のヌクレオチド類似体を含むものであってもよい。天然型のヌクレオチドとしては、二本鎖RNA、DNA、DNA-RNAキメラなどを例示することができる。少なくとも1個のヌクレオチド類似体を含むリボ核酸は、一本鎖であるとよく、アンチセンスモルフォリノオリゴヌクレオチド、Sオリゴ、2'-O-methyl化RNA、2'-F-RNA、BNA(LNA)オリゴなどを例示することができる。リボ核酸は、遺伝子工学的な手法、化学合成法などの公知の方法で作製することができる。
[0020]
 本発明の翻訳反応抑制方法は、in vitro(細胞、あるいは非細胞系)又はin vivo(生物)において行うことができる。
[0021]
 本発明の翻訳反応抑制方法により、細胞、ヒト及び非ヒト生物における遺伝子発現を抑制することができる。本発明の翻訳反応抑制方法を利用することにより、例えば、がん原因遺伝子の選択的発現抑制によるがん治療、免疫反応に関与する遺伝子の特異的発現抑制によるアレルギー反応の緩和、細胞分化に関与する遺伝子の特異的発現抑制による分化制御、神経興奮伝達に関する遺伝子の特異的発現抑制による向精神薬の開発が可能となる。
[0022]
 また、本発明は、標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断することができる試薬を含む、標的遺伝子の翻訳反応を抑制するためのキットを提供する。標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断することができる試薬はリボ核酸であるとよい。リボ核酸は、標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部にハイブリダイズできるものであるとよく、このようなリボ核酸については上述した。本発明のキットは、細胞、ヒト及び非ヒト生物における遺伝子発現の抑制に用いることができる。本発明のキットは、さらに、トランスフェクション試薬、コントロール用試薬(例えば、ネガティブコントロールのリボ核酸、ポジティブコントロールのリボ核酸)、ポジティブコントロールを検出するための試薬(例えば、ポジティブコントロールが標的とするタンパク質に対する抗体、そのタンパク質のmRNAの発現を検出できるプライマーなど)などの他の試薬、マニュアルなどを含んでもよい。
[0023]
 さらに、本発明は、標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断することができる試薬が導入され、標的遺伝子の翻訳反応が抑制された細胞を提供する。本発明の細胞では、標的遺伝子の発現が抑制されうる。
[0024]
 標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断することができる試薬はリボ核酸であるとよい。リボ核酸は、標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部にハイブリダイズできるものであるとよく、このようなリボ核酸については上述した。
[0025]
 標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断することができる試薬を細胞に導入するには、この試薬がリボ核酸である場合、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、遺伝子銃による方法、アグロバクテリウム法、ウイルスベクター法などのいかなる遺伝子導入法を用いてもよい。標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断することができるリボ核酸は、直接細胞内に導入してもよいし、公知のベクター系を利用して細胞内に発現させてもよい。
[0026]
 標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断することができる試薬が導入される細胞は、標的遺伝子を有するものであればよく、分化・未分化を問わず、体細胞であっても、生殖細胞であってもよく、不死化したもの、形質転換したものであってもよい。胚(ヒト又はヒト以外の生物由来)、癌細胞、免疫細胞、神経細胞、生殖細胞、幹細胞などを例示することができる。細胞は、魚類(ゼブラフィッシュなど)、哺乳類(ヒトの他、マウス、ラット、ハムスター、サル、ウシ、ヤギ、ブタ、ヒツジ、イヌなどヒト以外の哺乳類)、鳥類(ニワトリなど)、昆虫類(ショウジョウバエなど)、棘皮動物(ウニ、ヒトデ、ナマコなど)、線虫、アフリカツメガエルなどのカエルなどの動物;双子葉植物(シロイズナズナ、タバコ、ワタなど)、単子葉植物(イネ、トウモロコシ、オオムギ、コムギなど)などの植物;大腸菌、枯草菌などの細菌;カビ、酵母などの真菌などのいずれの生物に由来するものであってもよい。
[0027]
 さらにまた、本発明は、標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断することができる試薬が導入され、翻訳反応が抑制された非ヒト生物を提供する。本発明の非ヒト生物では、標的遺伝子の発現が抑制されうる。
[0028]
 標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断することができる試薬はリボ核酸であるとよい。リボ核酸は、標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部にハイブリダイズできるものであるとよく、このようなリボ核酸については上述した。
[0029]
 標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断することができる試薬を生物に導入するには、この試薬がリボ核酸である場合、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、遺伝子銃による方法、アグロバクテリウム法、ウイルスベクター法などのいかなる遺伝子導入法を用いてもよい。標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断することができるリボ核酸は、直接生物内に導入してもよいし、公知のベクター系を利用して生物内に発現させてもよい。
[0030]
 標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断することができる試薬が導入される非ヒト生物は、標的遺伝子を有するものであればよく、魚類(ゼブラフィッシュなど)、哺乳類(マウス、ラット、ハムスター、サル、ウシ、ヤギ、ブタ、ヒツジ、イヌなどヒト以外の哺乳類)、鳥類(ニワトリなど)、昆虫類(ショウジョウバエなど)、棘皮動物(ウニ、ヒトデ、ナマコなど)、線虫、アフリカツメガエルなどのカエルなどの動物;双子葉植物(シロイズナズナ、タバコ、ワタなど)、単子葉植物(イネ、トウモロコシ、オオムギ、コムギなど)などの植物;大腸菌、枯草菌などの細菌;カビ、酵母などの真菌などのいずれの生物であってもよい。
実施例
[0031]
 以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[0032]
〔実施例1〕
母性mRNAのpoly(A)鎖連結部位上流を標的にしたアンチセンスモルフォリノがpoly(A)鎖を取り除き翻訳を阻害する証拠
概略
 アンチセンスモルフォリノオリゴヌクレオチド(MO)による遺伝子発現抑制は、翻訳開始部位周辺とハイブリダイゼーションさせるかスプライスドナー部位を標的にして達成される。本実施例では、母性mRNAの3’非翻訳領域(UTR)のpoly(A)鎖結合部位から上流40ヌクレオチドに対する25merのMOを用いるアンチセンス法を紹介する。本発明者らは、MOがzcdk9 mRNAのpoly(A)鎖を取り除き翻訳反応を阻害することを見出し、これはmiRNAとMOの機能的類似点を示すものである。PCRを基本としたアッセイ法で、ゼブラフィッシュcdk9や tbp、 cyclin B1 と cyclin B2のmRNAが特異的なMO依存的poly(A)鎖伸長阻害を受けることを検出した。よってここで紹介したアンチセンス法は、MOがmRNAの制御においてmiRNA様の活性を有していることを明らかにするとともに、動物の卵母細胞や初期胚における母性mRNAの発現抑制に応用できることを示している。
[0033]
序文
 遺伝子発現を抑制するための古典的なアンチセンス法では、1本鎖(ss)DNAが相補的な塩基対を介したDNA-RNAの2重鎖形成により生体内で誘導される標的mRNAのRNase Hによる切断を介した活性を利用する。しかしながら、ssDNAを効率的に分解するエンドヌクレアーゼが生体内に存在することから、ssDNAによるアンチセンス活性は減弱されてしまう。この問題点を回避するためにモルフォリノオリゴヌクレオチド(MO)はエンドヌクレアーゼ耐性を有しているので頻繁に使用されている。アンチセンスssDNAが標的mRNAの分解によって遺伝子発現抑制を誘導するが、MOはmRNAのRNase H依存的切断を仲介するわけではない。すなわち、MOとmRNA間の2重鎖形成は、mRNAの翻訳開始点近傍へのMOのハイブリダイゼーションにより翻訳を阻害する場合や、スプライスドナー部位と2重鎖を形成することによって正確なスプライシングを妨害する。両者において、アンチセンスMOは 遺伝子発現抑制のための非常に有効な手段として用いられるが、遺伝子発現に対するMO依存的な特異的阻害効果を簡単に確認することは困難である。
[0034]
 ここには、遺伝子発現抑制制御のための新規方法を記載した。有効性と特異性は、ゼブラフィッシュcdk9や tbp、 cyclin B1 と cyclin B2の母性mRNAを標的にして確認された。この方法の鍵となる性質は、1)mRNAの3’UTRとMOが2重鎖を形成することによりpoly(A)鎖伸長を阻害するばかりでなくpoly(A)鎖を削る活性を見出したこと、2)この方法はmRNAの翻訳停止を誘導する活性を有することである。重要なポイントは、3’UTRを標的にしたMOがpoly(A)鎖短小化と翻訳阻害を同時に誘導するmiRNAのように振舞うことであろう。
[0035]
材料と方法
・合成
 DNAとモルフォリノオリゴヌクレオチドはオペロンとGene Tools社でそれぞれ合成された。
・胚
 全てのゼブラフィッシュと胚は28℃で飼育された。
・MOの微量注入
 野生型胚には1か2細胞ステージで約2.5 pmolのMOが注入された。この研究で用いたMOを以下に示す。
[0036]
アンチセンスモルフォリノオリゴヌクレオチド
cdk9 MO:GGAAATGTGAAGGATTTATAGGTGT (配列番号1)
cdk9 MO-2:ATTTATACTTATACAAGTAACAAAC(配列番号2)
cdk9 MO-3:ACCATGACCCCGAACACGTGATCTT(配列番号3)
cdk9 MO-4:ACAAATAAAAACATCTTTAAAAATA(配列番号4)
cdk9 MO-5:TGTGAAGGATTTATTGGTGTATTTA(配列番号5)
cdk9 MO-6:AGGATTTATTGGTGTATTTATACTT(配列番号6)
cdk9 MO-7:TTATTGGTGTATTTATACTTATACA(配列番号7)
cdk9 MO-8:GGTGTATTTATACTTATACAAGTAA(配列番号8)
cdk9m MO:GGTAATATGAACGATGTATAGGTGT(配列番号9)
 2つのMOの混合物を検討する際は、それぞれの1.25 pmolを胚に注入した。
[0037]
・胚抽出液の調製
 10個の回収した胚は、液体窒素で凍らせた後、200 μl の RIPA buffer (150 mM NaCl, 1% NP-40, 0.5% deoxycholate, 0.1% sodium dodecyl sulfate, 50 mM Tris-HCl [pH 8.0])に溶かした。十分な超音波処理後、上清100 μlは1分間の遠心分離(12,000g)で回収され、そこに40 μl の 4× Laemmli サンプルバッファーを添加した。ウエスタンブロット解析においては、14 μlのサンプル(1個の胚の半分に相当)を解析した。
[0038]
・胚由来の全RNAの精製
 全RNAは、Sepasol-RNA I super (Nacalai Tesque)により胚から調製された。
[0039]
Poly(A)テストアッセイ(PAT)
 PATアッセイは、微細な修正を加えたものの基本的には文献10に従った。全RNA(300 ng)は65℃で5分間、12- から 18-merのpoly (dT)からなるリン酸化oligo (dT) プライマー混合液存在下でインキュベーションした。T4 DNA ligase (350 U) (TAKARA Bio)と1時間42°Cでインキュベーションしたのち、サンプルは200 ng の(dT) 12-anchor primer (5'-GCGAGCTCCGCGGCCGCGTTTTTTTTTTTT-3'(配列番号10)) で 12°C 、1 時間インキュベーションし、さらに1時間42℃で SuperScript III 逆転写酵素(200 U) (GE Healthcare)とインキュベーションすることでPAT cDNAを得た。最後に、 (dT) 12-anchor primerとそれぞれの遺伝子特異的なprimerでPCRを行い、PCR産物は2.2% のアガロースゲル電気泳動により分離し、DNAバンドをエチジウムブロマイドで可視化した。遺伝子特異的primerを以下に示す。
[0040]
PATアッセイ用primer
zcdk9 PAT    GTGCTGCCCCAGTGCATTGT(配列番号11)
tbp PAT      TGTTGTGCAGTGCGAGAGATC(配列番号12)
cyclin B1 PATATGTTGTGAGGGTCAACGAGG(配列番号13)
cyclinB2 PAT AGCAGCAGACTCATGAAGATCA(配列番号14)
・逆転写反応-PCR(RT-PCR)
 RT-PCRはSuperScript III transcriptase (200 U)を用いて実施した。Random とoligo (dT) primers(Invitrogen) を逆転写反応用のprimerとして用いた。RT-PCR用の遺伝子特異的primer (forward と reverse primers) を以下に示す。
[0041]
PCR用primer
actin forward: 5’-CTGAATCCCAAAGCCAACAG-3’ (配列番号15)
actin reverse: 5’-TCACACCATCACCAGAGTCC-3’ (配列番号16)
biklf forward: 5’-ATGCTGACTCCACCATCCTC-3’ (配列番号17)
biklf reverse: 5’-TGTCCGGTGTGTTTCCTGTA-3’ (配列番号18)
zcdk9 forward: 5’-CAGCCAATCAGAGTTCGACA-3’ (配列番号19)
zcdk9 reverse: 5’-TAGTGCCACCGGTAAACTCC-3’ (配列番号20)
tbp forward: 5’-CTTGGGGTGCAAACTTGATT-3’ (配列番号21)
tbp reverse: 5’-CATATTTCCTGGCTGCCAAT-3’ (配列番号22)
cyclin B1 forward: 5’-CAGCTGCAACTTGTTGGTGT-3’ (配列番号23)
cyclin B1 reverse: 5’-GGTAGAGGCCTTCCAAAACC-3’ (配列番号24)
cyclin B2 forward: 5’-CTCAAAGCATCTGACGGTGA-3’ (配列番号25)
cyclin B2 reverse: 5’-GCAGCAGTCCATCTCTCACA-3’ (配列番号26)
[0042]
・ウエスタンブロット解析
 抗zCdk9抗体作製のために組換えzCdk9タンパク質をEscherichia coliで発現させて準備し、 disk preparative electrophoresisで分画した。ウサギ(タカラバイオ株式会社に委託)にCdk9タンパク質を免疫し、オペロンの標準プロトコールで処理した。ポリクロ―ナル抗Cdk9抗体は文献11に従って精製した。抗ヒトCdk9抗体(H-169)と抗actin抗体(clone C4)は、それぞれSanta Cruz と Chemiconから購入した。イムノブロットは文献12に従って行った。ブロットは ECL system (GE Healthcare)で発色させた。
[0043]
・mRNAの3’末端配列の決定
 small RNA Cloning Kit (Takara)を些細な変更のもとに用いた。300 ngの全RNAを胚から単離した後、alkaline phosphatase (BAP)で処理後、ビオチン化したRNA/DNA 3’ adaptorを3’末がBAP処理されたRNAにライゲーションした。 ストレプトアビジンが表面に付いている磁性ビーズでadaptor-ligated RNAを回収した。そのビーズを洗浄後、PCR-R & RT-primer存在下で逆転写反応を行い、合成されたcDNAはアルカリ処理によってビーズから遊離させられたのちにzcdk9 PAT primer とPCR-R & RT-primerの存在下でPCRを行った。それから、PCR産物はアガロースゲル電気泳動にかけられ、DNAバンドをエチジウムブロマイド染色で可視化した。そのバンドはゲルから切り出され、DNA断片が回収されたのちにpMD20-Tベクターにクローニングされた。アンピシリン含有のプレート上で青白判定によるクローンの選別を行い、 プラスミドはそれぞれのクローンから回収された。挿入された領域は制限酵素処理で確認された。それぞれのサンプルから10クローン以上を抽出し、DNAの塩基配列を決定した。
[0044]
結果
・zcdk9 mRNAの3’UTR末端を標的にしたMOをゼブラフィッシュ初期胚に注入するとpoly(A)鎖伸長が阻害され、その結果、翻訳反応が阻害された。
[0045]
 中期胞胚遷移におけるゼブラフィッシュキナーゼcdk9 のmRNAの発現制御メカニズムを解析している途中で、本発明者らは翻訳反応の活性化においてpoly(A)鎖伸長が重要な役割を担っていることに気がついた。そこでこれを研究するために、本発明者らは毒性の低い核酸類縁体であるモルフォリノオリゴヌクレオチド(MO)を用いたアンチセンス実験を考え出した。本発明者らは、mRNAの3’UTRとMO間の2重鎖形成がpoly(A)鎖伸長を阻害するはずだと予想した。zcdk9 mRNA 3'UTRの末端配列と完全に相補的な25塩基からなるcdk9 MOを準備した(図1A)。3’UTRに対するMOがpoly(A)鎖伸長に影響があるか検討するために、特定のmRNAのpoly(A)鎖長を反映したPCR産物を与えるPATアッセイを実施した。受精した胚にcdk9 MOを注入すると、未処理胚(WT)に比較してゆっくりと泳動するバンドが顕著に低下することがわかった。すなわちこれは、cdk9 MOによるpoly(A)鎖伸長阻害を示していると考えられる(図1B)。cdk9 MOは、tbp や cyclin B1に対するバンドの産生には影響を与えることなく、cdk9のバンドのみを強く減少させた。重要なことは、これはcdk9 MOに特異的であるということである。すなわち、ハイブリダイズする塩基配列のうちで5塩基のミスマッチを有するcdk9m MOでは、それを注入した胚は未処理胚と変化がない結果を与える事に由来する(図1B)。これらの結果は、cdk9 MOが特異的にcdk9 mRNAに影響を与えるということを示している。
[0046]
 次に、MOの遺伝子発現抑制効果をタンパク質レベルで検証した。2種類の独立した抗体(本発明者らが独自に作製したゼブラフィッシュCdk9に対するものとヒトCdk9に対する購入可能な抗体H-169)でウエスタンブロット法を実施した。抗actin抗体はコントロールとして用いられた。cdk9 MOは受精後3時間の胚におけるzCdk9タンパク質の蓄積には影響を与えなかったが、4時間目から始まるzCdk9タンパク質蓄積量の増加を停止させた(図1C)。cdk9 MOとは違って、cdk9m MOはzcdk9 mRNAの翻訳反応に検出可能な優位な差を示さなかった。そこでこの結果をより鮮明に示すために、図1Cで用いたサンプルを再び用いてウエスタンブロットアッセイを行った。その結果、cdk9 MO は初期胚におけるCdk9タンパク質の蓄積の増加を阻害することを示すことができた(図1D)。以上をまとめると、これらの結果は、cdk9 MOの注入は母性zcdk9 mRNAの翻訳反応を初期の発生段階で阻害することを示している。
[0047]
 cdk9 MOの注入でcdk9産物がPATアッセイにおいて減少していたので、次に、RT-PCR法でこの効果を検証した。逆転写反応はrandom primerあるいはoligo-dT primerで実施し、その後、zcdk9のコーディング領域をPCRで増幅した。実験の時間経過過程を確認する目的で、受精後3時間で検出可能となり4時間で集積が始まるmRNAのbilkfの発現を解析した(図1E、F)。この結果は、10回目の卵割周期が始まる受精後3時間で体細胞遺伝子からの転写反応が生じることを示しており、これはすでに報告されている実験事実と一致することが分かった。random primerを用いたRT-PCRでは、cdk9 MOの注入の有無にかかわらず実験で用いたすべての胚から抽出したmRNAから同量のzcdk9 産物が得られることが分かった(図1E)。よって、この結果は、cdk9 MOの胚への注入がzcdk9 mRNA量を減少させるわけではないことを示している。一方、oligo-dT primerを用いた実験では、cdk9 MOを注入した胚をRT-PCR法で解析するとzcdk9 mRNAの凝集が低下していることが明らかとなった(図1F)。oligo-dT primerはpoly(A)鎖とハイブリダイズするので、少数のAからなる短いpoly(A)鎖の場合にはハイブリダイゼーションの効率が低下してしまう。よってその結果、増幅効率が減少すると考えられる。それゆえに、今回観察されたRT-PCRアッセイにおけるDNA断片の増幅量低下は、poly(A)鎖の短小化により短鎖のpoly(A)が産生されたためかもしれない(以下参照)。以上、上記の結果は、 cdk9 MOを初期胚に注入するとmRNAのpoly(A)鎖の短小化が誘導され、一方で、mRNA分解が生じるわけではないことを示している。
[0048]
・zcdk9 3'UTR 末端から40ヌクレオチドはMOによるpoly(A)鎖伸長阻害において活性のある領域である。
[0049]
 3’UTR末端がMO依存的抑制に重要な役割を演じているか調べるために、MO-2 (-26 to -50)、MO-3 (-51 to -75)や MO-4 (-76 to -100)を用意した (図5)。PATアッセイとウエスタンブロット法による解析により、5種類のMOのうちでcdk9 MOのみpoly(A)鎖伸長と翻訳阻害の活性を有していることが分り、3’UTRの最末端部分がその阻害には重要であることが示唆された。この結果を確認する目的で、さらに4種類のMOを検討した。その結果、poly(A)鎖伸長と翻訳反応を阻害するMO-5 (-6 to -30)、MO-6 (-11 to -35)と MO-7 (-16 to 40)を確認した。また、 MO-8 (-21 to -45)は弱い活性を有することがわかった(図 2B,C)。これらの結果は、3’UTR末端の40ヌクレオチドが MO依存的阻害において活性部位であることを示している。
[0050]
・アンチセンスMOがzcdk9 mRNA からpoly(A)鎖を完全に取り除く証拠
 既に記載したように、MOと mRNAの 3’ UTR末端間の2重鎖は適切なpoly(A) 鎖伸長を阻害する。MO添加後poly(A)鎖部分に何残基のAが残っているのか正確に決定するために、図2で得られているMOが注入された胚由来のmRNAで合成されたzcdk9 cDNAの3’末領域のDNAのシークエンス反応を行った。これを行うにあたり、 small RNA Cloning Kit (Takara) を採用した。そのキットでは、ビオチン化されたRNA/DNA 3’ adaptorがmRNAの3’末端に付加され、その後、ストレプトアビジン磁気ビーズで回収・精製される。逆転写反応はビーズ上で実施され、cDNA回収後、zcdk9 PAT primer と PCR-R & RT-primerによるPCRで cDNAが増幅された(図3A)。PCR産物はアガロースゲルによる電気泳動で解析され、DNAバンドはエチジウムブロマイド染色で可視化された(図3B)。
[0051]
 これらPCR産物は、TA-クローニング用ベクターのpMD20-T(Takara)にクローン化されたのち、 その部分のDNA塩基配列が決定された。図3Cにあるように、 MO-2が注入された胚由来のzcdk9 のcDNA は、未処理胚由来のものと同様に完全な poly(A)鎖を有していた。一方、MO、MO-5、MO-6、MO-7、やMO-8が注入された胚由来のcDNAの解析から、それらではpoly(A)鎖が完全に消失していることがわかった。このことから、初期胚へのMO注入はMOが標的とするmRNAからpoly(A)鎖除去を誘導することがわかる。さらに、本発明者らはそれぞれのcDNAの3’末端配列が異なっていることに気が付いた。そして、MOとmRNAがハイブリッドを形成する部分が上流に移動するに従って残っている3’末配列も上流に移動することがわかった。すなわち、MOから MO-5、MO-6、MO-7、そしてMO-8の順に3’末端が上流に位置する傾向を有している。それは、MOとmRNA間のハイブリッドの位置がそれぞれのmRNAの3’末配列の決定に寄与していることを示唆している。これは、poly(A)鎖短小化酵素とエキソヌクレアーゼの共同作業によるものか、あるいはそのハイブリッドを認識するエンドヌクレアーゼによるのかもしれない(ディスカッションおよび図7参照)。
[0052]
・4種類の母性mRNAにおけるMO効果の解析
 poly(A)鎖伸長に対するMO効果を評価するため、cdk9 MO に加えてcyclin B1 MOとcyclin B2 MOの3種類の遺伝子特異的MOを準備した (図 4)。MOの特異性を簡単に決定するために、受精後5時間の胚から全RNAを抽出し、これらを用いたPATアッセイを実施した (図 4B、C)。cyclin B1 MOとcyclin B2 MOに関しても検討した (図4A、B)。ここで言及すべきことは、ゼブラフィッシュcyclin Bのオルソログに相当するB1 やB2は、それぞれかなり類似した塩基配列からなる3’UTRを有していることである(図4A)。実際にcyclin B1 MOとcyclin B2 MO間には10個の相同な塩基が存在している (図 4A)。実験結果は、cyclin B1 MOとcyclin B2 MOはそれぞれ特異的に自身のmRNAにおいてのみ効果を示したということである(図 4B)。cdk9 MOとtbp MOを用いた場合においても同様にそれぞれが特異的に作用する効果を有する結果が得られている(図 4C)。mRNAのpoly(A)鎖伸長に対するMO効果は、さらに図6AやBにおいて受精後2時間から5時間の胚に由来するmRNAで確認されている。これらの結果は、3’UTRを標的にしたアンチセンスMO法がゼブラフィッシュ発生初期胚において特異的にpoly(A)鎖伸長阻害に作用することを示すものである。
[0053]
ディスカッション
 ゼブラフィッシュ初期胚に関して母性mRNAの発現阻害に関して報告する。これは、poly(A)鎖伸長阻害と翻訳阻害で引き起こされる。poly(A)鎖伸長阻害に関しては、mRNAのpoly(A)鎖連結部位上流において形成されるMOとmRNA間の2重鎖構造がMOに依存したpoly(A)鎖伸長阻害に必要であると思われる(図2と図5)。特筆すべきは、zcdk9 mRNAの3' UTRの末端から上流に26塩基から50塩基の部分でMOがハイブリダイズするとpoly(A)鎖には影響が観察されないということである(図2と3)。これは、3' UTR領域の末端部分25塩基が重要なシスエレメントであることを示唆する。zcdk9、cyclin B1、およびcyclin B2 のmRNAsの3’末端の25塩基部分と tbp のmRNAでは30塩基部分には典型的なポリAシグナル (AAUAAA)が存在し、そこには細胞質で生じるpoly(A)化に関与するRNA-タンパク質複合体の一つの CPSFが結合する。アフリカツメガエル卵母細胞では、そのRNA-タンパク質複合体は細胞質poly(A)鎖短小化酵素 (PARN) と細胞質poly(A)鎖伸長酵素(Gld-2)がCPSFや細胞質poly(A)鎖制御関連因子である CPEB、Pumilio、およびMusashiを含んでいる。それゆえに、poly(A)鎖連結部位にMOがハイブリダイズすることがポリAシグナルへのCPSFの結合やそのRNA-タンパク質複合体の機能を阻害すると考えるのは妥当であろう。これは、Gld-2とPARNのバランスに変化を与え、その結果、poly(A)鎖の短小化が生じている可能性を示唆しているのかもしれない。
[0054]
 本発明者らは、MOとmRNAのハイブリダイゼーションがmRNAの3’末端配列部分とpoly(A)鎖を除去することを発見した。すなわち、ハイブリッドの位置からmRNAの3’側に数塩基行ったところでmRNAが切れるためにpoly(A)鎖が取り除かれる(図3)。これは、最初にpoly(A)鎖短小化酵素が作用し、次いでエキソヌクレアーゼが作用するためだと考えられる(図7A)。あるいは、ハイブリッド形成はある種のエンドヌクレアーゼ活性を誘導し、それはmRNA上のハイブリッド位置から下流の部分を切断するのかもしれない(図7B)。本発明者らは今回のケースにどちらの仮説が当てはまるのか答えを持っていないが、もしも後者の場合は、MOとmRNAのハイブリッドを認識して結合するエンドヌクレアーゼの関与を示す新たなモデルを提唱する必要がある。
[0055]
miRNAとMOの振る舞いに関して3つの類似点が存在する。すなわち、mRNAの3’UTRが標的であること、poly(A)鎖短小化が生じること、さらに翻訳阻害が生じることである。それゆえに、MOが仲介するpoly(A)鎖短小化にmiRNA関連因子が関与するのか否かは大変面白い課題と思われる。
[0056]
 MOを用いた新規の方法を本実施例で紹介した。この方法の長所は、従来法に比較してmRNAの3’UTR末端を標的にすることから設計が簡単であるという点とMOの作用を効率的に確認できる点である。ゼブラフィッシュCdk9に対する特異抗体を保有していたのでMOにより誘導される両タンパク質の量的減少を確認することができた。もしも適切な抗体が手元にない場合は、PCRを基本としたPAT法でpoly(A)鎖の長さをモニターすることにより遺伝子の発現阻害を調べることができる。そのRNAレベルでの検証に加えて、図4Fで実施したように合成mRNAを用いた回復実験を行うことでMOの標的遺伝子の発現に対する効果を確認することも可能である。
[0057]
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[0058]
〔実施例2〕
材料と方法
・細胞培養
 HeLa細胞は10% 非働化FBS、100 units/mL penicillin、100 mg/mL streptomycinのDMEM(Sigma-Aldrich)で37℃、5% CO 2の条件下で培養した。
[0059]
・遺伝子導入
 約1 x 10 6/mLとなるよう、細胞を10% 非働化FBSを含むDMEM培地に懸濁させ、1mLずつ12穴プレートに撒く。細胞が40~50%程度の集密状態の時に、siRNA(最終濃度20nM)及び2μL Lipofectamine(Ingitrogen)を200μL OptiMEM(Ingitrogen)に混合したものを添加した。必要に応じて、PMA(最終濃度10nMまたは100nM)も添加する。24時間後に回収し、全RNAの精製またはウェスタンブロット解析を行った。
[0060]
この研究で用いたsiRNAを以下に示す。
[0061]
siRNA
RelA : 5’-CUGAACUAAUAAAUCUGUU -3’(配列番号27)
Bcl-xL : 5’-GUUCAGUAAUAAACUGUGU -3’ (配列番号28)
Livin : 5’-GAAUAGAAAUAAAGUGGGU -3’ (配列番号29)
PLK1 : 5’-UAUGCACAUUAAACAGAUG -3’ (配列番号30)
tPA : 5’-CUGUACUUAAUAAAUUCAG -3’ (配列番号31)
n/c : Universal negative control (株式会社ニッポンイージーティー)
・細胞の全RNAの精製  
 全RNAは、Sepasol-RNA I super (Nacalai Tesque)により細胞から調製された。
[0062]
・逆転写反応-PCR(RT-PCR)
 RT-PCRはSuperScript III transcriptase (200 U)を用いて実施した。Random とoligo (dT) primers(Invitrogen) を逆転写反応用のprimerとして用いた。RT-PCR用の遺伝子特異的primer (forward と reverse primers) を以下に示す。
[0063]
PCR用primer
RelA forward: 5’-CCTGGAGCAGGCTATCAGTC -3’ (配列番号32)
RelA reverse: 5’-ATCTTGAGCTCGGCAGTGTT -3’ (配列番号33)
Bcl-xL forward: 5’-GGTATTGGTGAGTCGGATCG -3’ (配列番号34)
Bcl-xL reverse: 5’-AAGAGTGAGCCCAGCAGAAC -3’ (配列番号35)
PLK1 forward: 5’-GGCAACCTTTTCCTGAATGA -3’ (配列番号36)
PLK1 reverse: 5’-AATGGACCACACATCCACCT -3’ (配列番号37)
tPA forward: 5’-CCCAGATCGAGACTCAAAGC -3’ (配列番号38)
tPA reverse: 5’-TGGGGTTCTGTGCTGTGTAA -3’ (配列番号39)
Livin forward: 5’-CCTCTCTGCCTGTTCTGGAC -3’ (配列番号40)
Livin reverse: 5’-CTCCAGGGAAAACCCACTTT -3’ (配列番号41)
βActin forward: 5’-GATATCGCCGCGCTCGTCG -3’ (配列番号42)
βActin reverse: 5’-GGGAGGAGCTGGAAGCAG -3’ (配列番号43)
[0064]
ウェスタンブロット解析
回収した細胞はPBS 1mLでの洗浄の後、125 μL の RIPA buffer (150 mM NaCl, 1% NP-40, 0.5% deoxycholate, 0.1% sodium dodecyl sulfate, 50 mM Tris-HCl [pH 8.0])に溶かした。上清62.5 μLは5分間の遠心分離(15,000 rpm)で回収され、そこに62.5 μL の 2× Laemmli サンプルバッファーを添加した。ウエスタンブロット解析においては、5 μLのサンプルを解析した。1次抗体として抗Bcl-xL抗体(Santacruz, sc-8392)、抗PLK1抗体(Santacruz, sc-17783)、抗Livin抗体(Santacruz, sc-30161)、抗RelA抗体(Santacruz, sc-372)または抗Actin抗体(Millipore, clone C4)を用いた。また、2次抗体としてHRP-conjugated anti-rabbit IgG (GE Healthcare, NA9340OV)またはPOD-conjugated mouse IgG to Rabbit IgG (Dako, P0260)用いた。反応したタンパク質は、SuperSignal West Pico Chemiluminescent Substrate (Pierce)で処理し、LAS4000 IR multi color (Fuji Film)で可視化した。
[0065]
結果
 RelA、Bcl-xL、LivinおよびPLK1のそれぞれのmRNA 3'UTRのポリAシグナル配列を覆うようにsiRNAを設計した(図12)。HeLa細胞にsiRNAを導入すると、特異的にmRNAおよびタンパク質蓄積量の減少が観察された(図8, 9, 10)。さらに、PMA添加で発現誘導されるtPA遺伝子に関して、同様にtPAのmRNA 3'UTRのポリAシグナル配列を覆うsiRNAを設計した(図12)。HeLa細胞へのPMA添加と同時にsiRNAを添加し、24時間後にRNAを回収した。RT-PCR法により解析すると、tPAの発現誘導がmRNAレベルで阻害されたことがわかった(図11)。
[0066]
ディスカッション
 本実験は、従来法より簡便に設計が可能であるsiRNAを提供する。
 本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。

産業上の利用可能性

[0067]
 本発明は、選択的遺伝子発現抑制法として利用可能である。
[0068]
<配列番号1>
配列番号1は、アンチセンスモルフォリノオリゴヌクレオチド cdk9 MOのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号2>
配列番号2は、アンチセンスモルフォリノオリゴヌクレオチド cdk9 MO-2のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号3>
配列番号3は、アンチセンスモルフォリノオリゴヌクレオチド cdk9 MO-3のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号4>
配列番号4は、アンチセンスモルフォリノオリゴヌクレオチド cdk9 MO-4のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号5>
配列番号5は、アンチセンスモルフォリノオリゴヌクレオチド cdk9 MO-5のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号6>
配列番号6は、アンチセンスモルフォリノオリゴヌクレオチド cdk9 MO-6のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号7>
配列番号7は、アンチセンスモルフォリノオリゴヌクレオチド cdk9 MO-7のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号8>
配列番号8は、アンチセンスモルフォリノオリゴヌクレオチド cdk9 MO-8のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号9>
配列番号9は、アンチセンスモルフォリノオリゴヌクレオチド cdk9m MOのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号10>
配列番号10は、(dT) 12-anchor primerのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号11>
配列番号11は、PATアッセイ用primer zcdk9 PATのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号12>
配列番号12は、PATアッセイ用primer tbp PATのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号13>
配列番号13は、PATアッセイ用primer cyclin B1 PATのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号14>
配列番号14は、PATアッセイ用primer cyclin B2 PATのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号15>
配列番号15は、PCR用actin特異的primer (forward)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号16>
配列番号16は、PCR用actin特異的primer (reverse)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号17>
配列番号17は、PCR用biklf特異的primer (forward)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号18>
配列番号18は、PCR用biklf特異的primer (reverse)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号19>
配列番号19は、PCR用zcdk9特異的primer (forward)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号20>
配列番号20は、PCR用zcdk9特異的primer (reverse)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号21>
配列番号21は、PCR用tbp特異的primer (forward)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号22>
配列番号22は、PCR用tbp特異的primer (reverse)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号23>
配列番号23は、PCR用cyclin B1特異的primer (forward)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号24>
配列番号24は、PCR用cyclin B1特異的primer (reverse)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号25>
配列番号25は、PCR用cyclin B2特異的primer (forward)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号26>
配列番号26は、PCR用cyclin B2特異的primer (reverse)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号27>
配列番号27は、RelAに対するsiRNAのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号28>
配列番号28は、Bcl-xLに対するsiRNAのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号29>
配列番号29は、Livinに対するsiRNAのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号30>
配列番号30は、PLK1に対するsiRNAのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号31>
配列番号31は、tPAに対するsiRNAのヌクレオチド配列を示す。
<配列番号32>
配列番号32は、RelA特異的primer (forward)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号33>
配列番号33は、RelA特異的primer (reverse)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号34>
配列番号34は、Bcl-xL特異的primer (forward)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号35>
配列番号35は、Bcl-xL特異的primer (reverse)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号36>
配列番号36は、PLK1特異的primer (forward)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号37>
配列番号37は、PLK1特異的primer (reverse)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号38>
配列番号38は、tPA特異的primer (forward)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号39>
配列番号39は、tPA特異的primer (reverse)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号40>
配列番号40は、Livin特異的primer (forward)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号41>
配列番号41は、Livin特異的primer (reverse)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号42>
配列番号42は、βActin特異的primer (forward)のヌクレオチド配列を示す。
<配列番号43>
配列番号43は、βActin特異的primer (reverse)のヌクレオチド配列を示す。

請求の範囲

[請求項1]
標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断することを含む、標的遺伝子の翻訳反応を抑制する方法。
[請求項2]
標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部にハイブリダイズできるリボ核酸を用いて、標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断する請求項1記載の方法。
[請求項3]
リボ核酸が、標的mRNAのpoly(A)鎖結合部位から上流40ヌクレオチドまでの領域の配列の全部又は一部に相補的なヌクレオチド配列からなる請求項2記載の方法。
[請求項4]
標的mRNAのpoly(A)鎖結合部位から上流40ヌクレオチドまでの領域の配列の全部又は一部が、ポリAシグナル配列の全部又は一部を含む請求項3記載の方法。
[請求項5]
リボ核酸が、20~25merである請求項3又は4記載の方法。
[請求項6]
リボ核酸が天然型のヌクレオチドからなる請求項2~5のいずれかに記載の方法。
[請求項7]
リボ核酸が二本鎖RNAである請求項6記載の方法。
[請求項8]
リボ核酸が少なくとも1個のヌクレオチド類似体を含む請求項2~5のいずれかに記載の方法。
[請求項9]
リボ核酸が一本鎖である請求項8記載の方法。
[請求項10]
一本鎖リボ核酸がアンチセンスモルフォリノオリゴヌクレオチドである請求項9記載の方法。
[請求項11]
標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断することができる試薬を含む、標的遺伝子の翻訳反応を抑制するためのキット。
[請求項12]
標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断することができる試薬がリボ核酸である請求項11記載のキット。
[請求項13]
標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断することができる試薬が導入され、標的遺伝子の翻訳反応が抑制された細胞。
[請求項14]
標的mRNAのpoly(A)鎖および/または3’末端配列の一部を切断することができる試薬が導入され、標的遺伝子の翻訳反応が抑制された非ヒト生物。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]