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1. WO2021038776 - ENGINE COOLING DEVICE

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明 細 書

発明の名称 エンジンの冷却装置

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0005   0006   0007  

課題を解決するための手段

0008   0009   0010   0011  

発明の効果

0012  

図面の簡単な説明

0013  

発明を実施するための形態

0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045  

符号の説明

0046  

請求の範囲

1   2   3   4  

図面

1   2   3   4  

明 細 書

発明の名称 : エンジンの冷却装置

技術分野

[0001]
 本発明は、エンジンの冷却装置に関する。

背景技術

[0002]
 従来のこの種の冷却装置は、エンジンとラジエータとを接続する冷却水路にサーモスタットが設けられ、サーモスタットはワックスの熱膨張を利用して、例えば80~90℃程度の温度領域において全開と全閉との間で徐々に開閉する特性に設定されている。このようなサーモスタットの開閉に応じてエンジンとラジエータとの間の冷却水の流通状態が調整され、エンジンが所定の温度域に保たれる。
[0003]
 一方、近年の排ガス規制や燃費向上等の要求に対応するには、より緻密な水温制御が要求されることを鑑みて、例えば特許文献1に記載されているような電子制御式のエンジンの冷却装置が実用化されている。この冷却装置は、エンジンとラジエータとの間で流通する冷却水の流量を流路切換弁により調整可能としており、例えばエンジンの運転状態に基づき設定した目標水温と水温センサにより検出された水温との偏差に基づき、流路切換弁の開度を制御することでエンジンの冷却水を目標水温に保っている。このような電子制御式の冷却装置では、水温偏差に対する流路切換弁の開閉速度を任意に設定可能であることから、例えば従来からのサーモスタットの特性を模擬し、水温偏差に対して流路切換弁を比較的緩やかに開閉させる特性が付与される場合がある。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 特開2014-169661号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0005]
 しかしながら、特許文献1の冷却装置では、以下に述べる状況においてエンジンを流通する冷却水温が目標水温を大きく逸脱してしまう。
 上記のように流路切換弁の開度は水温偏差に基づき制御され、例えば水温>目標水温のときには流路切換弁の開側制御により温度低下が図られる一方、水温≦目標水温のときには流路切換弁が閉じられる。このとき冷却水はラジエータで冷却されることなくエンジンのウォータージャケットを循環し、図4にAで示すように、エンジンからの受熱により水温Tが次第に上昇する。また、このときラジエータでは冷却水が滞留し、走行風により冷却されて次第に温度低下する。
[0006]
 冷却水の温度上昇により、図4にBで示すように水温T>目標水温tgtTになると、流路切換弁が開側制御される。水温偏差に対して流路切換弁が緩やかに開閉される特性の場合、このときの開側制御も図4にCで示すように緩やかに行われる。しかしながら、ラジエータ内で冷却された低温の冷却水がウォータージャケットに流入することから、図4にDで示すように水温Tは上昇から下降に転じて急激に低下する。この温度低下に伴う水温偏差の縮小に呼応して再び流路切換弁が閉じられるが、このときの閉側制御も図4に破線Eaで示すように緩やかに行われることから、冷却水温の低下を抑制しきれず、図4に破線Faで示すように水温Tが目標水温tgtTから低温側に大きく逸脱してしまう。
 このような不適切な冷却水温の低下は流路切換弁の切換毎に発生し、エンジンのオイル粘度の増加や燃料の気化不良により燃費及び排ガス特性が悪化するという問題を引き起こしていた。
[0007]
 本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、流路切換弁が閉弁から開側制御されたときの冷却水温の急激な低下を未然に回避でき、エンジンを良好な温度域に保つことができるエンジンの冷却装置を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0008]
 上記の目的を達成するため、本発明のエンジンの冷却装置は、エンジンとラジエータとの間で循環する冷却水の流量を調整する流量調整部と、エンジンを流通する冷却水の温度を検出する水温検出部と、エンジンの運転状態に基づき冷却水の目標水温を算出する水温検出部と、水温検出部により検出された水温と水温検出部により算出された目標水温とに基づき水温偏差を算出する偏差算出部と、偏差算出部により算出された水温偏差に基づき、目標水温を達成するための流量調整部の目標開度を算出する目標開度算出部と、目標開度算出部により算出された目標開度の変化状態に基づき、流量調整部の開閉方向を判定する開閉方向判定部と、偏差算出部により算出された水温偏差に基づき流量調整部の制御速度を算出し、開閉方向判定部により判定された開閉方向が閉側の場合には、判定された開閉方向が開側の場合に比較して高い制御速度を算出する制御速度算出部と、目標開度算出部により算出された目標開度及び制御速度算出部により算出された制御速度に基づき、流量調整部の開度を制御するバルブ制御部とを備えたことを特徴とする。
[0009]
 その他の態様として、予め設定された水温偏差と目標開度との関係を記憶する第1の記憶部をさらに備え、目標開度算出部が、第1の記憶部に記憶された関係に基づき水温偏差から目標開度を算出するようにしてもよい。
[0010]
 その他の態様として、水温偏差を基本水温偏差とし、基本水温偏差の少なくとも比例項及び積分項に基づき補正後水温偏差を算出する水温偏差補正部をさらに備え、第1の記憶部が、補正後水温偏差と目標開度との関係を記憶し、目標開度算出部が、補正後水温偏差に基づき目標開度を算出し、開閉方向判定部が、補正後水温偏差に基づき算出された目標開度に基づき開閉方向を判定し、制御速度算出部が、基本水温偏差に基づき制御速度を算出し、バルブ制御部が、補正後水温偏差に基づき算出された目標開度に基づき流量調整部の開度を制御するようにしてもよい。
[0011]
 その他の態様として、予め設定された水温偏差と流量調整部の開側の制御速度との関係、及び流量調整部の応答速度以上の制御速度である非制限値を記憶する第2の記憶部をさらに備え、制御速度算出部が、開閉方向判定部により判定された開閉方向が開側の場合には、第2の記憶部に記憶された関係に基づき水温偏差から制御速度を算出し、判定された開閉方向が閉側の場合には、水温偏差に関わらず第2の記憶部に記憶された非制限値を制御速度とするようにしてもよい。

発明の効果

[0012]
 本発明のエンジンの冷却装置によれば、流路切換弁が閉弁から開側制御されたときの冷却水温の急激な低下を未然に回避でき、エンジンを良好な温度域に保つことができる。

図面の簡単な説明

[0013]
[図1] 実施形態のエンジンの冷却装置を示す全体構成図である。
[図2] ECUの構成を示す制御ブロック図である。
[図3] ECUが実行する水温制御ルーチンを示すフローチャートである。
[図4] 実施形態と特許文献1の技術との冷却水温の制御状況を比較したタイムチャートである。

発明を実施するための形態

[0014]
 以下、本発明を具体化したエンジンの冷却装置の一実施形態を説明する。
 本実施形態のエンジン1は走行用動力源として乗用車に搭載されるものであり、水冷式の冷却装置2により冷却される。図1に示すように、エンジン1内に形成されたウォータージャケット3にはウォーターポンプ4から吐出された冷却水が流通し、その後、ウォータージャケット3からエンジン1の一側に接続された流出路5内に流出するようになっている。流出路5にはメイン水路6、サブ水路7及びバイパス水路8の一端がそれぞれ接続され、バイパス水路8の他端はウォーターポンプ4の吸込側に接続されている。
[0015]
 メイン水路6にはラジエータ9が介装され、メイン水路6の他端はウォーターポンプ4の吸込側に接続されている。サブ水路7は二股状に分岐して、排ガスを吸気側に環流するEGR弁10及び吸気量を調整するスロットル装置11が介装され、各サブ水路7の他端はメイン水路6のラジエータ9よりもウォーターポンプ4側の箇所に接続されている。
[0016]
 従って、流出路5からメイン水路6に案内された冷却水は、ラジエータ9を流通する際に走行風により冷却され、温度低下してウォーターポンプ4に戻される。流出路5からサブ水路7に案内された冷却水はEGR弁10及びスロットル装置11を流通し、これらの装置9,10を冷却することで温度上昇してウォーターポンプ4に戻される。また、流出路5からバイパス水路8に案内された冷却水は、そのままの温度でウォーターポンプ4に戻される。
[0017]
 流出路5内には流路切換弁12が配設され、この流路切換弁12により冷却水の流路が連続的に調整される。詳しくは、流路切換弁12の入口ポートは流出路5内と連通し、流路切換弁12の出口ポートはメイン水路6及びサブ水路7とそれぞれ連通している。流路切換弁12は、内蔵されたロータをモータ13の駆動により回動させるロータリ式として構成されている。ロータの角度θに応じてメイン水路6側及びサブ水路7側の開口比率が連続的に調整され、これにより流出路5からメイン水路6及びサブ水路7に案内される冷却水の流量が変化する。
[0018]
 以下の説明では、メイン水路6側の開口面積、換言するとラジエータ9の開度Aを主体として、流路切換弁12による開口比率の調整状態を表すものとする。例えば、メイン水路6側が全閉にされている状態をラジエータ開度A=0%と表現し、このときラジエータ9への冷却水の流通は中止される。また、メイン水路6側が全開にされている状態をラジエータ開度A=100%と表現し、このときラジエータ9を流通する冷却水の流量が最大となる。
[0019]
 このように冷却水の流路が連続的に調整されると、結果としてエンジン1とラジエータ9との間を流通する冷却水の流量が調整されるため、本実施形態では、流路切換弁12が本発明の流量調整部として機能する。
[0020]
 冷却装置2の作動状態はECU15(電子制御装置)により制御され、ECU15は、入出力インターフェイス15a、多数の制御プログラムを内蔵した記憶装置15b(ROM,RAM等)、中央処理装置15c(CPU)、及びタイマカウンタ15d等により構成されている。ECU15の入力側には、流路切換弁12のロータ角度を検出するポジションセンサ16、エンジン1から流出路5内に流出した冷却水の温度をエンジン温度Tとして検出する第1水温センサ17、及びラジエータ9を通過後の冷却水の温度を検出する第2水温センサ18等の各種センサ類が接続されている。
[0021]
 またECU15の出力側には、上記した流路切換弁12を駆動するモータ13等の各種デバイス類が接続されている。本実施形態では、エンジン温度Tが本発明のエンジン1を流通する冷却水の温度に相当し、このエンジン温度Tを検出する第1水温センサ17が本発明の水温検出部として機能する。
[0022]
 次いで、図2の制御ブロック図に基づきECU15の構成を説明する。
 ECU15の目標水温算出部21では、エンジン1の運転状態に基づき冷却水の目標水温tgtTが算出され、第1水温センサ17により検出されたエンジン温度Tと共に偏差算出部22に入力される。
[0023]
 偏差算出部22では、目標水温tgtTとエンジン温度Tとの差として基本水温偏差ΔTbaseが算出され、PI制御部23に入力される。基本水温偏差ΔTbaseに基づき、PI制御部23のP項設定部23aは比例項が設定され、I項設定部23bでは積分項が設定され、これらのフィードバック項が加算部23cで加算されてPI制御に基づく補正後水温偏差ΔTが算出される。
[0024]
 本実施形態では、PI制御部23が本発明の水温偏差補正部として機能する。なお、PI制御に代えてPD制御或いはPID制御としてもよいし、PI制御部23を省略して基本水温偏差ΔTbaseを補正後水温偏差ΔTとして取り扱ってもよい。
[0025]
 補正後水温偏差ΔTは目標開度算出部24に入力され、補正後水温偏差ΔTに基づき目標ラジエータ開度tgtAが算出される。この算出処理のために、ECU15の記憶装置15bには、予め補正後水温偏差ΔTと目標ラジエータ開度tgtAとの関係を規定した制御マップが記憶されている。下表1は制御マップの一例を示しており、全体として補正後水温偏差ΔTの増加と共に目標ラジエータ開度tgtAを増加させる特性に設定されている。例えば、補正後水温偏差ΔT=0℃のときには目標ラジエータ開度tgtA=0%が算出され、補正後水温偏差ΔT=10℃のときには目標ラジエータ開度tgtA=100%が算出される。
[0026]
 本実施形態では、表1の制御マップを記憶する記憶装置15bが本発明の第1の記憶部として機能する。
[表1]


[0027]
 目標ラジエータ開度tgtAは開閉方向判定部25に入力され、開閉方向判定部25では、今回及び前回の制御周期で算出された目標ラジエータ開度tgtAの偏差に基づき、目標ラジエータ開度tgtAの変化方向、換言すると流路切換弁12の開閉方向が判定される。本実施形態では、目標ラジエータ開度tgtAの今回値と前回値との偏差が本発明の目標開度の変化状態に相当する。
[0028]
 一方、開閉方向判定部25の判定結果は、偏差算出部22で算出された基本水温偏差ΔTbaseと共に制御速度算出部26の切換部26aに入力される。切換部26aは、開閉方向判定部25の判定結果が開側のときに開側速度算出部26bに切り換えられ、判定結果が閉側のときには閉側速度算出部26cに切り換えられる。切り換えられた側の速度算出部26b,26cに基本水温偏差ΔTbaseが入力され、基本水温偏差ΔTbaseに基づき流路切換弁12の制御速度θspdが算出される。
[0029]
 この算出処理のために、ECU15の記憶装置15bには、予め基本水温偏差ΔTbaseと制御速度θspdとの関係を規定した制御マップが各速度算出部26b,26cに対応してそれぞれ記憶されている。下表2は開側速度算出部26bに適用される制御マップの一例を示し、下表3は閉側速度算出部26cに適用される制御マップの一例を示す。
[0030]
 本実施形態では、表2及び表2の制御マップを記憶する記憶装置15bが本発明の第2の記憶部として機能する。
[表2]


[表3]


[0031]
 表2に示すように、流路切換弁12が開側に制御されるときには、基本水温偏差ΔTbaseが大であるほど高い制御速度θspdが算出される。このマップ特性は、エンジン温度Tが目標水温tgtTから乖離しているほど、迅速な流路切換弁12のロータ角度制御が必要であるとの知見に基づく。但し、この表2で設定される開側への制御速度θspdは相対的に低く、流路切換弁12は、最大の制御速度θspd=8(%/sec)にも十分に追従可能な応答速度を有する仕様として製作されている。
[0032]
 流路切換弁12の開閉方向の判定処理、及び後述するラジエータ開度Aの制御に、補正後水温偏差ΔTから求めた目標ラジエータ開度tgtAを適用しているのに対し、制御速度θspdの算出処理に基本水温偏差ΔTbaseを適用しているのは、以下の知見に基づく。後述するように、実際のラジエータ開度Aひいては流路切換弁12のロータ角度θは、目標ラジエータ開度tgtAに基づきフィードバック制御される。このため、PI制御が反映された補正後水温偏差ΔTに基づく目標ラジエータ開度tgtAを適用することにより、的確なラジエータ開度Aの制御が可能になると共に、ロータ角度θに基づき制御される流路切換弁12の開閉方向に関しても的確に判定可能となる。
[0033]
 これに対して制御速度θspdは、上記のようにその時点の目標水温tgtTからのエンジン温度Tの乖離状態に応じて制御する必要がある。このため、I制御による遅れ要素を含んだ補正後水温偏差ΔTよりも、実際の目標水温tgtTとエンジン温度Tとの偏差である基本水温偏差ΔTbaseに基づき設定することが望ましく、これにより適切な制御速度θspdで流路切換弁12を駆動することができる。
[0034]
 一方、表3に示すように、流路切換弁12が閉側に制御されるときには、開側制御の場合の制御速度θspdよりも格段に高い制御速度θspd=200(%/sec)が、基本水温偏差ΔTbaseの大小に関わらず一律に算出される。この制御速度θspdは、本発明の非制限値に相当する流路切換弁12が有する応答速度以上の値であり、必然的に流路切換弁12は最大速度で駆動される。以上のように開側に比較して閉側で相対的に高い制御速度θspdに基づき流路切換弁12を駆動するのは、特許文献1の技術が抱える問題点を解決するためであるが、この点については後にタイムチャートに基づき詳述する。
[0035]
 制御速度算出部26の開側または閉側速度算出部26b,26cで算出された制御速度θspdは、目標開度算出部24で算出された目標ラジエータ開度tgtAと共にバルブ制御部27に入力される。図示はしないが、ECU15の記憶装置15bには、ラジエータ開度Aと流路切換弁12のロータ角度θとの関係を規定した制御マップが記憶されており、このマップを参照して、バルブ制御部27は目標ラジエータ開度tgtAから目標ロータ角度tgtθを算出する。そして、目標ロータ角度tgtθとポジションセンサ16により検出された実際のロータ角度θとの偏差に基づき、流路切換弁12の開閉速度を制御速度θspdに保ちながらフィードバック制御を実行する。
[0036]
 次に、以上のECU15の制御内容を図3のフローチャートに基づき説明する。
 まずステップ1で各センサから検出情報を読み込み、続くステップ2で基本水温偏差ΔTbaseを算出し、ステップ3で補正後水温偏差ΔTを算出する。ステップ2の処理は偏差算出部22により実行され、ステップ3の処理はPI制御部23により実行される。その後ステップ4で表1の制御マップに基づき目標ラジエータ開度tgtAを算出し、ステップ5で目標ラジエータ開度tgtAの変化方向を判定する。ステップ4の処理は目標開度算出部24により実行され、ステップ5の処理は開閉方向判定部25により実行される。
[0037]
 ステップ5で判定した変化方向が開側のときにはステップ6からステップ7に移行し、表2の制御マップに基づき開側の制御速度θspdを算出する。また、変化方向が閉側のときにはステップ6からステップ8に移行し、表3の制御マップに基づき閉側の制御速度θspdを算出する。その後、ステップ9で目標ラジエータ開度tgtA及び制御速度θspdに基づき流路切換弁12をフィードバック制御する。ステップ6の処理は制御速度算出部26の切換部26aにより実行され、ステップ7の処理は開側速度算出部26bにより実行され、ステップ8の処理は閉側速度算出部26cにより実行され、ステップ10の処理はバルブ制御部27により実行される。
[0038]
 次に、以上のECU15の処理に基づく冷却水温の制御状況を図4のタイムチャートに基づき説明する。
 同図では、理解を容易にするために、目標水温tgtTが一定に保たれている場合を示しており、例えばエンジン温度T≦目標水温tgtTのときには、表1に基づき目標ラジエータ開度tgtA=0%が算出され、流路切換弁12によりメイン水路6側が全閉にされる。このため冷却水はラジエータ9で冷却されることなく、バイパス水路8或いはサブ水路7を経てエンジン1のウォータージャケット3を循環し、図4にAで示すように、エンジン1からの受熱によりエンジン温度Tが次第に上昇する。また、このときラジエータ9では冷却水が滞留し、走行風により冷却されて次第に温度低下する。
[0039]
 冷却水の温度上昇により、図4にBで示すようにエンジン温度T>目標水温tgtTになると、表1から算出される目標ラジエータ開度tgtAに基づき流路切換弁12が開側制御される。このときの流路切換弁12の制御速度θspdは表2に基づき設定され、図4にCで示すように比較的緩やかに流路切換弁12が開側制御される。しかしながら、ラジエータ9内で冷却された低温の冷却水がウォータージャケット3に流入することから、図4にDで示すようにエンジン温度Tは上昇から下降に転じて急激に低下する。
[0040]
 この温度低下に伴う補正後水温偏差ΔTの縮小に呼応して、表1から算出される目標ラジエータ開度tgtAに基づき流路切換弁12が閉側制御される。このときの流路切換弁12の制御速度θspdは表3に基づき設定され、図4に実線Ebで示すように迅速に流路切換弁12が閉側制御される。従って、エンジン温度Tの低下が速やかに抑制され、図4に実線Fbで示すようにエンジン温度Tは目標水温tgtTから低温側にそれほど逸脱することなく上昇に転じる。目標水温tgtTを大きく逸脱したエンジン温度Tの低下は、オイル粘度の増加や燃料の気化不良を引き起こすが、このような事態を未然に防止してエンジン1を良好な温度域に保つことができるため、その燃費及び排ガス特性を向上することができる。
[0041]
 本実施形態のエンジン1の冷却制御の意義は、以下のように捉えることもできる。電子制御式の冷却装置が実用化された当初はサーモスタットの特性を模擬して、流路切換弁を比較的緩やかに開閉させる特性が付与される場合が多かった。また当時はエンジンの過熱防止が重要視されていたため、この観点からは、エンジン温度Tの急激な上昇を抑制すべく、流路切換弁の閉弁時よりも寧ろ開弁時の制御速度を高めることを優先すべきと考えられていた。しかしながら、何れの制御特性でも、図4に基づき述べたような冷却水温の急激な低下を回避できない。
[0042]
 このような不具合は、上記した流路切換弁12の開側制御によりラジエータ9内の低温の冷却水がウォータージャケット3に流入する現象に起因するが、これとは別に、エンジン1からの受熱による水温上昇よりも、ラジエータ9での冷却による水温低下の方が急激に生起されるという、エンジン1が本来有する特性も影響している。一方で近年の燃費や排ガス特性に関する要求を満足するには、エンジン1の過熱防止よりも、オイル粘度の増加や燃料の気化不良の要因になるエンジン1の過冷却を防止することが重要である。
[0043]
 以上のようにエンジン1が本来有する特性及び燃費や排ガス特性に関する要求の双方の観点から、エンジン1の過冷却の防止を優先した冷却制御が求められていることが判る。そして、このような要求は本実施形態のように流路切換弁12の開弁時に比較して閉弁時の制御速度θspdを高めた冷却制御により達成でき、結果として上記した作用効果を達成できるのである。
[0044]
 一方、目標開度算出部24では、記憶装置15bに記憶された表1の制御マップに基づき補正後水温偏差ΔTから目標ラジエータ開度tgtAが算出される。従って、補正後水温偏差ΔTに基づくPI制御だけでなく、制御マップの特性を反映して流路切換弁12のロータ角度θがフィードバック制御される。例えば表1の制御マップは、補正後水温偏差ΔTの増加に対して目標ラジエータ開度tgtAが急増する特性のため、エンジン温度Tの上昇を確実に抑制できる。このようにマップ特性の設定に基づきフィードバック制御の内容を任意に変更できるため、エンジン1を一層良好な温度域に保つことができる。
[0045]
 以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、乗用車に搭載されるエンジン1の冷却装置2として具体化したが、本発明はこれに限るものではない。例えば自動二輪車やATV(All Terrain Vehicle)に搭載されるエンジン用の冷却装置に具体化してもよい。また、図1に示す冷却装置2の水路の構成に関しても、これに限るものではなく任意に変更可能である。

符号の説明

[0046]
 1   エンジン
 9   ラジエータ
 12  流路切換弁(流量調整部)
 15b 記憶装置(第1の記憶部、第2の記憶部)
 17  第1水温センサ(水温検出部)
 21  目標水温算出部
 22  偏差算出部
 23  PI制御部(水温偏差補正部)
 24  目標開度算出部
 25  開閉方向判定部
 26  制御速度算出部
 27  バルブ制御部

請求の範囲

[請求項1]
 エンジンとラジエータとの間で循環する冷却水の流量を調整する流量調整部と、
 前記エンジンを流通する冷却水の温度を検出する水温検出部と、
 前記エンジンの運転状態に基づき冷却水の目標水温を算出する水温検出部と、
 前記水温検出部により検出された水温と前記水温検出部により算出された目標水温とに基づき水温偏差を算出する偏差算出部と、
 前記偏差算出部により算出された水温偏差に基づき、前記目標水温を達成するための前記流量調整部の目標開度を算出する目標開度算出部と、
 前記目標開度算出部により算出された目標開度の変化状態に基づき、前記流量調整部の開閉方向を判定する開閉方向判定部と、
 前記偏差算出部により算出された水温偏差に基づき前記流量調整部の制御速度を算出し、前記開閉方向判定部により判定された開閉方向が閉側の場合には、判定された開閉方向が開側の場合に比較して高い制御速度を算出する制御速度算出部と、
 前記目標開度算出部により算出された目標開度及び前記制御速度算出部により算出された制御速度に基づき、前記流量調整部の開度を制御するバルブ制御部と
を備えたことを特徴とするエンジンの冷却装置。
[請求項2]
 予め設定された水温偏差と目標開度との関係を記憶する第1の記憶部をさらに備え、
 前記目標開度算出部は、前記第1の記憶部に記憶された関係に基づき前記水温偏差から前記目標開度を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの冷却装置。
[請求項3]
 前記水温偏差を基本水温偏差とし、前記基本水温偏差の少なくとも比例項及び積分項に基づき補正後水温偏差を算出する水温偏差補正部をさらに備え、
 前記第1の記憶部は、前記補正後水温偏差と前記目標開度との関係を記憶し、
 前記目標開度算出部は、前記補正後水温偏差に基づき前記目標開度を算出し、
 前記開閉方向判定部は、前記補正後水温偏差に基づき算出された前記目標開度に基づき開閉方向を判定し、
 前記制御速度算出部は、前記基本水温偏差に基づき前記制御速度を算出し、
 前記バルブ制御部は、前記補正後水温偏差に基づき算出された目標開度に基づき前記流量調整部の開度を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載のエンジンの冷却装置。
[請求項4]
 予め設定された水温偏差と前記流量調整部の開側の制御速度との関係、及び前記流量調整部の応答速度以上の制御速度である非制限値を記憶する第2の記憶部をさらに備え、
 前記制御速度算出部は、前記開閉方向判定部により判定された開閉方向が開側の場合には、前記第2の記憶部に記憶された関係に基づき前記水温偏差から前記制御速度を算出し、判定された開閉方向が閉側の場合には、前記水温偏差に関わらず前記第2の記憶部に記憶された非制限値を制御速度とする
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のエンジンの冷却装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]