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1. WO2014148416 - METHOD FOR MANUFACTURING CATALYTIC CRACKING CATALYST FOR HYDROCARBON OIL

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明 細 書

発明の名称 炭化水素油の接触分解触媒の製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

先行技術文献

特許文献

0006  

発明の開示

発明が解決しようとする課題

0007   0008   0009  

課題を解決するための手段

0010   0011  

発明の効果

0012  

発明を実施するための形態

0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089  

実施例

0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116  

産業上の利用可能性

0117  

請求の範囲

1  

明 細 書

発明の名称 : 炭化水素油の接触分解触媒の製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、炭化水素油の接触分解触媒の製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 近年、地球環境意識の高まりや温暖化への対策が重要視されるようになり、自動車の排気ガスについても、環境に与える影響を考慮して、そのクリーン化が望まれるようになっている。自動車の排気ガスのクリーン化は、自動車の排気ガス浄化性能とガソリンの燃料組成に影響を受けることが一般的に知られており、特に石油精製産業においては、高品質なガソリンを提供することが求められている。
[0003]
 ガソリンは、原油の精製工程で得られる複数のガソリン基材を混合することによって製造されている。特に、重質炭化水素油の流動接触分解反応によって得られるガソリン留分(以下、適宜FCCガソリンと称する)は、ガソリンへの配合量が多く、ガソリンの品質に与える影響が非常に大きい。
[0004]
 重質炭化水素油の接触分解反応は、石油精製工程で得られる低品位な重質油を接触分解することによって、軽質な炭化水素油へと変換する反応であるが、FCCガソリンを製造する際に、副生成物として、水素・コーク、液化石油ガス(Liquid Petroleum Gas(LPG))、中間留分である軽質分解軽油(Light Cycle Oil(LCO))、重質留分である重質分解軽油(Heavy Cycle Oil(HCO))や分解ボトム油(Slurry Oil(SLO))等の留分も生産される。
 このため、重質炭化水素油に対する分解活性が高く、FCCガソリンの収率が高く、更にはオクタン価の高い高品質なFCCガソリンが得られる、FCCガソリンを効率的に製造し得る流動接触分解触媒(以下、適宜FCC触媒と称する)が求められるようになっている。
[0005]
 ところで、近年の原油の重質化・低品位化に伴い、バナジウムやニッケル等の重金属や残留炭素分の含有量が高い重質炭化水素油を流動接触分解処理せざるを得なくなっている。
 バナジウムは、FCC触媒に沈着し堆積すると、FCC触媒の活性成分であるゼオライトの構造を破壊するため、触媒の著しい活性低下をもたらし、かつ水素・コークの生成量を増大させ、ガソリンの選択性(FCCガソリンの収率)を低下させる等の技術課題が存在することが知られている。
 また、ニッケルも、FCC触媒表面に沈着堆積し、脱水素反応を促進するため、水素・コークの生成量を増加させ、ガソリンの選択性(FCCガソリンの収率)を低下させる等の技術課題が存在している。
 このような原油の重質化・低品位化に対応するために、分解活性に優れた触媒の開発が望まれており、本願出願人等は、先にリンを含有させたFCC触媒を提案するに至っている(例えば、特許文献1(特開2010-247146号公報)参照)。

先行技術文献

特許文献

[0006]
特許文献1 : 特開2010-247146号公報

発明の開示

発明が解決しようとする課題

[0007]
 上記技術課題を解決するため、本発明者等が鋭意検討した結果、ソーダライトケージ構造を有するゼオライトを20~50質量%、シリカゾル由来のケイ素をSiO 換算で10~30質量%、第一リン酸アルミニウム由来のリン・アルミニウムをAl ・3P 換算で0.1~21質量%および粘土鉱物を5~65質量%含有する接触分解触媒により、重質炭化水素油を高度に分解し得るとともに、オクタン価が高いガソリン留分を高い得率で生産し得ることを見出した。
[0008]
 一方、接触分解触媒としては、重質炭化水素油に対する分解活性がさらに高く、よりオクタン価が高いガソリン留分を一層高い得率で生産し得るものが求められている。
[0009]
 このような状況下、本発明は、重質炭化水素油に対する分解活性が高く、オクタン価が高いガソリン留分を高い得率で生産することができる炭化水素油の接触分解触媒を簡便に製造する方法を提供することを目的とするものである。

課題を解決するための手段

[0010]
 上記技術課題を解決するために、本発明者等がさらに検討を加えた結果、上記接触分解触媒の原料成分を所定量含有する水性スラリーを調製した後、5~200分間熟成し、次いで噴霧乾燥処理することにより、所望性状を有する接触分解触媒を簡便に製造し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
[0011]
 すなわち、本発明は、炭化水素油の接触分解触媒を製造する方法であって、固形分換算したときに、ソーダライトケージ構造を有するゼオライトを20~50質量%、シリカゾルをSiO 換算で10~30質量%、第一リン酸アルミニウムをAl ・3P 換算で0.1~21質量%および粘土鉱物を5~65質量%含有する水性スラリーを調製した後、5~200分間熟成し、次いで噴霧乾燥処理することを特徴とする炭化水素油の接触分解触媒の製造方法を提供するものである。

発明の効果

[0012]
 本発明によれば、重質炭化水素油に対する分解活性が高く、オクタン価が高いガソリン留分を高い得率で生産することができる炭化水素油の接触分解触媒を簡便に製造する方法を提供することができる。

発明を実施するための形態

[0013]
 本発明に係る炭化水素油の接触分解触媒の製造方法は、固形分換算したときに(乾燥基準で)、ソーダライトケージ構造を有するゼオライトを20~50質量%、シリカゾルをSiO 換算で10~30質量%、第一リン酸アルミニウムをAl ・3P 換算で0.1~21質量%および粘土鉱物を5~65質量%含有する水性スラリーを調製した後、5~200分間熟成し、次いで噴霧乾燥処理することを特徴とするものである。
[0014]
(ソーダライトケージ構造を有するゼオライト)
 本発明において、ソーダライトケージ構造を有するゼオライトとは、ソーダライトケージ構造、すなわちアルミニウム及びケイ素四面体を基本単位とし、頂点の酸素をアルミニウム又はケイ素が共有することにより形成される立体的な正八面体の結晶構造の各頂点を切り落とした、四員環や六員環等により規定される十四面体結晶構造により構成される空隙を有し、このソーダライトケージ同士が結合する場所や方法が変化することによって、種々の細孔構造、骨格密度、チャンネル構造を有するものを意味する。
[0015]
 上記ソーダライトケージ構造を有するゼオライトとしては、ソーダライト、A型ゼオライト、EMT、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、安定化Y型ゼオライト等から選ばれる一種以上を挙げることができ、安定化Y型ゼオライトであることが好ましい。
[0016]
 安定化Y型ゼオライトは、Y型ゼオライトを出発原料として合成され、Y型ゼオライトと比較して、結晶化度の劣化に対して耐性を示すものであり、一般には、Y型ゼオライトに対し高温での水蒸気処理を数回行った後、必要に応じて、塩酸等の鉱酸、水酸化ナトリウム等の塩基、フッ化カルシウム等の塩、エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤で処理することにより作製されてなるものである。
 上記方法で得られた安定化Y型ゼオライトは、水素、アンモニウムあるいは多価金属から選ばれるカチオンでイオン交換された形で使用することができる。また、安定化Y型ゼオライトとして、より安定性に優れたヒートショック結晶性アルミノシリケートゼオライト(特許第2544317号公報参照)を使用することもできる。
[0017]
 安定化Y型ゼオライトとしては、
(I)化学組成分析によるバルクのSiO /Al モル比が4~15で、好ましくは5~10であり、
(II)単位格子寸法が24.35~24.65Åで、好ましくは24.40~24.60Åであり、
(III)ゼオライト内の全Al原子数に対するゼオライト骨格を形成するAl原子数の比(モル比)が0.3~1.0で、好ましくは0.4~1.0である
ものが好ましい。
 この安定化Y型ゼオライトは、天然のフォージャサイトと基本的に同一の結晶構造を有し、酸化物として下記組成式 
(0.02~1.0)R 2/mO・Al ・(5~11)SiO ・(5~8)H
(上記組成式において、Rは、Na、Kその他のアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンを表し、mはRの原子価を表している)を有している。
[0018]
 上記(I)化学組成分析によるバルクのゼオライトのSiO /Al モル比は、得られる接触分解触媒の酸強度を示しており、上記モル比が大きいほど得られる接触分解触媒の酸強度が強くなる。上記SiO /Al モル比が4以上であることにより、重質炭化水素油の接触分解に必要な酸強度を得ることができ、その結果分解反応を好適に行うことができる。また、上記SiO /Al モル比が15以下であることにより、得られる接触分解触媒の酸強度が強くなり、必要な酸の数を確保でき、重質炭化水素油の分解活性を確保し易くなる。
[0019]
 上記(I)化学組成分析によるバルクのゼオライトのSiO /Al モル比は、誘導結合プラズマ(ICP)により測定することができる。
[0020]
 上記(II)ゼオライトの単位格子寸法は、ゼオライトを構成する単位ユニットのサイズを示すものであるが、上記単位格子寸法が24.35Å以上であることにより、重質油の分解に必要なAl原子数が適当数となり、その結果分解反応を好適に行うことができる。また、上記単位格子寸法が24.65Å以下であることにより、ゼオライト結晶の劣化を抑制しやすくなり、触媒の分解活性の低下を抑制しやすくなる。
[0021]
 上記(II)安定化Y型ゼオライトにおける単位格子寸法は、X線回折装置(XRD)により測定することができる。
[0022]
 上記(III)ゼオライト内の全Al原子数に対するゼオライト骨格を形成するAl原子数の比(モル比)に関し、ゼオライト結晶を構成するAlの量が多くなりすぎると、ゼオライトの骨格から脱落したAl 粒子が多くなり、強酸点を発現しないために接触分解反応が進行しなくなる場合があるが、ゼオライト内の全Al原子数に対するゼオライト骨格を形成するAl原子数の比(モル比)が0.3以上であることにより、上記現象を回避することができる。また、上記比が1.0に近い場合には、ゼオライト内のAlの多くがゼオライト単位格子に取り込まれていることを意味し、ゼオライト内のAlが強酸点の発現に効果的に寄与するため好ましい。
[0023]
 上記(III)ゼオライト内の全Al原子数に対するゼオライト骨格を形成するAl原子数の比(モル比)は、(I)化学組成分析によるバルクのSiO /Al 比(I)及び(II)単位格子寸法から、下記数式(A)~(C)を用いて算出することができる(なお、数式(A)は、H.K.Beyer et al.,J.Chem.Soc.,Faraday Trans.1,(81),2899(1985).に記載の式を採用したものである)。
[0024]
(A)N Al=(a0-2.425)/0.000868
(数式(A)において、N Alは単位格子あたりのAl原子数(個)、a0は単位格子寸法(nm)、2.425は単位格子骨格内の全Al原子が骨格外に脱離したときの単位格子寸法(nm)、0.000868(nm/個)は実験により求めた計算値であり、a0とN Alについて1次式で整理したとき(a0=0.000868N Al+2.425)の傾きを表している。)
(B)(Si/Al)計算式=(192-N Al)/N Al
(数式(B)において、(Si/Al)計算式はバルクのゼオライトにおける計算上のSiO /Al モル比であり、N Alは数式(A)により算出される単位格子あたりのAl原子数(個)であり、192はY型ゼオライトの単位格子寸法あたりのSi原子とAl原子の原子数の総数(個)である。)
(C)ゼオライト内の全Al原子数に対するゼオライト骨格を形成するAl原子数の比(モル比)=(化学組成分析によるバルクのゼオライトのSiO /Al モル比)/(Si/Al)計算式
(数式(C)において、(Si/Al)計算式は数式(B)により算出されるバルクのゼオライトにおける計算上のSiO /Al モル比である。)
[0025]
 本発明の製造方法においては、上記ソーダライトケージ構造を有するゼオライトを用いることによって、所望の高分解活性を発揮することができる。
[0026]
 本発明の製造方法において、水性スラリーは、固形分換算したときに、ソーダライトケージ構造を有するゼオライトを20~50質量%含むものであり、30~45質量%含むものであることが好ましく、35~45質量%含むものであることがより好ましい。
[0027]
 ソーダライトケージ構造を有するゼオライトの含有量が20質量%以上であることにより、得られる接触分解触媒が所望の分解活性を得ることができ、また、ソーダライトケージ構造を有するゼオライトの含有量が50質量%以下であることにより、得られる接触分解触媒が粘土鉱物や、シリカゾル由来のケイ素、第一リン酸アルミニウム由来のリン・アルミニウム等の結合剤由来成分を容易に所望量含有することができることから、得られる接触分解触媒に所望の強度や嵩密度を付与しつつ、接触分解装置を好適に運転することができる。
[0028]
(シリカゾル)
 本発明の製造方法において、水性スラリーは、固形分換算したときに、シリカゾルをSiO 換算で10~30質量%含む。
[0029]
 本発明の製造方法において、シリカゾルとしては、水溶性のシリカゾルであることが好ましい。
 シリカゾルには、幾つかの種類が知られており、コロイダルシリカを例に挙げれば、ナトリウム型、リチウム型、酸型等があるが、本発明の製造方法においてはいずれの型のシリカゾルを使用してもよい。
 また、商業的規模で生産する場合には、希釈水ガラス水溶液と硫酸水溶液とを反応させて得られるシリカヒドロゾル等を使用することもできる。
 シリカゾルとしては、ゾル状である限りにおいてはそのSiO 換算濃度は特に制限されず、例えば10質量%程度のものから50質量%程度のものまで幅広く使用することができる。
[0030]
 本発明の製造方法において、水性スラリーは、固形分換算したときに、シリカゾルをSiO 換算で10~30質量%含有するものであり、15~30質量%含有することが好ましく、15~25質量%含有することがより好ましい。
 本発明の製造方法において、水性スラリーが、固形分換算したときに、シリカゾルをSiO 換算で10質量%以上含有することにより、得られる接触分解触媒に所望強度を付与することができるため、触媒の散飛や、生成油中への混入等の好ましくない現象を回避することができ、また、水性スラリーが、固形分換算したときに、シリカゾルをSiO 換算で30質量%以下含有することにより、得られる接触分解触媒において、使用量に見合った触媒性能の向上が認められ、経済的に有利となる。
[0031]
 本発明の製造方法で得られる接触分解触媒、通常、上記シリカゾル由来のケイ素を酸化物の状態で含有している。
 シリカゾルは接触分解触媒の製造時に結合剤として機能するものであり、接触分解触媒の調製時に加熱されて酸化されるものであるが、接触分解触媒の調製時にシリカゾルを使用することにより、ゼオライトや粘度鉱物を造粒化(微粒子化)する際の成形性を向上させ、容易に球状化することができ、また、得られる接触分解触媒の流動性及び耐摩耗性を容易に向上させることができる。
[0032]
(第一リン酸アルミニウム)
 本発明の製造方法において、水性スラリーは、固形分換算したときに、第一リン酸アルミニウム由来のリン・アルミニウムをAl ・3P 換算で0.1~21質量%含む。
[0033]
 第一リン酸アルミニウムは、一般式[Al(H PO ]で示される水溶性の酸性リン酸塩であり、第一リン酸アルミニウム、モノリン酸アルミニウム又は重リン酸アルミニウムとも称される。
 第一リン酸アルミニウムは加熱によって脱水され、水分を失うと、酸化物形態(リン酸アルミニウム酸化物(AlPO ))となって安定化する。また、第一リン酸アルミニウムは、他のアルミニウム源と比較して、水溶液中で多核錯体のポリマーとして存在しており、表面に多量の水酸基を含有しているため、強い結合力を発揮することができ、このために、接触分解触媒の製造時に結合剤として好適に機能する。
 また、本発明の製造方法で得られる接触分解触媒が、第一リン酸アルミニウム由来のリン・アルミニウムを含有することによって、酸性質が変化して酸点が増加し、それに伴って分解活性が向上する。
 従って、本発明の製造方法で得られる接触分解触媒は、第一リン酸アルミニウム由来のリン・アルミニウムを含有するものであることによって、所期の高い分解活性を発揮するとともに、オクタン価の高い高品質なガソリン留分を製造することができる。
[0034]
 第一リン酸アルミニウムとしては、特に制限はなく、Al ・3P 換算濃度が、例えば30質量%~95質量%であるものから適宜選択することができる。
 第一リン酸アルミニウムのAl ・3P 換算濃度は、第一リン酸アルミニウムを高温炉で800℃の温度条件下3時間加熱処理した際の重量減少率から算出することができる。
 また、第一リン酸アルミニウムとしては、本発明の製造方法で得られる接触分解触媒の性能に影響しない範囲の不純物を含有するものであってもよく、例えば10質量%以下の含有量で、ホウ素やマグネシウムなどの金属分を含有するものであってもよいし、乳酸などの有機化合物を含有するものであってもよい。
[0035]
 本発明の製造方法において、水性スラリーは、固形分換算したときに、第一リン酸アルミニウムを、Al ・3P 換算で、0.1~21質量%含み、0.1~10質量%含むことが好ましく、0.5~10質量%含むことがより好ましく、0.5~5質量%含むことがさらに好ましい。
 水性スラリーが、固形分換算したときに、第一リン酸アルミニウムをAl ・3P 換算で0.1質量%以上含有することにより、得られる接触分解触媒において炭化水素油の分解活性が向上し、また、第一リン酸アルミニウムをAl ・3P 換算で21質量%以下含有することにより、使用量に見合った触媒性能の向上が認められ、かつ、オクタン価が高いガソリン留分を製造することができる。
[0036]
 本発明の製造方法において、上記シリカゾルや第一リン酸アルミニウムは、触媒調製時に加熱処理されることによって接触分解触媒中に酸化物として含有されるものである。
 本発明の製造方法においては、水性スラリーの調製時に結合剤としてアルミナゾル等の他の結合剤を含有させてもよく、この場合、触媒造粒物中にアルミナゾルが酸化物として含有されることになる。
[0037]
 上記アルミナゾルとしては、塩基性塩化アルミニウム[Al (OH) Cl 6-n(ただし、0<n<6、m≦10)、無定形のアルミナゾル、擬ベーマイト型のアルミナゾル、市販のアルミナゾル、更にジブサイト、バイアライト、ベーマイト、ベントナイト、結晶性アルミナを酸溶液中に溶解させた粒子等を使用することができるが、好ましくは塩基性塩化アルミニウムである。
 アルミナゾルも、加熱によって脱水され、水分を失うと、酸化物形態となって安定化する。
[0038]
 本発明の製造方法において、水性スラリー中における、シリカゾル由来のケイ素原子に対する第一リン酸アルミニウム由来のリン原子のモル比(以下、適宜「リン/ケイ素モル比」と称する。)を、好ましくは0.01~0.75、より好ましくは0.01~0.35の範囲とすることが好ましい。
 水性スラリー中におけるリン/ケイ素モル比が0.01以上であることにより、より高い分解活性を有する接触分解触媒を得ることができ、また、水性スラリー中におけるリン/ケイ素モル比が0.75以下であることにより、よりオクタン価の高いFCCガソリンを生成し得る触媒が得られるため好ましい。
 上記リン/ケイ素モル比は、第一リン酸アルミニウムおよびシリカゾルの配合量を調節することにより制御することができる。
[0039]
(粘土鉱物)
 本発明の製造方法において、水性スラリーは、固形分換算したときに、粘土鉱物を5~65質量%含む。
[0040]
 粘土鉱物としては、モンモリロナイト、カオリナイト、ハロイサイト、ベントナイト、アタパルガイト、ボーキサイト等を挙げることができる。
 また、本発明の製造方法においては、シリカ、シリカ-アルミナ、アルミナ、シリカ-マグネシア、アルミナ-マグネシア、リン-アルミナ、シリカ-ジルコニア、シリカ-マグネシア-アルミナ等の通常の接触分解触媒に使用される公知の無機酸化物の微粒子を上記粘土鉱物と併用することもできる。
[0041]
 本発明の製造方法において、水性スラリーは、固形分換算したときに、粘土鉱物を5~65質量%含むものであり、5~60質量%含むものであることが好ましく、10~60質量%含むものであることがより好ましい。
 水性スラリー中の粘土鉱物の含有割合が固形分換算したときに5質量%以上であることにより、得られる接触分解触媒の触媒強度を向上させるとともに、触媒の嵩密度を維持して接触分解装置を好適に運転することができる。また、水性スラリー中の粘土鉱物の含有割合が固形分換算したときに65質量%以下であることにより、ソーダライトケージ構造を有するゼオライトや、シリカゾルや第一リン酸アルミニウム等の結合剤を一定割合で含有させて、所望量の結合剤の存在下に容易に触媒調製を行うことができ、所期の分解活性を有する接触分解触媒を容易に調製することができる。
[0042]
 本発明の製造方法においては、接触分解触媒の調製時に希土類金属をさらに付与することにより、希土類金属を含有する接触分解触媒を得てもよい。
[0043]
 希土類金属としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウム、ディスプロシウム、ホルミウム等から選ばれる一種以上を挙げることができ、これ等のうち、ランタン又はセリウムが好ましい。
 本発明の製造方法において、得られる接触分解触媒が希土類金属をさらに含有することにより、ゼオライト結晶の崩壊を抑制し、触媒の耐久性を向上させることができる。
[0044]
 本発明の製造方法においては、得られる接触分解触媒が、希土類金属を、酸化物換算で、0~2質量%含むように付与することが好ましく、0~1.5質量%含むように付与することがより好ましく、0.1~1.2質量%含むように付与することがさらに好ましい。
 本発明の製造方法において、得られる接触分解触媒が希土類金属を酸化物換算で上記割合で含有するものであることにより、高分解活性を容易に発揮し得るとともに、オクタン価の高いガソリン留分を容易に製造することができる。
[0045]
 本発明の製造方法において、希土類金属を付与する方法としては、例えば、ソーダライトケージ構造を有するゼオライトに予め希土類金属を担持させ、いわゆる金属修飾型のソーダライトケージ構造を有するゼオライトとし、該金属修飾型のソーダライトケージ構造を有するゼオライトを用いて水性スラリーを調製する態様が挙げられる。
 具体的には、希土類金属の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩等の化合物の単独あるいは2種以上を含有する水溶液を、乾燥状態あるいは湿潤状態にあるソーダライトケージ構造を有するゼオライトにイオン交換あるいは含浸させ、必要に応じて加熱することにより希土類金属を担持して、金属修飾型のソーダライトケージ構造を有するゼオライトを調製した上で、水性スラリー中に混合し、以後の処理を施す方法を挙げることができる。
[0046]
 また、本発明の製造方法において、希土類金属を付与する方法としては、後述する水性スラリーの熟成、乾燥処理後にイオン交換による洗浄処理を施した後、得られた微小球体を再度乾燥する前に、希土類金属によるイオン交換を行う態様を挙げることもできる。
 この場合においても、具体的には、希土類金属の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩等の化合物の単独あるいは2種以上を含有する水溶液を、上記微小球体にイオン交換あるいは含浸させ、必要に応じて加熱することにより、希土類金属を担持した微小球体を調製し、以後の処理を施す方法を挙げることができる。
[0047]
 本発明の製造方法においては、接触分解触媒の調製時に希土類金属以外の金属をさらに付与することにより、希土類金属以外の金属を含有する接触分解触媒を調製してもよい。
[0048]
(スラリーの調製)
 本発明の製造方法において、水性スラリーを調製する方法としては、上記各成分を所定の割合で混合し、均一に分散し得る方法であれば特に制限されない。
 水性スラリーの調製時に使用する水性溶媒としては、水や、水および親水性溶媒の混合溶媒を挙げることができるが、水であることが好ましい。
[0049]
 水性スラリーを調製する方法としては、例えば、先ず、シリカゾルを水中に添加し、攪拌して、均一な結合剤水溶液を調製した後、第一リン酸アルミニウム、ソーダライトケージ構造を有するゼオライト及び粘土鉱物を添加し、混合することにより、目的とする均一な水性スラリーを得る方法を挙げることができる。
 また、水性スラリーを調製する方法としては、例えば、先ず、シリカゾルおよび第一リン酸アルミニウムを水中に添加し、混合して、均一な結合剤水溶液を調製した後、ソーダライトケージ構造を有するゼオライト及び粘土鉱物を添加し、混合することにより、目的とする均一な水性スラリーを得る方法を挙げることもできる。
 このように、第一リン酸アルミニウムは、結合剤水溶液の調製段階で添加してもよいし、ソーダライトケージ構造を有するゼオライト及び粘土鉱物の添加段階で添加してもよく、第一リン酸アルミニウムを任意段階で添加することにより本発明の効果を発揮することができる。
[0050]
 水性スラリーを調製する方法としては、ソーダライトケージ構造を有するゼオライト、シリカゾル、第一リン酸アルミニウムおよび粘土鉱物を同時に水中に添加し、混合することにより、目的とする均一な水性スラリーを得る方法を挙げることもできる。
[0051]
 水性スラリーを調製する何れの方法においても、調製に使用する全成分を水性溶媒中に添加した後、攪拌混合することが好ましく、攪拌混合時間は、各成分が均一に分散し得る限り特に制限されないが、2分間以上が好ましく、5分間以上がより好ましく、10分間以上がさらに好ましい。
 上記攪拌混合時間の上限は特に制限されないが、長時間攪拌しても攪拌効果は飽和することになるので、攪拌効果を考えると、攪拌時間は60分間以下が好ましく、45分間以下がより好ましく、30分間以下がさらに好ましい。
 調製に使用する全成分を水性溶媒中に添加した後、2分間以上攪拌して混合することにより、第一リン酸アルミニウムとゼオライトとを十分に接触させることができ、詳細は不明であるが、ゼオライト周辺に第一リン酸アルミニウムを存在させることにより、ゼオライト骨格構造を安定化させることができると考えられる。
[0052]
 水性スラリーの調製時に使用される攪拌混合装置は、各成分を均一に分散し得る限り特に制限されないが、例えば、プロペラ攪拌機、加温型スタラー、ディスパーサー等を挙げることができる。調製に使用する全成分を水性溶媒中に添加した後、攪拌して混合することにより、第一リン酸アルミニウムとゼオライトとを十分に接触させることができ、詳細は不明であるが、ゼオライト周辺に第一リン酸アルミニウムを存在させることにより、ゼオライト骨格構造を安定化させることができると考えられる。
 本発明の製造方法において、攪拌混合して水性スラリーを調製する場合、上記各成分が均一に分散された水性スラリーが得られるように、攪拌速度や攪拌時間等を適宜調整する。
[0053]
 水性スラリーの調製は、10~80℃の温度雰囲気下で行うことが好ましく、20~70℃の温度雰囲気下で行うことがより好ましく、25~65℃の温度雰囲気下で行うことがさらに好ましい。
[0054]
 上記水性スラリー中の固形分の含有割合は、5~60質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましい。水性スラリー中の固形分の含有割合が上記範囲内であることにより、水性スラリーの乾燥時に蒸発させる水分量が適当量となり、簡便に乾燥を行うことができ、また、スラリーの粘度上昇を招くことなく、簡便に輸送することができる。
[0055]
(熟成)
 本発明の製造方法においては、上記水性スラリーを調製した後、5~200分間熟成する。
 本発明の製造方法において、熟成とは、上記水性スラリーを調製した後、噴霧乾燥処理を行うまでの間、一定時間水性スラリーの状態を保持することを意味する。
[0056]
 本発明の製造方法において、上記熟成は、5~200分間行い、10~100分間行うことが好ましく、15~60分間行うことがより好ましい。
 熟成時間が5分間以上であることにより、水性スラリー中に含有される触媒構成成分同士の相互作用が十分に進行し、また、熟成時間が200分以内であることにより、触媒構成成分同士の相互作用を効率的に進行させることができ、また所望の構造を有する接触分解触媒を好適に製造し得ると考えられる。
[0057]
 本発明の製造方法において、上記熟成を行う温度も特に制限されないが、10~80℃であることが好ましく、20~70℃であることがより好ましく、25~65℃であることがさらに好ましい。
[0058]
 本発明の製造方法において、接触分解触媒を調製する方法としては、バッチ方式および連続調製方式の何れも採用することができる。
[0059]
 バッチ方式で接触分解触媒を調製する場合、上記熟成は、例えば、混合槽内で調製した水性スラリーを槽内または槽外に取り出した状態で所定時間静置することにより実施することができる。
[0060]
 連続調製方式で接触分解触媒を調製する場合、上記熟成は、例えば、混合槽内で調製した水性スラリーを混合槽の下部から配管を通じて抜き出した水性スラリーを、次工程である噴霧乾燥工程まで送達される時間が所定時間になるように配管の長さや太さまたは水性スラリーの搬送速度を調整することにより、制御することができる。
[0061]
 接触分解触媒の調製においては、従来、水性スラリーの調製後、その変質を低減するために、水性スラリーの調製直後に次工程の処理が施されていたが、本発明の製造方法においては、水性スラリーを所定時間熟成することにより、各成分の相互作用が進行して、このために所望性状を発揮し得る特定構造を有する接触分解触媒を予備調製し得ると考えられる。
[0062]
 本発明の製造方法においては、上記熟成処理を施すことなく、水性スラリーの調製直後に噴霧乾燥処理を施すだけでも重質炭化水素油に対して高い分解活性を有する等、優れた触媒性能を示す接触分解触媒を得ることができるが、驚くべきことに、本発明者等の検討によれば、上記水性スラリーを調製した後、所定時間熟成し次いで噴霧乾燥処理することにより、一層高い分解活性を有する等、さらに優れた触媒性能を示す接触分解触媒を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
[0063]
(噴霧乾燥)
 本発明の製造方法においては、上記水性スラリーを熟成処理した後、噴霧乾燥処理する。
 熟成処理した水性スラリーを噴霧乾燥することにより、微小球体(触媒あるいは触媒前駆体)を得ることができる。
 上記噴霧乾燥は、噴霧乾燥装置により、200~600℃のガス入口温度、及び100~300℃のガス出口温度の条件下に行うことが好ましい。
 噴霧乾燥により得られる微小球体は、20~150μmの粒子径、5~30質量%の水分を含有するものであることが適当である。
 上記微小球体が過剰のアルカリ金属や可溶性の不純物等を含まないものである場合は、そのまま目的とする接触分解触媒とすることができる。
 なお、本出願書類において、上記微小球体の粒子径は、JIS Z 8815に準拠して測定した値を意味するものとし、上記微小球体の水分量は、加熱炉において800℃で3時間加熱処理を行い、加熱前後の質量変化量を水分脱離量としてみなして算出した値を意味するものとする。
[0064]
 本発明の製造方法においては、上記乾燥処理して得られた微小球体に対し、さらに必要に応じて、公知の方法で洗浄処理及びイオン交換処理を行い、各種原料から持ち込まれる過剰のアルカリ金属や可溶性の不純物等を除去してもよい。
[0065]
 上記の洗浄処理は、具体的には、水又はアンモニア水により行うことができ、水又はアンモニア水で洗浄することにより、可溶性不純物の含有量を低減させることができる。
[0066]
 イオン交換処理は、具体的には、硫酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム、チオ硫酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、ホスフィン酸アンモニウム、ホスホン酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウムなどのアンモニウム塩の水溶液によって行うことができ、このイオン交換によって微小球体に残存するナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属を低減させることができる。
[0067]
 上記洗浄処理は、通常イオン交換処理に先立って行われるが、洗浄処理及びイオン交換処理が好適に施される限りにおいては、イオン交換処理を先に行ってもよい。
[0068]
 上記洗浄処理及びイオン交換処理は、アルカリ金属の含有量及び可溶性不純物の含有量が所望量以下になるまで行うことが好ましく、アルカリ金属の含有量及び可溶性不純物の含有量が所望量以下であることにより、触媒活性を好適に高めることができる。
[0069]
 本発明の製造方法において、微小球体は、乾燥触媒基準で、アルカリ金属の含有量が、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、可溶性不純物の含有量が、2.0質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましい。
[0070]
 上記の洗浄処理及びイオン交換処理が施された微小球体は、再度乾燥処理することが好ましい。この乾燥処理は、100~500℃の温度の温度条件下、微小球体の水分含有量が1~25質量%になるまで行うことが好ましい。
[0071]
 本発明の製造方法においては、このようにして、目的とする接触分解触媒を調製することができる。
 本発明の製造方法によれば、重質炭化水素油に対する分解活性が高く、オクタン価が高いガソリン留分を高い得率で生産することができる炭化水素油の接触分解触媒を簡便に製造する方法を提供することができる。
[0072]
 本発明の製造方法で得られる接触分解触媒は、調製時に用いた各成分の原料に由来して、ソーダライトケージ構造を有するゼオライトを20~50質量%、シリカゾル由来のケイ素をSiO 換算で10~30質量%、第一リン酸アルミニウム由来のリン・アルミニウムをAl ・3P 換算で0.1~21質量%、粘土鉱物を5~65質量%含有するものである。
[0073]
 本発明の製造方法で得られる接触分解触媒は、ソーダライトケージ構造を有するゼオライトを20~50質量%含むものであり、30~45質量%含むものであることが好ましく、35~45質量%含むものであることがより好ましい。
 ソーダライトケージ構造を有するゼオライトの含有量が20質量%以上であることにより、所望の分解活性を得ることができ、また、ソーダライトケージ構造を有するゼオライトの含有量が50質量%以下であることにより、粘土鉱物や、シリカゾル由来のケイ素、第一リン酸アルミニウム由来のリン・アルミニウム等の結合剤由来成分を容易に所望量含有することができることから、得られる接触分解触媒の強度や嵩密度を維持しつつ、接触分解装置を好適に運転することができる。
[0074]
 本発明の製造方法で得られる接触分解触媒は、シリカゾル由来のケイ素をSiO 換算で10~30質量%含有するものであり、15~30質量%含有することが好ましく、15~25質量%含有することがより好ましい。
 シリカゾル由来のケイ素の含有量がSiO 換算で10質量%以上であることにより、得られる接触分解触媒の強度が保たれるため、触媒の散飛や、生成油中への混入等の好ましくない現象を回避することができ、また、シリカゾル由来のケイ素の含有量がSiO 換算で30質量%以下であることにより、使用量に見合った触媒性能の向上が認められ、経済的に有利となる。
 なお、本発明の製造方法で得られる接触分解触媒は、通常、シリカゾル由来のケイ素を酸化物の状態で含有している。
[0075]
 本発明の製造方法で得られる接触分解触媒は、第一リン酸アルミニウム由来のリン・アルミニウムを、Al ・3P 換算で、0.1~21質量%含み、0.1~10質量%含むことが好ましく、0.5~10質量%含むことがより好ましく、0.5~5質量%含むことがさらに好ましい。
 第一リン酸アルミニウム由来のリン・アルミニウムの含有量が0.1質量%以上であることにより炭化水素油の分解活性が向上し、また、第一リン酸アルミニウム由来のリン・アルミニウムの含有量が21質量%以下であることにより、使用量に見合った触媒性能の向上が認められ、かつ、オクタン価が高いガソリン留分を製造することができる。
 なお、第一リン酸アルミニウムは加熱によって脱水され、水分を失うと、酸化物形態(リン酸アルミニウム酸化物(AlPO ))となって安定化するものであり、本発明の製造方法で得られる接触分解触媒においても、第一リン酸アルミニウムは酸化物の形態で含有すると考えられる。
[0076]
 本発明の製造方法で得られる接触分解触媒は、粘土鉱物を5~65質量%含むものであり、5~60質量%含むものであることが好ましく、10~60質量%含むものであることがより好ましい。
 粘土鉱物の含有割合が5質量%以上であることにより、得られる接触分解触媒の触媒強度を向上させるとともに、触媒の嵩密度を維持して接触分解装置を好適に運転することができる。また、粘土鉱物の含有割合が65質量%以下であることにより、ソーダライトケージ構造を有するゼオライトや、シリカゾル由来のケイ素や第一リン酸アルミニウム由来のリン・アルミニウム等の結合剤由来成分を一定割合で含有させて、初期の分解活性を維持しつつ、所望量の結合剤の存在下に容易に触媒調製を行うことができる。
[0077]
 本発明の製造方法で得られる接触分解触媒は、任意成分として希土類金属を含むものであって、希土類金属を、酸化物換算で、0~2質量%含むものであることが好ましく、0~1.5質量%含むものであることがより好ましく、0.1~1.2質量%含むものであることがさらに好ましい。
 接触分解触媒が希土類金属を酸化物換算で上記割合で含有するものであることにより、本発明に係る接触分解触媒が、高分解活性を発揮し得るとともに、オクタン価の高いガソリン留分を製造することができる。
[0078]
 本発明の製造方法で得られる接触分解触媒は、シリカゾル由来のケイ素原子に対する第一リン酸アルミニウム由来のリン原子のモル比(リン/ケイ素モル比)が、0.01~0.75であるものが好ましく、0.01~0.35であるものがより好ましい。
 接触分解触媒のリン/ケイ素モル比が0.01以上であることにより、より高い分解活性を有する接触分解触媒を容易に得ることができ、また、接触分解触媒のリン/ケイ素モル比が0.75以下であることにより、より高オクタン価のFCCガソリンを容易に得ることができる。
[0079]
 本発明の製造方法で得られる接触分解触媒は、触媒調製時に結合剤としてアルミナゾル等の結合剤をさらに使用した場合には、当該結合剤に由来する成分としてアルミナゾルの酸化物等の成分をさらに含有する。
[0080]
 本発明の製造方法で得られた接触分解触媒を構成するソーダライトケージ構造を有するゼオライトの含有量、シリカゾル由来のケイ素のSiO 換算した含有量、第一リン酸アルミニウム由来のリン・アルミニウムをAl ・3P 換算した含有量、粘土鉱物の含有量及び希土類金属の酸化物換算した含有量は、触媒調製時に加えた各原料量から算出することができる。
 本発明の方法で得られる接触分解触媒は、流動床式の接触分解装置およびバッチ式の接触分解装置の何れの装置においても好適に使用し得るものであるが、流動床式の接触分解装置において好適に使用することができる。
[0081]
 本発明の製造方法で得られる接触分解触媒は、重質炭化水素油に対する分解活性が高く、オクタン価が高いガソリン留分を高い得率で生産することができるものである。
[0082]
 一般に、炭化水素油の流動接触分解は、その性質上、わずかでも分解活性が向上すると、流動接触分解時に必要となる装置コストや運転コストを低減し得るばかりか、装置に対する運転時の負荷を低減して安定した操業が可能になる。
 さらに、一般に、FCCガソリンは、市販ガソリン(市場に出荷するガソリン)への配合量が多いことから、FCCガソリンのオクタン価向上により生み出される利益は非常に大きい。
 本発明で得られた接触分解触媒は、上述したように、重質炭化水素油に対する分解活性が高く、オクタン価の高いガソリン留分(FCCガソリン)を製造し得るものであるから、実用上極めて有効である。
[0083]
 次に、本発明の製造方法で得られた接触分解触媒を用いた接触分解方法について説明する。
 本発明の製造方法で得られた接触分解触媒を用いた接触分解は、本発明の製造方法で得られた接触分解触媒と炭化水素油(炭化水素混合油)とを接触させることにより実施することができる。
[0084]
 上記接触分解対象となる炭化水素油としては、ガソリンの沸点以上の温度で沸騰する炭化水素油(炭化水素混合物)を挙げることができる。
 このガソリン沸点以上の温度で沸騰する炭化水素油としては、原油の常圧あるいは減圧蒸留で得られる軽油留分や常圧蒸留残渣油及び減圧蒸留残渣油等から選ばれる一種以上を挙げることができ、もちろんコーカー軽油、溶剤脱瀝油、溶剤脱瀝アスファルト、タールサンド油、シェールオイル油、石炭液化油、GTL(Gas to Liquids)油、植物油、廃潤滑油、廃食油等から選ばれる一種以上も挙げることができる。 更に、炭化水素油としては、上記各原料油を当業者に周知の水素化処理、即ちNi-Mo系触媒、Co-Mo系触媒、Ni-Co-Mo系触媒、Ni-W系触媒などの水素化処理触媒の存在下、高温・高圧下で水素化脱硫した水素化処理油も挙げることができる。
[0085]
 商業的規模での炭化水素油の接触分解処理は、通常、垂直に据え付けられたクラッキング反応器と触媒再生器との2種の容器からなる接触分解装置に、本発明の製造方法により得られた接触分解触媒を連続的に循環させることにより行うことができる。
 すなわち、触媒再生器から供給される高温の再生触媒を、クラッキング反応器中で炭化水素油と混合して接触させ、上記触媒をクラッキング反応器の上方向に導きつつ、炭化水素油を分解する。次いで、上記炭化水素油を接触分解することにより表面に析出したコークによって失活した触媒を、分解生成物から分離し、ストリッピング後、触媒再生器に供給する。触媒再生器に供給された失活した接触分解触媒は、該触媒上のコークを空気燃焼により除去、再生した後、再びクラッキング反応器に循環する。
 一方、接触分解反応により得られたクラッキング反応器内の分解生成物は、ドライガス、LPG、ガソリン留分、LCO、HCOあるいはスラリー油のような一種以上の留分に分離する。もちろん、分解生成物から分離したLCO、HCO、スラリー油等の一部あるいは全部を、クラッキング反応器内に再循環させて分解反応をさらに進めてもよい。
[0086]
 クラッキング反応器の運転条件としては、反応温度が400~600℃であることが好ましく、450~550℃であることがより好ましく、反応圧力が常圧~0.49MPa(5kg/cm )であることが好ましく、常圧~0.29MPa(3kg/cm )であることがより好ましく、接触分解触媒の質量/炭化水素油の質量で表される質量比(g/g)が2~20であることが好ましく、4~15であることがより好ましい。
[0087]
 クラッキング反応器における反応温度が400℃以上であると、炭化水素油の分解反応が進行して、分解生成物を好適に得ることができる。また、クラッキング反応器における反応温度が600℃以下であると、分解により生成するドライガスやLPGなどの軽質ガス生成量を軽減することができ、目的物のガソリン留分の収率を相対的に増大させることができるため経済的である。
[0088]
 クラッキング反応器における反応圧力が0.49MPa以下であることにより、モル数が増加する分解反応の進行が阻害されにくい。また、クラッキング反応器における接触分解触媒の質量/原料炭化水素油の質量で表される比が2以上であると、クラッキング反応器内の触媒濃度を適度に保つことができ、原料炭化水素油の分解が好適に進行する。クラッキング反応器における本発明に係る接触分解触媒/原料炭化水素油の質量比(g/g)が20以下である場合も、炭化水素油の分解反応が効果的に進行し、触媒濃度の上昇に見合った分解反応を進行させることができる。
[0089]
 本発明によれば、オクタン価が高いガソリン留分を高い得率で生産することができるとともに、プロピレンの含有率が高いLPGを高い得率で生産することができる炭化水素油の接触分解触媒を用いた炭化水素油の接触分解方法を提供することができる。このため、本発明の炭化水素油の接触分解方法は、炭化水素油の流動接触分解方法として、好適に実施することができる。
 本発明によれば、重質炭化水素油に対する分解活性が高く、オクタン価が高いガソリン留分を高い得率で生産することができる炭化水素油の接触分解触媒を簡便に製造する方法を提供することができる。
 このため、本発明の製造方法で得られた接触分解触媒により、炭化水素油の流動接触分解方法を好適に実施することができる。
実施例
[0090]
 以下、本発明を実施例により説明するが、これらは例示であって、本発明はこれら実施例によりなんら制限されるものではない。
[0091]
<触媒調製>
 以下の実施例および比較例においては、ソーダライトケージ構造を有するゼオライトとして表1の特性を有する安定化Y型ゼオライトを使用するとともに、シリカゾルとしてSiO 濃度29.0質量%であるもの、第一リン酸アルミニウムとしてAl ・3P 換算濃度46.2質量%であるもの、粘土鉱物としてカオリナイトをそれぞれ使用した。
[0092]
[表1]


[0093]
(実施例1)
 上記シリカゾル42.0g(乾燥基準、SiO 換算量)を25%硫酸で希釈し、攪拌することによりシリカゾルの水溶液を得た。一方、表1の特性を有する安定化Y型ゼオライト80.0g(乾燥基準)に蒸留水を加え、ゼオライトスラリーを調製した。上記シリカゾルの水溶液に、上記カオリナイト76.0g(乾燥基準)と、上記ゼオライトスラリーとを添加し、さらに上記第一リン酸アルミニウム2.0g(乾燥基準、Al ・3P 換算量)とを加えて、ディスパーサーを用いて10分間攪拌混合することにより、総水分量714.3ml、固形分量200gの水性スラリーを調製した。
 上記水性スラリーを調製した後、噴霧乾燥器のタンクに移して、空気雰囲気下、室温で6分間静置することにより熟成処理した。
 次いで、上記熟成処理した水性処理した水性スラリーを、噴霧乾燥器内で210℃の入口温度および140℃の出口温度の条件で3分間噴霧乾燥し、触媒前駆体である微小球体を得た。得られた微小球体を1気圧下、200℃で10分間熱処理した後、60℃に加温された5質量%硫酸アンモニウム水溶液3リットル(以下、リットルを「L」と記すこともある)で2回イオン交換し、更に3Lの蒸留水で洗浄し、乾燥機中110℃で一晩乾燥することにより、目的とする触媒Aを得た。
[0094]
(実施例2)
 水性スラリーを調製した後、熟成処理の時間を195分間に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で触媒Bを調製した。
[0095]
(実施例3)
 水性スラリーを調製した後、熟成処理の時間を12分間に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で触媒Cを調製した。
[0096]
(実施例4)
 水性スラリーを調製した後、熟成処理の時間を95分間に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で触媒Dを調製した。
[0097]
(実施例5)
 水性スラリーを調製した後、熟成処理の時間を17分間に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で触媒Eを調製した。
[0098]
(実施例6)
 水性スラリーを調製した後、熟成処理の時間を55分間に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で触媒Fを調製した。
[0099]
(実施例7)
 水性スラリー調製時の攪拌時間を5分間に変更し、水性スラリーを調製した後、熟成処理の時間を17分間に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で触媒Gを調製した。
[0100]
(実施例8)
 水性スラリー調製時の攪拌時間を2分間に変更し、水性スラリーを調製した後、熟成処理の時間を17分間に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で触媒Hを調製した。
[0101]
(実施例9)
 上記安定化Y型ゼオライトの使用量を80.0g(乾燥基準)から60.0g(乾燥基準)に変更し、上記カオリナイトの使用量を76.0g(乾燥基準)から96.0g(乾燥基準)に変更した以外は、実施例6と同様の方法で触媒Iを調製した。
[0102]
(実施例10)
 上記第一リン酸アルミニウムの使用量を2.0g(乾燥基準、Al ・3P 換算量)から4.0g(乾燥基準、Al ・3P 換算量)に変更し、上記カオリナイトの使用量を76.0g(乾燥基準)から74.0g(乾燥基準)に変更した以外は、実施例6と同様の方法で触媒Jを調製した。
[0103]
(比較例1)
 水性スラリーを調製した後、熟成処理の時間を2分間に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で比較触媒1を調製した。
[0104]
(比較例2)
 水性スラリーを調製した後、熟成処理の時間を250分間に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で比較触媒2を調製した。
[0105]
(比較例3)
 水性スラリーを調製した後、熟成処理の時間を2分間に変更したこと以外は、実施例9と同様の方法で比較触媒3を調製した。
[0106]
(比較例4)
 水性スラリーを調製した後、熟成処理の時間を2分間に変更したこと以外は、実施例10と同様の方法で比較触媒4を調製した。
[0107]
 触媒A~触媒Jおよび比較触媒1~比較触媒4の調製条件を表2に示す。
 なお、表2において、「Yゼオライト」は、安定化Y型ゼオライトの乾燥基準での含有量を示し、「シリカゾル」は、シリカゾルを乾燥基準でSiO 換算したときの含有量を示し、「第一リン酸アルミニウム」は、第一リン酸アルミニウムを乾燥基準でAl ・3P 換算したときの含有量を示し、「粘土鉱物」は、粘土鉱物(カオリナイト)の乾燥基準での含有量を示している。
[0108]
[表2]


[0109]
 <流動接触分解>
 実施例1~実施例10および比較例1~比較例4で調製した接触分解触媒を用い、反応容器(クラッキング容器)と触媒再生器とを有する流動床式接触分解装置であるベンチスケールプラントにより、同一原料油を同一条件下で流動接触分解させた。
 先ず、接触分解に先立ち、実際の使用状態に近似させるべく、即ち平衡化させるべく、実施例1~実施例10および比較例1~比較例4で調製した各接触分解触媒を、500℃で5時間乾燥した後、各接触分解触媒のニッケル及びバナジウムの含有量がそれぞれ1000質量ppm及び2000質量ppmになるように、ナフテン酸ニッケル及びナフテン酸バナジウムを含むシクロヘキサン溶液を吸収させた後、乾燥させ、600℃で2時間の焼成を行い、引き続き、各触媒を100%水蒸気雰囲気中785℃で6時間処理した。
 続いて、上記のとおり実際の使用状態に近似させた各接触分解触媒を用い、表3に記載の性状を有する、脱硫減圧軽油(VGO)50容量%と脱硫残油(DDSP)50容量%とを混合してなる炭化水素油を、表4に記載の反応条件により、各例で得られた接触分解触媒を用いて流動接触分解反応を行った。
[0110]
[表3]


[0111]
[表4]


[0112]
<調製した触媒の接触分解反応結果>
 上記分解条件で得られた、ガソリン留分(沸点25~190℃)、中間留分(LCO(沸点190~350℃))および重質留分(沸点350℃以上)の生成量(容量%および質量%)を、各々Agilent technologies社製 AC Simdis Analyzerを用いたガスクロ蒸留法により測定した。
 得られたガソリン留分の含有割合(容量%)をガソリンの得率(容量%)として表5に示す。
 また、上記測定結果に基づき、触媒/原料油(質量比)=8における転化率(質量%)を下記式により算出した。結果を表5に示す。
 転化率(質量%)=100(質量%)-LCOの含有割合(質量%)-重質留分の含有割合(質量%)
 さらに、得られたガソリン留分のリサーチオクタン価(RON)を、ヒューレッドパッカード社製PONA分析装置を用い、ガスクロマトグラフ法によるGC-RONにより算出した。結果を表5に示す。
[0113]
[表5]


[0114]
 表2および表5より、実施例1~実施例10においては、ソーダライトケージ構造を有するゼオライト、シリカゾル、第一リン酸アルミニウムおよび粘土鉱物を所定量含む水性スラリーを、5~200分間熟成した後、噴霧乾燥して接触分解触媒を調製していることから、得られた接触分解触媒は、転化率が61.6~67.2質量%と高く、ガソリン留分の得率が48.1~49.5容量%と高く、ガソリン留分のオクタン価(RON)も90.4~90.6と高い。
[0115]
 一方、表2および表5より、比較例1、比較例3、比較例4においては、上記熟成時間が2分間と短く、比較例2においては、上記熟成時間が250分間と長すぎるために、これ等の例においては、転化率が60.0~65.4(質量%)と低下傾向を示し、ガソリン留分の得率が42.8~47.8容量%と低く、ガソリン留分のオクタン価も89.8~90.2と低い。
[0116]
 このため、実施例1~実施例10においては、重質炭化水素油に対する分解活性が高く、オクタン価が高いガソリン留分を高い得率で生産することができる炭化水素油の接触分解触媒を簡便に製造できることが分かる。

産業上の利用可能性

[0117]
 本発明によれば、重質炭化水素油に対する分解活性が高く、オクタン価が高いガソリン留分を高い得率で生産することができる炭化水素油の接触分解触媒を簡便に製造する方法を提供することができる。

請求の範囲

[請求項1]
 炭化水素油の接触分解触媒を製造する方法であって、
 固形分換算したときに、ソーダライトケージ構造を有するゼオライトを20~50質量%、シリカゾルをSiO 換算で10~30質量%、第一リン酸アルミニウムをAl ・3P 換算で0.1~21質量%および粘土鉱物を5~65質量%含有する水性スラリーを調製した後、5~200分間熟成し、次いで噴霧乾燥処理する
ことを特徴とする炭化水素油の接触分解触媒の製造方法。