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1. WO2010087518 - EPITAXIAL SILICON CARBIDE SINGLE CRYSTAL SUBSTRATE AND MEHTOD FOR PRODUCING SAME

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注: テキスト化された文書

明 細 書

発明の名称 エピタキシャル炭化珪素単結晶基板及びその製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009   0010   0011  

先行技術文献

特許文献

0012  

非特許文献

0013  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0014   0015   0016   0017  

課題を解決するための手段

0018   0019  

発明の効果

0020   0021   0022  

図面の簡単な説明

0023  

発明を実施するための形態

0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036  

実施例

0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047  

産業上の利用可能性

0048  

請求の範囲

1   2   3  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8  

明 細 書

発明の名称 : エピタキシャル炭化珪素単結晶基板及びその製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、エピタキシャル炭化珪素(SiC)単結晶基板及びその製造方法に関するものである。

背景技術

[0002]
 炭化珪素(SiC)は、耐熱性及び機械的強度に優れ、物理的、化学的に安定なことから、耐環境性半導体材料として注目されている。また、近年、高周波高耐圧電子デバイス等の基板としてSiC単結晶基板の需要が高まっている。
[0003]
 SiC単結晶基板を用いて、電力デバイス、高周波デバイス等を作製する場合には、通常、基板上に熱CVD法(熱化学蒸着法)と呼ばれる方法を用いてSiC薄膜をエピタキシャル成長させたり、イオン注入法により直接ドーパントを打ち込んだりするのが一般的であるが、後者の場合には、注入後に高温でのアニールが必要となるため、エピタキシャル成長による薄膜形成が多用されている。
[0004]
 近年、SiCデバイス技術の発展に伴い、SiCエピタキシャル基板に対しても、より高品質で大口径のものが求められてきている。エピタキシャル成長に用いられるSiC基板は、エピタキシャル成長の安定性、再現性の点からオフ角度の付いたものが使用されており、通常は8°である。このようなSiC基板は、表面が(0001)面になっているSiCインゴットから所望の角度をつけて切り出すことによって作成されており、オフ角度が大きいほど1個のインゴットから得られる基板の数は減少し、また、インゴットの大口径化と共に、長尺化は困難となる。したがって、大口径SiC基板を効率よく製造するためには、オフ角度を小さくすることが必須となり、現在3インチ(75mm)以上の口径を持つSiC基板に関しては、6°あるいはそれ以下のオフ角度を持った基板が主流であり、その基板を用いたエピタキシャル成長の研究が行われている。
[0005]
 しかし、オフ角度が小さくなると共に、基板上に存在するステップの数が減少するため、エピタキシャル成長時にステップ−フロー(step−flow)成長が起こり難くなり、その結果、ステップ(step)同士が集合する、所謂ステップ−バンチング(step−bunching)が発生する。
[0006]
 そこで、ステップ−バンチングの発生を抑える方法として、非特許文献1では、エピタキシャル成長を行う際に材料ガス(原料ガス)中に含まれる炭素と珪素の原子数比(C/Si比)を下げる方法が報告されている。また、特許文献1では、成長初期のC/Si比を0.5~1.0に下げることで、らせん転位を起点とした渦巻成長の発生を抑え、周囲の大量のステップフローに覆われる確率を高めて、エピタキシャル欠陥を減らすことができるとしている。
[0007]
 しかし、C/Si比を下げると、残留窒素がエピタキシャル膜中に取り込まれ易くなり、これがドナーとして作用するため、膜の純度を上げることが困難となり、実用には適さない。
[0008]
 また、特許文献2には、結晶欠陥密度が低く、結晶性のよいエピタキシャル薄膜を得るために、塩化水素ガスを添加した雰囲気中でエピタキシャル層を成長させることが開示されている。これは、添加した塩化水素によるエッチング作用(基板表面の清浄化)によって、エピタキシャル薄膜を単に結晶欠陥密度を低くして結晶性をよくするというものである。具体的には、オフ角度が8°のSiC基板に、3~30mL/minのHCl、0.3mL/minのSiH のガスを含む条件(Cl/Si比にすると、10~100となる。)、即ち、成長中にCl/Si比が100という塩化水素の割合を多くしてエッチング作用が促進する条件で、エピタキシャル成長させている。また、特許文献3では、熱CVD法によるエピタキシャル成長の場合、部分的に立方晶(3C構造)のSiCが形成されるという問題があるとし、前記問題を解決するために、珪素の水素化ガス、炭化水素ガス及びキャリヤガスと共に、HClガスを同時に供給することが開示され、従来よりも小さい傾斜角度で傾いた(オフ角度が小さい)傾斜基板を用いて、SiCエピタキシャル層を成長できるとしている。
[0009]
 なお、エピタキシャル成長させる前のSiC基板であるが、Cl ガスやHClガスを用いてSiC基板の表面をエッチングして平滑にすることが特許文献4に開示されている。
[0010]
 また、特許文献5には、1200℃程度の低い温度のCVD法による場合には珪素粒子が気相中に形成するという問題が発生し、前記問題を解決するために、HClガスを添加することにより、反応を安定にし、珪素粒子が気相中に形成しないように作用することが開示されている。また、特許文献6では、低温CVD法における原料ガスの反応を促進し、900℃以下の低温域においてもSiC結晶膜を形成させるために、原料ガスにHClガスを混合している。また、低温CVD法であるので、基板温度が1400℃以下の温度で鏡面成長が可能であるとしている。さらに、特許文献7では、炭化珪素単結晶膜の表面を平坦にするために原料ガスにHClガスを添加しており、表面粗度が約5nmの膜が作製されている。この表面粗度は、基板温度が1350℃としたCVD法で、シラン(SiH )0.2CCMの流量に対してHClガスが3CCMの流量(Cl/Si比で15である。)とすることにより得られている。
[0011]
 したがって、今後デバイスへの応用が期待されるSiCエピタキシャル成長基板であるが、基板の大口径化に伴い、オフ角度の小さい基板を使用するようになると、現状技術では、ステップ−バンチングの残ったエピタキシャル膜上にデバイスを作製することになる。本発明者らは、オフ角度の小さな基板上にデバイスを作製して詳細に検討した結果、次のようなことが明らかになった。このようなエピタキシャル膜の表面には多数の凸凹が生じており、デバイス電極下での電解集中を引き起こし易くなる。特に、ショットキーバリアダイオード、MOSトランジスタ等への応用を考えた場合、この電解集中はゲートリーク電流として顕著になり、デバイス特性を劣化させることになる。

先行技術文献

特許文献

[0012]
特許文献1 : 特開2008−74664号公報
特許文献2 : 特開2000−001398号公報
特許文献3 : 特開2006−321696号公報
特許文献4 : 特開2006−261563号公報
特許文献5 : 特開昭49−37040号公報
特許文献6 : 特開平2−157196号公報
特許文献7 : 特開平4−214099号公報

非特許文献

[0013]
非特許文献1 : S.Nakamura et al.,Jpn.J.Appl.Phys,Vol.42,p.L846(2003)

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0014]
 上記のように、従来技術で得られるオフ角度の小さいSiC基板、即ち、6°以下のオフ角度のSiC基板では、ステップ−バンチングの発生を抑えた高品質エピタキシャル膜が得られず、デバイス特性やデバイス歩留が十分でないという問題があることが明らかになってきた。
[0015]
 また、SiC基板にエピタキシャル膜を成長させる方法に関し、上記の特許文献に記載されているような方法が知られている。
[0016]
 しかしながら、特許文献2及び3は、6°以下のオフ角度のSiC基板にエピタキシャル成長する場合に、ステップ−バンチングの発生を抑えることを開示するものではない。実際に、本発明者らが、これらの文献に開示される条件を検討したところ、6°以下のオフ角度のSiC基板では、ステップ−バンチングの発生を抑えた高品質エピタキシャル膜が得られず、デバイス特性やデバイス歩留が十分ではない。また、同様に、特許文献5~7と同様の条件を検討したが、基板温度が低く、6°以下のオフ角度のSiC基板では、ステップ−バンチングの発生を抑えた高品質エピタキシャル膜、即ち、サブnmレベル以下の表面粗度となるような平坦な表面を有するエピタキシャル膜が得られず、デバイス特性やデバイス歩留が十分ではない。
[0017]
 本発明は、上記オフ角度が6°乃至それ以下の基板を用いたエピタキシャル成長において、ステップ−バンチングの発生を抑えた高品質エピタキシャル膜を有するエピタキシャルあ単結晶基板及びその製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0018]
 本発明は、エピタキシャル成長時に流す材料ガス(原料ガス)中に、特定の条件で塩化水素ガスを添加することで上記課題を解決できることを見出し、完成したものである。更に、前記方法により、ステップ−バンチングの発生が抑えられた結果、オフ角度が6°以下のSiC基板を用いたエピタキシャルSiC単結晶基板を作製できるようになり、該エピタキシャルSiC単結晶基板を用いてデバイス特性やデバイス歩留を詳細に検討した。オフ角度が6°以下のSiC基板を用いたエピタキシャルSiC単結晶基板で、炭化珪素単結晶薄膜表面が、表面粗さ(Ra値)が0.5nm以下のものが得られていなかったので、該表面粗さレベルにおけるデバイス特性やデバイス歩留は知られていなかったが、本発明者らは、上記方法で作製したエピタキシャルSiC単結晶基板を用いて検討した結果、炭化珪素単結晶薄膜表面が、表面粗さ(Ra値)が0.5nm以下であると、デバイス特性やデバイス歩留が顕著に向上することを見出した。
[0019]
 即ち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)オフ角度が6°以下である炭化珪素単結晶基板上に炭化珪素単結晶薄膜を形成したエピタキシャル炭化珪素単結晶基板であって、前記炭化珪素単結晶薄膜表面の表面粗さ(Ra値)が0.5nm以下であることを特徴とするエピタキシャル炭化珪素単結晶基板。
(2)オフ角度が6°以下である炭化珪素単結晶基板上に、熱化学蒸着法で炭化珪素単結晶薄膜をエピタキシャル成長させる際に、炭素と珪素を含む原料ガスを流すと同時に塩化水素ガスを流し、原料ガス中の珪素原子数に対する塩化水素ガス中の塩素原子数の比(Cl/Si比)が1.0より大きく20.0より小さくすることを特徴とするエピタキシャル炭化珪素単結晶基板の製造方法。
(3)前記炭化珪素単結晶薄膜をエピタキシャル成長する際の、原料ガス中に含まれる、炭素と珪素の原子数比(C/Si比)が1.5以下であることを特徴とする上記(2)に記載のエピタキシャル炭化珪素単結晶基板の製造方法。

発明の効果

[0020]
 本発明によれば、基板のオフ角度が6°乃至それ以下であっても、ステップ−バンチングの発生を抑え、表面粗さのRa値の小さい高品質なエピタキシャル膜を有するSiC単結晶基板を提供することが可能である。
[0021]
 また、本発明の製造方法は、熱CVD法であるため、装置構成が容易で制御性にも優れ、均一性、再現性の高いエピタキシャル膜が得られる。
[0022]
 さらに、本発明のエピタキシャルSiC単結晶基板を用いたデバイスは、表面粗さRa値の小さい、平坦性に優れた高品質エピタキシャル膜上に形成されるため、その特性及び歩留りが向上する。

図面の簡単な説明

[0023]
[図1] 本発明の一例によるSiCエピタキシャル膜の成長シーケンスを示す。
[図2] 本発明の一例によって成長されたSiCエピタキシャル膜の表面状態の光学顕微鏡像を示す。
[図3] 本発明の一例によって成長されたSiCエピタキシャル膜の表面AFM像を示す。
[図4] 本発明の一例によって成長されたSiCエピタキシャル膜上に形成されたショットキーバリアダイオードの順方向特性を示す。
[図5] 本発明の他の一例によって成長されたSiCエピタキシャル膜の表面状態の光学顕微鏡像を示す。
[図6] 従来技術によるSiCエピタキシャル膜の成長シーケンスを示す。
[図7] 従来技術によって成長されたSiCエピタキシャル膜の表面状態の光学顕微鏡像を示す。
[図8] 従来技術によって成長されたSiCエピタキシャル膜の表面AFM像を示す。

発明を実施するための形態

[0024]
 本発明の具体的な内容について述べる。
 まず、SiC単結晶基板上へのエピタキシャル成長について述べる。
 本発明で好適にエピタキシャル成長に用いる装置は、横型の熱CVD装置である。熱CVD法は、装置構成が簡単であり、ガスのon/offで成長を制御できるため、エピタキシャル膜の制御性、再現性に優れた成長方法である。
[0025]
 図6に、従来のエピタキシャル膜成長を行う際の典型的な成長シーケンスを、ガスの導入タイミングと併せて示す。まず、成長炉に基板をセットし、成長炉内を真空排気した後、水素ガスを導入して圧力を1×10 ~3×10 Paに調整する。その後、圧力を一定に保ちながら成長炉の温度を上げ、1400℃程度で10~30分間、水素中あるいは塩化水素を導入して塩化水素中での基板のエッチングを行う。これは、研磨等に伴う基板表面の変質層を取り除き、清浄な表面を出すためのものである。前記基板のエッチング工程は、炭化珪素単結晶膜の成長前に基板表面を清浄にするために好ましいが、該工程が無くても本発明の効果が得られる。例えば、既に、清浄な表面を有する基板であれば、基板のエッチング工程はなくてもよい。その後、温度を成長温度である1500~1600℃又は1500~1650℃に上げ、材料ガス(原料ガス)であるSiH とC を導入して成長を開始する(即ち、1500℃以上で成長させるという熱CVD法である。)。SiH 流量は毎分40~50cm 、C 流量は毎分20~40cm 又は30~40cm であり、成長速度は毎時6~7μmである。この成長速度は、通常利用されるエピタキシャル層の膜厚が10μm程度であるため、生産性を考慮して決定されたものである。一定時間成長し、所望の膜厚が得られた時点でSiH とC の導入を止め、水素ガスのみ流した状態で温度を下げる。温度が常温まで下がった後、水素ガスの導入を止め、成長室内を真空排気し、不活性ガスを成長室に導入して、成長室を大気圧に戻してから、基板を取り出す。
[0026]
 次に、本発明の内容を図6の成長シーケンスで説明する。SiC単結晶基板をセットし、水素あるいは塩化水素中でのエッチングまでは、図6と同様である。その後、1500~1600℃又は1500~1650℃の成長温度に上げ、材料ガスであるSiH とC を流して成長を開始するが、この時同時にHClガスも導入する。SiH 流量は毎分40~50cm 、C 流量は毎分20~40cm 又は30~40cm であり、HClの流量は、ガス中のSiとClの原子数の比(Cl/Si比)が1.0~20.0になるようにして、毎分40~1000cm 程度が好ましい。成長速度はHClガスを流さない場合とほぼ同じであり、所望の膜厚が得られた時点でSiH とC 及びHClの導入を止める。その後の手順は、HClガスを流さない場合と同様である。このように、原料ガスとHClガスを同時に流すことにより、6°乃至それ以下という小さいオフ角を持った基板上であっても、表面のステップ−バンチングの発生が抑えられた良好なエピタキシャル膜が得られるようになる。
[0027]
 これは以下のように考えられる。成長表面でのステップ−フローを阻害する一因として、SiH の分解により発生したSi原子が気相中で結合し、それが核となってSiドロップレット(droplet)を形成して、基板上に付着することが考えられる。あるいは、過剰のSi原子が成長表面で凝集する可能性も否定できない。特に、基板のオフ角度が小さくなり、テラスの幅が大きくなるに従い、上記の現象は顕著になってくると思われる。それが、HClガスを導入することにより、HClが分解して発生したClが、気相中でSi−Clの形を取ることにより、Si同士の結合を抑え、あるいは成長表面での過剰SiをSiH Cl の形で再蒸発させる等の効果が得られ、その結果、ステップ−フロー成長が、小さいオフ角を持った基板上でも持続したためと考えられる。
[0028]
 一方、オフ角度の小さなSiC基板上にエピタキシャル成長を行う際、HClを使用するものとして、前述したように、特許文献2及び3に提案される方法がある。しかし、特許文献2の方法の場合は、基板表面の清浄化によるエピタキシャル膜の品質向上(エッチピット密度の減少)を目的としている。その実施例においては、8°オフ角度の基板を用いた場合であり、6°乃至それ以下のオフ角度を持った基板上にエピタキシャル成長する際のステップ−バンチング発生防止に関するものではない。また、特許文献3の方法の場合は、6°以下のオフ角を持った基板上エピタキシャル成長の場合も含まれているが、HClを添加する効果として、HClのエッチングにより基板表面に強制的にステップを形成することを挙げており、ステップが増加することで、表面での3C−SiCの発生が防げるとしている。したがって、HClが分解して発生したClとSiとの反応を利用して、表面粗さRaを0.5nm以下とする本発明とは基本的に異なる。
[0029]
 即ち、本発明では、エピタキシャル成長中に、その原料ガスとともにHClガスを導入するものであるが、前述のように、本発明では、HClのエッチング作用を利用するのではなく、気相中でSi−Clの形をとり、Si同士の結合を抑制するという作用を利用するものであるので、エピタキシャル膜の成長速度はHClを導入にない場合とほぼ同様に十分大きい。具体的には、エッチング作用が殆ど起こらないような、HCl導入量の少ない条件(Cl/Si比で1.0~20.0の範囲)である。特許文献2では、前述のように、オフ角度が8°のSiC基板ではあるが、Cl/Si比にすると10~100となる範囲で成長中にHClを導入するとしている。しかしながら、成長中にCl/Si比が20を超えるというようなHClを多量に導入する条件を含むので、本発明の上記効果が得られない。本発明の効果を得るためには、成長中に導入するHClの量はCl/Si比で20.0を超えないようにすることが重要である。
[0030]
 本発明により、6°乃至それ以下という小さいオフ角度(即ち、0°~6°のオフ角度である。)を持った基板上であっても、表面のステップ−バンチングの発生が抑えられた良好なエピタキシャル膜が得られるようになったが、成長するエピタキシャル層の厚さについては、通常形成されるデバイスの耐圧、エピタキシャル膜の生産性等を考慮した場合、5μm以上50μm以下が好ましい。また、オフ角度が0°超でオフ角度を有する基板がエピタキシャル膜の成長し易さの点から好ましい。さらに、基板のオフ角度については、1°以下であると、表面に存在するステップの数が少なくなり、本発明の効果が現れ難くなるため、1°より大きく6°以下が好ましい。また、成長時のガス中に含まれるCl/Si比は、1.0より小さいとHClガスを添加した効果が現れず、20.0より大きいとHClガスによるエッチングが行われて来るため、1.0から20.0の間が望ましいが、より好適には4.0~10.0の間である。更に好ましいCl/Si比は、4.0以上10.0未満である。
[0031]
 さらに、材料ガスにおけるC/Si比は、ステップ−フロー成長を促進するため1.5以下が望ましいが、1.0より小さいと、所謂サイト−コンペティション(site−competition)効果で、残留窒素の取り込みが大きくなり、エピタキシャル膜の純度が下がるため、より好適には1.0~1.5の間である。
[0032]
 また、本発明では、オフ角度が6°以下であるSiC基板は、直径2インチ以上(直径50mm以上)のサイズである方が、本発明の効果がより顕著に得られる。SiC基板が小さい場合(例えば、直径2インチ(直径50mm)未満では)、熱CVD法における基板の加熱は全基板表面に均一に行うことが容易であり、その結果、ステップ−バンチングの発生が起きにくい。
[0033]
 よって、本発明の条件でHClを導入しても、ステップ−バンチングの発生の抑制効果を発揮できない場合がある。但し、小さなSiC基板でも加熱法が不均一あると、ステップ−バンチングの発生が起きやすくなるので、本発明の効果が顕著に得られる。一方、SiC基板が大きくなり、直径2インチ(直径50mm)以上になると、基板表面全体を均一に加熱すること(均一な温度に保つこと)が難しくなるので、結晶成長の速度が場所によって異なるようになり、その結果、ステップ−バンチングが発生しやすいようになる。したがって、このようなステップ−バンチングが発生しやすいような大きなSiC基板では、本発明の条件でHClを導入することでステップ−バンチングの発生を抑制するという効果を十分発揮できる。
[0034]
 そして、本発明によれば、SiC単結晶基板にエピタキシャル膜を成長する際に所定の流量のHClガスを存在させることにより、表面粗さ(Ra値)が0.5nm以下といった高品質のSiC単結晶薄膜を得ることができる。尚、表面粗さRaはJIS B0601:2001に準拠する算術平均粗さである。本発明の製造方法においてより最適な条件とすれば、表面粗(Ra値)が0.4nm以下の更に高品質のSiC単結晶薄膜を容易に得ることができる。
[0035]
 更に、本発明によって、表面粗さ(Ra値)が0.5nm以下を含む表面粗さの異なる種々のエピタキシャル膜を有するSiC単結晶基板を作製し、それぞれのデバイス特性やデバイス歩留を調べた。その結果、下記の実施例にも示すように、SiC単結晶薄膜表面が、表面粗さ(Ra値)が0.5nm以下、好ましくは0.4nm以下であると、デバイス特性やデバイス歩留が顕著に向上することを見出した。
[0036]
 このようにして成長されたエピタキシャル基板上に好適に形成されるデバイスは、ショットキーバリアダイオード、PINダイオード、MOSダイオード、MOSトランジスタ等、特に電力制御用に用いられるデバイスである。
実施例
[0037]
 (実施例1)
 2インチ(50mm)ウェーハ用SiC単結晶インゴットから、約400μmの厚さでスライスし、粗削りとダイヤモンド砥粒による通常研磨を実施した、4H型のポリタイプを有するSiC単結晶基板のSi面に、エピタキシャル成長を実施した。基板のオフ角は4°である。成長の手順としては、成長炉に基板をセットし、成長炉内を真空排気した後、水素ガスを毎分150L導入しながら圧力を1.0×10 Paに調整した。その後、圧力を一定に保ちながら成長炉の温度を上げ、1550℃に到達した後、塩化水素を毎分1000cm 流し、20分間基板のエッチングを行った。エッチング後、温度を1600℃まで上げ、SiH 流量を毎分40cm 、C 流量を毎分22cm (C/Si=1.1)、HCl流量を毎分200cm (Cl/Si=5.0)にしてエピタキシャル層を10μm成長した。この時の成長速度は毎時7μm程度であった。
[0038]
 このようにしてエピタキシャル成長を行った膜の表面の光学顕微鏡写真を図3に、また表面AFM像を図3に示す。図2から、表面は鏡面になっており、ステップ−バンチングが生じていないことが分かる。また、図3から、表面粗さのRa値は0.21nmであることが分かり、これは8°オフ基板上のエピタキシャル成長膜の値とほぼ同等であった。このようなエピタキシャル膜を用いてショットキーバリアダイオード(直径200μm)を形成した際の、ダイオードの順方向特性を図4に示す。図4から、電流の立ち上がり時の直線性は良好であり、ダイオードの性能を示すn値が1.01と、ほぼ理想的な特性が得られていることが分かった。また、前記と同様に、同基板上にショットキーバリアオードを更に100個作製して同じ評価を行ったところ、全て不良なく同様の特性を示した。
[0039]
 (実施例2)
 実施例1と同様にスライス、粗削り、通常研磨を行った、4H型のポリタイプを有する2インチ(50mm)のSiC単結晶基板のSi面に、エピタキシャル成長を実施した。基板のオフ角は4°である。成長手順、温度等は、実施例1と同様であるが、ガス流量は、SiH 流量を毎分40cm 、C 流量を毎分22cm (C/Si=1.1)、HCl流量を毎分400cm (Cl/Si=10.0)にして、エピタキシャル層を10μm成長した。成長後のエピタキシャル膜の光学顕微鏡写真を図5に示す。図5から、この条件の場合もステップ−バンチングの生じていない良好な膜であることが分かる。また、AFM評価から、表面粗さのRa値は0.16nmであった。成長後、実施例1と同様にショットキーバリアダイオードを形成し、成長中にHClを添加しない、従来の方法による4°オフ基板上のエピタキシャル膜上に形成したショットキーバリアダイオードと共に逆方向の耐圧を評価した。それぞれのダイオードを100個評価した結果は、本発明によるエピタキシャル膜上のダイオードの耐圧(中央値)が340V、従来方法によるエピタキシャル膜(表面粗さのRa値:2.5nm)上のダイオードの耐圧(中央値)が320Vであり、本発明によるエピタキシャル膜上のダイオードの方が優れた特性を示していた。本発明によるエピタキシャル膜上に作製した100個のダイオードは、全て不良のないものであった。従来方法によるエピタキシャル膜上に作製した100個のダイオードの内、5個の不良が発生した。
[0040]
 (実施例3)
 実施例1と同様にスライス、粗削り、通常研磨を行った、4H型のポリタイプを有する2インチ(50mm)のSiC単結晶基板のSi面に、エピタキシャル成長を実施した。基板のオフ角は4°である。成長手順、温度等は、実施例1と同様であるが、ガス流量は、SiH 流量を毎分40cm 、C 流量を毎分28cm (C/Si=1.4)、HCl流量を毎分200cm (Cl/Si=5.0)にして、エピタキシャル層を10μm成長した。成長後のエピタキシャル膜はステップ−バンチングの生じていない良好な膜であり、表面粗さのRa値は0.23nmであった。実施例1と同様にショットキーバリアダイオードを形成し、n値を求めると1.01であり、この場合もほぼ理想的な特性が得られていることが分かった。また、前記と同様に、同基板上にショットキーバリアオードを更に100個作製して同じ評価を行ったところ、全て不良なく同様の特性を示した。
[0041]
(実施例4)
 実施例1と同様にスライス、粗削り、通常研磨を行った、4H型のポリタイプを有する2インチ(50mm)のSiC単結晶基板のSi面に、エピタキシャル成長を実施した。基板のオフ角は2°である。成長手順、温度等は、実施例1と同様であるが、ガス流量は、SiH 流量を毎分40cm 、C 流量を毎分20cm (C/Si=1.0)、HCl流量を毎分400cm (Cl/Si=10.0)にして、エピタキシャル層を10μm成長した。成長後のエピタキシャル膜はステップ−バンチングの生じていない良好な膜であり、表面粗さのRa値は0.26nmであった。実施例1と同様に形成したショットキーバリアダイオードのn値は1.02であり、この場合もほぼ理想的な特性が得られていることが分かった。また、前記と同様に、同基板上にショットキーバリアオードを更に100個作製して同じ評価を行ったところ、全て不良なく同様の特性を示した。
[0042]
(実施例5)
 実施例1と同様にスライス、粗削り、通常研磨を行った、4H型のポリタイプを有する2インチ(50mm)のSiC単結晶基板のSi面に、エピタキシャル成長を実施した。基板のオフ角度は6°である。成長手順、温度等は、実施例1と同様であるが、ガス流量は、SiH 流量を毎分40cm 、C 流量を毎分22cm (C/Si=1.1)、HCl流量を毎分200cm (Cl/Si=5.0)にして、エピタキシャル層を10μm成長した。成長後のエピタキシャル膜はステップ−バンチングの生じていない良好な膜であり、表面粗さのRa値は0.19nmであった。このエピタキシャル膜と、従来の方法により形成した6°オフ基板上のエピタキシャル膜を用い、実施例2と同様にショットキーバリアダイオードの逆方向耐圧を50個評価した。結果は、本発明によるエピタキシャル膜上のダイオードの耐圧(中央値)が350V、従来方法によるエピタキシャル膜(表面粗さのRa値:2nm)上のダイオードの耐圧(中央値)が330Vであり、本発明を用いたエピタキシャル膜上のダイオードの方が優れた特性を示していた。本発明によるエピタキシャル膜上に作製した100個のダイオードは、全て不良ないものであった。従来方法によるエピタキシャル膜上に作製した100個のダイオードの内、5個の不良が発生した。
[0043]
(実施例6~17)
 実施例1と同様にスライス、粗削り、通常研磨を行った、4H型のポリタイプを有する2インチ(50mm)のSiC単結晶基板のSi面に、エピタキシャル成長を実施した。成長手順、温度等は、実施例1と同様であり、基板のオフ角度、C/Si比、Cl/Si比を表1のように変えてエピタキシャル層を10μm成長した。成長後のエピタキシャル膜はステップ−バンチングの生じていない良好な膜であり、表1には成長後のエピタキシャル膜表面粗さのRa値および実施例1と同様に形成したショットキーバリアダイオードのn値も示してある。Ra値は全て0.4nm以下と、平坦性に優れた膜が得られていることが分かり、また、n値も1.03以下で、ほぼ理想的なダイオード特性が得られていた。なお、実施例1~17においては、成長前に塩化水素による基板のエッチングを行っているが、このプロセスを省略しても、成長後のRa値に変化は見られなかった。また、実施例6は、Ra値が0.4nmで、n値が1.03となっているが、基板のオフ角度が付いていないので、結晶成長速度が遅く、オフ角度が付いている基板を用いた場合に比べて10μmの厚さに成膜するのに長時間かかっている。
[0044]
[表1]


[0045]
 (比較例)
 比較例として、実施例1と同様にスライス、粗削り、通常研磨を行った、4H型のポリタイプを有する2インチ(50mm)のSiC単結晶基板のSi面に、エピタキシャル成長を実施した。基板のオフ角度は6°である。成長手順、温度等は、実施例1と同様であるが、ガス流量は、SiH 流量を毎分40cm 、C 流量を毎分22cm (C/Si=1.1)にして、HClは流さずにエピタキシャル層を10μm成長した。成長後のエピタキシャル膜の光学顕微鏡写真を図7に、表面AFM像を図8に示す。図7、図8から、成長後の表面は皺状になっており、ステップ−バンチングが生じていることが分かる。また、図8から、表面粗さのRa値は1.9nmであり、実施例1~5に比べ、約一桁大きい値であった。実施例5の場合に示したように、このようなエピタキシャル膜上にショットキーバリアダイオードを形成し、逆方向の耐圧を評価したところ、本発明によるエピタキシャル膜上のダイオードに比べ、特性は劣っていた。同様に100個のショットキーバリアダイオードを作製し、その内8個の不良が発生した。
[0046]
 更に、基板のオフ角度が7°であるSiC単結晶基板を実施例1と同様に作製し、原料ガスと同時にHClを流した場合とHClを流さなかった場合について、実施例1と同様にエピタキシャル膜を成長させた。オフ角度が大きいのでステップ−バンチングがそもそも発生し難いので、HClを添加しなくても成長表面が平坦であり、HClを添加しても同じ平坦性を有する成長表面であった。
[0047]
 また、実施例1における結晶成長時の温度は、1600℃であるが、1500℃及び1650℃でそれぞれ同様に結晶成長させたが、同じ結果を得ている。1450℃で実施例1と同様に結晶成長させたが、ショットキーバリアダイオードを作製すると不良発生率が大きくなった。また、1700℃で実施例1と同様に結晶成長させたが、表面粗さのRa値が0.4を超えるものしか得られなかった。したがって、結晶性成長時の温度範囲は好ましくは、1500~1650℃とするとよい。

産業上の利用可能性

[0048]
 この発明によれば、SiC単結晶基板上へのエピタキシャル成長において、ステップ−バンチングの少ない高品質エピタキシャル膜を有するエピタキシャルSiC単結晶基板を作成することが可能である。そのため、このような基板上に電子デバイスを形成すればデバイスの特性及び歩留まりが向上することが期待できる。本実施例においては、材料ガスとしてSiH 及びC を用いているが、Si源としてトリクロルシランを用い、C源としてC 等を用いた場合についても同様である。

請求の範囲

[請求項1]
 オフ角度が6°以下である炭化珪素単結晶基板上に炭化珪素単結晶薄膜を形成したエピタキシャル炭化珪素単結晶基板であって、前記炭化珪素単結晶薄膜表面の表面粗さ(Ra値)が0.5nm以下であることを特徴とするエピタキシャル炭化珪素単結晶基板。
[請求項2]
 オフ角度が6°以下である炭化珪素単結晶基板上に、熱化学蒸着法で炭化珪素単結晶薄膜をエピタキシャル成長させる際に、炭素と珪素を含む材料ガスを流すと同時に塩化水素ガスを流し、材料ガス中の珪素原子数に対する塩化水素ガス中の塩素原子数の比(Cl/Si比)が1.0より大きく20.0より小さくすることを特徴とするエピタキシャル炭化珪素単結晶基板の製造方法。
[請求項3]
 前記炭化珪素単結晶薄膜をエピタキシャル成長する際の、材料ガス中に含まれる、炭素と珪素の原子数比(C/Si比)が1.5以下であることを特徴とする請求項2に記載のエピタキシャル炭化珪素単結晶基板の製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]