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1. (WO2019065379) SILVER POWDER MIXTURE, METHOD FOR PRODUCING SAME, AND CONDUCTIVE PASTE
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明 細 書

発明の名称 銀粉混合物およびその製造方法並びに導電性ペースト

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004  

課題を解決するための手段

0005   0006   0007  

発明の効果

0008  

図面の簡単な説明

0009  

発明を実施するための形態

0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024  

実施例

0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8  

明 細 書

発明の名称 : 銀粉混合物およびその製造方法並びに導電性ペースト

技術分野

[0001]
 本発明は、伸縮性を有する部材の表面に導電膜を形成するのに適した混合銀粉およびその製造法並びにその混合銀粉を用いた導電性ペーストに関する。

背景技術

[0002]
 近年、例えば特許文献1に開示されている様な、人体に装着可能なウェアラブル機器と呼ばれる電子機器の開発が盛んに行われて。ウェアラブル機器は一般に、例えば特許文献2に開示される機器のように、伸縮性を有する布帛上に形成されることが多いので、ウェアラブル機器の回路を形成する電極は、低温で形成可能なこと、および、伸縮性を有することが要求される。
 可撓性を有する部材に低温で導電膜による電極を形成することが可能な材料としては、例えば特許文献3や特許文献4に開示される銀ペーストがある。これらの銀ペーストは、主成分として、バインダーである低温硬化型の樹脂に、導電性フィラーとして、金属銀微粒子からなる銀粉を混合したものであり、銀粉としては主としてフレーク状のものが用いられている。しかし、これらの銀ペーストの場合、スクリーン印刷等の手段により回路パターンを形成した後、バインダーである樹脂を低温で硬化することにより布帛等の伸縮性部材表面に導電膜の回路を形成することは可能であるが、当該部材を伸縮させた場合に導電膜の体積抵抗率が著しく増大するという問題があった。
 また、導電膜形成用の銀ペーストの特性を改善する技術として、例えば特許文献5や特許文献6には、異なった形状の銀粉を複数含有する混合銀粉が開示されているが、これらの先行技術には、伸縮性部材上での導電膜形成に適した混合銀粉は開示されていない。例えば、特許文献5には、糸状銀粉に粒状銀粉とフレーク状銀粉の1種または2種を混合した銀粉混合物が開示されているが、当該銀粉混合物は銀ペーストのチキソ性の改善を目的としたものであり、当該銀ペーストの焼成膜の伸縮性は、伸縮性部材に適用するには不十分なものである。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 特開2015-083045号公報
特許文献2 : 特開2014-203815号公報
特許文献3 : 特開2016-014111号公報
特許文献4 : 特開2015-073105号公報
特許文献5 : 特開2015-065098号公報
特許文献6 : 特開2013-105525号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 上述の特許文献1および特許文献2において開示される技術において、導電性フィラーとしてフレーク状の銀粉を使用するのは、導電層中でフレーク状の銀粉同士が互いに重なり合い、良好な導電性を得ることができるためである。しかし、これらの技術では、銀ペーストを低温で硬化させており、フレーク状銀粉は硬化した樹脂の中で、単に物理的に接触しているだけである。そのため、銀ペーストを硬化させて形成した導電膜を伸縮すると、銀粉相互の接触が失われ、結果として導電膜の体積抵抗率が増大するものと考えられる。
 本発明者等が鋭意研究を行った結果、低温焼結性の良好な特定形状の糸状銀粉と他の形状の銀粉を混合した銀粉混合物を導電性フィラーとして用いた導電性ペーストにより、伸縮性部材上に導電膜の回路を形成すると、当該部材を伸縮した後の導電膜の体積抵抗率の減少の程度が少なくなることを見出して本発明を完成させた。
 なお、上述の様に形状の異なった複数の銀粉を含む銀粉混合物は、所定の形状のフレーク状銀粉と糸状銀粉を混合することにより製造することが可能であるが、銀イオンの湿式還元法により、低コストで製造することも可能であり効率的である。
 すなわち、本発明は、伸縮性を有する部材の表面に導電膜を形成するのに適した銀粉混合物およびその製造法並びにその銀粉混合物を用いた導電性ペーストを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0005]
 上記の目的は、本発明の実施形態において、球状部と糸状部とからなる糸状銀粉を含む銀粉混合物であって、前記の糸状部は球状部から伸びており、その短軸長さが球状部の粒子径よりも小さいものである、銀粉混合物によって達成される。
 前記の銀粉混合物は、前記の糸状銀粉とフレーク状銀粉とを含み、前記の糸状銀粉の投影面積割合が20%以上である銀粉混合物であっても構わない。その場合、前記糸状銀粉の糸状部は、平均長軸長さが2μm以上20μm以下であり、かつ、平均短軸長さが50nm以上900nm以下であり、前記フレーク状銀粉は平均粒径が1μm以上50μm以下であり、かつ、平均長径と平均厚みの比として定義されるアスペクト比が1.5以上であることが好ましく、銀粉混合物であることが好ましく、前記の糸状銀粉の混合銀粉に占める投影面積割合が20%以上であることがさらに好ましい。
 前記の銀粉混合物は、粒状銀粉の含有量が20%未満であることがさらに好ましい。
[0006]
 また、本発明においては、球状部と、球状部から伸びて粒子径より短軸長さの小さい糸状部とからなる形状の糸状銀粉が提供され、このような形状の糸状銀粉とフレーク状銀粉との銀粉混合物が提供される。
 銀粉混合物の製造方法として、硝酸銀水溶液に、銅またはアルミニウムの塩の1種と、エチレンジアミン四酢酸塩を添加して銀錯体溶液を得る工程と、エチレンジアミン四酢酸塩を添加した後、銀錯体溶液を撹拌しながらから90秒以上(より好ましくは110秒以上)保持する工程と、当該保持した銀錯体溶液に、L-アスコルビン酸、エリソルビン酸およびそれらの塩の1種または2種以上からなる還元剤を添加する工程と、を含む製造方法が提供される。
 当該製造方法においては、還元剤添加前の銀錯体溶液中の銀濃度が0.05mol/L~1mol/Lであり、かつ、添加する還元剤の量が前記還元剤添加前の銀錯体溶液の液量に対して0.05mol/L~1mol/Lとなる量とすることができる。また、銀錯体溶液中の銅およびアルミニウムの塩の1種または2種の添加量が銀に対してモル比で0.001~0.02であり、かつ、エチレンジアミン四酢酸塩の添加量が銀に対してモル比で0.0005~0.015とすることができる。
[0007]
 さらに本発明においては、前記の銀粉混合物を含む導電性ペーストが提供される。

発明の効果

[0008]
 本発明によれば、伸縮性を有する部材の表面に導電膜を形成するのに適した糸状銀粉および銀粉混合物が、安価な湿式還元法により製造可能となる。

図面の簡単な説明

[0009]
[図1] 実施例1で得られた銀粉混合物のSEM像。
[図2] 実施例2で得られた銀粉混合物のSEM像。
[図3] 実施例3で得られた銀粉混合物のSEM像。
[図4] 実施例4で得られた銀粉混合物のSEM像。
[図5] 比較例1で得られた銀粉混合物のSEM像。
[図6] 比較例2で得られた銀粉混合物のSEM像。
[図7] 比較例3で用いた粒状銀粉のSEM像。
[図8] 比較例4で用いた凝集銀粉のSEM像。

発明を実施するための形態

[0010]
[糸状銀粉]
 本発明の銀粉混合物は、球状部と、前記の球状部から伸びた糸状部とからなる糸状銀粉を含む。なお、前記の球状部を頭部、前記の糸状部を尾部または繊毛部と表現してもよい。
 前記の糸状部は、走査電子顕微鏡(SEM)で測定した平均長軸長さが2μm以上20μm以下であり、かつ、平均短軸長さが50nm以上900nm以下であるものが好ましい。糸状部の平均長軸長さが2μm未満であると、糸状にする効果がなくなり、導電性ペーストに配合した際に、当該導電性ペーストの粘度が低くなると共に、抵抗が上がることがある。また、平均長軸長さが20μmを超えると、通常の銀粉と同様の取り扱いをするのが難しくなる。糸状部の平均短軸長さが50nm未満であると、通常の銀粉と同様の取り扱いをするのが難しくなる。平均短軸長さが900nmを超えると、軸比が低下することにより、前記の導電膜の導電性が低くなりやすい。
 前記の球状部は、その粒子径が前記の糸状部の短軸長さよりも大きく、SEMで測定した円相当径とした粒子径の平均が、0.15~2μmであることが好ましい。また、球状部の粒子径(円相当径)の平均が糸状部の短軸長さの平均に対し2倍以上に大きいことが好ましく、3倍以上に大きいことがより好ましい。球状および粒状とはアスペクト比が1.5未満であることを言い、糸状部と連結しているものを球状部とし、糸状部と連結しておらず独立しているものは粒状銀粉とする。
 なお、本発明の製造方法で得られる銀粉混合物に含まれる糸状銀粉の糸状部は、直線性に乏しく可曲的な形状を有しており、長さ方向に少なくとも1つ、通常は1~10の曲部(湾曲)を有する。曲部(湾曲)は、滑らかなカーブであることが好ましく、糸状部の中心線における曲率半径が短軸長の倍以上あることが好ましい。
[0011]
 本発明の製造方法で得られる銀粉混合物が、特許文献5に記載される銀粉混合物と比較して耐伸縮性に優れる機構は現在のところ不明であるが、本発明者等は以下の様に推定している。
 すなわち、前記の糸状銀粉は、糸状部の平均短軸長さが50nm以上900nm以下のいわゆるナノサイズであり、それ自体が低温焼結性に優れるが、本発明の製造方法で得られる銀粉混合物に含まれる糸状銀粉はその末端に球状部を有しており、球状部は糸状部と比較して表面エネルギーが低く、さらに低温焼結性に優れるものと考えられる。そのため、糸状銀粉の球状部は、球状部を有さない糸状銀粉と比較して、後述する他の形状の銀粉と低温で強固に結合するものと考えられる。
 本発明の銀粉混合物の場合、導電ペーストを比較的低温で硬化させた際に、糸状銀粉がフレーク状銀粉の表面に強固に焼結し、フレーク状銀粉間に糸状銀粉による架橋構造が形成されるものと考えられる。糸状銀粉は通常、屈曲した構造であるので、低温焼成で形成した導電膜を伸縮させた際に、糸状銀粉がそれに追従して伸縮するために、特許文献5に記載の混合銀粉と比較して架橋構造が破壊され難く、導電膜の耐伸縮性が向上するものと考えられる。
 なお、本発明の製造方法で得られる銀粉混合物に含まれる糸状銀粉が前述の形態をとるのは、本発明の製造方法において、銅やアルミニウムの核を中心として球状粒子が形成されると共に、特定方向への粒成長が急激に進んで糸のように球状粒子から伸びる糸状部が形成された結果であると考えられる。
[0012]
[フレーク状銀粉]
 湿式製造法で銀粉混合物を製造すると、糸状銀粉以外にフレーク状銀粉や粒状銀粉など、さまざまな形状の銀粉が生成するが、伸縮性を有する部材の表面に導電膜を形成するためには、銀粉混合物が糸状銀粉とともにフレーク状銀粉を含むことが好ましい。
 ここでフレーク状とは薄片状や鱗片状のものを意味する。本発明の銀粉混合物に含まれるフレーク状銀粉は、走査電子顕微鏡(SEM)で測定した「平均長径/平均厚み」で定義されるアスペクト比が1.5以上であることが好ましい。
 アスペクト比が1.5未満では、導電性ペーストに配合して導電膜の回路を形成した際に、フレーク状銀粉同士の接触が不十分となりやすく、十分な導電性が得られないので好ましくない。アスペクト比の上限については、本発明では特に規定するものではないが、アスペクト比が500を超えるものは製造することが困難である。アスペクト比は10~100がより好ましく、20~50がさらに好ましい。
 当該フレーク状銀粉の平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積50体積%粒子径(D50)で1μm以上50μm以下であることが好ましい。平均粒径が1μm未満であると、フレーク状銀粉同士の接触面積が不十分となって前記の導電膜の導電性が低くなりやすい。また、平均粒径が50μmを超えると、フレーク状銀粉の粒子一つ一つが大きすぎ、形成される架橋構造が少なくなりやすい。フレーク状銀粉の平均粒子径は3~30μmであることがより好ましく、6~15μmであることがさらに好ましい。
[0013]
[銀粉の混合比]
 本発明の銀粉混合物においては、銀粉混合物に含まれる糸状銀粉の下記の定義による投影面積割合で20%以上含まれていることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。投影面積割合が20%未満では、導電膜を伸縮させた際に十分な架橋構造を構成することが難しくなる場合がある。
 糸状銀粉やフレーク状銀粉、粒状銀粉など、さまざまな形状の銀粉の混合物において、厳密にそれぞれの形状の重量比を測定するには、比重分離や形状による篩わけなどを用いて形状毎に分離選別する必要があり、容易ではない。現状としてフレーク状銀粉と粒状銀粉に関しては、それらの形状のもののみを含む銀粉が容易に入手可能であるが、糸状銀粉に関しては、分離選別しない状態で糸状銀粉100%からなる銀粉は現時点では得られておらず、例えば投影面積割合で90%以下である。
 本発明の製造方法においては、分離選別がなければ、糸状銀粉は所定の形状のもののみを単独で製造することが困難であり、フレーク状銀粉や粒状銀粉を含む形で製造される。得られた銀粉混合物に、他の製造方法によるフレーク状銀粉などを添加することにより、銀粉混合物の特性を調節することも可能である。
 本発明者等の検討によれば、上記の銀粉のうち、粒状銀粉(独立しているアスペクト比が1.5未満の銀粉)は、前記の導電膜の耐伸縮性向上に寄与しないことが判明しているので、本発明の銀粉混合物においては、粒状銀粉は、投影面積割合で銀粉混合物全体に対し20%未満にコントロールすることが好ましい。
[0014]
 本発明において定義する各種形状の銀粉の面積割合は、銀粉混合物の走査電子顕微鏡写真(SEM像)中の投影面積から、例えば以下に例示する手順により算出することができる。なお、用いるSEM像の倍率は、銀粉混合物の平均的な状態が把握できるものであればよく、例えば2000倍のSEM像を用いることができる。
 本発明により得られる銀粉混合物の場合、糸状銀粉の糸状部は平均短軸長さが小さく、二次電子発生効率が高いため、SEM像において明るくなる。そのため、画像解析ソフトウェアを用いて、SEM像における銀粉混合物中の糸状銀粉の糸状部および糸状部に繋がる球状部を明度の高い領域側と認識させて投影面積を算出して求めた投影面積割合を、銀粉混合物中の糸状銀粉の比率とすることができる。
 画像解析ソフトウェアとしては、例えばSystem fronteir社製「Region Adviser」を用いることができる。
 独立した粒状銀粉は、初期のコントラストと輝度において、手動で円形のマーカーを配置していき、全てのマーカーを選択した面積の合計値を「粒状面積」とする。そしてマーカー部はコントラストが暗めになるようにしておき、マーカー部以外の糸状銀粉とフレーク状銀粉について以下のようにして算出することができる。
 糸状銀粉、フレーク状銀粉のそれぞれの投影面積の算出方法としては、画像解析ソフトにSEM像をダウンロードし、「平滑化」処理によりノイズを除去した後、まず、銀粉が存在しない明るさが閾値未満の暗さの範囲を特定することで「銀粉の総面積」を算出する。その後、コントラストと輝度を強くし、糸状銀粉が閾値以上の明るさをもつ範囲と同じであることを確認し、SEM像を2値化することにより閾値以上の明るさとなる面積の合計を「糸状面積」として算出する。粒状銀粉が観察されず、糸状銀粉とフレーク状銀粉のみである場合、フレーク状は、「銀粉の総面積」-「糸状面積」=「フレーク状面積」とする。粒状銀粉が観察される場合は、前記の「粒状面積」を用いて、「銀粉の総面積」-「糸状面積」-「粒状面積」=「フレーク状面積」とする。
 これらの作業を3視野以上のSEM像について行い、「糸状面積」/「銀粉の総面積」により糸状銀粉の面積割合を、「フレーク状面積」/「銀粉の総面積」によりフレーク銀粉の投影面積割合を、「粒状面積」/「銀粉の総面積」により粒状銀粉の面積割合をそれぞれ算出し、それらの値からそれぞれの投影面積割合の平均値を求めることができる。
[0015]
[原料溶液]
 前述の様に、本発明の銀粉混合物は、銀イオンの湿式還元法を用い、1回の工程で製造することが可能である。
 本発明の銀粉混合物の製造方法においては、出発物質として銀(1)イオンと硝酸イオンを含む酸性の水溶液を用いる。当該酸性水溶液は、例えば硝酸銀を水に溶解することにより調製するが、硝酸を含む水溶液に、酸化銀(1)や炭酸銀(1)等の銀化合物を溶解することによっても調製することができる。
 本発明の製造法では、当該銀(1)イオンを含む酸性溶液に、さらに銅(2)またはアルミニウムの塩の1種を含む銀錯体溶液を原料溶液とする。ここで銅(2)イオンまたはアルミニウムイオンは、水溶液中で還元析出する銀粒子の異方成長を促進する作用を有するため、本発明の製造方法により得られる銀粉は、糸状銀粉を含む銀粉混合物となる。
 原料溶液中の銀の濃度は、後述する還元剤添加前の段階で0.05mol/L~1.0mol/Lが好ましく、0.2~0.6mol/L以下であることがより好ましい。銀が濃いと、フレーク状の割合が多くなり、銀が薄いと、糸状の割合が多くなる傾向を示す。
 原料溶液中の銅(2)またはアルミニウムの1種のイオン濃度は、銀(1)イオン量に対するモル比で0.0010以上0.0200以下であることが好ましい。
 銀(1)イオン量に対する銅(2)またはアルミニウムの1種のイオンのモル比が0.0010未満であると、結晶成長の異方性が不足して銀粉混合物中の糸状銀粉の占める割合が低下しやすい。銅(2)またはアルミニウムの1種のイオンのモル比が0.0200を超えると、粒状銀粉の生成量が増加しやすい。銅(2)イオン源としては、水に対する溶解度の高い硝酸銅(2)三水和物や塩基性炭酸銅(2)等の銅化合物を用いることができる。また、アルミニウムイオン源としては、水に対する溶解度の高い硝酸アルミニウム九水和物等のアルミニウム化合物を用いることができる。
[0016]
[エチレンジアミン四酢酸塩]
 本発明の製造方法においては、銀(1)イオンおよび銅(2)またはアルミニウムの1種のイオンを含む原料溶液に後述する還元剤を添加する前に、それらの金属イオンの錯化剤であるエチレンジアミン四酢酸塩(以下、EDTAと呼ぶ。)を添加する。原料溶液にEDTAを添加する目的は、EDTAと銅(2)イオンの錯体を形成することにより、還元反応により生成する混合銀粉の形態を制御するためである。EDTAには4Na塩や2Na塩が存在するが、水への溶解度が高く、入手が容易な4Na塩を用いることが好ましい。なお、EDTAは、固体のまま添加しても、水に溶解して水溶液にした後に添加しても、いずれでも構わない。
[0017]
 原料溶液へのEDTAの添加量は、前記原料溶液に含まれる銀(1)イオン量に対してモル比(EDTA/Ag)で0.0005以上0.0150以下であることが好ましい。銀(1)イオン量に対するEDTAのモル比が0.0005未満ではEDTA-銅(2)錯体の生成量が少なくなるため、還元析出による結晶成長の異方性が不十分になり、銀粉混合物の総質量に対して糸状状銀粉の占める割合が減少しやすい。また、EDTAのモル比が0.0150を超えると、EDTA-銀(1)錯体の生成量が増加し、粒状銀粉の生成量が増加しやすい。
 原料溶液にEDTAを添加し、EDTA-銀(1)とEDTA-銅(2)を含む銀錯体溶液を生成した後に還元反応を行うことにより、得られる銀粉に占める糸状銀粉の比率が高くなる機構については現在のところ不明であるが、本発明者等は以下の様に推定している。
 すなわち、EDTA-銅(2)錯体が還元される際に、銅(2)イオンの還元は窒素原子が配位している方向から起こりやすく、そのため、銀の析出のための初期核となる銅の結晶生成が異方的になり、その異方性を引き継いだ形で銀が析出するため、糸状銀粉が成長するものと考えられる。
[0018]
 本発明の銀粉混合物の製造方法においては、前記の原料溶液にEDTAを添加した後、90秒以上の保持時間を設ける。これは、保持時間内に錯体の生成を完結させると共に、本発明で規定するフレーク状銀粉と糸状銀粉の投影面積割合とするためである。
 原料溶液へのEDTAの添加後すぐに、後述する還元剤を添加すると、錯体化されていない銅(2)イオンが直接還元され、微細な粒状銀粉の生成量が増加するため、本発明の割合とすることが困難となり好ましくない。保持時間の上限は、本発明においては特に規定するものではないが、経済性を考慮すると600秒以下にすることが好ましい。
 原料溶液にEDTAを添加する工程の反応温度は、本発明においては特に規定するものではないが、20~30℃にすることが好ましい。反応温度が30℃を超えると、以降の還元反応時の温度が上がり過ぎて危険を伴う場合がある。
[0019]
[還元剤]
 本発明の製造方法においては、水溶液中に含まれる銀(1)イオンを還元剤により還元して銀粉混合物を得る。還元剤としては、最終製品である銀粉混合物に不純物が残存し難い有機性の還元剤を用いることが好ましく、中でも、反応が緩慢なL-アスコルビン酸、エリソルビン酸、またはそれらの塩をもちいることが好ましい。
 還元剤の添加量は、銀に対してmol比で0.50~2.00であることが好ましく、0.50~1.00であることがより好ましい。0.50未満であると溶液中で銀を全量還元できない場合がある。2.00を超えると銀に対して還元剤量が過多となり、還元反応が安定化し、粒状銀粉の生成割合が多くなる。
 還元剤溶液の濃度は、0.05mol/L~1.0mol/Lの範囲であることが好ましく、0.2~0.6mol/L以下であることがより好ましい。1.0mol/Lを超えて濃い還元剤を使用すると、糸状銀粉が形成しにくくなる。
 なお、還元剤を添加する際に、短時間で還元剤が均一に拡散している状態にするため、銀に対する還元剤の添加時間を1秒~70秒とすることが好ましい。添加速度を高めた方が、還元剤が早く拡散し、結晶成長が異方的になりやすく、球状が減ってフレーク状や糸状の割合が増える傾向がある。また、各形状での粒の大きさのばらつきが少なくなる。
 還元反応の工程の反応温度は、本発明においては特に規定するものではないが、20~70℃にすることが好ましい。反応温度が20℃未満では、結晶成長が促進されず、糸状銀粉が生成されにくい。また、反応温度が70℃を超えると、製造上危険を伴う恐れがある。
[0020]
[表面処理剤]
 本発明の製造方法では、溶液中に還元析出した銀粉同士の凝集を抑制するために、反応系に表面処理剤を加えることが好ましい。
 添加方法には、前記の還元剤溶液に表面処理剤を添加した混合溶液として原料溶液に加える方法と、還元剤を添加後に表面処理剤を加える方法がある。
 表面処理剤としては、一般的な銀粉に使用される表面処理剤を任意選択すればよく、例えば、ステアリン酸やオレイン酸などの脂肪酸とその塩やエマルジョン、ベンゾトリアゾールなどのアゾール類が好適に使用される。
 表面処理剤の添加量は、銀に対し0.050質量%~0.500質量%であることが好ましい。
[0021]
[固液分離]
 本発明の製造方法では、固体の金属銀粒子であるフレーク状銀粉と糸状銀粉を含む分散液が得られるので、それを固液分離した後、得られた銀粉混合物を水洗し、乾燥する。
 固液分離の方法は、濾過、遠心分離等、工業的に通常用いられている方法の何れを用いても構わない。
[0022]
[導電性ペースト]
 本発明の導電性ペーストは、少なくとも前記の銀粉混合物、バインダーとなる有機樹脂、および溶剤を含むものであり、用途によってはガラスフリット、界面活性剤、分散剤、粘度調整剤等の成分を含んでも構わない。銀粉混合物の含有量には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
 本発明の導電性ペーストに含有させる樹脂としては、その種類に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素ゴム、ニトリルゴム、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース等の有機樹脂が例示される。これらの有機樹脂は、1種を単独で添加しても構わないし、2種以上を併用してもよい。
 本発明の導電性ペーストに用いる溶剤としては、その種類に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラデカン、テトラリン、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、テルピネオール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート等の溶媒が例示される。これらの溶媒は、1種を単独で使用しても構わないし、2種以上を併用してもよい。
[0023]
 本発明の導電性ペーストに含有させることのできるガラスフリットとしては、その種類に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、ホウケイ酸ビスマス系、ホウケイ酸アルカリ金属系、ホウケイ酸アルカリ土類金属系、ホウケイ酸亜鉛系、ホウケイ酸鉛系、ホウ酸鉛系、ケイ酸鉛系、等のガラスフリットが例示される。これらのガラスフリットは、1種単独で使用しても構わないし、2種以上を併用してもよい。なお、環境に与える影響から、ガラスフリットは鉛を含まないものが好ましい。
 本発明の導電性ペーストに含有させることのできる界面活性剤としては、その種類に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等の陰イオン界面活性剤、脂肪族4級アンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤、イミダゾリウムベタイン等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤等の界面活性剤が例示される。これらの界面活性剤は、1種単独で使用しても構わないし、2種以上を併用してもよい。
[0024]
 本発明の導電性ペーストの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することが可能である。例えば、前記の銀粉混合物、前記の有機樹脂、および、前記の溶剤と、必要に応じて前記のガラスフリット、前記の界面活性剤、および、その他の成分を、例えば、超音波分散、ディスパー、三本ロールミル、ボールミル、ビーズミル、二軸ニーダー、自公転式撹拌機などを用い、混合することにより製造することができる。
実施例
[0025]
[銀粉の形状測定方法]
 日本電子工業(株)社製JSM-6100型走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、銀粉混合物を倍率2000倍で観察して二次電子像(SEM像)を撮影し、フレーク状銀粉については、当該SEM像の視野内の厚さ測定が可能な向きのフレーク状銀粉と粒径測定が可能な向きのフレーク状銀粉をそれぞれ25個選択して、厚さと粒径を測定し、それらの値からアスペクト比の平均値を算出した。糸状銀粉については、同一視野内の任意の糸状銀粉50個について、手動で、球状部の円相当径と、糸状部の長軸長さと短軸長さを測定し、それらの値から球状部の円相当径の平均値と、糸状部の平均長軸長さと平均短軸長さの値を算出した。
[銀粉混合物を構成する各種銀粉の投影面積割合の算定方法]
 日本電子工業(株)社製JSM-6100型走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、銀粉混合物を倍率2000倍で観察して二次電子像を撮影し、当該二次電子像(SEM像)の視野内のフレーク状、糸状および粒状銀粉の投影面積を、System fronteir社製画像解析ソフトウェア「Region Adviser」を用いてそれぞれ測定した。
 まず、糸状との繋がりがない独立した粒状銀粉が見られる場合は粒状銀粉として選択し、手動でマーカーを配置してマーカーの投影面積の合計値を「粒状面積」とした。
 画像解析ソフトウェアにおいて、「平滑化」処理によりノイズを除去した後、銀粉が存在しない明るさが閾値未満の暗さの範囲を特定することで「銀粉の総面積」を算出した。その後、コントラストと輝度を強くしていき、目視で、コントラストが低めであるフレーク状銀粉および粒状銀粉と、コントラストが高めである糸状銀粉との間とを区別できる明るさの閾値を、調整しながら決めた。そして、その閾値以上の明るさの投影面積の合計を「糸状面積」とした。フレーク状銀粉は、「銀粉の総面積」-「糸状面積」-「粒状面積」=「フレーク状面積」とした。後述の比較例1と2においては、糸状部が球状部から伸びている形の糸状銀粉が観察されなかったため、「粒状面積」を算出した後、糸状部のみの糸状銀粉の面積を「糸状面積」として「フレーク状面積」を計算した。
 上記の算定に当たり、3視野以上のSEM像を撮影し、各々の写真から粒状銀粉、糸状およびフレーク状の投影面積を算出し、それらの値から銀粉混合物全体に対する各種銀粉の投影面積割合の平均を求めた。
[0026]
[平均粒径の測定方法]
 銀粉0.1gをイソプロピルアルコール40mLに加え、チップ径20mmの超音波ホモジナイザーにより2分間分散させて試料を準備し、マイクロトラック・ベル(株)社製、MICROTRAC MT3300EXIIレーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用い、全反射モードで平均粒径の測定を行った。測定により得た体積基準の累積分布により、累積10%粒子径(D10)、累積50%粒子径(D50)、および累積90%粒子径(D90)の値を求めた。
[0027]
[銀粉混合物を含む導電膜の耐伸縮性の評価方法]
 銀粉混合物75質量部、および、バインダーとして東洋紡(株)社製有機溶剤可溶型非晶性ポリエステル樹脂バイロン8質量部を、溶媒であるジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(Diethylene glycol monobutyl ether acetate、BCA)18.67質量部に溶解して、和光純薬工業株式会社製オレイン酸(1級)0.1質量部を添加して導電性ペーストを調製した。
 マイクロテック(株)製、スクリーン印刷機 MT-320TVを用いて、天然ゴム基板((株)エスケー製天然ゴムシート<黒>、500×500mm、厚さ0.5mm)上に前記の導電性ペーストで長さ38mmのパターンを描画した後、熱風乾燥器中、150℃、30分間乾燥して供試材を得た。アドバンテスト(株)社製デジタルマルチメーターR6551を用いて38mmパターンの両端間の抵抗を測定した後、供試材に35%(荷重250g)の伸びを1秒間×5回加えた後、再度両端間の抵抗を測定し、抵抗上昇率((伸びを加えた後の抵抗値)/(初期抵抗値))を求めた。以上の手順を3サンプルについて行い、抵抗上昇率の3サンプルの平均値を算出した。
 本発明においては、前記の評価方法で得られた抵抗上昇率の平均値が2.5以下の場合に良好であると判断した。
[0028]
[銀粉混合物を含む導電膜の耐曲げ性の評価方法]
 以下の4種類の導電性ペーストを用いて銀粉混合物を含む導電膜を形成し、後述する二つの評価方法により当該導電膜の耐曲げ性と耐伸縮性を評価した。用いた導電性ペーストの組成は、以下の通りである。
 <ペースト組成1-ポリエステル>
 銀粉混合物75質量部、および、バインダーとして東洋紡(株)社製有機溶剤可溶型非晶性ポリエステル樹脂バイロン8質量部を、溶媒であるジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(Diethylene glycol monobutyl ether acetate、BCA)18.67質量部に溶解して、和光純薬工業株式会社製オレイン酸(1級)0.1質量部を添加して導電性ペーストを調製した。
 <ペースト組成2-ポリウレタン>
銀粉混合物92質量部、および、バインダーとして荒川化学工業(株)社製ポリウレタン樹脂―ユリアーノ8001を8質量部と、和光純薬工業(株)製2-エチル-4メチルイミダゾール0.16質量部と和光純薬工業(株)製オレイン酸0.1質量部を添加して導電性ペーストを調製した。
 <ペースト組成3-フッ素ゴム>
 銀粉混合物68質量部、および、バインダーとしてダイキン工業(株)社製フッ素ゴムG-801を9.5質量部とを溶媒であるイソホロン22.2質量部に溶解して、AGCセイミケミカル(株)製フッ素系界面活性剤サーフロンS-611 0.9質量部を添加して導電性ペーストを調製した。
 <ペースト組成4-シリコーン樹脂>
 銀粉混合物85質量部、および、バインダーとして信越化学工業(株)社製シリコーン樹脂KE-106を15質量部と、信越化学工業(株)社製シリコーン硬化促進剤CAT-RG 3質量部と和光純薬工業(株)社製オレイン酸0.1質量部を添加して導電性ペーストを調製した。
[0029]
<耐曲げ性評価方法1>
 マイクロテック(株)製スクリーン印刷機MT-320TVを用い、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板(東レ(株)製ルミラーS-75、厚さ75μm)上に、前記の組成1~4のペーストで長さ38mmのパターンを描画した後、熱風乾燥器中150℃で30分間乾燥して供試材を得た。アドバンテスト(株)社製デジタルマルチメーターR6551を用いて38mmパターンの両端間の抵抗値を測定した後、キーエンス (株) 社製レーザー顕微鏡VK-9700K/9710Kを用いて導電膜の膜厚を測定し、計算により導電膜の比抵抗値を算出した。
 前記の長さ38mmのパターンの導電膜を形成した正方形の供試材の両端を手で持ち、基板中央部に直径0.3mmのスパチュラの棒の部分を接触させ、その棒の部分を支点として、基板の両端が同じ位置になるまで折り曲げた。その場合、折り曲げ時における棒の軸方向から見た基板は、スパチュラの棒の部分で180度Uターンする形である。その後、供試材を裏返し、導電膜が形成されていない面に前記のスパチュラの棒の部分を接触させ、同様な操作を繰り返した。前記の基板の折り曲げを、表裏交互に10回ずつ繰り返した後、再び導電膜の抵抗値と膜厚を測定し、耐曲げ性評価試験による抵抗上昇率を算出した。抵抗上昇率は、(伸びを加えた後の比抵抗値)/(初期の比抵抗値)として表される。なお、抵抗上昇率の測定は各条件で3回行い、その平均値を採用した。
[0030]
<耐伸縮性評価方法2>
 基板として天然ゴム基板((株)エスケー製天然ゴムシート<黒>、500×500mm、厚さ0.5mm)を用い、前記の耐曲げ性評価方法1と同じ手順で供試材を作成し、導電膜の比抵抗値を算出した。
前記の長さ38mmのパターンの導電膜を形成した正方形の供試材に、(株)今田製作所製引張圧縮試験機SV51-0-50Mを用いて50%の伸び(0.40mm/sの速さで25秒間伸ばし)を5回加えた後、再び導電膜の抵抗値と膜厚を測定し、耐伸縮性評価試験による抵抗上昇率を算出した。抵抗上昇率は、(伸びを加えた後の比抵抗値)/(初期の比抵抗値)として表される。なお、抵抗上昇率の測定は各条件で3回行い、その平均値を採用した。
なお、前記のペースト組成4(シリコーン樹脂)の場合、基板として天然ゴム基板を用いると、ペーストが天然ゴムにより硬化阻害を受けるため、導電膜形成後に伸びを与えると剥離を起こすため、耐曲げ性および耐伸縮性を評価できなかった。
[0031]
[実施例1]
 純水420.0mLに22.22gの銀を含む硝酸銀水溶液および硝酸銅三水和物0.24g(和光純薬工業(株)社製、銀に対してモル比0.0048)を添加し、40℃まで加熱をした。この溶液を撹拌しながら20.0mLの純水で希釈したキレスト社製エチレンジアミン四酢酸4ナトリウム0.30g(銀に対してモル比0.0016)を添加し、銀錯体溶液とした。この銀錯体溶液中の銀の濃度は0.489mol/L、銅の濃度は0.00234mol/Lである。上記エチレンジアミン四酢酸4ナトリウム溶液の添加から115秒の待機時間を経た後、25℃に保持した濃度0.526mol/Lの還元剤溶液(純水211.2mL、和光純薬工業(株)社製L-アスコルビン酸18.60g(銀に対してモル比0.51))に、表面処理剤である中京油脂(株)社製ステアリン酸エマルションセロゾール920を0.36g(銀に対してステアリン酸0.246mass%)添加した混合液を65秒かけて銀錯体溶液に添加した。L-アスコルビン酸は2価の還元剤なので銀に対してモル比0.51の添加量で銀と銅を全量還元することができる。還元剤溶液添加後の全液量0.69Lに対する銀の濃度は0.299mol/Lになる。
 還元剤溶液の添加後3分間引き続き撹拌を行った後、ブフナー漏斗で濾過、水洗を行った。得られたウェットケーキを73℃に設定した真空乾燥機で乾燥させた。コーヒーミルによる解砕を行い、銀粉混合物を得た。図1に、本実施例において得られた銀粉混合物のSEM像を示す。図1において、左側のSEM像の下部に示す白線の長さが10μmを示し、右側のSEM像のそれは5μmを示す(以下、同じ)。
 得られた銀粉混合物のSEM像から算出された糸状(球状部と糸状部を含む)とフレーク状の投影面積割合は、それぞれ32.3%、54.8%であり、残部(12.9%)は粒径2μmを超える粗大粒であった。粗大粒を除き、独立した粒状銀粉は見られなかった。
 糸状銀粉(球状部と糸状部を含む)の球状部の円相当径は平均1.0μmであり、糸状部の平均長軸長さと平均短軸長さは、それぞれ5μm、140nmであった。
 得られた銀粉混合物を用い、前記の評価方法により銀粉混合物を含む導電膜の耐伸縮性を評価した。35%の伸びを1秒間×5回加えた後の抵抗率上昇率は1.3であり、後述する比較例について得られた値よりも優れた値であった。
 表1に、本実施例および他の実施例並びに比較例の製造条件、得られた銀粉混合物中の各種銀粉の面積割合、および、導電膜の耐伸縮性の評価結果を併せて示す。
[0032]
[実施例2]
 純水3861.0mLに55.55gの銀を含む硝酸銀水溶液(DOWAハイテック(株)社製)および硝酸銅三水和物0.30g(和光純薬工業(株)社製、銀に対してモル比0.0024)を添加し、40℃まで加熱をした。この溶液を撹拌しながら10.0mLの純水で希釈した硝酸2.56g(DOWAハイテック(株)社製、銀に対してモル比0.055)および10.0mLの純水で希釈したキレスト社製エチレンジアミン四酢酸4ナトリウム0.36g(銀に対してモル比0.0008)を添加し、銀錯体溶液とした。この銀錯体溶液中の銀の濃度は0.133mol/L、銅の濃度は0.00032mol/Lである。上記エチレンジアミン四酢酸4ナトリウム溶液の添加から115秒の待機時間を経た後、25℃に保持した濃度0.526mol/Lの還元剤溶液(純水528.0mL、和光純薬工業(株)社製L-アスコルビン酸46.49g(銀に対してモル比0.51))に、表面処理剤である中京油脂(株)社製ステアリン酸エマルションセロゾール920を1.82g(銀に対してステアリン酸0.491mass%)添加した混合液を4秒かけて銀錯体溶液に添加した。L-アスコルビン酸は2価の還元剤なので銀に対してmol比0.51の添加量で銀(と銅)を全量還元することができる。還元剤溶液添加後の全液量4.50Lに対する銀の濃度は0.114mol/Lになる。
 還元剤溶液の添加後3分間引き続き撹拌を行った後、ブフナー漏斗で濾過、水洗を行った。得られたウェットケーキを73℃に設定した真空乾燥機で乾燥させた。コーヒーミルによる解砕を行い、銀粉混合物を得た。図2に、本実施例において得られた銀粉混合物のSEM像を示す。
 得られた銀粉混合物のSEM像から算出された糸状(球状部と糸状部を含む)とフレーク状の投影面積割合は、それぞれ48.9%、51.1%であり、独立した粒状銀粉は見られなかった。
 糸状銀粉(球状部と糸状部を含む)の球状部の円相当径は平均1.4μmであり、糸状部の平均長軸長さと平均短軸長さは、それぞれ12μm、460nmであった。
 得られた銀粉混合物を用い、前記の評価方法により銀粉混合物を含む導電膜の耐伸縮性を評価した。35%の伸びを1秒間×5回加えた後の抵抗率上昇率は1.6であり、後述する比較例について得られた値よりも優れた値であった。
[0033]
[実施例3]
 純水3346.0mLに55.55gの銀を含む硝酸銀水溶液(DOWAハイテック(株)社製)および硝酸銅三水和物0.30g(和光純薬工業(株)社製、銀に対してモル比0.0024)を添加し、40℃まで加熱をした。この溶液を撹拌しながら10.0mLの純水で希釈したキレスト社製エチレンジアミン四酢酸4ナトリウム0.73g(銀に対してmol比0.0016)を添加し、銀錯体鵜溶液とした。この銀錯体溶液中の銀の濃度は0.154mol/L、銅の濃度は0.00037mol/Lである。上記エチレンジアミン四酢酸4ナトリウム溶液の添加から115秒の待機時間を経た後、25℃に保持した濃度0.263mol/Lの還元剤溶液(純水1056.0mL、和光純薬工業(株)社製L-アスコルビン酸46.49g(銀に対してmol比0.51))に、表面処理剤である中京油脂(株)社製ステアリン酸エマルションセロゾール920を0.55g(銀に対してステアリン酸0.153mass%)添加した混合液を4秒かけて銀錯体溶液に添加した。L-アスコルビン酸は2価の還元剤なので銀に対してmol比0.51の添加量で銀(と銅)を全量還元することができる。還元剤溶液添加後の全液量4.50Lに対する銀の濃度は0.114mol/Lになる。
 還元剤溶液の添加後3分間引き続き撹拌を行った後、ブフナー漏斗で濾過、水洗を行った。得られたウェットケーキを73℃に設定した真空乾燥機で乾燥させた。コーヒーミルによる解砕を行い、銀粉混合物を得た。図3に、本実施例において得られた銀粉混合物のSEM像を示す。
 得られた銀粉混合物のSEM像から算出された糸状(球状部と糸状部を含む)とフレーク状の投影面積割合は、それぞれ61.7%、38.3%であり、独立した粒状銀粉は見られなかった。
 糸状銀粉(球状部と糸状部を含む)の球状部の円相当径は平均1.1μmであり、糸状部の平均長軸長さと平均短軸長さは、それぞれ18μm、180nmであった。
 得られた銀粉混合物を用い、前記の評価方法により銀粉混合物を含む導電膜の耐伸縮性を評価した。35%の伸びを1秒間×5回加えた後の抵抗率上昇率は2.3であった。
[0034]
[実施例4]
 純水63.8Lに636.33gの銀を含む硝酸銀水溶液および硝酸銅三水和物3.43g(和光純薬工業(株)社製、銀に対してモル比0.0024)を添加し、40℃まで加熱をした。この溶液を撹拌しながら83.4mLの純水で希釈したキレスト社製エチレンジアミン四酢酸4ナトリウム8.34g(銀に対してモル比0.0016)を添加し、銀錯体溶液とした。この銀錯体溶液中の銀の濃度は0.092mol/L、銅の濃度は0.00022mol/Lである。上記エチレンジアミン四酢酸4ナトリウム溶液の添加から210秒の待機時間を経た後、25℃に保持した濃度0.172mol/Lの還元剤溶液(純水17.5L、扶桑化学工業(株)社製L-アスコルビン酸532.5g(銀に対してモル比0.51))を4秒かけて銀錯体溶液に添加した。L-アスコルビン酸は2価の還元剤なので銀に対してモル比0.51の添加量で銀と銅を全量還元することができる。還元剤溶液の添加後30 秒間引き続き撹拌を行った後、62.6mLの純水で希釈した表面処理剤である中京油脂(株)社製ステアリン酸エマルションセロゾール920を6.30g(銀に対してステアリン酸0.153mass%)を添加した。還元剤溶液添加後の全液量82.5Lに対する銀の濃度は0.072mol/Lになる。
 還元剤溶液の添加後4分30秒間引き続き撹拌を行った後、加圧濾過機で濾過し、水洗を行った。得られたウェットケーキを73℃に設定した真空乾燥機で乾燥させた。ブレンダーによる解砕を行い、目開き75μmのメッシュで篩別を行って実施例4の銀粉混合物を得た。図4に、本実施例において得られた銀粉混合物のSEM像を示す。
 得られた銀粉混合物のSEM像から算出された糸状(球状部と糸状部を含む)とフレーク状、粒状の投影面積割合は、それぞれ56.2%、42.4%、1.4%であった。
 糸状銀粉(球状部と糸状部を含む)の球状部の円相当径は平均0.8μmであり、糸状部の平均長軸長さと平均短軸長さは、それぞれ8μm、250nmであった。
 得られた銀粉混合物を用い、前記の評価方法により銀粉混合物を含む導電膜の耐伸縮性を評価した。35%(荷重250g)の伸びを1秒間×5回加える耐伸縮性の評価を行ったところ、抵抗率上昇率は2.3であった。
 得られた銀粉混合物を用い、前記の耐曲げ性評価方法1においてバインダーをポリエステルとした場合、抵抗上昇率は2.7であった。バインダーをポリウレタン、フッ素ゴム、およびシリコーン樹脂にした場合には、抵抗率はそれぞれ3.2、2.8および2.3であった。また、前記の耐伸縮性評価方法2において、バインダーをポリウレタンとした場合には抵抗上昇率は2.6、フッ素ゴムの場合には3.8であった。これらの値はいずれも比較例について得られた値よりも優れたものであった。
 本実施例および比較例についての評価結果を、表2に示す。
[0035]
[比較例1]
 エチレンジアミン四酢酸4ナトリウム溶液の添加からの銀錯体溶液の待機時間を115秒から10秒に変えた以外は、実施例1と同様にして銀粉混合物を得た。図5に、本比較例において得られた銀粉混合物のSEM像を示す。
 得られた銀粉混合物のSEM像からは、他形状の銀粉と連結のない独立した粒状銀粉の面積割合が60%であり、本発明で規定する球状部と糸状部とからなる糸状銀粉は観察されず、フレークの一部が伸びた形状の糸状部のみの糸状銀粉が6.8%、フレーク状銀粉が33.2%観察される。
 得られた銀粉混合物を用い、前記の評価方法により銀粉混合物を含む導電膜の耐伸縮性を評価しようとしたところ、断線したために評価できなかった。
 得られた銀粉混合物を用い、前記の耐曲げ性評価方法1においてバインダーをポリエステルとした場合、抵抗上昇率は5.5であり、実施例4のそれよりも劣っていた。
[0036]
[比較例2]
 エチレンジアミン四酢酸4ナトリウム溶液の添加からの銀錯体溶液の待機時間を115秒から60秒に変えた以外は、実施例1と同様にして銀粉混合物を得た。図6に、本比較例において得られた銀粉混合物のSEM像を示す。
 得られた銀粉混合物のSEM像において、他形状と連結のない独立した粒状銀粉の割合が20%であり、本発明で規定する球状部と糸状部とからなる糸状銀粉は観察されず、フレークの一部が伸びた形状の糸状部のみの糸状銀粉が20%、フレーク状銀粉が60%観察される。
 得られた銀粉混合物を用い、前記の評価方法により銀粉混合物を含む導電膜の耐伸縮性を評価しようとしたところ、断線したために評価できなかった。
 本比較例により得られた銀粉混合物のSEM像は、特許文献5に記載の銀粉混合物のそれと類似したものであり、糸状銀粉の投影面積割合も本願発明の好ましい範囲である20%を満足しているが、糸状銀粉が糸状部のみで構成されているため、その耐伸縮性が劣っていたと考えられる。
 得られた銀粉混合物を用い、前記の耐曲げ性評価方法1においてバインダーをポリエステルとした場合、抵抗上昇率は5.5であり、実施例4のそれよりも劣っていた。
[0037]
[比較例3、4]
 比較例3および4として、DOWAハイテック(株)社製の市販のフレーク状銀粉「FA-D-2」、および凝集銀粉「G-35」を用い、前記の評価方法により銀粉混合物を含む導電膜の耐伸縮性を評価した。測定結果を表1に併せて示すが、いずれも前記の実施例について得られた値よりも劣った値であった。また、評価に用いた銀粉のSEM像を図7および8に示す。
 前記の耐曲げ性評価方法1においてバインダーをポリエステルとした場合、比較例3については抵抗上昇率が5.1、比較例4については4.1であり、いずれの場合にも抵抗上昇率は実施例4のそれよりも劣っていた。バインダーとしてポリウレタンを用いた場合、比較例3では抵抗上昇率が4.3であり、比較例4では断線のため測定不能だった表2ではOLと表記する。)。バインダーとしてフッ素ゴムを用いた場合、比較例3では評価試験後の比抵抗値が1mΩ・cmを超え(表2ではNGと表記する。)、比較例4では断線のため測定不能だった表2ではOLと表記する。)。バインダーとしてシリコーン樹脂を用いた場合、比較例3では評価試験後の比抵抗値が1mΩ・cmを超えた。
 前記の耐伸縮性評価方法2おいてバインダーをポリウレタンにした場合、評価試験後の比抵抗値が1mΩ・cmを超え、比較例4では抵抗上昇率が6.2になった。また、バインダーをフッ素樹脂にした場合、比較例3では評価試験後の比抵抗値が1mΩ・cmを超え、比較例4では抵抗上昇率が4.7になった。
 以上の結果から、本願発明により得られる混合銀粉が、それを用いて導電塗膜を形成した時に、導電塗膜の耐伸縮性および耐曲げ性向上に寄与することがわかる。
[0038]
[表1]


[0039]
[表2]


請求の範囲

[請求項1]
 球状部と糸状部とからなる糸状銀粉を含む銀粉混合物であって、前記の糸状部は球状部から伸びており、その短軸長さが球状部の粒子径よりも小さいものである、銀粉混合物。
[請求項2]
 前記の糸状銀粉とフレーク状銀粉とを含み、前記の糸状銀粉の混合銀粉に占める投影面積割合が20%以上である、請求項1に記載の銀粉混合物。
[請求項3]
 前記糸状銀粉の糸状部は平均長軸長さが2μm以上20μm以下であり、かつ、平均短軸長さが50nm以上900nm以下であり、
 前記フレーク状銀粉は平均粒径が1μm以上50μm以下であり、かつ、平均長径と平均厚みの比として定義されるアスペクト比が1.5以上である、請求項2に記載の銀粉混合物。
[請求項4]
 粒状銀粉の含有量が20%未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の銀粉混合物。
[請求項5]
 硝酸銀水溶液に、銅またはアルミニウムの塩の1種と、エチレンジアミン四酢酸塩を添加して銀錯体溶液を得る工程と、
 前記エチレンジアミン四酢酸塩を添加した後、前記銀錯体溶液を撹拌しながらから90秒以上保持する工程と、
 前記の90秒以上保持した前記銀錯体溶液に、L-アスコルビン酸、エリソルビン酸およびそれらの塩の1種または2種以上からなる還元剤を添加する工程と、
を含む糸状銀粉を含む銀粉混合物の製造方法。
[請求項6]
 還元剤添加前の銀錯体溶液中の銀濃度が0.05mol/L~1mol/Lであり、かつ、添加する還元剤の量が前記還元剤添加前の銀錯体溶液の液量に対して0.05mol/L~1mol/Lとなる量である、請求項5に記載の糸状銀粉を含む銀粉混合物の製造方法。
[請求項7]
 銀錯体溶液中の銅またはアルミニウムの塩の1種の添加量が銀に対してモル比で0.001~0.02であり、かつ、エチレンジアミン四酢酸塩の添加量が銀に対してモル比で0.0005~0.015である、請求項3または4に記載の糸状銀粉を含む銀粉混合物の製造方法。
[請求項8]
 請求項1~4のいずれか1項に記載の銀粉混合物を含む、導電性ペースト。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]