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1. (WO2019044952) METHOD FOR EVALUATING TREC OR KREC LEVEL, PARTICLES USED IN SAID METHOD, AND USE THEREOF
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明 細 書

発明の名称 TREC又はKRECの量を評価する方法、当該方法に用いる粒子、並びにこれらの利用

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

非特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007   0008   0009   0010  

課題を解決するための手段

0011  

発明の効果

0012  

図面の簡単な説明

0013  

発明を実施するための形態

0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064  

実施例

0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107  

産業上の利用可能性

0108  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15  

図面

1   2   3   4  

明 細 書

発明の名称 : TREC又はKRECの量を評価する方法、当該方法に用いる粒子、並びにこれらの利用

技術分野

[0001]
 本発明は、TREC(T-cell Receptor Excision Circles)又はKREC(Kappa-deleting Receptor Excision Circles)の量を評価する方法、当該方法に用いる粒子、並びにこれらの利用に関する。より具体的には、本発明の一態様は、原発性重症複合型免疫不全症(SCID)等の新生児スクリーニングに関する。

背景技術

[0002]
 原発性免疫不全症(primary immunodeficiency)と総称される疾患の中には、例えば、SCIDに代表されるように、T細胞及び/又はB細胞の新生に異常を来しているために、機能的なT細胞及び/又はB細胞の欠乏という症状を先天的に呈するものが存在する。
[0003]
 例えば、SCIDは、機能的なT細胞の欠乏を主症状として、機能的なB細胞及びNK細胞の欠乏をも先天的に引き起こす。そして、これらリンパ球の異常によって、患者は、細菌、真菌、及びウイルスに対する易感染性を呈し、遅くとも1歳までに造血幹細胞移植等の根治的治療を行わないと、致命的な予後をたどるとされている。そのため、疾患の発症又は発症可能性を早期に判定可能な技術が切望されている。
[0004]
 非特許文献1には、新生児のろ紙血から抽出したDNA検体に対して、定量PCR法によってTREC及びKRECの部分配列を増幅して絶対定量を行うことで、SCID等の原発性免疫不全症患者の新生児スクリーニングを行う方法が記載されている。なお、TRECは、胸腺でT細胞が新生される際に出現し、細胞内に残存する環状DNAであり、T細胞新生の指標となる。同様に、KRECはB細胞が新生される際に出現し、細胞内に残存する環状DNAであり、B細胞新生の指標となる。

先行技術文献

非特許文献

[0005]
非特許文献1 : Stephan Borte, Ulika von Dobeln et. al.,Neonatal screening for severe primary immunodeficiency diseases using high-throughput triplex real-time PCR, BLOOD, 15 MARCH 2012 vol.119 no. 11 p.2552-2555

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 非特許文献1に記載のような従来技術において、TREC及び/又はKRECの絶対定量を行うためには検量線の作製が必須である。例えば、非特許文献1に記載の従来技術では、1コピーのTREC-KREC-TRACコンストラクトを含むプラスミド、及び1コピーのβ-アクチン配列を含むプラスミドを検量線作成用のコントロールDNAとし、当該コントロールDNAの希釈系列を作製した後に、これら希釈系列に対して定量PCR法を適用して検量線を作成する。他の従来技術では、検量線作成用のコントロールDNAとして、TREC断片及び/又はKREC断片に相当するオリゴDNAを用いる場合もある。
[0007]
 しかし、検量線作成用のコントロールDNAの正確な定量(分子量の決定)の困難さ、又は、希釈系列を作製する際の段階希釈時に生じる希釈誤差等に起因して、作成された検量線の正確性に問題がある場合がある。
[0008]
 また、検体と検量線作成用のコントロールDNAとで、定量PCR法に供するDNAの調製過程が異なる。すなわち、上記の通りコントロールDNAでは、精製したプラスミド(又はオリゴDNA)を希釈することによって、定量PCR法に供するDNAが調製されるが、検体では、ろ紙血からDNAを抽出することによって、定量PCR法に供するDNAが調製される。そのため、例えば、ろ紙血からのDNAの抽出効率が変化した場合でも、上記のコントロールDNAには影響を及ぼさないため、このコントロールDNAを用いて作成した検量線との比較による絶対定量の結果は、ろ紙血からのDNAの抽出効率の変動によって変化する可能性がある。
[0009]
 加えて、検体と検量線作成用のコントロールDNAとで、定量PCR法に供するDNAの調製過程が異なる事実は、測定をする施設が異なれば、同一検体についての値でもその一貫性が保てなくなりうる原因の一つとなっている。
[0010]
 本発明の一態様は、TREC及び/又はKRECの量の評価をより高精度で行うためのコントロールDNA等として使用可能な新規な粒子、及びその利用を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0011]
 本発明は、例えば、シグナルジョイント部分を含むTREC(T-cell Receptor Excision Circles)の核酸断片、及び、シグナルジョイント部分を含むKREC(Kappa-deleting Receptor Excision Circles)の核酸断片の少なくとも一方が、細胞内又はリポソーム内に導入されている、粒子を態様の一つとして包含している。
 また、シグナルジョイント部分を含むTRECの核酸断片、及び、シグナルジョイント部分を含むKRECの核酸断片の少なくとも一方を含む、核酸構築物(ただし、TRECの全長、及び、KRECの全長は含まない)を一つの態様として包含している。

発明の効果

[0012]
 本発明の一態様によれば、TREC及び/又はKRECの量の評価をより高精度で行うためのコントロールDNA等として使用可能な新規な粒子、及びその利用を提供することが出来るという効果を奏する。

図面の簡単な説明

[0013]
[図1] TREC500の定量PCR反応を行った結果から得られた検量線を示す。
[図2] KREC500の定量PCR反応を行った結果から得られた検量線を示す。
[図3] TRECの定量PCR反応で決定したCt値を、図1の検量線にプロットした状態を示す。
[図4] 実施例1による検量線及び参考例1による検量線を示す。

発明を実施するための形態

[0014]
 以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
[0015]
 なお、本明細書において「A及び/又はB」とは、A及びBと、A又はBとの両方を意図した表現である。
[0016]
 〔1.粒子〕
 本実施形態における「粒子」とは、「粒子の母体」に、以下に説明する「核酸断片」が導入されているものをいう。なお、「核酸断片が導入されている」とは、粒子の母体外から内に導入するプロセスを少なくとも一度経ていればよい。粒子の母体が細胞である場合は、核酸断片が、細胞内に導入された後に増幅され、細胞の増殖に伴って生じた新生細胞に核酸断片(導入された核酸断片の複製物)が含まれている形態も、「粒子の母体内に導入されている」の概念に含まれる。
[0017]
 (粒子の母体)
 核酸断片が導入される粒子の母体は、細胞又はリポソームである。リポソームとは、リン脂質二重膜で構成された人工膜小胞である。リポソームは、細胞と類似した挙動を示す上に、核酸断片を内包させる方法も確立されているので、核酸断片を格納する容器として、細胞と同等に取り扱うことができる。
[0018]
 TREC等の量の評価を行うためのコントロールとして本発明の一態様にかかる粒子を用いる場合、粒子の母体は、内在性(intrinsic)のTREC及びKRECを有していないことが好ましい。リポソームは元よりこの条件を満たしている。細胞も、T細胞へ分化する直前直後の細胞(新生したT細胞かその前駆細胞)、B細胞へ分化する直前直後の細胞(新生したB細胞かその前駆細胞)を除く大部分のものが、元よりこの条件を満たしている。
[0019]
 粒子の母体は、リポソームよりも細胞が好ましい場合がある。細胞は、一般的に、1)培養条件を整えれば増殖性を有する(細胞に含まれる核酸断片の個数を一定に維持したクローンを樹立し、これを大量増殖することで、均質な粒子を大量に得ることも容易)、2)内在性のリファレンス遺伝子(RNaseP等)を有する、及び、3)リポソームより一般に安定である、等の特性を有するからである。
[0020]
 TREC及びKRECの評価に血液検体を用いること、及び、新生直後のT細胞又はB細胞との細胞の類似性を考慮すると、粒子の母体として用いる細胞は、血液系の細胞であるか、免疫系の細胞であることが好ましい場合がある。血液系の細胞及び免疫系の細胞としては、例えば、Jeko-1細胞、Raji細胞、Ramos細胞等のB細胞株;Jurkat細胞、MOLT-4細胞、TG40細胞、U-937細胞等のT細胞株;KU812‐F細胞、RBL-2H3細胞等の好塩基球細胞株;HMC-1細胞、Ku812細胞、RBL細胞等の顆粒球細胞株;MCL-5細胞、MOLT-4細胞等のリンパ芽球細胞株;NB-4細胞、THP-1細胞等の好中球様細胞株;416B細胞、MOLM-14細胞、THP-1細胞等のマクロファージ細胞株;BJAB細胞、CML細胞、Daudi細胞等の白血球細胞株;A20細胞、BC-3細胞、CA46細胞、HCT116細胞、ST-486細胞等のリンパ腫細胞株;ESB細胞、TCLB細胞等のリンパ芽球腫細胞株;HL-60細胞、K562細胞等の白血病細胞株;等が挙げられる。これらの中では、白血病細胞株、リンパ芽球腫細胞株、リンパ腫細胞株、及び、白血球細胞株がより好ましい場合があり、白血病細胞株、及び、白血球細胞株がさらに好ましい場合がある。
[0021]
 (核酸断片)
 粒子の母体に導入される核酸断片は、シグナルジョイント部分を含むTRECの核酸断片、及びシグナルジョイント部分を含むKRECの核酸断片の少なくとも一方である。なお、環状のTRECそのもの、環状のKRECそのものは、核酸断片の範疇には含まれない。同一の粒子の母体に、これら核酸断片の両方が導入されている場合は、KREC及びTRECの評価の何れにも用いることが出来るという観点では好ましい。なお、TRECの核酸断片、及びKRECの核酸断片は、別々の核酸構築物として粒子の母体に導入されてもよいし、両者が連結された一つの核酸構築物として粒子の母体に導入されてもよい。ここで核酸構築物とは、上述の核酸断片そのものか、当該核酸断片を部分として含む核酸からなる構造体(例えば、核酸断片が挿入されたプラスミド等)を指す。
[0022]
 なお、上記のシグナルジョイント部分とは、TREC及びKRECそれぞれにおける環の結合部を指す。TRECではδRec-ΨJαシグナルジョイントとも称され、KRECではイントロンRSS-κdeシグナルジョイントとも称される。
[0023]
 核酸断片の好ましい態様では、TRECの全長を含む断片、及びKRECの全長を含む断片ではなく、シグナルジョイント部分を含んだTRECの部分断片、及び/又は、シグナルジョイント部分を含んだKRECの部分断片である。なお、好ましい態様では、シグナルジョイント部分は、核酸断片の両端に分断されて含まれるのではなく、ひとまとまりの連続する領域として含まれている。
[0024]
 核酸断片のサイズは特に限定されないが、後述する遺伝子増幅に必要充分なサイズを考慮すると、その下限は、200bp以上であることが好ましく、300bp以上であることがより好ましく、400bp以上であることがさらに好ましい。核酸断片のサイズの上限は、600bp以下であることが好ましく、550bp以下であることがより好ましく、530bp以下であることがさらに好ましい。一例では、核酸断片のサイズは、400bp以上600bp以下の範囲内、450bp以上550bp以下の範囲内、又は470bp以上530bp以下の範囲内である。
[0025]
 シグナルジョイント部分を含む領域を遺伝子増幅する場合、核酸断片に含まれるシグナルジョイント部分の位置は、当該核酸断片の比較的中央部であることが好ましい。例えば、核酸断片の両端部からシグナルジョイント部分まで好ましくは50bp以上、より好ましくは80bp以上、さらに好ましくは100bp以上離れている。なお、核酸断片に含まれるシグナルジョイント部分の位置が、当該核酸断片の比較的中央部であって、当該核酸断片のサイズが上述の範囲内(特に400bp以上600bp以下の範囲内)にある場合は、実質的に全ての既存のTREC検出用/KREC検出用のプライマー・プローブセットをそのまま用いて、当該核酸断片の遺伝子増幅及び検出を行うことが出来る。つまり、この核酸断片は、既存の測定系、及び、新規に設計される測定系の何れに対しても、その評価(例えば、プライマー・プローブセットを用いた増幅効率、増幅の特異性等の検討)、及び、後述する標準試料等として汎用できる。
[0026]
 なお、核酸断片に含まれるシグナルジョイント部分は、野生型では、塩基の挿入及び欠失等による遺伝的変異に由来する、個人間の相違がある領域を含んでいる。核酸断片の特に好ましい態様では、この個人間の相違がある領域が除去されたシグナルジョイント部分を有している(配列番号1及び2に相当)。これによって、統一した規格で核酸断片を調製できる上に、同じプライマーセットを用いてこの核酸断片を増幅した場合は、理論上は、常に同じ増幅断片が得られることとなり、既存の測定系に対しても、新規に設計される測定系に対しても、後述する標準試料等として特に好適に利用できる。
[0027]
 特に限定されないが、核酸断片の好ましい態様は、二本鎖DNA断片である。核酸断片は、例えば、プラスミド等のベクターに挿入された状態の核酸構築物として、粒子の母体に導入されていてもよい。
[0028]
 TREC及びKRECの正確な定量をより容易に行う観点では、核酸断片は、粒子の母体内での複製が制限されているものであることが好ましい。核酸断片が、プラスミド等のベクターに挿入された状態である場合は、プラスミドと、粒子の母体(宿主細胞)との組み合わせに応じて、当該プラスミドのコピー数を制限することができる。
[0029]
 TREC及びKRECの正確な定量をより容易に行う観点では、核酸断片は、粒子の母体内で所定の個数(例えば一コピーのみ)含まれていることが好ましい。加えて、上述の通り、核酸断片が、粒子の母体内での複製が制限されているものであれば、粒子の母体内に含まれる核酸断片の数が経時的に変化し難くなるためより好ましい。
[0030]
 TREC及びKRECの正確な定量をより容易に行う観点では、核酸断片は、粒子の母体内で転写が起こらないものであることが好ましい。核酸断片が、プラスミド等のベクターに挿入された状態である場合、例えば、当該核酸断片の発現制御にかかわるプロモーター又はエンハンサー等を設けなければ、核酸断片の転写を防止することが出来る。但し、このベクターは、転写及び翻訳がなされるように挿入された薬剤耐性遺伝子等を有していてもよい。
[0031]
 シグナルジョイント部分を含むTRECの核酸断片の特に好ましい一例としては、1)配列番号1に塩基配列を示す核酸断片、2)配列番号1に塩基配列を示す核酸断片の部分であって400bp以上、450bp以上、又は470bp以上のサイズを持つ核酸断片、3)前記した1)又は2)の核酸断片と塩基配列同一性が90%以上、より好ましくは95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上の核酸断片、等が挙げられる。
[0032]
 シグナルジョイント部分を含むKRECの核酸断片の特に好ましい一例としては、1)配列番号2に塩基配列を示す核酸断片、2)配列番号2に塩基配列を示す核酸断片の部分であって400bp以上、450bp以上、又は470bp以上のサイズを持つ核酸断片、3)前記した1)又は2)の核酸断片と塩基配列同一性が90%以上、より好ましくは95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上の核酸断片、等が挙げられる。
[0033]
 既存の測定系では、TREC及びKRECとも、その増幅配列は報告毎に異なっている。使用する装置又は方法によっても、最適な増幅配列が異なっており、プライマー及びプローブ配列の設計にあたっては、全長配列を含むゲノムDNAを用いて設計した増幅配列の増幅効率及び特異性を評価する必要があった。さらに、実際の判定では絶対定量が主流であるため、特定した増幅配列毎にオリゴDNA又はこれを組み込んだプラスミドDNA(コントロールDNA)を作製する必要があった。本発明の一実施形態にかかる核酸断片を用いることで、これら既存の測定系が抱えていた問題点を解決しうる。
[0034]
 (粒子の作製方法)
 粒子の作製方法としては、例えば、上記の核酸断片(当該核酸断片を含んだ核酸構築物の形態であってもよい)を、粒子の母体に導入する。核酸断片を粒子の母体に導入する方法は、例えば、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、酢酸リチウム法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、及びパーティクルガン法等の遺伝子導入法から適宜選択すればよいが、エレクトロポレーションがより好ましい。
[0035]
 粒子の母体に核酸断片を導入する操作を行った後、必要に応じて、核酸断片導入の成否の確認(例えば、核酸断片が挿入されたベクターが有する薬剤耐性遺伝子等を用いる)と、導入された核酸断片のコピー数の確認とを行ってもよい。
[0036]
 作製された粒子は、細胞又はリポソームの保存法に従って保存することが出来る。粒子は、例えば、粒子の種類に応じた適切な液体(生理的食塩水、液体培地等)中に懸濁された状態で、容器中で保存される。この粒子を長期間保存する場合には、例えば凍結乾燥等を行ってもよい。
[0037]
 〔2.粒子を用いた、TREC及び/又はKRECの量の評価〕
 (標準試料)
 上述の粒子は、例えば、血液検体中のTREC及び/又はKRECの量を評価する際の基準となる試料(標準試料)として用いることができる。標準試料は、例えば、検量線作成用の試料、陰性コントロール用の試料、又は基準値(閾値)提示用の試料等として用いることが出来る。
[0038]
 上述の粒子は、核酸断片そのものとは異なり、例えば光学顕微鏡システム等を用いて計数もできる。従って、粒子に含まれる核酸断片の個数(粒子の母体がリポソームのときは、リポソームへの核酸断片の封入効率でもよい)と、系中に含まれる粒子の個数との関係に基づいて、系中に含まれる核酸断片の総数の制御がより容易となる。従って、プラスミド又はオリゴDNAそのものをコントロールDNAとすると生じる以下の問題1)及び2)を低減することができる。1)コントロールDNAの正確な定量(分子量の決定)の困難さ、また2)希釈系列を作製する際の段階希釈時に生じる希釈誤差等に起因する検量線の正確性の問題等。
[0039]
 標準試料の一形態(液体試料)は、上述の粒子を、所定の濃度(粒子の個数/液体の体積)で含んでいる液体である。標準試料は、上述の粒子を、互いに異なる所定の濃度(粒子の個数/液体の体積)で含んでいる液体のセットであってもよい。標準試料の調製に用いる液体は特に限定されず、例えば、生理的食塩水、PBS等であってもよいが、血液試料に疑似させる観点では、当該液体は、赤血球及び血漿の少なくとも一方を含んでいることが好ましく、両方を含んでいることがより好ましい。例えば、赤血球濃厚液と血漿とを混合して得られる赤血球液は、粒子を混合する液体として好ましい。なお、血液試料に疑似させる観点では、当該液体は、血液と同等の粘稠度(例えば、血液に対して0.8倍~1.2倍程度、より好ましくは0.9倍~1.1倍程度の粘稠度)に調整されていることが好ましい場合がある。
[0040]
 標準試料の他の形態は、上述の液体試料を、繊維体にしみこませてなるものである。繊維体は、液体がしみこむことが可能な繊維の集合体であれば特に限定されないが、例えば、ろ紙等の紙;織布;不織布;等が挙げられ、中でもろ紙が好ましく、ろ紙の中でも採血用ろ紙がより好ましい。液体試料を繊維体にしみこませる方法は特に限定されないが、この液体試料をピペット等で採取し、繊維体上にスポットする方法等が挙げられる。なお、液体試料をしみこませた繊維体は、乾燥して保存することも可能である。
[0041]
 標準試料の上記他の形態において、繊維体は、液体試料をしみこませてなるスポットを複数有していてもよい。複数のスポットは、粒子を同じ濃度で含む液体試料をしみこませたものであってもよいが、粒子を異なる濃度で含む液体試料をしみこませたものが含まれていることが好ましい。粒子を互いに異なる所定の濃度で含む液体試料を、繊維体にしみこませた複数のスポットを有する標準試料は、検量線作成用の試料として適している。
[0042]
 なお、標準試料の形態は、TREC及び/又はKRECの量の評価対象となる検体の形態に応じて最適なものを選択すればよい。例えば、検体が血液検体(繊維体にしみこませていないもの)である場合は、標準試料として液体試料を採用すればよい。検体が、血液を繊維体にしみこませてなるものである場合は、標準試料として、液体試料を繊維体(好ましくは検体の場合と同じ種類の繊維体)にしみこませてなるものを採用すればよい。検体が、血液をろ紙(好ましくは採血用ろ紙)にしみこませてなるものである場合は、標準試料として、液体試料をろ紙(好ましくは採血用ろ紙)にしみこませてなるものを採用すればよい。標準試料の形態と、検体の形態とが類似することによって、共通した手法に基づいて、DNAの抽出、及び抽出したDNAの増幅を行うことが出来るため、得られた結果の比較が容易かつ正確となる。そのため、同一の施設で同一検体について複数回測定する場合はもちろん、異なる施設で同一検体について測定をする場合でも、値の一貫性が保てることとなる。
[0043]
 (検体とその調製方法)
 TREC及び/又はKRECの量の評価対象となる検体は、TREC及びKRECの少なくとも一方を含む検体であれば特に限定されないが、血液検体であることが好ましく、血液を繊維体にしみこませてなる検体であることがより好ましく、中でもろ紙(特に、採血用ろ紙)血検体であることがさらに好ましい。検体の由来は、ヒト又はヒト以外の哺乳動物であり、ヒトであることが好ましく、新生児であることがより好ましい。なお、「新生児」とは生後30日以内である児を指す。繊維体は、上記(標準試料)の欄で説明したものと同様のものを適宜利用可能である。TREC及び/又はKRECの量の評価が特に必要とされる新生児については、ろ紙(特に、採血用ろ紙)血検体を用いることが特に好ましい。
[0044]
 以下、検体の好ましい態様であるろ紙(採血用ろ紙)血検体を新生児から調製する方法について説明する。ろ紙血検体の調製方法としては、新生児から少量の採血をして、その血液をろ紙にスポットし、室温で乾燥させる方法が挙げられる。具体的には、新生児の踵に針などでわずかな傷をつけて、毛細血管から直接ろ紙に血液をしみこませる方法がある。
[0045]
 (TREC及び/又はKRECの定量方法)
 =検量線作成用の試料=
 検量線作成用の試料としては、上述の標準試料の中でも、例えば、1)粒子を、互いに異なる所定の濃度で含んでいる液体試料のセットか、2)粒子を、互いに異なる所定の濃度で含んでいる液体試料をしみこませた複数のスポットを有する繊維体が挙げられる。なお、「粒子を、互いに異なる所定の濃度で含んでいる液体試料」とは、例えば、検量線の作成に必要な濃度で粒子を含んでいる、所定倍の希釈系列に相当するものを指す。
[0046]
 =陰性コントロール及び陽性コントロール=
 陽性コントロールは、粒子の作製に用いた粒子の母体(TRECの核酸断片、及びKRECの核酸断片を導入していないもの)を一定濃度で含む液体であるか、当該液体を繊維体にしみこませてなるものである。「液体」及び「繊維体」については、上記(標準試料)の欄に説明した通りである。粒子の母体の濃度は、健康な0か月児の白血球数の下限と等しい、5000個(粒子の母体)/μlであることが好ましい。陽性コントロールでは、TREC及びKRECは検出されない。
[0047]
 陰性コントロールは、例えば、上述の陽性コントロールにおいて、粒子の母体の一部を、TRECの核酸断片及び/又はKRECの核酸断片を含む粒子(本発明の粒子)に置き換えたものである。すなわち、陰性コントロールは、上述した標準試料の一形態に相当する。
[0048]
 なお、陽性コントロールの形態も、標準試料と同じく、TREC及び/又はKRECの量の評価対象となる検体の形態に応じて最適なものを選択すればよい。例えば、検体が血液検体(繊維体にしみこませていないもの)である場合は、陽性コントロールとして液体の形態を採用すればよい。検体が、血液を繊維体にしみこませてなるものである場合は、陽性コントロールとして、液体を繊維体(好ましくは検体の場合と同じ種類の繊維体)にしみこませてなるものを採用すればよい。検体が、血液をろ紙(好ましくは採血用ろ紙)にしみこませてなるものである場合は、陽性コントロールとして、液体をろ紙(好ましくは採血用ろ紙)にしみこませてなるものを採用すればよい。
[0049]
 なお、陰性コントロール及び陽性コントロールは同一の繊維体上に別々のスポットとしてしみこませた形態であってもよく、さらに、陰性コントロール及び陽性コントロール及び検量線作成用の試料を全て同一の繊維体上に別々のスポットとしてしみこませた形態であってもよい。
[0050]
 =DNAの抽出と定量=
 DNAの抽出は、検量線作成用の試料、陽性コントロール、陰性コントロール、及び、検体の形態(液体の形態か、繊維体にしみこませた形態か)に応じた方法で行う。例えば、ろ紙のような繊維体にしみこませた形態の試料であれば、繊維体から一定の大きさのパンチで打ち出し、打ち出したパンチ片の洗浄と、DNAの抽出とを経て、DNA溶出液を得る。パンチの径は3ミリ程度が好ましいが、これより大きくても小さくてもよい。なお、検量線作成用の試料、陽性コントロール、陰性コントロール、及び、検体それぞれの形態を同一とし、全試料を同じ手法に基づいてDNAの抽出を行うことが、より正確な定量を行う上で好ましい。
[0051]
 次いで、得られたDNA溶出液中に含まれるTREC及びKRECの少なくとも一方、好ましくは両方を、遺伝子増幅法によって増幅し、増幅断片の定量を行う。なお、遺伝子増幅法は、定量PCR法であることが好ましい。
[0052]
 定量PCR法を行う場合、プライマーセットは、粒子の母体に導入されたTREC及び/又はKRECの核酸断片の配列に基づいて決定をすればよい。プライマーセットを構成するフォワードプライマー及びリバースプライマーの長さは、例えば、15塩基長以上であり、好ましくは15塩基長以上で50塩基長以下の範囲内であり、より好ましくは17塩基長以上で35塩基長以下の範囲内であり、さらに好ましくは17塩基長以上で30塩基長以下の範囲内であり、特に好ましくは17塩基長以上で25塩基長以下の範囲内である。フォワードプライマー及びリバースプライマーは、PCRの結果得られる増幅断片がシグナルジョイント部分を含み、サイズが凡そ80bp~500bp程度、又は、80bp~200bp程度、又は、100bp~150bp程度となるように設計することが好ましい場合がある。
[0053]
 プライマーセットに含まれるフォワードプライマーとリバースプライマーとの数量比(モル比と実質同義)は特に限定されないが、好ましくはフォワードプライマーの濃度がリバースプライマーの濃度の0.7倍~1.3倍の範囲内であることが好ましく、0.9倍~1.1倍の範囲内であることがより好ましい。
[0054]
 このプライマーセットは常法に従って合成することができる。また、このプライマーセットを用いたPCRの反応条件は特に限定されない。変性ステップの温度は例えば93℃~96℃の範囲内、好ましくは94℃~95℃の範囲内に設定される。アニーリングステップの温度は例えば58℃~69℃の範囲内、好ましくは59℃~63℃の範囲内に設定される。伸長ステップの温度は例えば60℃~79℃の範囲内、好ましくは65℃~75℃の範囲内に設定される。変性ステップの反応時間は、例えば8秒~25秒の範囲内、好ましくは8秒~20秒の範囲内に設定される。アニーリングステップの反応時間は例えば25秒~1分の範囲内、好ましくは28秒~35秒の範囲内に設定される。伸長ステップの反応時間は例えば1秒~20秒、好ましくは1秒~10秒の範囲内に設定される。また、サイクル数は例えば20~100サイクルの範囲内、好ましくは30~85サイクルの範囲内、より好ましくは35~65サイクルの範囲内に設定される。
[0055]
 PCR増幅断片の定量に用いるプローブ(通常、蛍光ラベル核酸プローブである)は、当該PCR増幅断片にハイブリダイズ可能なように設計されればよいが、その核酸部分は15塩基長以上であり、好ましくは15塩基長以上で50塩基長以下の範囲内であり、より好ましくは17塩基長以上で35塩基長以下の範囲内である。
[0056]
 また、上述の各プライマー及びプローブを構成するヌクレオチドには、DNAの他にPNA(ペプチド核酸)及び/又はLNA(locked nucleic acid)等の人工核酸が含まれていてもよい。
[0057]
 PCR反応後のTREC及び/又はKRECの定量は、一般的な定量PCRの方法に即して行えばよい。具体的な一例では、まず、陽性コントロール及び陰性コントロールから得たPCR反応の結果から、定量PCR反応が適切に行われたことを確認する。その上で、検量線作成用の試料から得られた、PCR反応のCt値を、各細胞濃度を横軸にとった座標上にプロットして検量線を作成する。作成した検量線を基準として用いて、検体中に含まれるTREC及び/又はKRECの総量(又は、血液中の濃度換算値)を決定することができる。
[0058]
 なお、上述をした絶対定量を行う態様の他、検体中に含まれるTREC及び/又はKRECの量を相対定量する態様も本発明の範疇である。例えば、標準試料として、上述の粒子を、所定の濃度(粒子の個数/液体の体積)で含んでいる一種以上の試料を準備する。その上で、絶対定量の場合と同様に、標準試料と検体とからDNA溶出液を得て、定量PCR法に基づいて遺伝子増幅を行い、得られた増幅断片の定量を行う。次いで、PCR反応のCt値同士(もしくはここから得た換算値同士)を比較して、検体中に含まれるTREC及び/又はKRECの量が、標準試料中の量より多いか否かを決定する。すなわち、標準試料は、基準値(閾値)提示用の試料として用いられる。
[0059]
 (TREC及び/又はKRECの定量結果の利用)
 検体中のTREC及び/又はKRECの定量結果は、この検体の由来であるヒト又はヒト以外の哺乳動物において、T細胞及び/又はB細胞の新生に異常を来している可能性が有るか否かの指標として利用することが出来る。例えば、濃度ベースの比較で、所定の基準値(閾値)と比較して、検体中のTRECの定量結果の方が低ければ、T細胞の新生に異常を来している可能性が有ると判定する。同様に、濃度ベースの比較で、所定の基準値(閾値)と比較して、検体中のKRECの定量結果の方が低ければ、B細胞の新生に異常を来している可能性が有ると判定する。ここで、所定の基準値(閾値)は、例えば、70コピー(TREC)/ul(血液)以下の値、50コピー(TREC)/ul(血液)以下の値、40コピー(TREC)/ul(血液)以下の値、又は、10コピー(TREC)/ul(血液)以下の値である。所定の基準値(閾値)は、例えば、70コピー(KREC)/ul(血液)以下の値、50コピー(KREC)/ul(血液)以下の値、40コピー(KREC)/ul(血液)以下の値、10コピー(KREC)/ul(血液)以下の値である。
[0060]
 本発明の一態様では、ヒト又はヒト以外の哺乳動物が、T細胞及び/又はB細胞の新生に異常を来している可能性が有る場合、このヒト等は、T細胞及び/又はB細胞の新生異常を伴う原発性免疫不全症に罹患しているか、罹患可能性があると判定することができる。なお、T細胞及び/又はB細胞の新生異常を伴う原発性免疫不全症とは、例えば、アデノシンデアミネース欠損症、X連鎖型SCID、JAK3欠損症、RAG欠損症等の重症複合型免疫不全症(SCID);X連鎖性無ガンマグロブリン血症等の抗体産生不全症;ディジョージ症候群等のその他の原発性免疫不全症;等が挙げられ、中でもSCIDは早期の治療を要する疾患であるため、新生児スクリーニングの対象として好ましい。
[0061]
 なお、上述の原発性免疫不全症を罹患しているか、罹患可能性があると判定された個体は、必要に応じて医師(個体がヒトの場合)又は獣医師(個体が哺乳動物の場合)の診断を受けた後に、原発性免疫不全症の種類に応じた治療を受けてもよい。例えば、SCIDの場合は早期の(遅くとも1歳になる前の)造血幹細胞移植、X連鎖性無ガンマグロブリン血症の場合は免疫グロブリン製剤の投与等が、現時点での適切な治療方法である。
[0062]
 〔3.TREC及び/又はKRECの定量キット〕
 本発明の一実施形態に係る定量キットは、1)上述した粒子、又は、2)上述した標準試料を含んでなる。この定量キットは、好ましくは、3)粒子に含まれるTRECの核酸断片を遺伝子増幅するためのプライマー(特にPCRプライマーセット)、4)粒子に含まれるKRECの核酸断片を遺伝子増幅するためのプライマー(特にPCRプライマーセット)、5)粒子に含まれるTRECの核酸断片に対するプローブ、及び、6)粒子に含まれるKRECの核酸断片に対するプローブからなる群より選択される少なくとも一つを含んでなる。5)及び6)は、それぞれ、3)及び4)を用いて得た増幅断片に対するプローブでもあり得る。従い、3)と5)とはセットで、4)と6)とはセットで、キットに含まれることが好ましい。
[0063]
 さらに、必要に応じて、7)血液をしみこませて採取するための繊維体、8)繊維体を打ち抜くパンチ、9)PCR等の遺伝子増幅に用いる各種試薬及び器具(ポリメラーゼ、PCRバッファー、各dNTP、ピペット等)、10)遺伝子増幅に供するDNAを含有する試料を調製するための各種試薬及び器具(試験管、バッファー等)、11)遺伝子増幅断片を解析するための各種試薬及び器具(電気泳動ゲル材料、ピペット等)、12)キットの使用説明書、13)上述した粒子の母体に含まれる内在性のリファレンス遺伝子を遺伝子増幅するためのプライマー、及び14)リファレンス遺伝子に対するプローブ、等の少なくとも1つを備えていてもよい。
[0064]
 この定量キットは、検体中のTREC及び/又はKRECの定量に用いる。この定量キットは、例えば、この検体の由来であるヒト又はヒト以外の哺乳動物が、T細胞及び/又はB細胞の新生異常を伴う原発性免疫不全症に罹患しているか、罹患可能性があるかの判定に用いる。この定量キットは、例えば、ヒト新生児がSCIDに罹患しているか、罹患可能性があるかの新生児スクリーニングに用いる。
〔4.まとめ〕
 以上から明らかなように、本発明は例えば、以下を包含する。
1)シグナルジョイント部分を含むTREC(T-cell Receptor Excision Circles)の核酸断片、及び、シグナルジョイント部分を含むKREC(Kappa-deleting Receptor Excision Circles)の核酸断片の少なくとも一方が、細胞内又はリポソーム内に導入されている、粒子。
2)シグナルジョイント部分を含むTRECの上記核酸断片、及び、シグナルジョイント部分を含むKRECの上記核酸断片が導入されている、1)に記載の粒子。
3)上記核酸断片が何れも400bp以上で600bp以下の範囲内であり、当該核酸断片の両端部から上記シグナルジョイント部分まで少なくとも80bp以上離れている、1)又は2)に記載の粒子。
4)上記核酸断片が上記細胞に導入されている、1)~3)の何れかに記載の粒子。
5)上記細胞は、内在性のTREC及びKRECを有していない、4)に記載の粒子。
6)上記核酸断片が、所定の個数含まれている、1)~5)の何れかに記載の粒子。
7)上記1)~6)の何れかに記載の粒子を、所定の濃度(粒子の個数/液体の体積)で含んでいる液体であるか、当該液体を繊維体にしみこませてなる、標準試料。
8)上記液体は、赤血球及び血漿の少なくとも一方を含んでなる、7)に記載の標準試料。
9)上記液体を上記繊維体にしみこませてなるスポットを複数有し、当該スポット間で上記粒子の濃度が異なっている、7)又は8)に記載の標準試料。
10)上記1)~6)の何れかに記載の粒子、又は、7)~9)の何れかに記載の標準試料を含んでなる、キット。
11)TRECの上記核酸断片を遺伝子増幅するためのプライマー、KRECの上記核酸断片を遺伝子増幅するためのプライマー、TRECの上記核酸断片に対するプローブ、及び、KRECの上記核酸断片に対するプローブからなる群より選択される少なくとも一つを含んでなる、10)に記載のキット。
12)血液検体に含まれるTREC及びKRECの少なくとも一方の量を、遺伝子増幅法を用いて評価する方法であって、7)~9)の何れかに記載の標準試料をコントロール試料又は検量線作成用の試料として用いる、方法。
13)上記血液検体が新生児のろ紙血検体である、12)に記載の方法。
14)上記13)に記載の方法でTREC及びKRECの少なくとも一方の量を評価した結果に基づいて、上記新生児が重症複合型免疫不全症(SCID)に罹患している可能性を評価する、13)に記載の方法。
15)シグナルジョイント部分を含むTRECの核酸断片、及び、シグナルジョイント部分を含むKRECの核酸断片の少なくとも一方を含む、核酸構築物(ただし、TRECの全長、及び、KRECの全長は含まない)。
実施例
[0065]
 本発明の一実施例について説明すれば以下のとおりである。
[0066]
 〔実施例1〕
 <K562-TREC、K562-KREC、K562-TREC-KRECの作製>
 1.配列の増幅とプラスミドの作製
 1-1.TREC500とKREC500の配列同定
 6名のヒト(0歳~成人)の血液からQIAGEN DNeasy blood and tissue kit又はQIAmp DNA Blood mini kitを用いてゲノム検体を抽出し、PCR法を用いることによって、TREC(T-cell Receptor Excision Circles)の結合部であるδRec-ΨJα及びその周辺部位を含んだDNA断片を得た。得られたDNA断片の塩基配列を、DNAシーケンサーを用いて解析した。具体的には、データベース上より、δRec-ΨJαから約300bp上流及び下流のプライマーを設計し、これらを使用して約550bpを増幅し、サンガーシーケンスによって配列を確認した。ATGCシーケンスアセンブリソフトウェア(ゼネティックス)を用いてこれらDNA断片の塩基配列同士を比較し、塩基の挿入・欠失による遺伝的変異に由来する、個人間の相違がある部分を取り除いた、結合部の共通配列を同定した。さらに、結合部の共通配列の真中より左右に約250bpまでの計500bp程度の塩基配列を同定し、TREC500配列とした。TREC500配列は、配列番号1に示す。以下、TREC500配列で示されるDNAを、TREC500と称する場合がある。
[0067]
 6名のヒト(0歳~成人)の血液からQIAGEN DNeasy blood and tissue kit又はQIAmp DNA Blood mini kitを用いてゲノム検体を抽出し、PCR法を用いることによって、KREC(Kappa-deleting Receptor Excision Circles)の結合部であるintron RSS-κde signal joint及びその周辺部位を含んだDNA断片を得た。得られたDNA断片の塩基配列を、DNAシーケンサーを用いて解析した。具体的には、データベース上より、intron RSS-κde signal jointから約300bp上流及び下流のプライマーを設計し、これらを使用して約550bpを増幅し、サンガーシーケンスによって配列を確認した。ATGCシーケンスアセンブリソフトウェア(ゼネティックス)を用いてこれらDNA断片の塩基配列同士を比較し、塩基の挿入・欠失による遺伝的変異に由来する、個人間の相違がある部分を取り除いた、結合部の共通配列を同定した。さらに、結合部の共通配列の真中より左右に約250bpまでの計500bp程度の塩基配列を同定し、KREC500配列とした。KREC500配列の塩基配列情報は、配列番号2に示す。以下、KREC500配列で示されるDNAを、KREC500と称する場合がある。
[0068]
 1-2.プラスミドの作製
 TREC500配列とKREC500配列のオリゴDNAを、DNA合成機を用いて合成した。TAクローニングによって各オリゴDNAを異なるpCR2.1ベクター(インビトロジェン)に組み込み、得られたプラスミドをそれぞれpCR-TREC500とpCR-KREC500とした。次に、これらのプラスミドから制限酵素EcoRIにより、TREC500を含むDNA断片とKREC500を含むDNA断片とを切り出し、異なるpcDNA3.1プラスミド(インビトロジェン)のマルチクローニングサイト(multiple cloning site)のEcoRI認識部位に挿入した。さらに、挿入したDNA断片の転写が起こらないように、pcDNA3.1プラスミドのCMVプロモーター配列をBgl IIとBamHIで削除し、得られたそれぞれのプラスミドをpTREC500とpKREC500とした。
[0069]
 さらに、pTREC500において、pcDNA3.1プラスミドのマルチクローニングサイトのNotI認識部位に、KREC500を含むDNA断片を組み込むことで、TREC500とKREC500との両方を含むプラスミドpTREC-KRECを作製した。なお、KREC500を含むDNA断片は、制限酵素BamHIとNotIを用いてpCR-KREC500から切り出すことによって調製した。
[0070]
 2.遺伝子導入細胞の作製
 2-1.遺伝子導入
 脊髄性白血病由来の細胞株K562に対して、pTREC500、pKREC500、及びpTREC-KRECをそれぞれエレクトロポレーション(Biorad Gene pulsar)により遺伝子導入を行った。
[0071]
 遺伝子導入より3日後、それぞれの細胞群に対してネオマイシンによるセレクションを行った。次いで、ネオマシン耐性の細胞群に対して、シングルセルクローニングを行い、FISH法(fluorescent in situ hybridization)によってTREC500、及び/又は、KREC500が1コピーであるクローンを選んだ。
[0072]
 2-2.コピー数の確認
 細胞群からそれぞれ選び出したクローンについて、DNA blood and Tissue kit(QIAGEN社)を用いてゲノムDNAを抽出した。TREC500、及び、KREC500のコピー数を確認するために、1細胞に対して2コピー含有されるRNaseP及びRPP30(Ribonuclease P/MRP Subunit P30)に対するプライマーとプローブとを用いてドロップレットデジタルPCRを行った。ドロップレットデジタルPCRの結果から、選び出されたクローンにおいて、TREC500/RPP30の比率、及び、KREC500/RPP30の比率が共に0.5であり、RNaseP/RPP30の比率が1であることが確認された。
[0073]
 以上のようにして作製した、細胞株K562に対してTREC500を1コピー含む細胞をK562-TREC500と称する。同様に、細胞株K562に対してKREC500を1コピー含む細胞をK562-KREC500と称し、細胞株K562に対してTREC500及びKREC500をそれぞれ1コピー含む細胞をK562-TREC-KRECと称する。
[0074]
 <ろ紙血の作製>
 1.検量線作成用ろ紙血の作製
 赤血球濃厚液に新鮮凍結血漿を混合し、ヘマトクリット値62%となる赤血球液を調製した。次に、K562-TREC500、K562-KREC500、及びK562-TREC-KRECを、別々の赤血球液に、所定の細胞濃度(0、10、20、50、100、200、500、1000、及び10000個/μlの9種類)となるように混合し、赤血球-細胞混合液を得た。赤血球-細胞混合液を50μlずつろ紙(型番:09800010・アドバンテック東洋株式会社)にスポットし、室温で乾燥した。この9種類の細胞濃度で各細胞を含む全9個のスポットを1セットとして、各細胞に対する検量線作成用ろ紙血とした。
[0075]
 2.コントロールろ紙血の作製
 0か月児の白血球数の下限は5000個/μlであることを鑑み、次の(A)及び(B)に示す赤血球-細胞混合液を調製した。なお、細胞を混合する前の赤血球液は、上記「1.検量線作成用ろ紙血の作製」で説明したものと同じ方法で調製した。
[0076]
 (A) 陽性コントロール
 赤血球以外の細胞として細胞株K562のみを5000個/μlの細胞濃度で含む赤血球-細胞混合液(TREC及びKRECは検出されない)。
[0077]
 (B) 陰性コントロール
 細胞株K562と当該細胞株に由来する細胞との総数が5000個/μlの細胞濃度である、以下に示す3種類の赤血球-細胞混合液を調製した。
・赤血球以外の細胞として、K562-TREC500を200個/μlと細胞株K562を4800個/μlとを含む赤血球-細胞混合液(陰性コントロール1)、
・赤血球以外の細胞として、K562-KREC500を200個/μlと細胞株K562を4800個/μlとを含む赤血球-細胞混合液(陰性コントロール2)、
・赤血球以外の細胞として、K562-TREC-KRECを200個/μlと細胞株K562を4800個/μlとを含む赤血球-細胞混合液(陰性コントロール3)。
[0078]
 次いで、調製した赤血球-細胞混合液を50μlずつろ紙(型番:09800010・アドバンテック東洋株式会社)にスポットし、室温で乾燥した。陽性コントロールのスポットと陰性コントロール1~3の何れかのスポットとを1セットとして、各細胞(K562-TREC500、K562-KREC500又はK562-TREC-KREC)に対するコントロールろ紙血とした。
[0079]
 3.新生児ろ紙血の作製
 早産児及び未熟児を除く、国立成育医療研究センター研究所にて出生した新生児22名について、文書により代諾者の同意を得た上で、踵に針などでわずかな傷をつけて、毛細血管から直接ろ紙(型番:09800010・東洋アドバンテック株式会社)に血液を染み込ませて採血した。室温で乾燥させて、各新生児に対する新生児ろ紙血とした。一般に、1つのスポットには50μL程度の血液が含まれる。
[0080]
 <Ct値の測定とTREC及びKREC濃度の算出>
 1セットの検量線作成用ろ紙血、1セットのコントロールろ紙血、及び新生児ろ紙血について、3.2mmのパンチを用いて、それぞれ1つのスポットあたり1つパンチ片を打ち出し、96ウェルプレートの各ウェルに1つずつ入れた。なお、検量線作成用ろ紙血及びコントロールろ紙血のセットは、各プレートごとに用意した。
[0081]
 1.洗浄
 各ウェルにpurification solution(QIAGEN社)を80μl添加し、ウェルプレートを2125×gで30秒間遠心した。このウェルプレートを、室温で10分間静置し、25℃、3500rpmで5分間遠心した後に、上清を可能な限り捨てた。各ウェルにpurification solutionを80μl添加し、ウェルプレートを、25℃、3500rpmで30秒間遠心した。このウェルプレートを、室温で10分間静置し、25℃、3500rpmで5分間遠心した後に、上清を可能な限り捨てた。各ウェルにMili Q waterを80μl添加し、ウェルプレートを、25℃、3500rpmで30秒間遠心した後に、上清を可能な限り捨てた。
[0082]
 2.溶出
 上述した洗浄の工程を経たウェルプレートの各ウェルに、yeast tRNA(invitrogen社)を10μg/ml濃度で添加したelution solution(QIAGEN社)を20μl加えた。このウェルプレートにシールを施し、サーマルサイクラ―を用いて99℃で30分間、溶出操作を行った。ウェルプレートを室温まで冷却し、ボルテックスミキサーで撹拌したのち、25℃、3500rpmで30秒間遠心を行った。各ウェル中に得られたDNA溶出液(20μl)を別々にチューブに移した。
[0083]
 3.定量PCR反応
 得られた各DNA溶出液20μlのうち2μl(表1中のTemplate DNAに相当)を使用し、LightCycler(登録商標)480 II(Roche社)を用いて定量PCR反応を行った。定量PCR反応の反応液の組成(1ウェルあたり)は表1に示す通りであり、定量PCR反応は2重反復試験(duplicate)で行った。プライマー及びプローブの配列は、以下のとおりである。
[0084]
 =TRECプライマー及びプローブの配列=
・TREC Fwプライマー:CCATGCTGACACCTCTGGTT(配列番号3)
・TREC Rvプライマー:TCGTGAGAACGGTGAATGAAG(配列番号4)
・TRECプローブ:5’-FAM-CACGGTGATGCATAGGCACCTGC-MGB-3’(配列番号5)
 =KRECプライマー及びプローブの配列=
・KREC Fwプライマー:TCAGCGCCCATTACGTTCT(配列番号6)・KREC Rvプライマー:GTGAGGGACACGCAGCC(配列番号7)
・KRECプローブ:5’-FAM-CCAGCTCTTACCCTAGAG-MGB-3’(配列番号8)
[0085]
[表1]


 定量PCR反応は、はじめに、初期変性反応を95℃、5分で1サイクル行った。続いて、変性反応(95℃、10秒)、アニーリング反応(60℃、30秒)及び、伸長反応(72℃、1秒)を順に繰り返し45サイクル行った。得られた増幅曲線から、各DNA溶出液のCt値を算出した。なお、コントロールろ紙血から得たDNA溶出液を用いた定量PCR反応の結果から、定量PCR反応が適切に行われていることも確認した。
[0086]
 4.TREC及びKREC濃度の算出
 TREC及びKRECそれぞれについて、検量線作成用ろ紙血の各細胞濃度が10から1000個/μlまでのものに対応するCt値を座標上にプロットし、検量線を作成した。それぞれの検量線を図1、図2に示す。なお、図1は、K562-TREC500を含むろ紙血、及び、K562-TREC-KRECを含むろ紙血から得たDNA溶出液について、TREC500の定量PCR反応を行った結果から得られた検量線を示すものであり、図2は、K562-KREC500を含むろ紙血、及び、K562-TREC-KRECを含むろ紙血から得たDNA溶出液について、KREC500の定量PCR反応を行った結果から得られた検量線を示すものである。図1及び図2において、縦軸はCt値であり、横軸は、検量線作成用ろ紙血の作製に用いた赤血球‐細胞混合液の細胞濃度(個/ul)であり、当該混合液中のTREC濃度又はKREC濃度(コピー数/ul)と同義である。横軸は対数目盛で示している。図1の検量線の式は、y=-1.238ln(X)+41.85で表され、図2の検量線の式は、y=-1.211ln(X)+37.186で表される。図1、2より、本実施例において作成された検量線は、安定した直線形であることが分かった。
[0087]
 図3は、22名分の新生児ろ紙血(検体)から得たDNA溶出液について、TRECの定量PCR反応で決定したCt値を、図1の検量線上にプロットした状態を示す。縦軸及び横軸の定義は図1と同じである。図3より、22名のうち18名のスクリーニング陰性(TREC検出)検体のプロットは、三角形で示されているが、いずれも検量線上に並び、ここから検量線の安定性が窺えた。このとき、4名の検体はスクリーニング陽性(TREC未検出)で、PCRによる増幅がなかったためCt値が得られず、プロットは図示されていない。また、図中のスクリーニング陰性検体のうち、Ct値が極端に低いプロット(黒塗りの三角形で示した)は、一過性リンパ球減少症に罹患している患者の検体である。
[0088]
 さらに、コントロールろ紙血から得たDNA溶出液の定量PCR反応で決定したCt値より、新生児ろ紙血のTREC濃度及びKREC濃度を、以下の計算式によって算出した。ろ紙血の3.2mmのパンチ片には凡そ3μlの血液が含まれ、この血液から20μlのDNA溶出液を得ていることから、以下の計算式(1)となる。
・新生児ろ紙血のTREC濃度(コピー/μl)
   =決定したCt値に検量線上で対応するTREC濃度(コピー/μl)×20/3・新生児ろ紙血のKREC濃度(コピー/μl)
   =決定したCt値に検量線上で対応するKREC濃度(コピー/μl)×20/3
 〔参考例1〕
 1.新生児検体からのDNA溶出液の調製
 実施例1の<ろ紙血の作製>欄における「3.新生児ろ紙血の作製」の記載に従って、早期産児及び未熟児を除いた、国立成育医療研究センター病院にて出生した新生児103名から各人の新生児ろ紙血を作製した。次いで、実施例1の<Ct値の測定とTREC及びKREC濃度の算出>欄における「1.洗浄」及び「2.溶出」の記載に従って、ウェルプレートの各ウェル中に得られたDNA溶出液(20μl)を別々にチューブに移した。
[0089]
 2.検量線用スタンダード希釈系列の作製
 TRECに対する検量線用プラスミドとして、健常人ゲノムDNAから、実施例1で用いたTRECプライマーにより増幅した配列をpCR2.1に挿入して作成したプラスミド(TRECプラスミド)を用いた。また、ACTB(βアクチン)に対する検量線用プラスミドとしてACTBプライマー(後述する)により増幅した配列をpCR2.1に挿入して作成したプラスミド(ACTBプラスミド)を用いた。それぞれの検量線用プラスミドの濃度が22ng/μl(5×10 コピー/μl)になるように、検量線用プラスミドの原液を調製した。次いで、EASY dilution(タカラバイオ社)を溶媒として用いて、ACTB用は5×10 コピー/μlまでの10倍希釈系列を作製し、TREC用は5×10 コピー/μlまでの10倍希釈系列を、さらに5×10 コピー/μlから7.82コピー/μlまでの2倍希釈系列を作製した。
[0090]
 3.定量PCR反応
 TRECに対する定量PCR反応の反応液の組成(1ウェルあたり)は実施例1中の表1に示す通りであり、ACTBに対する定量PCR反応の反応液の組成(1ウェルあたり)は以下の表2に示す通りである。表1~2中のTemplate DNAとして、上記1.で得たDNA溶出液(同じDNA溶出液からTREC検出用2μlとACTB検出用2μlとを取得)、上記2.で得たTREC用の検量線用スタンダード希釈系列、及び、ACTB用の検量線用スタンダード希釈系列を用いた。ACTB用の検量線用スタンダード希釈系列は、5×10 、5×10 、5×10 、5×10 、5×10 、5×10 コピー/μlの6濃度を用いた。TREC用の検量線用スタンダード希釈系列は、5×10 、5×10 、5×10 、5×10 コピー/μlの10倍希釈系列と、5×10 コピー/μlから7.82コピー/μlまでの2倍希釈系列との合計10濃度を用いた。さらに、テンプレート無しネガティブコントロール(Non-template control(NTC))として、表1及び表2中のTemplate DNAをEASY dilutionで置き換えたものを用いた。定量PCR反応は2重反復試験(duplicate)で行った。
[0091]
 =ACTBプライマー及びプローブの配列=
・ACTB Fwプライマー:ATTTCCCTCTCAGGCATGGA(配列番号9)
・ACTB Rvプライマー:CGTCACACTTCATGATGGAGTTG(配列番号10)
・ACTBプローブ:5’-HEX-GTGGCATCCACGAAACTA-MGB-3’(配列番号11)
[0092]
[表2]


 定量PCR反応のその他の反応条件は、実施例1の<Ct値の測定とTREC及びKREC濃度の算出>欄の「3.定量PCR反応」に記載の通りである。
[0093]
 4.TREC濃度の算出
 溶出コントロールであるACTBについて、検量線用スタンダード希釈系列の各コピー数及びCt値から検量線を作成した。作成した検量線より、各DNA溶出液におけるACTBのコピー数を算出した。コピー数が5000コピー/μl以上であることを条件として、DNA溶出不良が起こっていないことを確認した。
[0094]
 その上で、TRECについて、検量線用スタンダードの各コピー数及びCt値から検量線を作成し、各DNA溶出液について、検量線上でのTREC濃度(コピー/μl)を算出した。また、実施例1の計算式(1)に従い、新生児ろ紙血のTREC濃度(コピー/μl)も算出した。
[0095]
 〔参考例2〕
 1.新生児検体からのDNA溶出液の調製
 参考例1の「1.新生児検体からのDNA溶出液の調製」欄の記載と同様にして、新生児ろ紙血からDNA溶出液(20μl)を得た。なお、参考例1と参考例2とは同一の新生児検体を用いている。
[0096]
 2.検量線用スタンダード希釈系列の作製
 ACTB(βアクチン)に対する検量線用プラスミドとして健常人ゲノムDNAからACTBプライマー(後述する)により増幅した配列をpCR2.1に挿入して作成したプラスミド(ACTBプラスミド)を用いた。検量線用プラスミドの濃度が22ng/μl(5×10 コピー/μl)になるように、検量線用プラスミドの原液を調製した。次いで、EASY dilution(タカラバイオ社)を溶媒として用いて10倍希釈系列作製した。
[0097]
 また、TRECに対する検量線を作成するために、LightMix(登録商標)Modular Kit
 TREC(Roche社)に付属するPositive Control(200コピー/μl)を用い、その2倍希釈系列を6濃度(200、100、50、25、12.5、6.25コピー/μl)作製した。
[0098]
 3.定量PCR反応
 TRECに対する定量PCR反応の反応液の組成(1ウェルあたり)は表3に示す通りであり、ACTBに対する定量PCR反応の反応液の組成(1ウェルあたり)は以下の表4に示す通りである。表3~4中のテンプレートDNAとして、上記1.で得たDNA溶出液(同じDNA溶出液からTREC検出用1μlとACTB検出用1μlとを取得)、上記2.で得たTREC用の検量線用スタンダード希釈系列、及び、ACTB用の検量線用スタンダード希釈系列を用いた。TREC用の検量線用スタンダード希釈系列は、200、100、50、25、12.5、6.25コピー/μlの6濃度を用いた。ACTB用の検量線用スタンダード希釈系列は、5×10 、5×10 、5×10 、5×10 、5×10 、5×10 、5×10 -1コピー/μlの7濃度を用いた。さらに、テンプレート無しネガティブコントロール(NTC)として、表3及び表4中のTemplate DNAをEASY dilutionで置き換えたものを用いた。定量PCR反応は2重反復試験(duplicate)で行った。
[0099]
 =TRECプライマー及びプローブの配列=
 LightMix(登録商標)Modular Kit TRECに備え付けのものを用いた。
[0100]
 =ACTBプライマー及びプローブの配列=
 参考例1と同じACTB Fwプライマー、ACTB Rvプライマー、及びACTBプローブの組合せを用いた。
[0101]
[表3]


[0102]
[表4]


[0103]
 そして、ABI7500(Applied Biosystems社)を用いて定量PCR反応を行った。はじめに、逆転写反応を63℃で1サイクル、初期変性反応を95℃で1サイクル行った。続いて、変性反応(95℃)、アニーリング反応(60℃)及び、伸長反応(72℃)を順に繰り返し45サイクル行った。得られた増幅曲線から各反応溶液のCt値を算出した。
[0104]
 4.TREC濃度の算出
 参考例1の「4.TREC濃度の算出」に記載の方法に従い、本参考例に関する検量線を得て、新生児ろ紙血のTREC濃度(コピー/μl)を算出した。
[0105]
 5.参考例1と参考例2との結果の比較
 同一検体について異なる方法でTREC値の測定を行った結果、同一検体を用いても換算値(新生児ろ紙血のTREC濃度(コピー/μl))は大きく異なっていた。具体的には、参考例2の換算値が参考例1の換算値よりも明らかに小さくなる傾向が見られた。一方、この換算値を求めるのに用いたCt値を比較すると、参考例2のCt値が参考例1のCt値よりも明らかに小さくなるという、一見矛盾する傾向が見られた。ここから、二つの方法において検量線の違いが換算値の違いを生んでいること、より具体的には、参考例1及び2で得られた検量線を同じ座標上にプロットすると、参考例2の検量線が参考例1と比較して原点より近くに位置する可能性、すなわち、参考例2で得られた増幅曲線の立ち上がりが、参考例1と比較して早い可能性が示唆された。
[0106]
 6.実施例1と参考例1との結果の比較
 実施例1による検量線と参考例1による検量線を比較した。結果を図4に示す。黒塗り丸印が実施例1の結果であり、白抜き四角形が参考例1の結果である。なお、図中の人工ろ紙血のグラフは、図1の検量線と同じものであるが、参考例1の結果と比較するため、横軸の細胞濃度(TREC濃度)を以下の式によって、赤血球‐細胞混合液あたりの値(図1の値)から、人工ろ紙血あたりの値(図4の値。但しlog値で示す)に換算してある。
[0107]
  人工ろ紙血中の濃度(/μl)=赤血球‐細胞混合液の濃度(/μl)×3/20

産業上の利用可能性

[0108]
 本発明は、新生児が重症複合型免疫不全症(SCID)に罹患している可能性の評価に利用することができる。

請求の範囲

[請求項1]
 シグナルジョイント部分を含むTREC(T-cell Receptor Excision Circles)の核酸断片、及び、シグナルジョイント部分を含むKREC(Kappa-deleting Receptor Excision Circles)の核酸断片の少なくとも一方が、細胞内又はリポソーム内に導入されている、粒子。
[請求項2]
 シグナルジョイント部分を含むTRECの上記核酸断片、及び、シグナルジョイント部分を含むKRECの上記核酸断片が導入されている、請求項1に記載の粒子。
[請求項3]
 上記核酸断片が何れも400bp以上で600bp以下の範囲内であり、当該核酸断片の両端部から上記シグナルジョイント部分まで少なくとも80bp以上離れている、請求項1又は2に記載の粒子。
[請求項4]
 上記核酸断片が上記細胞に導入されている、請求項1~3の何れか一項に記載の粒子。
[請求項5]
 上記細胞は、内在性のTREC及びKRECを有していない、請求項4に記載の粒子。
[請求項6]
 上記核酸断片が、所定の個数含まれている、請求項1~5の何れか一項に記載の粒子。
[請求項7]
 請求項1~6の何れか一項に記載の粒子を、所定の濃度(粒子の個数/液体の体積)で含んでいる液体であるか、当該液体を繊維体にしみこませてなる、試料。
[請求項8]
 上記液体は、赤血球及び血漿の少なくとも一方を含んでなる、請求項7に記載の試料。
[請求項9]
 上記液体を上記繊維体にしみこませてなるスポットを複数有し、当該スポット間で上記粒子の濃度が異なっている、請求項7又は8に記載の試料。
[請求項10]
 請求項1~6の何れか一項に記載の粒子、又は、請求項7~9の何れか一項に記載の試料を含んでなる、キット。
[請求項11]
 TRECの上記核酸断片を遺伝子増幅するためのプライマー、KRECの上記核酸断片を遺伝子増幅するためのプライマー、TRECの上記核酸断片に対するプローブ、及び、KRECの上記核酸断片に対するプローブからなる群より選択される少なくとも一つを含んでなる、請求項10に記載のキット。
[請求項12]
 血液検体に含まれるTREC及びKRECの少なくとも一方の量を、遺伝子増幅法を用いて評価する方法であって、
 請求項7~9の何れか一項に記載の試料をコントロール試料又は検量線作成用の試料として用いる、方法。
[請求項13]
 上記血液検体が新生児のろ紙血検体である、請求項12に記載の方法。
[請求項14]
 請求項13に記載の方法でTREC及びKRECの少なくとも一方の量を評価した結果に基づいて、上記新生児が重症複合型免疫不全症(SCID)に罹患している可能性を評価する、請求項13に記載の方法。
[請求項15]
 シグナルジョイント部分を含むTRECの核酸断片、及び、シグナルジョイント部分を含むKRECの核酸断片の少なくとも一方を含む、核酸構築物(ただし、TRECの全長、及び、KRECの全長は含まない)。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]