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1. (WO2019065844) POROUS COMPOSITE FILM, SEPARATOR FOR BATTERY, BATTERY, AND POROUS COMPOSITE FILM PRODUCTION METHOD
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明 細 書

発明の名称 多孔複合フィルム、電池用セパレータ、電池、及び多孔複合フィルムの製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007  

課題を解決するための手段

0008   0009   0010  

発明の効果

0011  

図面の簡単な説明

0012  

発明を実施するための形態

0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057  

実施例

0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075  

産業上の利用可能性

0076   0077  

符号の説明

0078  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

図面

1   2a   2b   3  

明 細 書

発明の名称 : 多孔複合フィルム、電池用セパレータ、電池、及び多孔複合フィルムの製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、多孔複合フィルム、電池用セパレータ、電池、及び多孔複合フィルムの製造方法に関するものである。

背景技術

[0002]
 リチウムイオン二次電池は、繰返しの充放電可能な高容量電池として、携帯電話やノートパソコン等の電子機器の高性能化や長時間作動を可能としてきた。最近では、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の環境対応車の駆動用バッテリーとして搭載され、さらなる高性能化が期待されている。
 このようなリチウムイオン二次電池を高性能化するため、電池容量の高容量化、入出力特性、寿命特性、温度特性、保存特性等、種々の電池特性の改良のための検討がなされており、電池を構成する各種材料についても検討が行われている。
 その一つとして、正極と負極の間に配置されるセパレータについても、これまで種々の検討が行われており、特に接着性セパレータの検討が進められている。
[0003]
 例えば、特許文献1には、多孔質基材と、ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる接着性多孔質層を備えた複合膜が開示され、多孔質基材の曲路率、接着性多孔質層の平均孔径、多孔質基材および複合膜のガーレ値を特定の範囲に設定することにより、電極との接着性、イオン透過性、及びシャットダウン特性に優れた非水電解質電池用セパレータを提供することができると記載されている。
 特許文献2には、ポリオレフィン系樹脂からなる多孔質膜に、フッ素系樹脂を含む改質多孔質層を積層した電池用セパレータの製造方法が開示されている。この製造方法は、フッ素系樹脂を溶媒に溶解した塗工液を、多孔質膜の両面同時に塗工する工程と、凝固工程との間で、塗工後の多孔質膜をブレ防止装置に接触させ、搬送速度を30m/minにすることが記載されている。このようなブレ防止装置を用いた製造方法によれば、高い生産性が得られ、塗工スジを抑えることができることが記載されている。
[0004]
 特許文献3には、非水系二次電池用セパレータの製造方法として、多孔質支持体を、ポリフッ化ビニリデン又はその共重合体を含むドープを供給する2つのダイの間を通過させて、該多孔質支持体の両面に塗膜を形成し、次いでエアギャップ工程を経て、塗工された該多孔質支持体を、前記ダイの下方に設置されている凝固液を有する凝固浴へ搬送、浸漬して塗膜を凝固させることを特徴とする製造方法が記載されている。このような製造方法は、イオン透過性、電極との密着性、電解液保持性が良好な非水系二次電池用セパレータの製造法として好適であると記載されている。
 特許文献4には、ポリオレフィン微多孔膜上に、特定のフッ素樹脂濃度のワニスを塗布する工程と、このポリオレフィン微多孔膜を特定の低湿度ゾーンに通過させる工程と、特定の高湿度ゾーンに通過させる工程と、凝固浴に浸漬させてフッ素系樹脂を含む塗布層を改質多孔層に変換させ、ポリオレフィン微多孔膜にフッ素系樹脂と粒子を含む改質多孔層が積層された電池用セパレータを得る工程が記載されている。このような製造方法で得られた電池用セパレータは、優れたシャットダウン性能と電極接着性を有し、且つ、優れた電解液浸透性を有する高容量電池に適していることが記載されている。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 日本国特許第5964951号公報
特許文献2 : 日本国特開2016-38934号公報
特許文献3 : 日本国特開2003-171495号公報
特許文献4 : 国際公開第2014/126079号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 しかしながら、特許文献1から4に記載の電池用セパレータを用いた場合、電解液注入後の接着性が高くなっても、膜強度が弱くなり、サイクル特性が良好な状態にはならないことを見出した。また、その膜強度が弱いために製造プロセス中の部分的欠落及び脱落物の付着が存在し、短絡などの欠陥が生じやすくなっていたことを見出した。このような課題を鑑みて、本発明の目的は、高い接着性を保ちつつも膜強度が強く、製造プロセス中の部分的欠落及び脱落物の付着を抑制できる、電池のセパレータに好適な多孔複合フィルム、これを用いたセパレータ、サイクル特性に優れた電池、及び多孔複合フィルムの製造方法を提供することにある。
[0007]
 ここで、サイクル特性が良いとは、作製した扁平捲回型電池セルについて35℃の雰囲気下、充電を1Cで4.35Vまで、放電を1Cで3.0Vまでする充放電を繰り返し、容量維持率が60%に達するまでのサイクル数が350回以上であることをいう。また、製造プロセス中の部分的欠落及び脱落物の付着を抑制できるとは、多孔質基材と多孔質層とが、凝集破壊するようにテープ剥離をした時の応力値(膜強度)が2.0N以上であることをいう。

課題を解決するための手段

[0008]
 本願発明者らは鋭意検討の結果、多孔質基材と多孔質層とを備える多孔複合フィルムにおいて、多孔質層の断面空隙面積分布及び表面細孔面積分布が、接着性を高く保ちつつも膜強度を強くし、その多孔複合フィルムを用いた電池のサイクル寿命を良好とする因子であることを見出した。
[0009]
 すなわち本発明は、多孔質基材と、当該多孔質基材の少なくとも片面に多孔質層が積層された多孔複合フィルムであって、前記多孔質層が、フッ素含有樹脂を含み、次の要件(i)、(ii)及び(iii)を満たす多孔複合フィルムである。
(i)前記多孔質層の断面空隙面積分布のD 50の値が0.06μm 以上0.38μm 以下、かつ前記多孔質層の断面空隙面積分布のD 90の値が0.20μm 以上1.15μm 以下である。
(ii)前記多孔質層の表面細孔面積分布のD 50の値が0.0060μm 以上0.0072μm 以下、かつ前記多孔質層の表面細孔面積分布のD 90の値が0.0195μm 以上0.0220μm 以下である。
(iii)前記多孔質層の空孔率が50%以上70%以下である。
 本発明の他の態様によれば、上記の多孔複合フィルムを用いた電池用セパレータが提供される。
[0010]
 また本発明は、正極と、負極と、前記正極と前記負極の間に配置された本発明の電池用セパレータを含む電池である。
 また本発明は、本発明の多孔複合フィルムを製造する方法であって、
 フッ素含有樹脂を溶媒に溶解した塗工液を多孔質基材の少なくとも片面に塗工して塗膜を形成する工程と、
 前記塗膜が形成された多孔質基材を水を含む凝固液に浸漬して前記フッ素含有樹脂を凝固(相分離)させて多孔質層を形成し、前記多孔質基材上に該多孔質層が形成された複合フィルムを得る工程と、
 前記複合フィルムを水洗する工程と、
 水洗後の前記複合フィルムを乾燥する工程を含み、前記凝固液の温度が10~25℃の範囲であり、かつ前記凝固液中の前記溶媒の濃度が22質量%未満である、多孔複合フィルムの製造方法である。

発明の効果

[0011]
 本発明によれば、優れた接着力及び膜強度を持ちつつも、製造プロセス中の部分的欠落及び脱落物の付着を抑制できた多孔質層を有し、サイクル特性に優れた電池のセパレータに好適な多孔複合フィルム及びこれを用いた電池を提供することができる。更に、本発明によれば、上記多孔複合フィルムの製造方法を提供することができる。

図面の簡単な説明

[0012]
[図1] 図1は、本発明の実施形態による多孔複合フィルムの製造方法を説明するための図である。
[図2a] 図2aは(A)実施例2の多孔複合フィルムの断面の走査型電子顕微鏡画像(SEM画像)である。
[図2b] 図2bは、(B)比較例3の多孔複合フィルムの断面のSEM画像である。
[図3] 図3は、実施例1、5及び比較例3の多孔複合フィルムの表面のSEM画像である。

発明を実施するための形態

[0013]
 本発明の実施形態による多孔複合フィルムは、多孔質基材と、この多孔質基材の少なくとも片面に多孔質層が積層された多孔複合フィルムであってこの多孔質層は、フッ素含有樹脂を含み、以下の要件を満たす。
(i)前記多孔質層の断面空隙面積分布のD 50の値が0.06μm 以上0.38μm 以下、かつ前記多孔質層の断面空隙面積分布のD 90の値が0.20μm 以上1.15μm 以下である。
(ii)前記多孔質層の表面細孔面積分布のD 50の値が0.0060μm 以上0.0072μm 以下、かつ前記多孔質層の表面細孔面積分布のD 90の値が0.0195μm 以上0.0220μm 以下である。
(iii)前記多孔質層の空孔率が50%以上70%以下である。
[0014]
 この多孔複合フィルムは、電池のセパレータとして好適に用いることができ、例えばリチウムイオン電池のセパレータとして用いた場合、多孔質基材の両面に多孔質層が設けられていることが好ましい。
 本実施形態による多孔複合フィルムの多孔質基材と多孔質層は共に、リチウムイオンの伝導に好適な空隙を有する。この空隙に電解液を保持することにより、リチウムイオンを伝導することができる。
[0015]
 (多孔質層の断面空隙面積分布のD 50及びD 90)
 多孔質層の断面空隙面積分布のD 50の値が、0.06μm 以上0.38μm 以下、かつD 90の値が0.20μm 以上1.15μm 以下であることで、このような多孔質層を有する多孔複合フィルムは、比較的小さい空孔を含みつつも、比較的大きな空孔を持つ。そのため、多孔複合フィルムは、電解液を効果的に保持して高い接着性を保ちつつも、膜強度を高く保つことができる。
 多孔質層の断面空隙面積分布のD 50の値を0.06μm 以上、かつD 90の値を0.20μm 以上とすることで、各々の断面空隙間の距離を十分にとることができ、多孔質層を形成するフッ素含有樹脂が相分離する際に、フィブリルが束になって存在することができる。そのため、多孔質層の膜強度が向上し、製造プロセスでの多孔質層の剥離を防ぎ、上記多孔複合フィルムは電極との接着性の指標である接着力が向上するため、そのフィルムを用いた電池のサイクル特性を向上させることができる。したがって、多孔質層の断面空隙面積分布のD 50の値が0.06μm 以上、かつD 90の値が0.20μm 以上であることにより、多孔質層は膜強度が高く、剥離しにくく、良好な接着力を有することで、サイクル特性の優れた電池を得ることができる。
[0016]
 また、多孔質層の断面空隙面積分布のD 50の値が、0.38μm を超える、またはD 90の値が1.15μm を超える場合、多孔質層の表面細孔面積分布のD 50の値が、0.0060μm 未満となり、多孔質層最表面層が緻密化してしまう。このような最表面層が緻密化した多孔質層を有する多孔複合フィルムをセパレータに用いた電池は、充放電時の抵抗が上昇し、電圧降下が起こることでサイクル特性が低下する場合がある。したがって、多孔質層の断面空隙面積分布のD 50の値が0.38μm 以下、かつD 90の値が1.15μm 以下であることにより、多孔質層は、適度な細孔をもつ表面緻密層を有することができ、結果、良好なサイクル特性の電池を得ることができる。
[0017]
 なお、ここで「多孔質層最表面層」とは、多孔質層の表面(多孔質基材とは反対側の面)から25nm~150nmの表層領域を指す。多孔質層最表面層が緻密化してしまうとは、例えば、後述の製造方法において、多孔質層となる塗工液を塗布した多孔質基材を凝固/水洗槽の液中に浸漬させた際に、多孔質層の最表面に形成される25nm~150nmの表層領域が、緻密化して表面緻密層が形成されることを指している。この表面緻密層は、多孔質基材上にコーティングされた塗工液(ワニス)が、非溶媒(凝固液)に最も早く接する液界面において、相分離する際に形成されるフッ素含有樹脂の層に相当する。表面緻密層が厚くなり過ぎると、適当な細孔が形成されず、そのような表面緻密層が形成された多孔質層を有する多孔複合フィルムをセパレータに用いた電池は、サイクル特性が低下する。なお、本発明において「~」は以上、以下を表す。
[0018]
 (多孔質層の表面細孔面積分布のD 50及びD 90)
 多孔質層の表面細孔面積分布のD 50の値が、0.0060μm 以上0.0072μm 以下、かつD 90の値が0.0195μm 以上0.0220μm 以下であることで、表面緻密層が適度な緻密さを持つことができ、また、十分な膜強度を有することができる。このような多孔質層を有する多孔複合フィルムをセパレータに用いることにより、サイクル特性に優れた電池を得ることができる。
 多孔質層の表面細孔面積分布のD 50の値が0.0060μm 未満、またはD 90の値が0.0195μm 未満であると、多孔質層最表面層が過度に緻密になる。このような最表面が過度に緻密化した多孔質層を有する多孔複合フィルムをセパレータに用いた電池は、充放電時の抵抗が上昇し、電圧降下が起こることでサイクル特性が低下する。したがって、多孔質層の表面細孔面積分布のD 50の値が、0.0060μm 以上、かつD 90の値が0.0195μm 以上であると、多孔質層は、適度な細孔をもつ表面緻密層を有し、結果、良好なサイクル特性の電池を得ることができる。
[0019]
 多孔質層の表面細孔面積分布のD 50の値が0.0072μm を超える、またはD 90の値が0.0220μm を超えると、多孔質層の断面空隙が緻密になる。その結果、多孔質層を形成するフッ素含有樹脂のフィブリルが固まって存在できず、フィブリルの径が小さくなるため、多孔質層の膜強度が低下し、製造プロセスで多孔質層が剥離しやすくなる。また、上記多孔複合フィルムは接着力が低下するため、そのフィルムを用いた電池のサイクル特性は低下する。したがって、多孔質層の表面細孔面積分布のD 50の値が、0.0072μm 以下、かつD 90の値が0.0220μm 以下であることにより、多孔質層は膜強度が高く、剥離しにくく、良好な接着力を有することで、サイクル特性の優れた電池を得ることができる。
[0020]
 (多孔質層の空孔率)
 多孔質層の空孔率は50%~70%の範囲にあり、多孔複合フィルムの使用目的によって適宜設定することができる。例えば、本実施形態の多孔複合フィルムをリチウムイオン電池のセパレータに用いる場合、多孔質層の空孔率が50%より小さいと、十分な量の電解液を保持できないためリチウムイオンの伝導性が低くなり、抵抗が大きくなる。逆に、多孔質層の空孔率が70%より大きいと、膜強度が低下する。したがって、多孔質層の空孔率が50~70%の範囲にあることにより、多孔質層の膜強度を十分に保ちながら、十分な量の電解液を保持でき、リチウムイオンの伝導性が十分に得られるため、抵抗の増大を抑えることができる。
[0021]
 (多孔質層のフッ素含有樹脂)
 多孔質層がフッ素含有樹脂を含むことで、接着力が高い多孔質層を得ることができる。本実施形態による多孔複合フィルムをリチウムイオン電池のセパレータに用いた場合、接着力が高いと、電池のサイクル寿命を高めることができる。
 フッ素含有樹脂としては、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンからなる重合単位種の群から選択される少なくとも1つの重合単位を含む単独重合体又は共重合体が好ましく、フッ化ビニリデン単位を含む重合体(ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン共重合体)がより好ましい。特に、電解液に対する膨潤性の観点から、フッ化ビニリデンと他の重合単位からなるフッ化ビニリデン共重合体が好ましく、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体が好ましい。
[0022]
 (多孔質層のセラミック)
 本実施形態による多孔複合フィルムは、その多孔質層にセラミックを含んでいてもよい。このセラミックとしては、例えば、二酸化チタン、シリカ、アルミナ、シリカ―アルミナ複合酸化物、ゼオライト、マイカ、ベーマイト、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛が挙げられる。
[0023]
 (セラミックの平均粒子径)
 セラミックの平均粒子径は、好ましくは0.5μm~2.0μmの範囲に設定でき、0.5μm~1.5μmの範囲がより好ましい。ただし、セラミックの平均粒子径が多孔質層の厚みを上限として、セラミックの平均粒子径を選択することが好ましい。
[0024]
 (多孔質層のセラミックの重量比率)
 セラミックの含有量は、フッ素含有樹脂とセラミックの総重量に対して50重量%~90重量%が好ましく、より好ましくは60重量%~80重量%である。
[0025]
 (多孔質層の断面空隙の平均面積A1)
 本実施形態による多孔複合フィルムは、その多孔質層の空隙径の平均値に関係する「断面空隙の平均面積」A1が0.054μm 以上0.098μm 以下であることが好ましく、0.054μm 以上0.095μm 以下がより好ましく、0.054μm 以上0.080μm 以下が更に好ましい。多孔質層の十分な接着力及び優れた強度を得る点から、多孔質層の断面空隙の平均面積A1が0.054μm 以上が好ましい。この多孔複合フィルムをセパレータに用いた電池のサイクル性能の低下を十分に抑える点から、断面空隙の平均面積A1が0.098μm 以下が好ましい。
[0026]
 (多孔複合フィルムの厚み)
 本実施形態による多孔複合フィルムの全体の膜厚は、好ましくは4μm~30μmの範囲に設定でき、4μm~24μmの範囲がより好ましい。このような範囲に厚みを設定することで、できるだけ薄膜にしながらも、機械強度と絶縁性を確保することができる。
 本実施形態による多孔複合フィルムの多孔質層の膜厚は、好ましくは1~5μmの範囲に設定でき、1~4μmの範囲がより好ましく、1~3μmが更に好ましい。多孔質層の厚みをこのような範囲に設定することで、必要最小限の厚みで、十分な多孔質層の形成効果と十分な接着力及び優れた強度を得ることができる。
[0027]
 (多孔質層の電極との接着力)
 本実施形態による多孔複合フィルムの多孔質層の電極との接着力が5.0N以上であることが好ましい。電極との接着力が5.0N未満の場合、電池反応による副生成物である気泡等が生じた際に、接着力の弱い部分で剥離し、その部分が電池の欠陥となってサイクル特性が低下する。一方、上限は特に規定しないが、10N以下であることが好ましく、8N以下であることがより好ましい。
[0028]
 (多孔質層の凝集破壊する膜強度)
 本実施形態による多孔複合フィルムの多孔質層の凝集破壊する膜強度が2.0N以上であることが好ましく、2.4N以上であることがより好ましい。凝集破壊する膜強度が2.0N未満の場合、工程内で多孔質層の剥離が生じ、脱落物がロール等に付着することで生産性が低下する。一方、上限は特に規定しないが、多孔複合フィルムのハンドリング性(ブロッキング等)の観点から10N以下であることが好ましい。
[0029]
 (多孔質基材)
 本実施形態による多孔複合フィルムの多孔質基材は、ポリオレフィン多孔質膜であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレンが好ましい。また、単一物または2種以上の異なるポリオレフィン樹脂の混合物、例えばポリエチレンとポリプロピレンの混合物であってもよい。また、ポリオレフィンは単独重合体であっても共重合体であってもよく、例えばポリエチレンはエチレンの単独重合体でもよいし、他のαオレフィンの単位を含む共重合体であってもよく、ポリプロピレンはプロピレンの単独重合体であってもよく、他のαオレフィンの単位を含む共重合体であってもよい。多孔質基材は単層膜であっても二層以上の複数の層からなる積層膜であってもよい。
 ポリオレフィン多孔質膜とは、ポリオレフィン多孔質膜中におけるポリオレフィン樹脂の含有量が55~100質量%である多孔質膜を意味する。ポリオレフィン樹脂の含有量が55質量%未満であると、十分なシャットダウン機能が得られないことがある。
 多孔質基材の厚みは、3μm~25μmの範囲にあることが好ましく、3~20μmの範囲がより好ましい。多孔質基材の空孔率は、30~70%の範囲にあることが好ましく、35~60%の範囲がより好ましい。このような厚み、空孔率を有することにより、十分な機械的強度と絶縁性が得られ、また十分なイオン伝導性を得ることができる。
[0030]
 (多孔複合フィルムの製造方法)
 本実施形態による多孔複合フィルムの製造方法は、次の工程(a)~(d)を有し、凝固液の温度が10~25℃の範囲であり、かつ凝固液中の溶媒の濃度が22質量%未満である。
(a)フッ素含有樹脂を溶媒に溶解した塗工液を多孔質基材の少なくとも片面に塗工して塗膜を形成する工程
(b)塗膜が形成された多孔質基材を水を含む凝固液に浸漬して前記フッ素含有樹脂を凝固させて多孔質層を形成し、前記多孔質基材上に該多孔質層が形成された複合フィルムを得る工程
(c)複合フィルムを水洗する工程
(d)水洗後の複合フィルムを乾燥する工程
[0031]
 上記(a)の工程における塗工液の粘度、(b)の工程における凝固液中の溶媒濃度、及び凝固液の温度が多孔質層の構造を決定付ける大きな要因である。
 本実施形態による多孔複合フィルムの製造方法の一例を、図1を用いて以下に説明する。この製造方法では、多孔質基材が通過できるギャップを有するヘッドを用いて、多孔質基材の両面に塗工液を塗布(ディップコート)し、続いて凝固、洗浄、乾燥を経て、多孔質基材の両面に多孔質層が形成された多孔複合フィルムを得る。
 まず、巻出ロール1より巻き出された多孔質基材は、ディップヘッド2へ、その上方から供給され、ディップヘッド2の下部にあるギャップを通過して下方へ引き出され、続いて凝固/水洗槽3へ供給される。このディップヘッド2は、通過する多孔質基材の両面にディップコートできるように塗工液を収容できる。引き出された多孔質基材の両面には塗膜が形成され、この塗膜の厚みは、ディップヘッドのギャップのサイズと搬送速度等で制御できる。
[0032]
 塗工液の溶媒としては、フッ素含有樹脂を溶解でき、かつ水等の凝固液(相分離液)と混和(任意の濃度で相溶)可能な良溶媒を用いることができる。このような良溶媒とこの良溶媒に溶解したフッ素含有樹脂を含む塗工液が塗布された多孔質基材が、凝固/水洗槽中の凝固液中に入ると、塗膜中の樹脂と良溶媒が相分離し、樹脂が凝固して多孔質層が形成される。
 良溶媒としては、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、リン酸ヘキサメチルトリアミド(HMPA)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが挙げられ、樹脂の溶解性に合わせて自由に選択できる。良溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)が好ましい。
[0033]
 塗工液の粘度は、600mPa・s~1000mPa・sの範囲に設定することができる。塗工液の粘度はB型粘度計で測定した粘度である。塗工液の粘度を600mPa・s~1000mPa・sの範囲にすることで、相分離時の非溶媒の拡散速度を制御することができるため、所望の多孔質層を形成することができる。
 塗工液のフッ素含有樹脂の濃度は、2重量%~7重量%の範囲にあることが好ましく、3重量%~6重量%の範囲がより好ましい。
[0034]
 また、塗工厚は5μm~25μm(片面)に設定することができる。塗工厚の幅方向(フィルムの進行方向に垂直な方向)のばらつきが±10%以下が好ましい。
 図1には、ディップヘッドを用いたディップコート方式を示しているが、多孔質基材の片面に粘度600mPa・s以上1000mPa・s以下の塗工液を塗工厚5μm以上25μm以下で塗布でき、その幅方向の厚みバラツキが±10%となるように塗布できるのであれば、種々の塗工方式を採用できる。例えば、一般的なディップコート、キャスト、スピンコート、バーコート、スプレー、ブレードコート、スリットダイコート、グラビアコート、リバースコート、リップタイレクト、コンマコート、スクリーン印刷、鋳型塗布、印刷転写、インクジェットなどのウエットコート法等を挙げることができる。特に、連続的かつ例えば塗工速度30m/分以上で塗工する場合は、高粘度、薄膜、高速塗工に適した、かき取り方式であるリップダイレクト方式やコンマコート方式、ディップコート方式が好ましい。さらに、両面同時に多孔質層を形成できるという点から、ディップコート方式がより好ましい。ディップコート方式を採用することで、80m/分以上の速度で塗工することが可能になる。
 連続的にコーティングを行う場合、搬送速度は、例えば5m/分~100m/分の範囲に設定でき、生産性と塗膜の厚みの均一性等の点から、塗工方式に応じて適宜設定することができる。
[0035]
 凝固液としては、水又は水を主成分として含む水系溶液が好ましく、良溶媒の凝固液中の濃度は22質量%未満(すなわち水の含有量が78質量%以上)に保つ必要があり、20質量%未満(すなわち水の含有量が80質量%以上)に保つことが好ましく、16質量%以下(すなわち水の含有量が84質量%を超える量)に保つことがより好ましい。例えば、凝固液中の良溶媒濃度は0.1質量%以上22質量%未満の範囲に保つことが好ましく、0.1質量%以上20質量%未満の範囲がより好ましく、更に好ましくは0.1質量%以上16質量%以下の範囲に設定できる。
 ディップヘッドで塗膜が形成された多孔質基材は、凝固/水洗槽内の凝固液中に浸漬される。
[0036]
 凝固液の温度は、25℃以下とすることが好ましく、より好ましくは24℃以下である。このような温度範囲に設定すると、凝固液中で塗膜が適度な相分離速度で相分離して所望の多孔質層を形成でき、また温度制御がしやすくなる。一方、凝固液の温度の下限は、凝固液が液状を保てる範囲(凝固点より高い温度)であればよいが、温度制御や相分離の速度の点から、10℃以上とする必要があり、15℃以上が好ましく、17℃以上がより好ましい。
[0037]
 凝固/水洗槽内の凝固液中での浸漬時間は、3秒以上が好ましく、5秒以上がより好ましい。浸漬時間の上限は特に制限されないが、10秒間浸漬していれば十分な凝固が達成できる。
[0038]
 凝固/水洗槽3内の凝固液中から巻き出された段階で、多孔質基材上に多孔質層が形成された多孔複合フィルムが得られる。この多孔複合フィルムは、続いて、1次水洗槽4の水中へ供給され、順次、2次水洗槽5の水中、3次水洗槽6の水中に導入され、連続的に洗浄される。図1では、水洗槽は3つであるが、水洗槽での洗浄効果に応じて、水洗槽の数を増やしても良いし、減らしてもよい。各槽の洗浄水は連続的に供給してもよいし、回収した洗浄水を精製してリサイクルしてもよい。
 次に、最後の3次水洗槽6から巻き出された多孔複合フィルムは、乾燥炉7へ導入され、付着した洗浄液が除去され、乾燥した多孔複合フィルムが巻取ロール8に巻き取られる。
[0039]
 (測定方法)
 (1)多孔質層の断面空隙面積分布のD 50、D 90
 多孔質層の断面空隙面積分布のD 50、D 90は次のようにして求めた。
基材面と垂直方向にイオンミリングによって断面だしを施した基材断面を、加速電圧2.0kV、倍率5000倍にて基材断面と垂直方向にランダムにSEM画像観察し、得られた断面SEM画像50枚について、それぞれ基材の厚み方向を1:1に内分する点で基材の面方向と平行に画像をカットし、その画像についてグレイ値を取得、その平均値が大きいほうの画像について画像解析ソフトHALCON(Ver.13.0,MVtec社製)にて、まず画像データの読み込みを行い、次に、輪郭強調(微分フィルタ(emphasize)、エッジ強調フィルタ(shock_filter)の順で処理)を行った後、2値化するという手順で実施した。なお、輪郭強調に用いる微分フィルタの「emphasize」、エッジ強調フィルタの「shock_filter」はHALCONに含まれる画像処理フィルタである。2値化について、グレイ値に対する閾値の下限を64、上限を255に設定し、64以上の部分はPVdF(ポリフッ化ビニリデン)等のフッ素含有樹脂(セラミック等のフィラーがある場合はそれを含む)が存在する部分とし、さらにそれら樹脂成分及びフィラーが存在している領域のグレイ値を255、その他の領域(断面空隙部)のグレイ値を0に置き換え、グレイ値0を持つ連続したピクセル同士を連結し、一つの画像から100個以上の断面空隙部の面積を抽出した。抽出した断面空隙部の面積を断面空隙面積とし、断面空隙面積のうち、式(1)を満たす断面空隙面積について、その面積値の分布におけるD 50及びD 90を算出した。ここで、D 50とは各断面空隙面積を昇順に並び替え、全ての面積を足し合わせた総面積に対する、累積面積が50%となる面積であり、D 90は累積面積が90%となる面積を指す。
[0040]
[数1]


[0041]
 式中、Xは各断面空隙面積、X maxは各断面空隙面積の最大値を示す。
[0042]
 (2)多孔質層の表面細孔面積分布のD 90、D 50
 多孔質層の表面細孔面積分布のD 90、D 50は次のようにして求めた。
加速電圧2.0kV、倍率10000倍にて基材表面と垂直方向にランダムにSEM画像観察し得られた表面SEM画像50枚について、画像解析ソフトHALCON(Ver. 13.0, MVtec社製)にて、まず画像データの読み込みを行い、次に、輪郭強調(微分フィルタ(emphasize)、エッジ強調フィルタ(shock_filter)の順で処理)を行った後、2値化するという手順で実施した。2値化について、グレイ値に対する閾値の下限を10、上限を255に設定し10以上の部分はPVdF等のフッ素含有樹脂(セラミック等のフィラーがある場合はそれを含む)が存在する部分とし、さらにそれら樹脂成分及びフィラーが存在している領域のグレイ値を255、その他の領域(表面細孔部)のグレイ値を0に置き換え、グレイ値0を持つ連続したピクセル同士を連結し、一つの画像から100個以上の表面細孔部の面積を抽出した。抽出した表面細孔部の面積を表面細孔面積とし、表面細孔面積のうち、式(2)を満たす表面細孔面積について、その面積値の分布におけるD 90及びD 50を算出した。ここで、D 90とは各表面細孔面積を昇順に並び替え、全ての面積を足し合わせた総面積に対する、累積面積が90%となる面積であり、D 50は累積面積が50%となる面積を指す。
[0043]
[数2]


[0044]
 式中、Yは各表面細孔面積、Y maxは各表面細孔面積の最大値を示す。
[0045]
 (3)多孔質層の空孔率V
 多孔質層の空孔率Vは、以下の式を用いて算出した。
[0046]
[数3]


[0047]
 式中、W は多孔質層の目付け、Dは多孔質層の真密度、tは多孔質層の厚み。
[0048]
 多孔質層の目付W は以下の式を用いて次のようにして測定した。
=塗工済みフィルムの目付(W A1)-基材の目付(W A2
 塗工済みフィルムの目付W A1及び基材の目付W A2の測定は、5cm角のサンプルを用意し、以下の式を用いて算出した。
 W A1=「塗工済みフィルム5cm角サンプルの重さ」/0.0025
 W A2=「基材5cm角サンプルの重さ」/0.0025
[0049]
 多孔質層の真密度Dは以下の式を用いて算出した。
 D=材料Aの密度×Aの配合率(質量比)+材料Bの密度×Bの配合率(質量比)+・・・・
[0050]
 多孔質層の厚みtは以下の式を用いて次のようにして測定した。
 t=塗工済みのフィルムの厚み(t )-基材の厚み(t
[0051]
 接触式膜厚計((株)ミツトヨ製「ライトマチック」(登録商標)series318)を使用して厚み(t 、t )を測定した。測定は、超硬球面測定子φ9.5mmを用いて、加重0.01Nの条件で20点を測定し、得られた測定値の平均値を膜厚とした。
[0052]
 (4)多孔質層の断面空隙の平均面積A1
 多孔質層の断面空隙の平均面積A1を次のようにして測定した。
 基材面と垂直方向にイオンミリングによって断面だしを施した断面を加速電圧2.0kV、倍率5000倍にてランダムにSEM画像観察した断面SEM画像50枚を、それぞれ基材の厚み方向を1:1に内分する点で基材の面方向と平行に画像をカットし、その画像についてグレイ値を取得、その平均値が大きい方の画像について、画像解析ソフトHALCON(Ver.13.0,MVtec社製)にて、まず画像データの読み込みを行い、次に、輪郭強調(微分フィルタ(emphasize)、エッジ強調フィルタ(shock_filter)の順で処理を行った後、2値化するという手順で実施した。2値化について、グレイ値に対する閾値の下限を64、上限を255に設定し64未満の部分を空隙、64以上の部分はPVdF(フィラーがある場合はそれを含む)が存在する部分とし、さらにそれら樹脂成分及びフィラーが存在している領域のグレイ値を255、その他の領域(空隙部)のグレイ値を0に置き換え、グレイ値0を持つ連続したピクセル同士を連結し、一つの画像から100個以上の断面空隙部の面積を抽出した。抽出した断面空隙部の面積を断面空隙面積とし、断面空隙面積のうち、式(1)を満たす断面空隙面積について、式(4)で断面空隙の平均面積A1を算出した。
[0053]
[数4]


[0054]
 (リチウムイオン二次電池)
 本実施形態による多孔複合フィルムは、電池用セパレータとして用いることができ、リチウムイオン二次電池のセパレータとして好適に用いることができる。本実施形態による多孔複合フィルムをセパレータに用いることにより、サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
 また、本実施形態による電池は、正極と、負極と、前記正極と前記負極の間に配置された本実施形態による電池用セパレータを含む。
 本実施形態による多孔複合フィルムが適用されるリチウムイオン二次電池の例としては、負極と正極がセパレータを介して対向して配置された電池要素に電解質を含む電解液が含浸され、これらが外装材に封入された構造を有するものが挙げられる。
[0055]
 負極の例としては、負極活物質、導電助剤及びバインダーからなる負極合剤が、集電体上に成形されたものが挙げられる。負極活物質としては、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料が用いられる。具体的には、黒鉛やカーボンなどの炭素材料、シリコン酸化物、シリコン合金、スズ合金、リチウム金属、リチウム合金などなどが挙げられる。導電助剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどの炭素材料が用いられる。バインダーとしてはスチレン・ブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミドなどが用いられる。集電体としては銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔などが用いられる。
[0056]
 正極の例としては、正極活物質、バインダー及び必要に応じて導電助剤からなる正極合剤が、集電体上に成形されたものが挙げられる。正極活物質としては、Mn、Fe、Co、Niなどの遷移金属を少なくとも1種含むリチウム複合酸化物が挙げられる。具体的には、例えば、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウムなどが挙げられる。導電助剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどの炭素材料が用いられる。バインダーとしてはポリフッ化ビニリデンなどが用いられる。集電体としてはアルミ箔、ステンレス箔などが用いられる。
[0057]
 電解液としては、例えば、リチウム塩を非水系溶媒に溶解させたものを用いることができる。リチウム塩としては、LiPF 、LiBF 、LiClO 、LiN(SO CF などが挙げられる。非水系溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ-ブチロラクトンなどが挙げられ、通常はビニレンカーボネートなどの各種添加剤とともに、これらのうちの2種以上を混合したものが用いられる。また、イミダゾリウム陽イオン系などのイオン液体(常温溶融塩)も用いることができる。
 外装材としては、金属缶またはアルミラミネートパックなどが挙げられる。電池の形状は、コイン型、円筒型、角型、ラミネート型などが挙げられる。
実施例
[0058]
 (測定方法)
 各実施例及び各比較例の多孔複合フィルムについて、多孔質層の断面空隙面積分布のD 50、D 90については上記(1)に従い、多孔質層の表面細孔面積分布のD 90、D 50については上記(2)に従い、多孔質層の空孔率Vについては上記(3)に従い、多孔質層の断面空隙の平均面積A1については上記(4)に従って測定を行った。また、膜厚と接着力及び膜強度については、下記に従って測定した。
[0059]
 (膜厚)
 接触式膜厚計((株)ミツトヨ製“ライトマチック”(登録商標)series318)を使用して膜厚を測定した。この測定においては、超硬球面測定子φ9.5mmを用いて、加重0.01Nの条件で20点を測定し、得られた測定値の平均値を膜厚とした。
[0060]
 (膜強度)
 JIS C5016-1994の180°ピールに準拠した方法で膜強度を測定した。各多孔複合フィルムに、20mm×100mm程度にカットした両面テープ((株)清和産業製 透明フィルム両面テープSFR-2020)を貼り、金属板上に圧着し、サンプル表面中央部に15mm×90mm程度にカットしたセロテープ(登録商標)(植物系、No.405)を80mm程度貼り、多孔質基材と多孔質層との凝集破壊するようにセロテープ(登録商標)が180°方向に剥がれるように金属板及びセロテープ(登録商標)をオートグラフにセットし、100.0mm/minで引っ張り、テープ剥離時の応力を測定した。
[0061]
 (実施例1)
 前述の図1に示す製造プロセスに従って多孔複合フィルムを作製した。具体的には、まず、ロールから巻き出したポリオレフィン多孔質膜(膜厚7μm)を搬送速度7m/分で、ディップヘッドの上方から下方へディップヘッドのギャップに通過させ、ポリオレフィン多孔質膜の両面に塗工液を塗布し、続いて、凝固液中に浸漬させることでポリオレフィン多孔質膜上に塗膜が形成される。なお、ディップヘッドのギャップのサイズ(厚み方向の長さ)は45μmとした。塗工液の樹脂としてはPVdF(ポリフッ化ビニリデン)、この樹脂を溶解する良溶媒としてはNMP(N-メチル-2-ピロリドン)を用い、PVdFとNMPの質量比はPVdF:NMP=1:22とし、塗工厚(片面)は12.0μmとした(膜厚(片面)は1.5μm)。塗工液のセラミックとしてはアルミナを用い、PVdFとアルミナの質量比はPVdF:アルミナ=1:1.4とした。
[0062]
 凝固/水洗槽内の凝固液は、相分離液として水を用い、この凝固液中のNMP濃度を0.1質量%に保持し、凝固液の温度は11℃に設定した。
 凝固液中から引き出された段階で、ポリオレフィン多孔質膜上に多孔質層が形成された多孔複合フィルムが得られ、この多孔複合フィルムを、順に、1次水洗槽、2次水洗槽、3次水洗槽の水中に導入して、連続的に洗浄した。
 続いて、最後の3次水洗槽から巻き出された多孔複合フィルムを、乾燥炉へ導入し、付着した洗浄液を除去して、乾燥した多孔複合フィルムを巻きとった。
 得られた多孔複合フィルムについて、製造条件と測定結果について表1に示す。
[0063]
 (実施例2~18、比較例1~3)
 多孔質層のPVdFの目付が同等になるようにディップヘッドのギャップのサイズ(塗工Gap)、塗工液のPVdFとアルミナの質量比、塗材粘度、凝固液の温度及び凝固液中のNMP濃度を表1に示す通りに調整した以外は、実施例1と同様にして多孔複合フィルムを作製した。測定結果を表1に示す。
[0064]
 (比較例4)
 実施例1と同じ多孔質基材に、PVdFの変わりにアクリル樹脂、セラミックスとしてはアルミナ、良溶媒として水を用いた塗工液をグラビア方式で片面に塗布し(塗工厚(片面):12.0μm)、乾燥して片面に多孔質層を形成した。測定結果を表1に示す。
[0065]
 (リチウムイオン二次電池の作製とサイクル特性評価)
 (電解液の作製)
 電解液として、エチレンカーボネート(EC):メチルエチルカーボネート(MEC):ジエチルカーボネート(DEC)=3:5:2(体積比)で混合した溶媒に、LiPF (ヘキサフルオロリン酸リチウム)1.15Mとビニレンカーボネート(VC)0.5wt%を添加した電解液を調製した。
[0066]
 (正極の作製)
 コバルト酸リチウム(LiCoO )にアセチレンブラック黒鉛とポリフッ化ビニリデンとを加え、N-メチル-2-ピロリドン中に分散させてスラリーにした。このスラリーを、厚さ20μmの正極集電体用アルミニウム箔の両面に均一に塗布して乾燥して正極層を形成し、その後、ロールプレス機により圧縮成形して、集電体を除いた正極層の密度が3.6g/cm の帯状の正極を作製した。
[0067]
 (負極の作製)
 カルボキシメチルセルロースを1.5質量部含む水溶液を、人造黒鉛96.5質量部に加えて混合し、さらに固形分として2質量部のスチレンブタジエンラテックスを加えて混合して負極合剤含有スラリーを形成した。この負極合剤含有スラリーを、厚みが8μmの銅箔からなる負極集電体の両面に均一に塗付して乾燥して負極層を形成し、その後、ロールプレス機により圧縮成形して、集電体を除いた負極層の密度が1.5g/cm の帯状の負極を作製した。
[0068]
 (試験用巻回体の作製)
 上記で作製された負極(機械方向161mm×幅方向30mm)と、上記の実施例又は比較例の多孔複合フィルム(機械方向160mm×幅方向34mm)を重ね、金属板(長さ300mm、幅25mm、厚さ1mm)を巻き芯として多孔複合フィルムが内側になるように多孔複合フィルムと負極を巻き取り、金属板を引き抜いて試験用巻回体を得た。試験用巻回体は長さ約34mm×幅約28mmとなった。
[0069]
 (接着力)
 ポリプロピレンからなるラミネートフィルム(長さ70mm、幅65mm、厚さ0.07mm)2枚を重ね、4辺のうち3辺を溶着した袋状のラミネートフィルム内に試験用巻回体を入れた。エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを体積比3:7で混合した溶媒にLiPF を1mol/Lの割合で溶解させた電解液500μLをグローブボックス中でラミネートフィルムの開口部から注入し、試験用巻回体に含浸させ、真空シーラーで開口部の一辺を封止した。
 次に、ラミネートフィルムに封入した試験用巻回体を2枚のガスケット(厚さ1mm、5cm×5cm)で挟み込み、精密加熱加圧装置(新東工業(株)製、CYPT-10)にて98℃、0.6MPaで2分間加圧し、室温で放冷した。ラミネートフィルムに封入したまま、加圧後の試験用巻回体について、万能試験機((株)島津製作所製、AGS-J)を用いて湿潤時曲げ強さを測定した。
[0070]
 2本のアルミニウム製L字アングル(厚さ1mm、10mm×10mm、長さ5cm)を90°部分が上になるように平行に、端部をそろえて配置し、90°部分を支点として支点間距離が15mmとなるよう固定した。2本のアルミニウム製L字アングルの支点間距離の中間である7.5mm地点に、試験用巻回体の幅方向の辺(約28mm)の中点を合わせて、L字アングルの長さ方向の辺からはみ出さないように、試験用巻回体を配置した。
 次に、圧子としてアルミニウム製L字アングル(厚さ1mm、10mm×10mm、長さ4cm)の長さ方向の辺から試験用巻回体の長さ方向の辺(約34mm)がはみ出さないように、かつ平行にして、試験用巻回体の幅方向の辺の中点にアルミニウム製L字アングルの90°部分を合わせ、90°部分が下になるようにアルミニウム製L字アングルを万能試験機のロードセル(ロードセル容量50N)に固定した。3個の試験用巻回体を負荷速度0.5mm/minにて測定し、得られた最大試験力の平均値を接着力とした。
[0071]
 (電池の作製)
 上記の正極、上記の実施例又は比較例の多孔複合フィルム、及び上記の負極を積層した後、扁平状の巻回電極体(高さ2.2mm×幅32mm×奥行32mm)を作製した。この扁平状の巻回電極体の各電極へ、シーラント付タブを溶接し、正極リード、負極リードとした。
 次に、扁平状の巻回電極体部分をアルミラミネートフィルムで挟み、一部開口部を残してシールし、これを真空オーブンにて80℃で6時間乾燥した。乾燥後、速やかに電解液を0.75ml注液し、真空シーラーでシールし、90℃、0.6MPaで2分プレス成型した。
 続いて、得られた電池の充放電を実施した。充放電条件は300mAの電流値で、電池電圧4.35Vまで定電流充電した後、電池電圧4.35Vで15mAになるまで定電圧充電を行った。10分の休止後、300mAの電流値で電池電圧3.0Vまで定電流放電を行い、10分休止した。以上の充放電を3サイクル実施し、電池容量300mAhの試験用二次電池(扁平捲回型電池セル)を作製した。
[0072]
 (サイクル評価)
 上記で作製した扁平捲回型電池セルについて、充放電測定装置を使用し、35℃の雰囲気下、充電を300mAで4.35Vまで、放電を300mAで3.0Vまでする充放電を繰り返し、容量維持率が60%に達するまでのサイクル数を求めた。このサイクル数が多いと、サイクル特性が良いことを示す。このときの充放電条件は、以下の通りとした。
 充電条件:1C、CC-CV充電、4.35V、0.05 C Cut off
 休止:10分
 放電条件:1C、CC放電、3V Cut off
 休止:10分。
[0073]
[表1]



[0074]
 表1に示す通り、本発明の要件を満足する実施例では、十分な接着力と膜強度を持つ多孔質層を有する多孔複合フィルムが得られ、この多孔複合フィルムをセパレータに用いた電池はサイクル特性に優れる。
 図2a及び図2bは、それぞれ実施例2及び比較例3の多孔複合フィルムの断面のSEM画像であり、図3は、実施例1、5及び比較例3の多孔複合フィルムの表面のSEM画像である。
 図2aに示す実施例2(NMP濃度:0.1質量%)の多孔複合フィルムは、図2bに示す比較例3(NMP濃度:24.8質量%)の多孔複合フィルムに対して、断面空隙面積分布のD 50、D 90及び断面空隙の平均面積A1が大きいことを反映した状態になっている。すなわち、実施例2の多孔質層は疎構造を有し、比較例3の多孔質層は密構造を有している。
[0075]
 図3の左側のSEM画像は実施例2(NMP濃度:0.1質量%)、中央のSEM画像は実施例5(NMP濃度:16.0質量%)、右側のSEM画像は比較例3(NMP濃度:24.8質量%)の多孔複合フィルムの多孔質層の表面を示し、下段のSEM画像は上段のSEM画像の拡大像である。実施例1及び5は、比較例3に対して、表面細孔面積の分布のD 50、D 90が小さく(すなわち比較的密な構造であり)、表面細孔面積の分布が異なっている(なお、分布は異なるが表面細孔面積の差は小さい)。
 このように実施例2の多孔複合フィルムの多孔質層表面の細孔分布は比較的密であり、その内側の領域(断面領域)は疎な構造であり、これに対して、比較例3の多孔複合フィルムの多孔質層表面の細孔分布は比較的疎であり、その内側の領域(断面流域)は密な構造である。多孔質層のこのような構造の違いが、膜強度とサイクル特性の違いに大きく影響していると考えられる。

産業上の利用可能性

[0076]
 本発明の実施形態にかかる多孔複合フィルムは、優れた接着力及び膜強度を持ちつつも、製造プロセス中の部分的欠落及び脱落物の付着を抑制できた多孔質層を有し、サイクル特性に優れた電池のセパレータに好適な多孔複合フィルム及びこれを用いた電池を提供することができる。更に、本発明によれば、上記多孔複合フィルムの製造方法を提供することができる。
[0077]
 本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
 本出願は、2017年9月29日出願の日本特許出願(特願2017-191838)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。

符号の説明

[0078]
1:巻出ロール
2:ディップヘッド
3:凝固/水洗槽
4:1次水洗槽
5:2次水洗槽
6:3次水洗槽
7:乾燥炉
8:巻取ロール

請求の範囲

[請求項1]
 多孔質基材と、当該多孔質基材の少なくとも片面に多孔質層が積層された多孔複合フィルムであって、前記多孔質層が、フッ素含有樹脂を含み、次の要件(i)、(ii)及び(iii)を満たす多孔複合フィルム。
(i)前記多孔質層の断面空隙面積分布のD 50の値が0.06μm 以上0.38μm 以下、かつ前記多孔質層の断面空隙面積分布のD 90の値が0.20μm 以上1.15μm 以下である。
(ii)前記多孔質層の表面細孔面積分布のD 50の値が0.0060μm 以上0.0072μm 以下、かつ前記多孔質層の表面細孔面積分布のD 90の値が0.0195μm 以上0.0220μm 以下である。
(iii)前記多孔質層の空孔率が50%以上70%以下である。
[請求項2]
 前記多孔質層の断面空隙の平均面積A1が0.054μm 以上0.098μm 以下である、請求項1に記載の多孔複合フィルム。
[請求項3]
 前記多孔質基材がポリオレフィン多孔質膜である、請求項1又は2に記載の多孔複合フィルム。
[請求項4]
 前記多孔質層が前記フッ素含有樹脂としてフッ化ビニリデン単位を含む重合体を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の多孔複合フィルム。
[請求項5]
 前記多孔質層がセラミックを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の多孔複合フィルム。
[請求項6]
 前記多孔質層の電極との接着力が5.0N以上10.0N以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の多孔複合フィルム。
[請求項7]
 前記多孔質層が凝集破壊する膜強度が2.0N以上10.0N以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載の多孔複合フィルム。
[請求項8]
 請求項1から7のいずれか一項に記載の多孔複合フィルムを用いた電池用セパレータ。
[請求項9]
 正極と、負極と、前記正極と前記負極の間に配置された請求項8に記載の電池用セパレータを含む電池。
[請求項10]
 請求項1から7のいずれか一項に記載の多孔複合フィルムを製造する方法であって、
フッ素含有樹脂を溶媒に溶解した塗工液を多孔質基材の少なくとも片面に塗工して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜が形成された多孔質基材を水を含む凝固液に浸漬して前記フッ素含有樹脂を凝固させて多孔質層を形成し、前記多孔質基材上に前記多孔質層が形成された複合フィルムを得る工程と、
前記複合フィルムを水洗する工程と、
水洗後の前記複合フィルムを乾燥する工程を含み、
前記凝固液の温度が10~25℃の範囲であり、かつ前記凝固液中の前記溶媒の濃度が22質量%未満であることを特徴とする多孔複合フィルムの製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2a]

[ 図 2b]

[ 図 3]