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1. (WO2019043821) CURRENT DIFFERENTIAL RELAY AND SAMPLING SYNCHRONIZATION METHOD
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明 細 書

発明の名称 電流差動リレーおよびサンプリング同期方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

先行技術文献

特許文献

0006  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0007   0008  

課題を解決するための手段

0009  

発明の効果

0010  

図面の簡単な説明

0011  

発明を実施するための形態

0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167   0168   0169   0170   0171   0172   0173   0174   0175   0176   0177   0178   0179   0180   0181   0182   0183   0184   0185   0186   0187   0188   0189   0190   0191   0192   0193   0194   0195   0196   0197   0198   0199   0200   0201   0202   0203   0204   0205   0206   0207   0208   0209   0210   0211   0212   0213   0214   0215   0216   0217   0218   0219   0220   0221   0222   0223   0224   0225   0226   0227   0228   0229   0230   0231   0232  

符号の説明

0233  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24   25   26   27   28   29  

明 細 書

発明の名称 : 電流差動リレーおよびサンプリング同期方法

技術分野

[0001]
 本開示は、送電線を保護するための電流差動リレー、ならびに、この電流差動リレーなどによって送電線の両端の電流値および電圧値を検出する際のサンプリング同期方法に関する。

背景技術

[0002]
 送電線を保護する電流差動リレーは、送電線の保護区間の両端に設けられる。各電流差動リレーは、自端に設置された電流変成器から電流値を取り込み、取り込んだ電流値を互いに伝送路を経由して伝送し合う。そして、各電流差動リレーは、送電線の両端の電流値の差分に基づいて送電線内の故障を検出する。その際、正確な故障判定のためには送電線の両端での電流のサンプリングタイミングの同期が必要となる。
[0003]
 従来から用いられていて主流となっているサンプリング同期方法は、たとえば、特開昭62-262615号公報(特許文献1)に開示されている。この方法では、各電流差動リレーは、自端の電流データを相手端に伝送する際に、送信データに送信タイミング情報を組み込む。そして、各電流差動リレーは、送信タイミング情報を相手端に送信してから、相手端の送信タイミング情報を受信するまでの時間を計測する。各電流差動リレーは、計測した時間を互いに送信し合い、この時間が互いに等しくなるようにサンプリングタイミングを調整する。
[0004]
 この方法によって正確にサンプリング同期を行うには、自端から相手端への伝送時間と相手端から自端への伝送時間とが等しいという条件が必須である。しかし、汎用の通信機器を用いて伝送すると、これら両方向の伝送時間には数100μsの差のある場合がある。このため、サンプリング同期に誤差が生じ、この同期誤差が電流差動リレー演算の誤差要因になっていた。
[0005]
 そこで、保護区間となる送電線内の故障点を標定する故障点標定装置のように、特に精度が必要な場合には、たとえば、特開平4-17509号公報(特許文献2)に記載されているようなサンプリング同期方法が提案されている。具体的にこの方法による故障点標定装置は、送電線の両端での電圧および電流の検出値を取得する。そして、故障点標定装置は、送電線の一方端の端子電圧から、その一方端の端子電流による送電線の電圧降下を減じることによって他方端の端子電圧を計算する。故障点標定装置は、計算した他方端の端子電圧と実際に取得した他方端の端子電圧との位相差に基づいて、送電線の両端でのサンプリング同期を行う。

先行技術文献

特許文献

[0006]
特許文献1 : 特開昭62-262615号公報
特許文献2 : 特開平4-17509号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0007]
 本願の発明者は、上記の特許文献2などに開示されたサンプリング同期方法の誤差要因を検討した。この結果、この文献によるサンプリング同期方法では、送電線の対地静電容量に基づく、送電線から大地への充電電流の影響が考慮されていない点が問題であることを見出した。特に、充電電流は、送電線路が地中ケーブルで構成されている場合や、架空線で線路長が長い場合に無視できなくなるので、充電電流を無視したサンプリング同期では、誤差が大きくなる。このような問題は、これまで一般には検討されてこなかった。
[0008]
 この開示は、上記の問題点を考慮したものであり、その目的は、送電線の両端でのサンプリング同期を精度良く実現するサンプリング同期処理方法およびこのサンプリング同期処理方法を実装した電流差動リレーを提供することである。

課題を解決するための手段

[0009]
 一実施形態による電流差動リレーは、送電線の第1端子に設けられる。電流差動リレーは、アナログ/デジタル変換部と、受信機と、電圧演算部と、位相差演算部と、同期処理部とを備える。アナログ/デジタル変換部は、送電線の第1端子の電流および電圧をサンプリングして電流データおよび電圧データを生成する。受信機は、送電線の第2端子に設けられた第2の電流差動リレーから前記第2端子の電流データおよび電圧データを受信する。電圧演算部は、第1端子の電流データおよび電圧データに基づいて、送電線の第1端子と第2端子との間の特定点における電圧を第1特定点電圧として計算し、第2端子の電流データおよび電圧データに基づいて、この特定点における電圧を第2特定点電圧として計算する。位相差演算部は、第1特定点電圧と第2特定点電圧との位相差を計算する。同期処理部は、この位相差に対応する時間に基づいて第1の端子の電流および電圧のサンプリング時刻を調整する。ここで、電圧演算部は、第1端子と特定点とを接続する第1線路および第2端子と特定点とを接続する第2線路の各々を、送電線全体を単一のπ形回路としたときの当該π形回路の一部であるL形回路として、または単一のT形回路として、または直列接続された複数のT形回路として模擬することによって、第1特定点電圧および第2特定点電圧を計算する。

発明の効果

[0010]
 上記の実施形態によれば、第1線路および第2線路の各々が、送電線全体を単一のπ形回路としたときの当該π形回路の一部であるL形回路として、または単一のT形回路として、または直列接続された複数のT形回路として模擬されることによって、送電線の対地容量の影響が計算に取り込まれるので、送電線の両端でのサンプリング同期を精度良く行える。

図面の簡単な説明

[0011]
[図1] 両端に背後電源を有する送電線の系統図である。
[図2] 図1の各電流差動リレーのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
[図3] 図1の送電系統において故障のない場合の正相回路による等価回路図である。
[図4] 図3の正相回路における充電電流を説明するための図である。
[図5] A端電圧V1とB端電圧Vs1との位相差の一例を示すベクトル図である。
[図6] サンプリング同期方法を説明するための図である。
[図7] π型回路で模擬した送電系統の正相回路による等価回路図である。
[図8] 図7の正相回路における充電電流を説明するための図である。
[図9] 実施の形態1の電流差動リレーの機能的構成を示すブロック図である。
[図10] 実施の形態1によるサンプリング同期処理の手順を示すフローチャートである。
[図11] 中間点電圧VfとVfsとの位相差の一例を示すベクトル図である。
[図12] 他のサンプリング同期手順を示すフローチャートである。
[図13] 図12のステップS711の手順をより詳しく説明するための図である。
[図14] さらに他のサンプリング同期手順を示すフローチャートである。
[図15] 実施の形態1の変形例によるサンプリング同期処理が適用される送電系統の正相回路による等価回路図である。
[図16] 実施の形態2によるサンプリング同期処理が適用される送電系統の正相回路による等価回路図である。
[図17] 実施の形態2によるサンプリング同期処理の手順を示すフローチャートである。
[図18] 2段のT形回路で送電線を模擬した場合の送電系統の正相回路による等価回路図である。
[図19] 図18の等価回路で模擬された送電系統のサンプリング同期手順を示すフローチャートである。
[図20] 実施の形態3のサンプリング同期処理が適用される送電系統の正相回路による等価回路図である。
[図21] 図20の等価回路で模擬された送電系統のサンプリング同期手順を示すフローチャートである。
[図22] 各端子から中間点までを2段のT形回路で模擬した場合における送電系統の正相回路による等価回路図である。
[図23] 図22の等価回路で模擬された送電系統のサンプリング同期手順を示すフローチャートである。
[図24] 各端子に背後電源を有する3端子の送電線の系統図である。
[図25] 図24の送電系統の正相回路による等価回路図である。
[図26] A端子のサンプルタイミングをB端子のサンプルタイミングに同期させる手順を示すフローチャートである。
[図27] C端子のサンプルタイミングをB端子のサンプルタイミングに同期させる手順を示すフローチャートである。
[図28] 各端子に背後電源を有する4端子の送電線の系統図である。
[図29] 図28の送電系統においてサンプリング同期処理の手順の一例を示すフローチャートである。

発明を実施するための形態

[0012]
 以下、各実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
[0013]
 実施の形態1.
 <共通構成および前提事項>
 まず、各実施の形態で共通する構成および前提となる事項について説明し、その後に実施の形態1の特徴について説明する。
[0014]
 [両端に背後電源を有する送電線の系統図]
 図1は、両端に背後電源を有する送電線の系統図である。図1を参照して、送電線50のA端(第1端とも称する)には背後電源52Aが設けられ、送電線50のB端(第2端とも称する)には背後電源52Bが設けられる。なお、送電線50は三相送電線であるが図1では図解を容易にするために1本の線で示している。
[0015]
 送電線50のA端には電流変成器(CT:Current Transformer)CT1が設けられるとともに、A端の母線51Aには電圧変成器(VT:Voltage Transformer)VT1が設けられる。同様に、送電線50のB端には電流変成器CT2が設けられるとともに、B端の母線51Bには電圧変成器VT2が設けられる。さらに、A端とB端の間の送電線50上には、A端に近接して遮断器(CB:Circuit Breaker)68Aが設けられ、B端に近接して遮断器68Bが設けられる。
[0016]
 この明細書では、電流変成器CT1,CT2について総称する場合または不特定のものを示す場合に電流変成器CTと記載する。電圧変成器VT1,VT2について総称する場合または不特定のものを示す場合に電圧変成器VTと記載する。また、電流および電圧を総称して電気量と称する場合がある。
[0017]
 送電線50のA端およびB端には、さらに、電流差動リレー53A,53Bがそれぞれ設けられる。なお、この明細書では、いずれかの端子に設けられた電流差動リレーを示す場合に電流差動リレー53と記載する。また、送電線50の各端子に設けられた電流差動リレー53A,53Bをまとめて電流差動リレーシステムと称する場合がある。
[0018]
 電流差動リレー53A,53Bの各々は、送電線50の自端を流れる三相交流電流を表す信号を自端の電流変成器CTから取得するとともに、送電線50の自端の三相交流電圧を表す信号を自端の電圧変成器VTから取得する。電流差動リレー53A,53Bの各々は、取得した自端の電流および電圧をサンプリングしてA/D変換することによって電流データおよび電圧データを生成する。各電流差動リレーは、自端の電流データおよび電圧データを、通信路54を介して相手端の電流差動リレーに送信する。この場合、通信路54は有線であって無線であってもよい。電流差動リレー53A,53Bは、取得した自端と相手端の電流データから送電線50の両端の差電流を計算し、計算した差電流に基づいて電流変成器CT1,CT2よりも内側である保護区間内で送電線50に故障が生じているか否かを判定する。
[0019]
 上記において送電線50の両端の差電流を正確に計算するためには、送電線50の両端の電流差動リレー53A,53Bが電流変成器CT1,CT2からそれぞれ電流値をサンプリングするタイミングを同期させる必要がある。このため、電流差動リレー53A,53Bでは同期処理を実行している。最も基本的な同期処理は次のとおりである。
[0020]
 具体的に、各電流差動リレー53は、自端の電流および電圧のサンプリングデータを一定間隔(たとえば、交流電気量の電気角の30°周期)で相手端に送信する際に、電流および電圧の送信データにタイミング信号を組み込む。各電流差動リレー53は、相手端へのタイミング信号の送信時刻と相手端からのタイミング信号の受信時刻との時間間隔を計測する。そして、各電流差動リレー53は、この計測した時間間隔を互いに相手端に送信する。各電流差動リレー53は、自端で計測したタイミング信号の送信時刻と受信時刻との時間間隔T1と相手端から受信した時間間隔T2とが等しくなるように、電気量のサンプリングタイミングおよびタイミング信号を送信するタイミングを調整する。
[0021]
 実際上、上記のタイミング調整は、送電線50の両端の電流差動リレー53A,53Bのいずれか一方のみで行えばよい。たとえば、電流差動リレー53A,53Bのうち予め定めた一方(スレーブ)が他方(マスター)から受信した上記の時間間隔を表す情報に基づいてタイミング調整を行う。
[0022]
 上記の基本的な同期処理を正確に行うには、送電線50のA端からB端への通信路54を介した伝送時間とB端からA端への通信路54を介した伝送時間とが互いに等しいという前提条件が必要である。もし、これらの伝送時間が異なる場合、サンプリング同期の誤差は、それぞれの伝送時間の差の1/2となる。汎用の通信装置を用いる場合には、A端からB端への通信路の長さとB端からA端への通信路の長さが等しいとしても、伝送時間の差は最大で数100μs程度になる場合がある。
[0023]
 そこで、本開示の電流差動リレー53は、送電線50の両端の電圧データおよび電流データを用いてサンプリング同期処理を行う。具体的には、電流差動リレー53は、A端の電圧データおよび電流データを用いて送電線50上の特定点の電圧を計算し、B端の電圧データおよび電流データを用いてこの特定点の電圧を計算する。電流差動リレー53は、計算した両電圧の位相差に基づいて送電線50の両端のサンプリング同期を行う。上記の特定点はB端でもよく、この場合には、電流差動リレー53は、A端の電圧データおよび電流データを用いてB端の電圧を計算し、計算したB端の電圧と実際に検出したB端の電圧との位相差に基づいて送電線50の両端のサンプリング同期を行う。
[0024]
 以下では、このサンプリング同期方法を電圧位相差に基づくサンプリング同期方法と称する。電圧位相差に基づくサンプリング同期処理は、前述のタイミング信号の送信時刻と受信時刻との時間間隔に基づく同期処理を補完するように用いてもよいし、前述の同期処理の代わりに用いてもよい。この電圧位相差に基づくサンプリング同期処理の基本的な考え方については、図3~図7を参照して後述する。
[0025]
 [電流差動リレーのハードウェア構成の一例]
 図2は、図1の各電流差動リレーのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図2の電流差動リレー53は、いわゆるデジタルリレー装置と同様の構成を有している。具体的に図2を参照して、電流差動リレー53は、入力変換部100と、A/D(アナログ/デジタル)変換部110と、演算処理部120と、I/O(Input and Output)部130とを備える。
[0026]
 入力変換部100は、入力チャンネルごとに補助変成器101_1,101_2,…を備える。入力変換部100は、図1の電流変成器CTからの電流信号と電圧変成器VTからの電圧信号とが入力される。各補助変成器101は、電流変成器CTからの電流信号および電圧変成器VTからの電圧信号をA/D変換部110および演算処理部120での信号処理に適した電圧レベルの信号に変換する。
[0027]
 A/D変換部110は、アナログフィルタ(AF:Analog Filter)111_1,111_2,…と、サンプルホールド回路(S/H:Sample Hold Circuit)112_1,112_2,…と、マルチプレクサ(MPX:Multiplexer)113と、A/D変換器114とを含む。アナログフィルタ111およびサンプルホールド回路112は、入力信号のチャンネルごとに設けられる。
[0028]
 各アナログフィルタ111は、A/D変換の際の折返し誤差を除去するために設けられたローパスフィルタである。各サンプルホールド回路112は、対応のアナログフィルタ111を通過した信号を規定のサンプリング周波数でサンプリングして保持する。サンプリング周波数は、たとえば、4800Hzである。マルチプレクサ113は、サンプルホールド回路112_1,112_2,…に保持された電圧信号を順次選択する。A/D変換器114は、マルチプレクサ113によって選択された信号をデジタル値に変換する。
[0029]
 演算処理部120は、CPU(Central Processing Unit)121と、RAM(Random Access Memory)122と、ROM(Read Only Memory)123と、これらを接続するバス124とを含む。CPU121は、電流差動リレー53の全体の動作を制御する。RAM122およびROM123は、CPU121の主記憶として用いられる。ROM123は、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリを用いることにより、プログラムおよび信号処理用の設定値などを収納することができる。
[0030]
 なお、演算処理部120は、何らかの回路によって構成されていればよく、図2の例には限定されない。たとえば、演算処理部120は、複数のCPUを備えていてもよい。また、演算処理部120は、CPUなどのプロセッサに代えて、少なくとも1つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)によって構成されていてもよいし、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)によって構成されていてもよい。もしくは、演算処理部120は、プロセッサ、ASIC、およびFPGAのうちのいずれかの組み合わせによって構成されていてもよい。
[0031]
 I/O部130は、送受信機(TX/RX)131と、デジタル入力(D/I:Digital Input)回路132と、デジタル出力(D/O:Digital Output)回路133とを含む。送受信機131は、送信機131_1と受信機131_2とを含み、図1の通信路54を介して相手端の電流差動リレー53に設けられた送受信機131と通信を行う。デジタル入力回路132およびデジタル出力回路133は、CPU121と外部装置との間で通信を行う際のインターフェース回路である。たとえば、デジタル出力回路133は、図1に示す自端側の遮断器68Aまたは68Bにトリップ信号を出力する。
[0032]
 [電圧位相差に基づくサンプリング同期方法]
 (正相回路による等価回路)
 送電線50に故障が無い状態で、電圧位相差に基づくサンプリング同期処理を行う場合には、3相のうちのいずれかの相の電圧データおよび電流データを用いて同期処理を行っても構わない。本開示では、電流および電圧の検出誤差を考慮し、それらの検出誤差を平準化する目的で対称座標法の正相電流および正相電圧を用いてサンプリング同期処理を行う。
[0033]
 図3は、図1の送電系統において故障のない場合の正相回路による等価回路図である。図3を参照して、A端の正相電圧をV1とし、A端の正相電流をI1とする。同様に、B端の正相電圧をVs1とし、B端の正相電流をIs1とする。
[0034]
 周知のとおり、正相電圧V1はA端の三相電圧Va,Vb,Vcを用いて、
 V1=(Va+α・Vb+α 2・Vc)/3  …(1)
と表される。正相電流I1はA端の三相電流Ia,Ib,Icを用いて、
 I1=(Ia+α・Ib+α 2・Ic)/3  …(2)
と表される。ただし、虚数単位をjとして、
 α=(-1+j・√3)/2  …(3)
が成り立つ。B端についても同様である。なお、この明細書では、掛け算記号を「・」または「*」または「×」で表す。
[0035]
 送電線50の正相インピーダンスをZ1とし、送電線50の対地静電容量をCとする(単に対地容量Cと記載する場合がある)。充電電流Icは、対地容量Cを流れる電流に相当する。なお、送電線50の抵抗、リアクタンス、および容量は分布定数で表されるが、ここでは簡単のために集中定数的に表現している。以下では、正相電圧、正相電流、正相インピーダンスなどについて、簡単のために単に電圧、電流、インピーダンスと記載する場合がある。
[0036]
 (送電線の充電電流)
 図4は、図3の正相回路における充電電流を説明するための図である。図4では、A端の位置をx=0で表し、B端の位置をx=1で表している。すなわち、送電線50の長さを1で規格化している。
[0037]
 図4(A)は、自端電圧V1と相手端電圧Vs1とで電圧差がある場合の送電線上での電圧変化を示すものである。本来は、電圧V1,Vs1をベクトル(すなわち、電圧振幅と位相)で示すべきであるが、グラフ60のように、簡易的にスカラ(すなわち、電圧振幅のみ)に差があるように示している。実際は、電圧V1とVs1とで、振幅に差がなく位相差がある場合の方が多い。
[0038]
 図4(B)のグラフ61は、送電線上での負荷電流の変化を示すものである。上記のように送電線50の両端での電圧ベクトルの差によって負荷電流が流れる。A端での負荷電流をI1とし、B端での負荷電流をIs1としている。なお、負荷電流Is1は、B端からA端の方向を正としている。
[0039]
 送電線上の点xでの充電電流Ic(x)は、点xにおける送電線の電圧V(x)に依存する。その関係は、送電線の単位長さあたりの静電容量をCとして、
 Ic(x)=jωC・V(x)  …(4)
で表される。A端、すなわち、x=0では、
 Ic(0)=jωC・V1  …(5)
が成り立ち、B端、すなわち、x=1では、
 Ic(1)=jωC・Vs  …(6)
が成り立つ。したがって、送電線50の充電電流Icの総量は、次式(7)で表される。ここで、xは送電線上での位置を表し、送電線50のA端をx=0とし、送電線50のB端をx=1とする。
[0040]
[数1]


[0041]
 (負荷電流が無い場合の電圧位相差に基づくサンプリング同期)
 負荷電流が無い場合は、A端電圧V1とB端電圧Vs1とは等しくなる(図4(A)のグラフ62参照)。この場合、A端電圧V1とB端電圧Vs1との位相差は無視できるレベルになるはずであるが、実際には送電線50の両端でのサンプリングのタイミングにずれが生じているために、A端電圧V1とB端電圧Vs1とに位相差φが生じる。
[0042]
 図5は、A端電圧V1とB端電圧Vs1との位相差の一例を示すベクトル図である。図5のベクトル図では、B端電圧Vs1はA端電圧V1よりも位相差φだけ進んでいる様子を示している。したがって、サンプリング同期のためには、B端のサンプリング時刻を位相差φに相当する時間tだけ早める、もしくは、A端のサンプリング時刻を位相差φに相当する時間tだけ遅らせる必要がある。その時間tは、位相差φの単位を度とすると、
 t=(φ/360°)*1サイクルの時間  …(8)
で表される。交流周波数をfとすると、1サイクルの時間は1/f[sec]である。
[0043]
 [2つのサンプリング同期方法の組み合わせ]
 次に、上記の電圧位相差に基づくサンプリング同期方法を、前述のタイミング信号の送信時刻と受信時刻との時間間隔に基づくサンプリング同期方法と組み合わせる方法について説明する。
[0044]
 図6は、サンプリング同期方法を説明するためのタイミング図である。図5と同様に、B端電圧Vs1はA端電圧V1よりも位相差φだけ進んでいるとする。位相差φに相当する時間をtとする。
[0045]
 図6(A)を参照して、時刻t1にA端から送信されたタイミング信号は時刻t4にB端で受信され、時刻t2にB端から送信されたタイミング信号は時刻t3にA端で受信されたとする。この場合に、A端におけるタイミング信号の送信時刻と受信時刻との時間間隔T1(すなわち、時刻t1から時刻t3まで)は、B端におけるタイミング信号の送信時刻と受信時刻との時間間隔T2(すなわち、時刻t2から時刻t4まで)に等しいとする。ただし、B端のサンプリングのタイミングは、A端のサンプリングのタイミングよりも時間tだけ遅れている。
[0046]
 上記の場合、B端からA端への信号伝送時間はT1-tとなり、A端からB端への信号伝送時間はT1+tとなる。したがって、B端でのサンプリングのタイミングを上式(8)の時間tだけ早めるように補正することによってサンプリング同期がとれるということは、図1の通信路54を介したB端からA端への伝送時間がA端からB端への伝送時間よりも2×tだけ短いことを意味している。
[0047]
 図6(B)を参照して、A端におけるタイミング信号の送信時刻と受信時刻との時間間隔をT3とし、B端におけるタイミング信号の送信時刻と受信時刻との時間間隔をT4とする。この場合に、時間間隔T3が時間間隔T4よりも2×tだけ長くなるように、A端およびB端のいずれか一方(たとえば、スレーブ側)の電流差動リレー53は、電気量のサンプリングタイミングおよびタイミング信号を送信するタイミングを調整する。これによって、A端とB端とでのサンプリング同期が実現できる。
[0048]
 具体的に、図6(B)に示すように、時刻t11にA端とB端とからタイミング信号が相手端に送信されたとする。そうすると、B端から送信されたタイミング信号がA端で受信された時刻t12よりも2×tの時間が経過した時刻t13において、A端から送信されたタイミング信号がB端で受信される。
[0049]
 以上により、通信路54の伝送時間に上り下り(すなわち、自端から相手端および相手端から自端)で差があっても、電圧位相差に基づくサンプリング同期処理によってより正しいタイミングで電気量のサンプリングが可能になる。この結果、電流差動リレーによる送電線の保護特性が改善する。
[0050]
 図4(A)のグラフ60で示すように、負荷電流の影響を受けると、A端電圧V1とB端電圧Vs1には電圧差が生じる。この場合にも適用可能なサンプリング同期方法について、以下、実施の形態1として図7~図14を参照して説明する。
[0051]
 なお、送電線に系統故障がなく、かつ、送電線に流れる負荷電流が無視できるほどに小さい場合は、A端およびB端に設けられた電流変成器CT1,CT2には充電電流だけが流れる。そこで、電流差動リレー53における電流検出の閾値をこの充電電流を検出しないように(すなわち、充電電流の大きさよりも少し大きめに)予め設定しておく。そして、負荷電流が検出できない(すなわち、閾値以下)場合には、送電線50の両端の電圧から位相差を計算し、その位相差に相当する時間(前述の式(8))を用いることによって、ほぼ正確に通信路54の伝送時間の上り下りの差を検出することが可能である。したがって、送電線50の両端での電流値がともに閾値を超えていない場合には、上記の方法で予め計測した位相差に対応する時間tを用いて送電線50の上り下りの伝送時間に2×tの差があるとして、タイミング信号の送信時刻と受信時刻との時間間隔に基づくタイミング同期処理を実行することができる。
[0052]
 <実施の形態1のサンプリング同期方法>
 実施の形態1では、送電線50をπ形回路で模擬することによって、それぞれ端子で充電電流が半分ずつ流れるものとし、充電電流を補償した端子電流を用いて、送電線50の中間点での電圧を計算する方法について説明する。中間点は、より一般的には特定点と称する。実施の形態1の場合、A端の電流および電圧を用いて計算した中間点の電圧(第1特定点電圧とも称する)とB端の電流および電圧を用いて計算した中間点の電圧(第2特定点電圧とも称する)との位相差を求め、位相差に相当する時間からサンプリングタイミングが補正される。
[0053]
 このように、充電電流を計算に取り込むことによって、負荷電流の影響がある場合でもサンプリング同期誤差をより少なくすることができる。以下、図面を参照して具体的に説明する。
[0054]
 [送電線の等価回路]
 図7は、π型回路で模擬した送電系統の正相回路による等価回路図である。なお、送電線全体をπ形回路として模擬することは、A端から中間点57までの第1線路をL形回路で模擬し、B端から中間点57までの第2線路を別のL形回路で模擬したと考えることもできる。
[0055]
 図7を参照して、A端の正相電圧をV1とし、A端の正相電流をI1とする。同様に、B端の正相電圧をVs1とし、B端の正相電流をIs1とする。
[0056]
 送電線50全体での対地容量の総量をCとする。π形回路では、A端に対地容量Cの1/2の大きさのコンデンサが接続され、B端に対地容量Cの1/2の大きさのコンデンサが接続される。これによってA端に充電電流Icが流れ、B端に充電電流Icsが流れる。
[0057]
 送電線50全体の正相インピーダンスをZ1とする。そうすると、送電線50のA端から中間点57までの線路インピーダンスはZ1/2で表され、送電線50のB端から中間点57までの線路インピーダンスはZ1/2で表される。
[0058]
 A端の電流I1および電圧V1から計算した中間点57の電圧をVfとし、B端の電流Is1および電圧Vs1から計算した中間点57の電圧をVsfとする。なお、A端の位置をx=0とし、B端の位置をx=1とし、中間点の位置をx=1/2とする。
[0059]
 [充電電流について]
 図8は、図7の正相回路における充電電流を説明するための図である。図8(A)は、自端電圧V1と相手端電圧Vs1とで電圧差がある場合の送電線上での電圧変化を示すものである。グラフ64は、電圧V1,Vs1をベクトル(すなわち、電圧振幅と位相で示し)で表し、振幅よりも位相差がある場合を模式的に示したものである。グラフ63は、簡易的にスカラ(すなわち、電圧振幅のみ)に差があるように示したものである。
[0060]
 図8(B)のグラフ65は、送電線上での負荷電流の変化を示すものである。A端では端子電流I1から充電電流Icを減算した負荷電流が流れ、B端では端子電流Is1から充電電流Icsを減算した負荷電流が流れる。
[0061]
 [電流差動リレーの機能的構成例]
 図9は、実施の形態1の電流差動リレーの機能的構成を示すブロック図である。図9ではA端の電流差動リレー53Aの機能的構成を示すが、B端の電流差動リレー53Bの場合も同様である。また、図9の機能ブロック図は、後述する他の実施の形態においても適用される。
[0062]
 機能的に見ると、電流差動リレー53Aの演算処理部120は、自端データ蓄積部70と、送信データ処理部71と、受信データ処理部72と、同期処理部73と、電圧演算部74と、位相差演算部75と、リレー演算部76とを含む。これらの機能は、演算処理部120のCPU121によってプログラムが実行されることによって実現される。
[0063]
 図9を参照して、入力変換部100によって受信された自端の電流および電圧を表す信号は、A/D変換部110によってデジタル値に変換され、自端データ蓄積部70に収納される。その後、そのデータは、相手端リレーへ伝送するために、送信データ処理部71によって送信データに処理される。送信データは、送信機(TX)131_1によって相手端リレーの受信機(RX)131_2へ伝送される。一方、受信機(RX)131_2によって受信された相手端リレーの送信機131_1からの受信データ(すなわち、相手端の電流データおよび電圧データ)は、受信データ処理部72で、演算用の相手端データに処理される。
[0064]
 同期処理部73は、送電線の両端リレーで取得されたデータのサンプリング時刻を同期させるために、自端データと演算用の相手端データとに対してサンプリング同期処理を実行する。具体的には、前述したタイミング信号の送信時刻と受信時刻との時間間隔に基づいて同期処理が行われる。
[0065]
 電圧演算部74での演算には、上記の同期処理後の自端データおよび相手端のデータが使用される。具体的に、電圧演算部74は、自端の電流I1および電圧V1を用いて送電線50上の特定点(実施の形態1の場合は中間点57)の電圧Vfを計算し、相手端の電流Is1および電圧Vs1を用いて特定点の電圧Vsfを計算する。この計算には、送電線50のインピーダンスZ1と、送電線50の対地容量Cとが用いられる。
[0066]
 位相差演算部75は、自端データに基づいて算出された特定点の電圧Vfと相手端データに基づいて算出された特定点の電圧Vsfとの位相差φを計算する。位相差演算部75は、さらに、計算した位相差φに対応する時間tを求め、この時間tの情報を同期処理部73へフィードバックする。もしくは、位相差演算部75は、自端から相手端の伝送時間と相手端から自端への伝送時間との差(すなわち、図6(A)でT1=T2のときの2×t)を、同期処理部73へフィードバックしてもよい。
[0067]
 同期処理部73は、位相差演算部75で検出された伝送時間差に基づいて、自端データと演算用の相手端データとに対してサンプリング同期処理を実行する。具体的には、図6(B)で説明したように、A端におけるタイミング信号の送信時刻と受信時刻との時間間隔をT3とし、B端におけるタイミング信号の送信時刻と受信時刻との時間間隔をT4としたとき、時間間隔T3と時間間隔T4とが伝送時間差だけ異なるように、サンプリングタイミングを調整する。もしくは、同期処理部73は、伝送時間差に基づかずに、位相差φに対応する時間tだけ(すなわち、現時点の位相差φに対応する時間が0となるように)、サンプリング時刻を補正してもよい。
[0068]
 さらに、同期処理部73は、相手端リレーがマスターの場合(自身がスレーブの場合)には、位相差演算部75で求められた位相差φに対応する時間tが0となるように、A/D変換部110におけるサンプリングタイミングを制御する。これによって自端のサンプリングタイミングを相手端のサンプリングタイミングに同期させる。
[0069]
 リレー演算部76は、相手端の電流Is1のデータと、相手端の電流Is1のデータに同期した自端電流I1のデータとを用いて、これらの差電流に基づいて送電線50の保護区間に故障が生じているか否かを判定する。
[0070]
 上記の位相差演算部75における位相差の計算には、任意の公知の方法を用いることができる。
[0071]
 たとえば、電圧VfおよびVsfのサンプリング間隔を30°毎とし、電圧VfおよびVsfの現在値をそれぞれVf[m]およびVsf[m]とし、現時点よりも90°前の値をVf[m-3]およびVsf[m-3]とする。そうすると、電圧Vf[m]と電圧Vsf[m]との位相差φの余弦及び正弦は、電圧Vfの振幅|Vf|と電圧Vsfの振幅|Vsf|とを用いて、
 |Vf|×|Vsf|×cosφ=Vf[m]×Vsf[m]+Vf[m-3]×Vsf[m-3]  …(9)
 |Vf|×|Vsf|×sinφ=Vf[m-3]×Vsf[m]-Vf[m]×Vsf[m-3]  …(10)
と表される。
[0072]
 [サンプリング同期手順-その1]
 図10は、実施の形態1によるサンプリング同期処理の手順を示すフローチャートである。以下、主として、図7、図9、図10を参照して、サンプリング同期処理の手順をさらに詳しく説明する。以下の説明において、A端を自端と称し、B端を相手端と称する。
[0073]
 まず、図9のA/D変換部110は、自端の電流および電圧をサンプリングすることによって電流データI1および電圧データV1を生成する(ステップS101)。
[0074]
 次に、電圧演算部74は、自端電圧V1を用いて充電電流Icを計算する(ステップS102)。虚数単位をjとし、送電線50の交流電圧の角周波数をωとすれば、充電電流Icは、
 Ic=jω(C/2)*V1  …(11)
で表される。ここで、Cは送電線の対地容量の総量、Icは線路の自端から中間点57までの(すなわち、全線路の1/2での)充電電流を示す。
[0075]
 その次に、電圧演算部74は、自端電流I1から充電電流Icを減算した値(I1-Ic)と、自端電圧V1とを用いて、中間点電圧Vfを計算する(ステップS103)。具体的に、中間点電圧Vfは、
 Vf=V1-(Z1/2)*(I1-Ic)  …(12)
で表される。上式(12)の右辺第2項は、自端から中間点57までの送電線50による電圧降下を示している。
[0076]
 次に、受信機131_2は、相手端の電流および電圧のサンプリング値(すなわち、電流データIs1および電圧データVs1)を受信する(ステップS104)。受信された電流データIs1および電圧データVs1は、受信データ処理部72に取り込まれる。なお、ステップS104はステップS102の前に実行してもよい。また、上記のステップS102,S103は、ステップS105,S106と並行して実行してもよい。
[0077]
 次に、電圧演算部74は、相手端電圧Vs1を用いて充電電流Icsを計算する(ステップS105)。具体的に、充電電流Icsは、
 Ics=jω(C/2)*Vs1  …(13)
で表され、相手端から中間点57までの線路での(すなわち、全線路の1/2での)充電電流を示す。
[0078]
 その次に、電圧演算部74は、相手端電流Is1から充電電流Icsを減算した値(Is1-Ics)と、相手端電圧Vs1とを用いて、中間点電圧Vsfを計算する(ステップS106)。具体的に、中間点電圧Vsfは、
 Vsf=Vs1-(Z1/2)*(Is1-Ics)  …(14)
で表される。上式(14)の右辺第2項は、相手端から中間点57までの送電線50による電圧降下を示している。
[0079]
 次に、位相差演算部75は、中間点電圧VsとVsfとの位相差φを計算する(ステップS107)。さらに、位相差演算部75は、計算した位相差φに対応する遅れ時間(または、進み時間)を求めて同期処理部73へ出力する。同期処理部73は、その遅れ時間または進み時間だけサンプリング時刻を補正する(ステップS108)。すなわち、同期処理部73は、位相差φに対応する時間tが0になるように、自端での電流および電圧のサンプリング時刻を制御する。
[0080]
 式(12)で計算される中間点電圧Vfと式(14)で計算される中間点電圧Vsfとは、送電線50の両端でのサンプリング同期がとれている場合は、同じ電圧ベクトルを示す。サンプリング同期がとれていない場合は、中間点電圧VsとVsfとに位相差が生じる。したがって、その位相差を計測し、その位相差に相当する時間だけ同期補正を行うことで、サンプリングタイミングの同期をとることができる。
[0081]
 図11は、中間点電圧VfとVfsとの位相差の一例を示すベクトル図である。図11では、自端電圧V1と自端電流I1とから計算した中間点電圧Vfの位相が、相手端電圧Vs1と相手端電流Is1から計算した中間点電圧Vsfの位相よりもφだけ進んでいる様子を示している。したがって、自端のサンプリングのタイミングが、相手端のサンプリングのタイミングよりも位相角φだけ進んでいる。したがって、サンプリング同期処理では、自端のサンプリング時刻を位相差φに相当する時間t、すなわち、
 t=(φ/360°)×1サイクルの時間  …(15)
だけ遅れ方向に補正する。交流周波数をfとすると、1サイクルの時間は1/f[sec]である。1サイクルの周期時間は交流周波数をfとすると、1/fで表される。
[0082]
 上記の手順でサンプリング同期処理を行うことによって、送電線50の両端の電圧差による負荷電流の影響がより少ないサンプリング同期が可能になる。これによって、電流差動リレーによる送電線の保護特性が改善する。
[0083]
 [サンプリング同期手順-その2]
 上記の電圧位相差に基づくサンプリング同期処理は、送電線上の故障などによる影響をA端およびB端での電圧および電流の位相が受ける場合には適用できない。さらに、A端とB端との間の送電線50に設けられた遮断器68A,68Bの少なくとも一方または不図示の断路器などが開放状態の場合などのように、A端とB端との間が導通状態でない場合には、上記の電圧位相差に基づくサンプリング同期処理は適用できない。さらに、電圧位相差に基づくサンプリング同期処理は、測定する電圧位相差の絶対値が180度未満であることが前提となっており、同期すべきタイミングのずれ幅が大きすぎる場合には適用できない。
[0084]
 このような場合は、図6(A)および(B)で説明したように、タイミング信号の送信時刻と受信時刻との時間間隔に基づくサンプリング同期方法を組み合わせることによってサンプリング同期処理を実行することができる。以下、図1、図9、図12を参照して具体的に説明する。なお、以下の手順は、後述する他の実施の形態にも同様に適用可能である。
[0085]
 図12は、他のサンプリング同期手順を示すフローチャートである。初期状態では、送電線50に故障は生じておらず、端子間に設けられた遮断器および断路器などは投入状態であるとする。
[0086]
 まず、ステップS701において、A端の電流差動リレー53Aの送信機131_1は、自端の電流データおよび電圧データとともにタイミング信号をB端の電流差動リレー53Bに送信する。同様に、B端の電流差動リレー53Bの送信機131_1は、自端の電流データおよび電圧データとともにタイミング信号をA端の電流差動リレー53Aに送信する。
[0087]
 次のステップS702において、A端の電流差動リレー53Aの受信機131_2は、相手端から電流データおよび電圧データとともにタイミング信号を受信する。同様に、B端の電流差動リレー53Aの受信機131_2は、相手端から電流データおよび電圧データとともにタイミング信号を受信する。
[0088]
 さらに、各電流差動リレー53A,53Bは、自端からのタイミング信号の送信時刻と相手端からのタイミング信号の受信時刻との時間間隔を計算する。電流差動リレー53A,53Bは、計算したタイミング信号の送信時刻と受信時刻との時間間隔を相互に送信し合う。この時間間隔の計算と計算結果の送信は、たとえば、電力系統の1サイクルに1回程度であってもよい。
[0089]
 次のステップS703において、A端の電流差動リレー53Aの同期処理部73は、自端側でのタイミング信号の送信時刻と受信時刻との時間間隔T1と、相手端側でのタイミング信号の送信時刻と受信時刻との時間間隔T2とが等しくなるように、A端の電流差動リレー53AのA/D変換部110における電流および電圧のサンプリング時刻を制御する。
[0090]
 この結果、同期がとれていると判定された場合、すなわち、時間間隔T1と時間間隔T2とが等しい場合(ステップS704でYES)、次のステップS705において、A端の電流差動リレー53Aの位相差演算部75は、前述した図10のステップS101~S107で説明したように、自端の電流データおよび電圧データに基づく特定点電圧Vsと他端の電流データおよび電圧データに基づく特定点電圧Vsfとの位相差φを計算する。ここで、特定点はA端とB端との間の中間点である。そして、同期処理部73は、位相差φに対応する時間tを特定時間間隔Tsとしてメモリ(たとえば、図2のRAM122またはROM123など)に記憶する。図6(A),(B)で説明したように、特定時間間隔Tsの2倍が、A端からB端への通信路の伝送時間とB端からA端への通信路の伝送時間との差に相当する。
[0091]
 その後、ステップS701およびS702の場合と同様に、まず、ステップS706において、A端の電流差動リレー53Aの送信機131_1は、自端の電流データおよび電圧データとともにタイミング信号をB端の電流差動リレー53Bに送信する。同様に、B端の電流差動リレー53Bの送信機131_1は、自端の電流データおよび電圧データとともにタイミング信号をA端の電流差動リレー53Aに送信する。
[0092]
 次のステップS707において、A端の電流差動リレー53Aの受信機131_2は、相手端から電流データおよび電圧データとともにタイミング信号を受信する。同様に、B端の電流差動リレー53Aの受信機131_2は、相手端から電流データおよび電圧データとともにタイミング信号を受信する。
[0093]
 さらに、各電流差動リレー53A,53Bは、自端からのタイミング信号の送信時刻と相手端からのタイミング信号の受信時刻との時間間隔を計算する。電流差動リレー53A,53Bは、計算したタイミング信号の送信時刻と受信時刻との時間間隔を相互に送信し合う。この時間間隔の計算と計算結果の送信は、たとえば、1サイクルに1回程度であってもよい。
[0094]
 次のステップS708~S711で同期処理が実行される。この同期処理の実行頻度は、たとえば、数サイクルの1回程度であってもよい。
[0095]
 具体的にステップS708で、A端の電流差動リレー53Aの同期処理部73は、自端側でのタイミング信号の送信時刻と受信時刻との時間間隔T1と、相手端側でのタイミング信号の送信時刻と受信時刻との時間間隔T2とが、ステップS705で求めた特定時間間隔Tsの2倍だけ異なるように、A端の電流差動リレー53AのA/D変換部110における電流および電圧のサンプリング時刻を制御する。
[0096]
 たとえば、前述のステップS705において、B端の電流データおよび電圧データに基づく特定点電圧Vsfが、A端の電流データおよび電圧データに基づく特定点電圧Vsよりも、位相差φだけ進んでいたとする。この場合、図6(A)で説明したように、A端からB端への通信路54を介した伝送時間は、B端からA端への通信路54を介した伝送時間よりも2×Tsだけ長い。したがって、時間間隔T1が時間間隔T2よりも2×Tsだけ短くなるように、A端でのサンプリングタイミングを制御する。
[0097]
 逆に、前述のステップS705において、B端の電流データおよび電圧データに基づく特定点電圧Vsfが、A端の電流データおよび電圧データに基づく特定点電圧Vsよりも、位相差φだけ遅れていたとする。この場合、A端からB端への通信路54を介した伝送時間は、B端からA端への通信路54を介した伝送時間よりも2×Tsだけ短い。したがって、時間間隔T1が時間間隔T2よりも2×Tsだけ長くなるように、A端でのサンプリングタイミングを制御する。
[0098]
 ステップS708の実行によって同期がとれていると判定された場合、すなわち、時間間隔T1と実感間隔T2との差が2×Tsに等しい場合であり(ステップS709でYES)、かつ、送電線に故障が生じておらず、送電線の両端間の遮断器などが開放されていない場合には(ステップS710でNO)、前述の特定時間間隔Tsの補正を行うためのステップS711に進む。このように特定時間間隔Tsの補正を行う理由は、測定誤差、ジッタ、ワンダー、機器の特性の変動(たとえば、クロックの変動など)等の影響によって、ステップS705で求めた伝送時間差2×Tsは変動する可能性があるからである。その他の理由として、A端の電流差動リレー53AとB端の電流差動リレー53Bとの間の伝送路に異常が生じると伝送ルートを切替える場合があり、この伝送ルートの切り替えが上り下りの伝送時間差の変化を伴う可能性があるからである。
[0099]
 ステップS711において、A端の電流差動リレー53Aの位相差演算部75は、自端の電流データおよび電圧データに基づく特定点電圧Vsと他端の電流データおよび電圧データに基づく特定点電圧Vsfとの位相差φを計算する。ここで、特定点はA端とB端との間の中間点である。そして、同期処理部73は、位相差φに対応する時間t’を現在の特定時間間隔Tsに加算または減算することによって特定時間間隔Tsを補正する。より詳細な補正方法については、図14を参照して後述する。
[0100]
 以後、ステップS706~S711が繰り返される。したがって、ステップS708は、ステップS711において補正された特定時間間隔Tsを用いて実行される。また、送電線に故障が生じておらず、送電線の両端間の遮断器などが開放されていない場合には(ステップS710でNO)、ステップS711が繰り返し実行されることによって、特定時間間隔Tsは継続的に補正される。
[0101]
 一方、送電線に故障が生じたり、送電線の両端間の遮断器などが開放されていたりする場合には(ステップS710でYES)、特定時間間隔Tsを補正するためのステップS711は実行されず、送電線の故障発生の直前または遮断器等の開放の直前に補正された特定時間間隔Tsを用いてステップS708の同期処理が継続される。
[0102]
 ここで、送電線50の故障は、電流差動リレー53A,53Bによって検知するようにしてもよいし、他の方法によって検知するようにしてもよい。たとえば、電流変化幅リレーによって端子電流の急変を検出するようにしてもよいし、他の保護リレーから故障検出信号を受信するようにしてもよい。また、遮断器68A,68Bおよび不図示の断路器などの開閉状態は、これらの遮断器68A,68Bおよび断路器から出力された開閉状態を表わす信号を電流差動リレー53A,53Bが受信することによって検知されるようにしてもよい。
[0103]
 図12に示す以上の手順によれば、送電線に故障が生じている場合または送電線の両端間に設けられた遮断器などが開放されている場合でも、従来よりも精度のよいサンプリング同期処理を実現することができる。なお、上記では、A端の電流差動リレー53Aがスレーブ側であり、A端の電流差動リレー53Aが自端のサンプリングタイミングを調整するとして説明した。これとは逆に、B端の電流差動リレー53Bが自端のサンプリングタイミングを調整してもよい。
[0104]
 図13は、図12のステップS711の手順をより詳しく説明するための図である。図13(A)~(D)は、図6(A),(B)に基づくものである。
[0105]
 まず、図6(A)を参照して、A端におけるタイミング信号の送信時刻t1と受信時刻t3との時間間隔T1と、B端におけるタイミング信号の送信時刻t2と受信時刻t4との時間間隔T2とが等しいとする。このとき、A端での電圧データおよび電流データに基づく特定点電圧VsとB端での電圧データおよび電流データに基づく特定点電圧Vsfとを比較すると、特定点電圧Vsfが特定点電圧Vsよりも位相差φだけ進んでいたとする。この場合、位相差φに対応する時間をtとすれば、通信路を介したA端からB端への伝送時間は、B端からA端への伝送時間よりも2×tだけ長い。この明細書では、この場合のt(すなわち、伝送時間差の1/2)を特定時間間隔Tsと称する。
[0106]
 したがって、図6(A)の場合には、図6(B)に示すように、A端におけるタイミング信号の送信時刻と受信時刻との時間間隔T1(図6(B)のT3に対応)に2×Ts(図6(B)の2×tに対応)を加算した値と、B端におけるタイミング信号の送信時刻と受信時刻との時間間隔T2(図6(B)のT4に対応)とが等しくなるように、A端またはB端でのサンプリングタイミングを制御すればサンプリング同期を実現できる。ただし、測定誤差、ジッタ、ワンダー、機器の特性の変動(たとえば、クロックの変動など)、信号のゆれ等の影響によって、T1+2×Ts=T2となるように補正したとしても通常の場合には完全なサンプリング同期が継続的に実現することはない。また、A端の伝送装置とB端の伝送装置との間の通信路で異常が発生すると伝送ルートを切替える場合があり、この場合には上り下りの伝送時間差に変化が生じる可能性がある。そこで、特定時間間隔Tsを継続的に補正することによってサンプリング同期の精度を高めるようにする。以下、図13(A)~(D)を参照して詳しく説明する。
[0107]
 図13(A)を参照して、図6(B)の場合と同様に、T1+2×Ts=T2となるようにA端またはB端でのサンプリングタイミングを調整したとする。この場合に、A端での電圧データおよび電流データに基づく特定点電圧VsとB端での電圧データおよび電流データに基づく特定点電圧Vsfとを比較したところ、特定点電圧Vsfが特定点電圧Vsよりも位相差φだけ進んでいたとする。位相差φに対応する時間をt’とすれば、このことは、B端のサンプリングタイミングはA端のサンプリングタイミングよりもt’だけ遅れていることを意味している。
[0108]
 そこで、図13(B)に示すように、T1+2×Ts+2×t’=T2となるようにA端またはB端でのサンプリングタイミングを制御すればサンプリング同期を実現できる。言い替えると、時間t’を加算するように特定時間間隔Tsを補正することによって(すなわち、補正後の特定時間間隔をTs’とすればTs’=Ts+t’と補正することによって)サンプリング同期を実現できる。
[0109]
 図13(C)を参照して、図6(B)の場合と同様に、T1+2×Ts=T2となるようにA端またはB端でのサンプリングタイミングを調整したとする。この場合に、A端での電圧データおよび電流データに基づく特定点電圧VsとB端での電圧データおよび電流データに基づく特定点電圧Vsfとを比較したところ、図13(A)の場合とは逆に、特定点電圧Vsfが特定点電圧Vsよりも位相差φだけ遅れていたとする。位相差φに対応する時間をt’とすれば、このことは、B端のサンプリングタイミングはA端のサンプリングタイミングよりもt’だけ早いことを意味している。
[0110]
 そこで、図13(D)に示すように、T1+2×Ts-2×t’=T2となるようにA端またはB端でのサンプリングタイミングを制御すればサンプリング同期を実現できる。言い替えると、時間t’を減算するように特定時間間隔Tsを補正することによって(すなわち、補正後の特定時間間隔をTs’とすればTs’=Ts-t’と補正することによって)サンプリング同期を実現できる。
[0111]
 なお、上記の例と逆の位相関係の場合には、上記の説明においてA端とB端とを入れ替えれば上記の説明がほぼそのまま成立することは、当業者であれば容易に理解できるであろう。
[0112]
 [サンプリング同期手順-その3]
 図14は、さらに他のサンプリング同期手順を示すフローチャートである。図14のサンプリング同期手順は、図12のサンプリング同期手順の変形例を示すものであり、送電線の通常時には、電圧位相差に基づく同期処理のみを行う点に特徴がある。
[0113]
 図14を参照して、初期状態では、送電線50に故障は生じておらず、端子間に設けられた遮断器などは投入状態であるとする。
[0114]
 まず、ステップS801において、A端の電流差動リレー53Aの送信機131_1は、自端の電流データおよび電圧データとともにタイミング信号をB端の電流差動リレー53Bに送信する。同様に、B端の電流差動リレー53Bの送信機131_1は、自端の電流データおよび電圧データとともにタイミング信号をA端の電流差動リレー53Aに送信する。
[0115]
 次のステップS802において、A端の電流差動リレー53Aの受信機131_2は、相手端から電流データおよび電圧データとともにタイミング信号を受信する。同様に、B端の電流差動リレー53Aの受信機131_2は、相手端から電流データおよび電圧データとともにタイミング信号を受信する。
[0116]
 さらに、各電流差動リレー53A,53Bは、自端からのタイミング信号の送信時刻と相手端からのタイミング信号の受信時刻との時間間隔を計算する。電流差動リレー53A,53Bは、計算したタイミング信号の送受信時刻の時間間隔を相互に送信し合う。この時間間隔の計算と計算結果の送信は、たとえば、1サイクルに1回程度であってもよい。
[0117]
 次のステップS803において、A端の電流差動リレー53Aの同期処理部73は、自端側でのタイミング信号の送信時刻と受信時刻との時間間隔T1と、相手端側でのタイミング信号の送信時刻と受信時刻との時間間隔T2とが等しくなるように、A端の電流差動リレー53AのA/D変換部110における電流および電圧のサンプリング時刻を制御する。
[0118]
 この結果、時間間隔T1と時間間隔T2とが等しい場合(ステップS804でYES)、次のステップS805において、A端の電流差動リレー53Aの同期処理部73は、前述した図10のステップS101~S107で説明したように、自端の電流データおよび電圧データに基づく特定点電圧Vsと他端の電流データおよび電圧データに基づく特定点電圧Vsfとの位相差φを計算する。ここで、特定点はA端とB端との間の中間点である。そして、同期処理部73は、位相差φに対応する時間を特定時間間隔Tsとしてメモリ(たとえば、図2のRAM122またはROM123など)に記憶する。
[0119]
 その後、ステップS806において、同期処理部73は、特定点電圧VsとVsfとの位相差φに対応する時間tが0になるように、自端側での電流および電圧のサンプリングタイミングを制御する。送電線50が正常な場合には、この電圧位相差に基づくサンプリング同期処理が繰り返される。
[0120]
 次に、送電線50の故障が検知されるか、または、A端とのB端との間の遮断器68A,68Bなどが開放されたとする(ステップS807でYES)。送電線故障または両端間の遮断器の開放が生じると(ステップS807でYES)、同期処理部73は、電圧位相差に基づくタイミング同期処理が継続できないので、タイミング信号の送信時刻と受信時刻との時間間隔に基づくタイミング同期処理に切り替える。
[0121]
 具体的に、ステップS808において、A端の電流差動リレー53Aの送信機131_1は、自端の電流データおよび電圧データとともにタイミング信号をB端の電流差動リレー53Bに送信する。同様に、B端の電流差動リレー53Bの送信機131_1は、自端の電流データおよび電圧データとともにタイミング信号をA端の電流差動リレー53Aに送信する。
[0122]
 次のステップS809において、A端の電流差動リレー53Aの受信機131_2は、相手端から電流データおよび電圧データとともにタイミング信号を受信する。同様に、B端の電流差動リレー53Aの受信機131_2は、相手端から電流データおよび電圧データとともにタイミング信号を受信する。ステップS802と同様に、各電流差動リレー53A,53Bは、自端からのタイミング信号の送信時刻と相手端からのタイミング信号の受信時刻との時間間隔を計算する。電流差動リレー53A,53Bは、計算したタイミング信号の送受信時刻の時間間隔を相互に送信し合う。
[0123]
 次のステップS810において、A端の電流差動リレー53Aの同期処理部73は、自端側でのタイミング信号の送信時刻と受信時刻との時間間隔T1と、相手端側でのタイミング信号の送信時刻と受信時刻との時間間隔T2とが、ステップS805で求めた特定時間間隔Tsの2倍だけ異なるように、A端の電流差動リレー53AのA/D変換部110における電流および電圧のサンプリング時刻を制御する。
[0124]
 以上によって、送電線故障または両端間での遮断器の開放が生じている場合でも、従来よりも精度のよいサンプリング同期処理を実現することができる。なお、上記では、A端の電流差動リレー53Aがスレーブ側であり、A端の電流差動リレー53Aが自端のサンプリングタイミングを調整するとして説明した。これとは逆に、B端の電流差動リレー53Bが自端のサンプリングタイミングを調整してもよい。
[0125]
 <実施の形態1の変形例>
 上記では、送電線50上の中間点57を特定点として、その特定点における電圧をそれぞれの端子電圧および端子電流から計算したが、中間点に限らずリレー設置点でもよく、送電線50上の任意の点を特定点67とすることができる。以下、図面を参照して説明する。なお、計算精度上は、特定点67は中間点にするのが望ましい。
[0126]
 図15は、実施の形態1の変形例によるサンプリング同期処理が適用される送電系統の正相回路による等価回路図である。図15の等価回路図は、図7の等価回路図を変形したものであるので、図7と共通する部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。なお、送電線50上での特定点67の位置をx=m(0≦m≦1)とする。また、以下の説明では、A端を自端と称し、B端を相手端と称する。
[0127]
 送電線50をπ型回路で模擬しているので、対地容量は送電線の両端にまとめられている。したがって、自端にまとめられた対地容量と相手端にまとめられた対地容量の各々は、自端から特定点67までの長さに関係なく送電線50の全体の容量Cの1/2になる。したがって、自端に流れる充電電流Icは、
 Ic=jω(C/2)*V1  …(16)
で表される。自端電流I1からこの充電電流Icを減算した値(I1-Ic)と、自端電圧V1とを用いて、特定点67における電圧Vfを計算することができる。特定点67における電圧Vfは、
 Vf=V1-Z1*m*(I1-Ic)  …(17)
で表される。上式(12)の右辺第2項は、自端から特定点67までの送電線50による電圧降下を示している。
[0128]
 同様に相手端に線路全体の対地容量のCの1/2があると考え、相手端に流れる充電電流Icsは、
 Ics=jω(C/2)*Vs1  …(18)
で表される。相手端電流Is1からこの充電電流Icsを減算した値(Is1-Ics)と、相手端電圧Vs1とを用いて、特定点67における電圧を計算することができる。具体的に、中間点電圧Vsfは、
 Vsf=Vs1-Z1*(1-m)*(Is1-Ics)  …(19)
で表される。上式(14)の右辺第2項は、相手端から特定点67までの送電線50による電圧降下を示している。
[0129]
 したがって、上式(17)で表される特定点67の電圧Vfと、上式(19)で表される特定点67の電圧Vsfとの位相差φに対応する時間tに基づいて、サンプリングタイミングの同期処理を行うことができる。
[0130]
 実施の形態2.
 実施の形態1では、送電線をπ形回路で模擬し、系統故障のない場合の送電線の端子電圧を用いて充電電流を計算し、その充電電流が補償された端子電流と端子電圧とを用いて中間点電圧を計算した。そして、A端の電圧および電流に基づく中間点電圧VfとB端の電圧および電流に基づく中間点電圧Vsfとの位相差φを計算し、計算した位相差φに対応する時間tに基づいてサンプリング時間を補正した。
[0131]
 実施の形態2では、送電線回路をT形回路で模擬する。T形回路とは、充電電流を生成する対地容量Cに相当するコンデンサが送電線の中間点に設けられ、このコンデンサを送電線の線路インピーダンスの1/2で挟んだモデルである。なお、コンデンサが接続されるコンデンサ点は中間点に限らず、A端とB端との間の任意の点であってもよいが、中間点が精度上好ましい。
[0132]
 実施の形態2では、さらに、A端の電流および電圧に基づいて特定点としてのB端における電圧を計算し、計算したB端電圧と実際のB端電圧との位相差が算出される。送電線をT形回路で模擬することによって、負荷電流が送電線を流れることによる電圧降下とともに、対地容量による充電電流を計算に取り込むことができるので、従来よりも精度の高いサンプリング同期を実現することができる。
[0133]
 [送電線を単一のT形回路で模擬する場合]
 図16は、実施の形態2によるサンプリング同期処理が適用される送電系統の正相回路による等価回路図である。図16を参照して、A端の正相電圧をV1とし、A端の正相電流をI1とする。同様に、B端の正相電圧をVs1とし、B端の正相電流をIs1とする。
[0134]
 送電線50全体での対地容量の総量をCとする。T形回路では、中間点57に対地容量Cに対応するコンデンサが接続される。なお、コンデンサが接続されるコンデンサ点は中間点に限らず、A端とB端との間の任意の点であってもよいが、中間点が精度上好ましい。
[0135]
 さらに、送電線50全体の正相インピーダンスをZ1とすると、送電線50のA端から中間点57までの線路インピーダンスはZ1/2で表され、送電線50のB端から中間点57までの線路インピーダンスはZ1/2で表される。上記の対地容量Cに対応するコンデンサと2個の線路インピーダンスZ1/2とによって、T形回路80が構成される。
[0136]
 図17は、実施の形態2によるサンプリング同期処理の手順を示すフローチャートである。以下、主として、図9、図16、図17を参照して、サンプリング同期処理の手順について説明する。以下の説明では、A端を自端と称し、B端を相手端と称する。
[0137]
 まず、図9のA/D変換部110は、自端の電流および電圧をサンプリングすることによって電流データI1および電圧データV1を生成する(ステップS201)。受信機131_2は、相手端の電流および電圧のサンプリング値である電流データIs1および電圧データVs1を受信する(ステップS202)。なお、両端の電圧の位相差のみを計算し、相手端の電流データIs1を必要としない場合には、電圧データVs1のみを受信してもよい。
[0138]
 次に、電圧演算部74は、自端電圧V1および自端電流I1を用いて中間点57(コンデンサ点とも称する)の電圧Vtを計算する(ステップS203)。具体的に、電圧Vtは、
 Vt=V1-(Z1/2)*I1  …(20)
で表される。上式(20)の右辺第2項は、自端から中間点57までの送電線50による電圧降下を示している。
[0139]
 その次に、電圧演算部74は、コンデンサ点の電圧Vtを用いて充電電流Ictを計算する(ステップS204)。具体的に、充電電流Ictは、
 Ict=jωC*Vt  …(21)
で表される。
[0140]
 その次に、電圧演算部74は、自端電流I1から充電電流Ictを減算した値(I1-Ict)と、コンデンサ点の電圧Vtとを用いて、相手端電圧Vs1’を計算する(ステップS205)。具体的に相手端電圧Vs1’は、
 Vs1’=Vt-(Z1/2)*(I1-Ict)  …(22)
で表される。上式(22)の右辺第2項は、中間点57から相手端までの送電線50による電圧降下を示している。すなわち、同期処理部73は、位相差φに対応する時間tが0になるように、自端での電流および電圧のサンプリング時刻を制御する。なお、図14で説明したサンプリング同期方法を本実施の形態の場合に適用することもできる。
[0141]
 次に、位相差演算部75は、実際に検出された相手端電圧Vs1と算出した相手端電圧Vs1’との位相差φを計算する(ステップS206)。位相差演算部75は、上記の位相差φに応じた遅れ時間(または、進み時間)を求めて同期処理部73へ出力する。同期処理部73は、その遅れ時間または進み時間だけサンプリング時刻を補正する(ステップS207)。
[0142]
 上記のように、送電線をT形回路で模擬することによって、負荷電流が送電線を流れることによる電圧降下とともに対地容量による充電電流を計算に取り込むことができるので、従来よりも精度の高いサンプリング同期を実現することができる。さらに、T形回路の段数を増やすことによってサンプリング同期の精度を上げることができる。
[0143]
 [送電線を2段のT形回路で模擬する場合]
 図18は、2段のT形回路で送電線を模擬した場合の送電系統の正相回路による等価回路図である。
[0144]
 図18を参照して、初段のT形回路81は、送電線のx=1/4の地点である第1のコンデンサ点56に設けられた対地容量がC/2のコンデンサと、そのコンデンサ点の両側にそれぞれ接続されたZ1/4の大きさの線路インピーダンスとを含む。第2段目のT形回路82は、送電線のx=3/4の地点である第2のコンデンサ点58に設けられた対地容量がC/2のコンデンサと、そのコンデンサ点の両側にそれぞれ接続されたZ1/4の大きさの線路インピーダンスとを含む。第1のコンデンサ点56での電圧をVtとし、第1のコンデンサ点56での充電電流をIctとする。第2のコンデンサ点58での電圧をVt’とし、第2のコンデンサ点58での充電電流をIct’とする。なお、2段のT形回路の線路長は、同じである必要はない。2段のT形回路の線路長が異なる場合には、それぞれのT形回路の線路長に比例した対地容量がそれぞれの線路の中間点にあればよい。
[0145]
 図19は、図18の等価回路で模擬された送電系統のサンプリング同期手順を示すフローチャートである。以下、主として、図9、図18、図19を参照して、サンプリング同期処理の手順について説明する。以下の説明では、A端を自端と称し、B端を相手端と称する。
[0146]
 図9のA/D変換部110は、自端の電流および電圧をサンプリングすることによって電流データI1および電圧データV1を生成する(ステップS301)。受信機131_2は、相手端の電流および電圧のサンプリング値である電流データIs1および電圧データVs1を受信する(ステップS302)。なお、両端の電圧の位相差のみを計算し、相手端の電流データIs1を必要としない場合には、電圧データVs1のみを受信してもよい。
[0147]
 次に、電圧演算部74は、自端電圧V1および自端電流I1を用いて、第1のコンデンサ点(x=1/4)の電圧Vtを計算する(ステップS303)。具体的に、電圧Vtは、
 Vt=V1-(Z1/4)*I1  …(23)
で表される。上式(23)の右辺第2項は、自端から第1のコンデンサ点56までの送電線50による電圧降下を示している。
[0148]
 その次に、電圧演算部74は、上式(23)の電圧Vtを用いて第1のコンデンサ点56での充電電流Ictを計算する(ステップS304)。具体的に、充電電流Ictは、
 Ict=jω(C/2)*Vt  …(24)
で表される。
[0149]
 その次に、電圧演算部74は、自端電流I1から充電電流Ictを減算した値(I1-Ict)と、第1のコンデンサ点56の電圧Vtとを用いて、第2のコンデンサ点58(x=3/4)の電圧Vt’を計算する(ステップS305)。具体的に、電圧Vt’は、
 Vt’=Vt-((Z1/4)+(Z1/4))*(I1-Ict)
    =Vt-(Z1/2)*(I1-Ict)  …(25)
で表される。上式(25)の右辺第2稿は、第1のコンデンサ点56と第2のコンデンサ点58との間の送電線50における電圧降下を示している。
[0150]
 その次に、電圧演算部74は、上式(25)の電圧Vt’を用いて第2のコンデンサ点58での充電電流Ict’を計算する(ステップS306)。具体的に、充電電流Ict’は、
 Ict’=jω(C/2)*Vt’  …(26)
で表される。
[0151]
 その次に、電圧演算部74は、自端電流I1から充電電流IctおよびIct’を減算した値(I1-Ict-Ict’)と、第2のコンデンサ点の電圧Vt’とを用いて、相手端の電圧Vs1’を計算する(ステップS307)。具体的に、相手端の電圧Vs1’は、
 Vs1’=Vt’-(Z1/4)*(I1- Ict-Ict’)  …(27)
で表される。上式(27)の右辺第2項は、第2のコンデンサ点58から相手端までの送電線50による電圧降下を示している。
[0152]
 次に、位相差演算部75は、実際に検出された相手端電圧Vs1と算出した相手端電圧Vs1’との位相差φを計算する(ステップS308)。さらに、位相差演算部75は、上記の位相差φに対応する遅れ時間(または、進み時間)を求めて同期処理部73へ出力する。同期処理部73は、その遅れ時間または進み時間だけサンプリング時刻を補正する(ステップS309)。すなわち、同期処理部73は、位相差φに対応する時間tが0になるように、自端での電流および電圧のサンプリング時刻を制御する。なお、図14で説明したサンプリング同期方法を本実施の形態の場合に適用することもできる。
[0153]
 このように、T形回路の段数を増やすことによって実際の送電線を模擬している分布定数線路に近付けることができるので、サンプリング同期の精度をより上げることができる。また、実施の形態2では、送電線50の両端の電圧差に基づいて充電電流の補償ができるので、送電線に故障が無い状態で連続的にサンプリング同期の補正を行うことができる。系統故障が発生した場合には、系統故障が無い状態での直近の同期処理の結果を用いて(すなわち、前置保持によって)サンプリング同期処理が行われることになる。
[0154]
 [実施の形態2の変形例]
 上記では、電流差動リレー53Aの電圧演算部71は、送電線の自端の電流データI1および電圧データV1を用いて相手端の電圧Vs1’を計算し、位相差演算部72はその計算結果と相手端の実際の電圧値Vs1との位相差φを計算した。これとは逆に、電流差動リレー53Aの電圧演算部71は、送電線の相手端の電流データIs1および電圧データVs1を用いて自端の電圧V1’を計算し、位相差演算部72はその計算結果と送電線の自端の実際の電圧値V1との位相差φを計算するようにしてもよい。このようにしても位相差φに対応する時間tに基づいて自端のサンプリングタイミングを調整することができるので、従来よりも精度良くサンプリング同期を実行することができる。
[0155]
 実施の形態3.
 実施の形態2では、A端の電流および電圧を用いてB端の電圧を計算し、計算したB端の電圧を実際に検出されたB端の電圧と比較していた。実施の形態3では、実施の形態1の図7および図10で説明したように、A端の電流および電圧を用いて中間点電圧Vfを計算し、B端の電流および電圧を用いて中間点電圧Vsfを計算する。そして、計算した中間点電圧VfとVsfとの位相差に基づいてサンプリング同期処理を行う。
[0156]
 なお、中間点に限らず、A端とB端との間で任意に定められた特定点であってもよく、この場合、中間点電圧Vfを第1特定点電圧Vfと称し、中間点電圧Vsfを第2特定点電圧Vsfと称する。また、送電線50は、実施の形態2の図18と同様に2段のT形回路で模擬される。これによって実施の形態1の場合よりも精度を上げることができる。
[0157]
 図20は、実施の形態3のサンプリング同期処理が適用される送電系統の正相回路による等価回路図である。図20の等価回路図は図18の等価回路図に対応するものであり、送電線50は、2段のT形回路81,82によって模擬される。第1のコンデンサ点56での電圧をVtとし、第1のコンデンサ点56での充電電流をIctとする。第2のコンデンサ点58での電圧をVtsとし、第2のコンデンサ点58での充電電流をIctsとする。また、A端の電流I1および電圧V1に基づく中間点57での電圧をVfとし、B端の電流Is1および電圧Vs1に基づく中間点57での電圧をVsfとする。
[0158]
 図21は、図20の等価回路で模擬された送電系統のサンプリング同期手順を示すフローチャートである。以下、主として、図9、図20、図21を参照して、サンプリング同期処理の手順について説明する。以下の説明では、A端を自端と称し、B端を相手端と称する。
[0159]
 まず、図9のA/D変換部110は、自端の電流および電圧をサンプリングすることによって電流データI1および電圧データV1を生成する(ステップS401)。
[0160]
 次に、電圧演算部74は、自端電圧V1および自端電流I1を用いて、第1のコンデンサ点(x=1/4)の電圧Vtを計算する(ステップS402)。具体的に、電圧Vtは、
 Vt=V1-(Z1/4)*I1  …(28)
で表される。上式(28)の右辺第2項は、A端から第1のコンデンサ点56までの送電線50による電圧降下を表す。
[0161]
 その次に、電圧演算部74は、上式(28)の電圧Vtを用いて第1のコンデンサ点56での充電電流Ictを計算する(ステップS403)。具体的に、充電電流Ictは、
 Ict=jω(C/2)*Vt  …(29)
で表される。
[0162]
 その次に、電圧演算部74は、自端電流I1から充電電流Ictを減算した値(I1-Ict)と、第1のコンデンサ点56の電圧Vtとを用いて、中間点電圧Vfを計算する(ステップS404)。具体的に、中間点電圧Vfは、
 Vf=Vt-(Z1/4)*(I1-Ict)  …(30)
で表される。上式(30)の右辺第2項は、第1のコンデンサ点56から中間点57までの送電線50による電圧降下を表す。
[0163]
 次に、受信機131_2は、相手端の電流および電圧のサンプリング値(すなわち、電流データIs1および電圧データVs1)を受信する(ステップS405)。受信された電流データIs1および電圧データVs1は、受信データ処理部72に取り込まれる。なお、ステップS405は、ステップS402の前に実行してもよい。また、ステップS402~S404は、ステップS406~S408と並行して実行してもよい。
[0164]
 次に、電圧演算部74は、相手端電圧Vs1および相手端電流Is1を用いて、第2のコンデンサ点(x=3/4)の電圧Vtsを計算する(ステップS406)。具体的に、電圧Vtsは、
 Vts= Vs1-(Z1/4)*Is1  …(31)
で表される。上式(31)の右辺第2項は、B端から第2のコンデンサ点58までの送電線50による電圧降下を表す。
[0165]
 その次に、電圧演算部74は、上式(31)の電圧Vtsを用いて第2のコンデンサ点58での充電電流Ictsを計算する(ステップS407)。具体的に、充電電流Ictsは、
 Icts=jω(C/2)*Vts  …(32)
で表される。
[0166]
 その次に、電圧演算部74は、相点端電流Is1から充電電流Ictsを減算した値(Is1-Icts)と、第2のコンデンサ点58の電圧Vtsとを用いて、中間点電圧Vsfを計算する(ステップS408)。具体的に、中間点電圧Vsfは、
 Vsf=Vts-(Z1/4)*(Is1-Icts)  …(33)
で表される。上式(33)の右辺第2項は、第2のコンデンサ点58から中間点57までの送電線50による電圧降下を表す。
[0167]
 次に、位相差演算部75は、中間点電圧VsとVsfとの位相差φを計算する(ステップS409)。さらに、位相差演算部75は、計算した位相差φに対応する遅れ時間(または、進み時間)を求めて同期処理部73へ出力する。同期処理部73は、その遅れ時間または進み時間だけサンプリング時刻を補正する(ステップS410)。すなわち、同期処理部73は、位相差φに対応する時間tが0になるように、自端での電流および電圧のサンプリング時刻を制御する。なお、図14で説明したサンプリング同期方法を本実施の形態の場合に適用することができる。
[0168]
 実施の形態1では、負荷電流が大きくなると誤差が無視できなくなる可能性があったが、実施の形態3では、各端子から中間点57までをT形回路を用いて構成することによって誤差を低減することができる。また、各端子から中間点57までの線路を2段のT形回路で構成すると、等価回路はさらに分布定数に近付くのでサンプリング同期の精度をさらに向上させることができる。
[0169]
 図22は、各端子から中間点までを2段のT形回路で模擬した場合における送電系統の正相回路による等価回路図である。
[0170]
 図22を参照して、A端から中間点57までの送電線において、初段のT形回路83は、送電線のx=1/8の地点である第1のコンデンサ点91に設けられた対地容量がC/4のコンデンサと、そのコンデンサ点の両側にそれぞれ接続されたZ1/8の大きさの線路インピーダンスとを含む。第2段目のT形回路84は、送電線のx=3/8の地点である第2のコンデンサ点93に設けられた対地容量がC/4のコンデンサと、そのコンデンサ点の両側にそれぞれ接続されたZ1/8の大きさの線路インピーダンスとを含む。第1のコンデンサ点91での電圧をVpとし、第1のコンデンサ点91での充電電流をIcpとする。第2のコンデンサ点93での電圧をVp’とし、第2のコンデンサ点93での充電電流をIcp’とする。
[0171]
 同様に、B端から中間点57までの送電線において、初段のT形回路86は、送電線のx=7/8の地点である第3のコンデンサ点96に設けられた対地容量がC/4のコンデンサと、そのコンデンサ点の両側にそれぞれ接続されたZ1/8の大きさの線路インピーダンスとを含む。第2段目のT形回路85は、送電線のx=5/8の地点である第4のコンデンサ点94に設けられた対地容量がC/4のコンデンサと、そのコンデンサ点の両側にそれぞれ接続されたZ1/8の大きさの線路インピーダンスとを含む。第3のコンデンサ点96での電圧をVpsとし、第3のコンデンサ点96での充電電流をIcpsとする。第4のコンデンサ点94での電圧をVps’とし、第4のコンデンサ点94での充電電流をIcps’とする。
[0172]
 図23は、図22の等価回路で模擬された送電系統のサンプリング同期手順を示すフローチャートである。以下、主として、図9、図22、図23を参照して、サンプリング同期処理の手順について説明する。以下の説明では、A端を自端と称し、B端を相手端と称する。
[0173]
 まず、図9のA/D変換部110は、自端の電流および電圧をサンプリングすることによって電流データI1および電圧データV1を生成する(ステップS501)。
[0174]
 次に、電圧演算部74は、自端電圧V1および自端電流I1を用いて、第1のコンデンサ点91(x=1/8)の電圧Vpを計算する(ステップS502)。具体的に、電圧Vpは、
 Vp=V1-(Z1/8)*I1  …(34)
で表される。上式(34)の右辺第2項は、A端から第1のコンデンサ点91までの送電線50による電圧降下を表す。
[0175]
 その次に、電圧演算部74は、上式(34)の電圧Vpを用いて第1のコンデンサ点91での充電電流Icpを計算する(ステップS503)。具体的に、充電電流Icpは、
 Icp=jω(C/4)*Vp  …(35)
で表される。
[0176]
 その次に、電圧演算部74は、自端電流I1から充電電流Icpを減算した値(I1-Icp)と、第1のコンデンサ点91での電圧Vpとを用いて、第2のコンデンサ点93(x=3/8)の電圧Vp’を計算する(ステップS504)。具体的に、電圧Vp’は、
 Vp’=Vp-(Z1/4)*(I1-Icp)  …(36)
で表される。上式(36)の右辺第2項は、第1のコンデンサ点91から第2のコンデンサ点93までの送電線50による電圧降下を表す。
[0177]
 その次に、電圧演算部74は、上式(36)の電圧Vp’を用いて第2のコンデンサ点93での充電電流Icp’を計算する(ステップS505)。具体的に、充電電流Icp’は、
 Icp’=jω(C/4)*Vp’  …(37)
で表される。
[0178]
 その次に、電圧演算部74は、自端電流I1から充電電流IcpおよびIcp’を減算した値(I1-Icp-Icp’)と、第2のコンデンサ点の電圧Vp’とを用いて、中間点電圧Vfを計算する(ステップS506)。具体的に、中間点電圧Vfは、
 Vf=Vp’-(Z1/8)*(I1-Icp-Icp’)  …(38)
で表される。上式(38)の右辺第2項は、第2のコンデンサ点93から中間点57までの送電線50による電圧降下を表す。
[0179]
 次に、受信機131_2は、相手端の電流および電圧のサンプリング値(すなわち、電流データIs1および電圧データVs1)を受信する(ステップS507)。受信された電流データIs1および電圧データVs1は、受信データ処理部72に取り込まれる。なお、ステップS507は、ステップS502の前に実行してもよい。また、ステップS502~S506は、ステップS508~S512と並行して実行してもよい。
[0180]
 次に、電圧演算部74は、相手端電圧Vs1および相手端電流Is1を用いて、第3のコンデンサ点(x=7/8)の電圧Vpsを計算する(ステップS508)。具体的に、電圧Vpsは、
 Vps=Vs1-(Z1/8)*Is1  …(39)
で表される。上式(39)の右辺第2項は、B端から第3のコンデンサ点96までの送電線50による電圧降下を表す。
[0181]
 その次に、電圧演算部74は、上式(39)の電圧Vpsを用いて第3のコンデンサ点96での充電電流Icpsを計算する(ステップS509)。具体的に、充電電流Icpsは、
 Icps=jω(C/4)*Vps  …(40)
で表される。
[0182]
 その次に、電圧演算部74は、相手端電流Is1から充電電流Icpsを減算した値(Is1-Icps)と、第3のコンデンサ点96での電圧Vpsとを用いて、第4のコンデンサ点94(x=5/8)での電圧Vps’を計算する(ステップS510)。具体的に、電圧Vps’は、
 Vps’=Vps-(Z1/4)*(Is1-Icps)  …(41)
で表される。上式(41)の右辺第2項は、第3のコンデンサ点96から第4のコンデンサ点94までの送電線50による電圧降下を表す。
[0183]
 その次に、電圧演算部74は、上式(41)の電圧Vps’を用いて第4のコンデンサ点94での充電電流Icps’を計算する(ステップS511)。具体的に、充電電流Icps’は、
 Icps’=jω(C/4)*Vps’  …(42)
で表される。
[0184]
 その次に、電圧演算部74は、相手端電流Is1から充電電流IcpsおよびIcps’を減算した値(Is1-Icps-Icps’)と、第4のコンデンサ点94の電圧Vps’とを用いて、中間点電圧Vsfを計算する(ステップS512)。具体的に、中間点電圧Vsfは、
 Vsf=Vps’-(Z1/8)*(Is1-Icps-Icps’)  …(43)
で表される。上式(43)の右辺第2項は、第4のコンデンサ点94から中間点57までの送電線50による電圧降下を表す。
[0185]
 次に、位相差演算部75は、中間点電圧VsとVsfとの位相差φを計算する(ステップS513)。さらに、位相差演算部75は、計算した位相差φに対応する遅れ時間(または、進み時間)を求めて同期処理部73へ出力する。同期処理部73は、その遅れ時間または進み時間だけサンプリング時刻を補正する(ステップS514)。すなわち、同期処理部73は、位相差φに対応する時間tが0になるように、自端での電流および電圧のサンプリング時刻を制御する。なお、図14で説明したサンプリング同期方法を本実施の形態の場合に適用することもできる。
[0186]
 上記のようにT形回路の段数を増やすことによって送電線50の等価回路は分布定数回路により近くなるので、サンプリング同期の精度をより上げることができる。さらに、系統故障が無い条件で連続的にサンプリング同期の補正を行うことができる。なお、各端子から中間点までの線路を3段以上のT形回路で模擬しても、上記と同様の方法でサンプリング同期処理を行うことができる。
[0187]
 実施の形態4.
 実施の形態1~3では送電線が2端子の場合について説明したが、実施の形態4では送電線が3端子以上の場合について説明する。
[0188]
 [送電線が3端子の場合]
 図24は、各端子に背後電源を有する3端子の送電線の系統図である。図24の送電線において、A端は分岐点200と送電線201を介して接続され、B端は分岐点200と送電線202を介して接続され、C端は分岐点200と送電線203を介して接続される。送電線のA端、B端、C端にはそれぞれ背後電源52A,52B,52Cが接続されている。
[0189]
 A端には電流変成器CT1が設けられるとともに、A端の母線51Aには電圧変成器VT1が設けられる。B端には電流変成器CT2が設けられるとともに、B端の母線51Bには電圧変成器VT2が設けられる。C端には電流変成器CT3が設けられるとともに、C端の母線51Cには電圧変成器VT3が設けられる。
[0190]
 また、A端、B端、C端には、電流差動リレー53A,53B,53Cがそれぞれ設置される。各電流差動リレー53は自端の電圧変成器VTおよび電流変成器CTと接続される。また、これらの電流差動リレー53A,53B,53Cは、通信路54,54B,54Cを介して相互に接続され、検出した自端の電流データおよび電圧データを相互にやり取りする。
[0191]
 図25は、図24の送電系統の正相回路による等価回路図である。送電線201,202,203の各々はT形回路204,205,206によってそれぞれ模擬されている。
[0192]
 T形回路204では、送電線201の中間点(第1のコンデンサ点とも称する)211において送電線201の対地容量CAの大きさを有するコンデンサが設けられている。中間点211の両側に、送電線201の正相インピーダンスZA1の半分の値のインピーダンスがぞれぞれ接続されている。
[0193]
 同様に、T形回路205では、送電線202の中間点(第2のコンデンサ点とも称する)212において送電線202の対地容量CBの大きさを有するコンデンサが設けられている。中間点212の両側に、送電線202の正相インピーダンスZB1の半分の値のインピーダンスがぞれぞれ接続されている。
[0194]
 同様に、T形回路206では、送電線203の中間点(第3のコンデンサ点とも称する)213において送電線203の対地容量CCの大きさを有するコンデンサが設けられている。中間点213の両側に、送電線203の正相インピーダンスZC1の半分の値のインピーダンスがぞれぞれ接続されている。
[0195]
 具体的なサンプリング同期処理では、3端子のうちのいずれか1端子のサンプルタイミングに他の2端子のサンプルタイミングを同期させるようにする。以下では、B端子のサンプルタイミングにA端子およびC端子のサンプルタイミングを同期させる場合について説明する。
[0196]
 図26は、A端子のサンプルタイミングをB端子のサンプルタイミングに同期させる手順を示すフローチャートである。具体的な手順は、実施の形態3の図21の場合と同様である。図21では、A端およびB端の各々の電流および電圧に基づいて中間点電圧Vf,Vsfがそれぞれ計算されていたが、図26の場合には、中間点57に代えて分岐点200での電圧Vf,Vsfが計算される。
[0197]
 図24、図25、図26を参照して、まず、電流差動リレー53AのA/D変換部110は、自端(A端)の電流および電圧をサンプリングすることによって電流データI1および電圧データV1を生成する(ステップS401A)。
[0198]
 次に、電流差動リレー53Aの電圧演算部74は、自端電圧V1および自端電流I1を用いて、第1のコンデンサ点211の電圧VAを計算する(ステップS402A)。
[0199]
 次に、電流差動リレー53Aの電圧演算部74は、第1のコンデンサ点211の電圧VAを用いて充電電流IAcを計算する(ステップS403A)。
[0200]
 次に、電流差動リレー53Aの電圧演算部74は、自端電流I1から充電電流IAcを減算した値(I1-IAc)と、第1のコンデンサ点211の電圧VAとを用いて、分岐点電圧Vfを計算する(ステップS404A)。
[0201]
 次に、電流差動リレー53Aの受信機131_2は、通信路54を介して相手端(B端)の電流および電圧のサンプリング値(すなわち、電流データIs1および電圧データVs1)を受信する(ステップS405A)。受信された電流データIs1および電圧データVs1は、受信データ処理部72に取り込まれる。なお、ステップS405Aは、ステップS402Aの前に実行してもよい。また、ステップS402A~S404Aは、ステップS406A~S408Aと並行して実行してもよい。
[0202]
 次に、電流差動リレー53Aの電圧演算部74は、相手端電圧Vs1および相手端電流Is1を用いて、第2のコンデンサ点212の電圧VBを計算する(ステップS406A)。
[0203]
 次に、電流差動リレー53Aの電圧演算部74は、第2のコンデンサ点212の電圧VBを用いて充電電流IBcを計算する(ステップS407A)。
[0204]
 次に、電流差動リレー53Aの電圧演算部74は、相点端電流Is1から充電電流IBcを減算した値(Is1-IBc)と、第2のコンデンサ点212の電圧VBとを用いて、分岐点電圧Vsfを計算する(ステップS408A)。
[0205]
 次に、電流差動リレー53Aの位相差演算部75は、分岐点電圧VsとVsfとの位相差φを計算する(ステップS409A)。さらに、電流差動リレー53Aの位相差演算部75は、位相差φに対応する遅れ時間(または、進み時間)を求めて同期処理部73へ出力する。同期処理部73は、その遅れ時間または進み時間だけサンプリング時刻を補正する(ステップS410A)。すなわち、同期処理部73は、位相差φに対応する時間tが0になるように、自端での電流および電圧のサンプリング時刻を制御する。これによって、A端子のサンプルタイミングをB端子のサンプルタイミングに同期させることができる。なお、図14で説明したサンプリング同期方法を上記の場合に適用することができる。
[0206]
 図27は、C端子のサンプルタイミングをB端子のサンプルタイミングに同期させる手順を示すフローチャートである。具体的な手順は、実施の形態3の図21の場合と同様である。ただし、図27の場合には、中間点57に代えて分岐点200での電圧Vrf,Vsfが計算される。
[0207]
 図24、図25、図27を参照して、まず、電流差動リレー53CのA/D変換部110は、自端(C端)の電流および電圧をサンプリングすることによって電流データIr1および電圧データVr1を生成する(ステップS401C)。
[0208]
 次に、電流差動リレー53Cの電圧演算部74は、自端電圧Vr1および自端電流Ir1を用いて、第3のコンデンサ点213の電圧VCを計算する(ステップS402C)。
[0209]
 次に、電流差動リレー53Cの電圧演算部74は、第3のコンデンサ点213の電圧VCを用いて充電電流ICcを計算する(ステップS403C)。
[0210]
 次に、電流差動リレー53Cの電圧演算部74は、自端電流Ir1から充電電流ICcを減算した値(Ir1-ICc)と、第3のコンデンサ点213の電圧VCとを用いて、分岐点電圧Vrfを計算する(ステップS404C)。
[0211]
 次に、電流差動リレー53Cの受信機131_2は、通信路54Cを介して、相手端(B端)の電流および電圧のサンプリング値(すなわち、電流データIs1および電圧データVs1)を受信する(ステップS405C)。受信された電流データIs1および電圧データVs1は、受信データ処理部72に取り込まれる。なお、ステップS405Cは、ステップS402Cの前に実行してもよい。また、ステップS402C~S404Cは、ステップS406C~S408Cと並行して実行してもよい。
[0212]
 次に、電流差動リレー53Cの電圧演算部74は、相手端電圧Vs1および相手端電流Is1を用いて、第2のコンデンサ点212の電圧VBを計算する(ステップS406C)。
[0213]
 次に、電流差動リレー53Cの電圧演算部74は、第2のコンデンサ点212の電圧VBを用いて充電電流IBcを計算する(ステップS407C)。
[0214]
 次に、電流差動リレー53Cの電圧演算部74は、相点端電流Is1から充電電流IBcを減算した値(Is1-IBc)と、第2のコンデンサ点212の電圧VBとを用いて、分岐点電圧Vsfを計算する(ステップS408C)。
[0215]
 次に、電流差動リレー53Cの位相差演算部75は、分岐点電圧VrfとVsfとの位相差φを計算する(ステップS409C)。さらに、電流差動リレー53Cの位相差演算部75は、位相差φに対応する遅れ時間(または、進み時間)を求めて同期処理部73へ出力する。同期処理部73は、その遅れ時間または進み時間だけサンプリング時刻を補正する(ステップS410C)。すなわち、同期処理部73は、位相差φに対応する時間tが0になるように、自端での電流および電圧のサンプリング時刻を制御する。これによって、C端子のサンプルタイミングをB端子のサンプルタイミングに同期させることができる。また、図14で説明したサンプリング同期方法を上記の場合に適用することができる。
[0216]
 なお、3端子の送電線を、π形回路を用いて模擬することもできる。この場合には、2端子の場合と同様に、各端子から分岐点までがπ型回路の一部であるL型回路として模擬される。
[0217]
 [送電線が4端子の場合]
 図28は、各端子に背後電源を有する4端子の送電線の系統図である。図28の送電線において、A端は分岐点gと送電線221を介して接続され、D端は分岐点gと送電線221を介して接続される。B端は分岐点fと送電線222を介して接続され、C端は分岐点fと送電線223を介して接続される。分岐点gと分岐点fとは送電線220を介して接続される。送電線のA端、B端、C端、D端にはそれぞれ背後電源52A,52B,52C,52Dが接続されている。
[0218]
 A端には電流変成器CT1が設けられるとともに、A端の母線51Aには電圧変成器VT1が設けられる。B端には電流変成器CT2が設けられるとともに、B端の母線51Bには電圧変成器VT2が設けられる。C端には電流変成器CT3が設けられるとともに、C端の母線51Cには電圧変成器VT3が設けられる。D端には電流変成器CT4が設けられるとともに、D端の母線51Dには電圧変成器VT4が設けられる。
[0219]
 また、A端、B端、C端、D端には、電流差動リレー53A,53B,53C,53Dがそれぞれ設置される。各電流差動リレー53は自端の電圧変成器VTおよび電流変成器CTと接続される。また、これらの電流差動リレー53A,53B,53Cは、通信路(不図示)を介して相互に接続され、検出した自端の電流データおよび電圧データを相互にやり取りする。
[0220]
 以下、上記の構成において、B端のサンプリングのタイミングにA端、C端、D端のサンプルタイミングを同期させる場合の手順を説明する。
[0221]
 図29は、図28の送電系統においてサンプリング同期処理の手順の一例を示すフローチャートである。図29の手順では、図27のB端のサンプリングのタイミングに他の端子のサンプリングのタイミングを同期させる。
[0222]
 まず、D端の電流差動リレー53Dは、A端電圧V1およびA端電流I1に基づいて分岐点gの電圧Vgを計算する(ステップS601)。さらに、電流差動リレー53Dは、D端電圧Vq1およびD端電流Iq1に基づいて分岐点gの電圧Vqgを計算する(ステップS602)。これらの具体的な計算方法は、実施の形態1および3で説明したものと同様である。
[0223]
 次に、電流差動リレー53Dは、分岐点gにおける電圧Vgと電圧Vqgとの位相差φ1を計算する(ステップS603)。電流差動リレー53Dは、位相差φ1に応じた遅れ時間(または、進み時間)だけD端のサンプリング時刻を補正する(すなわち、D端のサンプリング時刻をA端のサンプリング時刻に同期させる)(ステップS604)。
[0224]
 次に、電流差動リレー53Aは、A端から分岐点gに流入する電流Igと、D端から分岐点gに流入する電流Iqgとの合成電流Ig+Iqgとを計算する(ステップS605)。
[0225]
 次に、電流差動リレー53Aは、分岐点gの電圧Vgおよび合成電流Ig+Iqgに基づいて分岐点fの電圧Vgfを計算する(ステップS606)。さらに、電流差動リレー53Aは、B端電圧Vs1およびB端電流Is1に基づいて分岐点fの電圧Vsfを計算する(ステップS607)。
[0226]
 次に、電流差動リレー53Aは、分岐点fの電圧Vgfと電圧Vsfの位相差φ2を計算する(ステップS608)。
[0227]
 次に、電流差動リレー53Aは、位相差φ2に応じた遅れ時間(または、進み時間)だけA端のサンプリング時刻を補正する(すなわち、A端のサンプリング時刻をB端のサンプリング時刻に同期させる)。また、D端の電流差動リレー53Dは、位相差φ2に応じた遅れ時間(または、進み時間)だけD端のサンプリング時刻を補正する(すなわち、D端のサンプリング時刻をB端のサンプリング時刻に同期させる)(以上、ステップS609)。したがって、最終的にD端のサンプリング時刻は位相差(φ1+φ2)に対応する時間だけ補正されることになる。
[0228]
 次に、C端の電流差動リレー53Cは、C端電圧Vr1およびC端電流Ir1に基づいて分岐点fの電圧Vrfを計算する(ステップS610)。さらに、C端の電流差動リレー53Cは、B端電圧Vs1およびB端電流Is1に基づいて分岐点fの電圧Vsfを計算する(ステップS611)。
[0229]
 次に、電流差動リレー53Cは、分岐点fでの電圧Vsfと電圧Vrfとの位相差φ3を計算する(ステップS612)。そして、電流差動リレー53Cは、計算した位相差φ3に応じた遅れ時間(または、進み時間)だけC端のサンプリング時刻を補正する(すなわち、C端のサンプリング時刻をB端のサンプリング時刻に同期させる)(ステップS613)。以上によって、サンプリング同期処理が完了する。
[0230]
 このように、同期すべきマスターの電流差動リレー53Bが設置された端子(B端)と1個の分岐点fを介して接続されたC端の電流差動リレー53Cは、各端子(B端,C端)の電流および電圧データにそれぞれ基づいて当該分岐点fにおける電圧を計算する。そして、電流差動リレー53Cは、計算したそれぞれの分岐点電圧の位相差に基づいてサンプルタイミングを補正することができる。
[0231]
 一方、同期すべきマスターの電流差動リレー53Bが設置された端子(B端)と2個以上の分岐点f,gを介して接続されたA端およびD端の電流差動リレー53A,53Dは、まず、B端に直結された分岐点fと異なる分岐点gにおける合成電流を計算する必要がある。このため、これらの電流差動リレー53A,53Dのいずれか一方のサンプリングタイミングに他方のサンプリングタイミングを同期させるステップが必要になる。
[0232]
 今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

符号の説明

[0233]
 50,201~203,220~223 送電線、52A~52D 背後電源、53,53A~53D 電流差動リレー、54,54B,54C 通信路、56,91,211 第1のコンデンサ点、57 中間点、58,93,212 第2のコンデンサ点、96,213 第3のコンデンサ点、94 第4のコンデンサ点、67 特定点、76 リレー演算部、74 電圧演算部、75 位相差演算部、73 同期処理部、80~86,204~206 T形回路、100 入力変換部、110 A/D変換部、120 演算処理部、130 I/O部、131 送受信機、132 デジタル入力回路、133 デジタル出力回路、200,f,g 分岐点、C,CA,CB 対地容量、CT,CT1~CT4 電流変成器、VT,VT1~VT4 電圧変成器,Ts 特定時間間隔。

請求の範囲

[請求項1]
 送電線の第1端子に設けられた電流差動リレーであって、
 前記送電線の前記第1端子の電流および電圧をサンプリングして電流データおよび電圧データを生成するアナログ/デジタル変換部と、
 前記送電線の第2端子に設けられた第2の電流差動リレーから前記第2端子の電流データおよび電圧データを受信する受信機と、
 前記第1端子の電流データおよび電圧データに基づいて、前記送電線の前記第1端子と前記第2端子との間の特定点における電圧を第1特定点電圧として計算し、前記第2端子の電流データおよび電圧データに基づいて、前記特定点における電圧を第2特定点電圧として計算する電圧演算部と、
 前記第1特定点電圧と前記第2特定点電圧との位相差を計算する位相差演算部と、
 前記位相差に対応する時間に基づいて前記第1端子の電流および電圧のサンプリング時刻を調整する同期処理部とを備え、
 前記電圧演算部は、前記第1端子と前記特定点とを接続する第1線路および前記第2端子と前記特定点とを接続する第2線路の各々を、前記送電線全体を単一のπ形回路としたときの当該π形回路の一部であるL形回路として、または単一のT形回路として、または直列接続された複数のT形回路として模擬することによって、前記第1特定点電圧および前記第2特定点電圧を計算する、電流差動リレー。
[請求項2]
 前記第1線路および前記第2線路の各々は、前記送電線全体を単一のπ形回路としたときの当該π形回路の一部であるL形回路として模擬され、
 前記電圧演算部は、前記第1端子の電圧に基づいて前記第1線路の充電電流を算出し、前記第1端子の電流から前記第1線路の充電電流を減じることによって得られる電流から前記第1線路の電圧降下分を算出し、前記第1端子の電圧から前記第1線路の電圧降下分を減じることによって前記第1特定点電圧を算出し、
 前記電圧演算部は、前記第2端子の電圧に基づいて前記第2線路の充電電流を算出し、前記第2端子の電流から前記第2線路の充電電流を減じることによって得られる電流から前記第2線路の電圧降下分を算出し、前記第2端子の電圧から前記第2線路の電圧降下分を減じることによって前記第2特定点電圧を算出する、請求項1に記載の電流差動リレー。
[請求項3]
 前記第1線路は単一の第1のT形回路として模擬され、前記第2線路は単一の第2のT形回路として模擬され、
 前記電圧演算部は、前記第1端子から前記第1のT形回路のコンデンサ点までの電圧降下分を前記第1端子の電圧から減じることによって前記第1のT形回路のコンデンサ点における電圧を算出し、前記第1のT形回路のコンデンサ点における電圧に基づいて前記第1線路の充電電流を算出し、前記第1端子の電流から前記第1線路の充電電流を減じることによって得られる電流と前記第1のT形回路のコンデンサ点における電圧とに基づいて前記第1特定点電圧を算出し、
 前記電圧演算部は、前記第2端子から前記第2のT形回路のコンデンサ点までの電圧降下分を前記第2端子の電圧から減じることによって前記第2のT形回路のコンデンサ点における電圧を算出し、前記第2のT形回路のコンデンサ点における電圧に基づいて前記第2線路の充電電流を算出し、前記第2端子の電流から前記第2線路の充電電流を減じることによって得られる電流と前記第2のT形回路のコンデンサ点における電圧とに基づいて前記第2特定点電圧を算出する、請求項1に記載の電流差動リレー。
[請求項4]
 送電線の第1端子に設けられた電流差動リレーであって、
 前記送電線の前記第1端子の電流および電圧をサンプリングして電流データおよび電圧データを生成するアナログ/デジタル変換部と、
 前記送電線の第2端子に設けられた第2の電流差動リレーから前記第2端子の電流データおよび電圧データを受信する受信機と、
 前記第1端子と前記第2端子とを接続する線路を単一のT形回路または直列接続された複数のT形回路として模擬することによって、前記第1端子の電流データおよび電圧データから前記第2端子の電圧を計算する電圧演算部と、
 前記電圧演算部によって計算された前記第2端子の電圧と実際の前記第2端子の電圧との位相差を計算する位相差演算部と、
 前記位相差に対応する時間に基づいて前記第1端子の電流および電圧のサンプリング時刻を調整する同期処理部とを備える、電流差動リレー。
[請求項5]
 前記第1端子と前記第2端子とを接続する前記線路は、単一のT形回路として模擬され、
 前記電圧演算部は、前記第1端子から前記T形回路のコンデンサ点までの電圧降下分を前記第1端子の電圧から減じることによって前記T形回路のコンデンサ点における電圧を算出し、前記T形回路のコンデンサ点における電圧に基づいて前記線路の充電電流を算出し、前記第1端子の電流から前記線路の充電電流を減じることによって得られる電流と前記T形回路のコンデンサ点における電圧とに基づいて前記第2端子の電圧を算出する、請求項4に記載の電流差動リレー。
[請求項6]
 送電線の第1端子に設けられた電流差動リレーであって、
 前記送電線の前記第1端子の電流および電圧をサンプリングして電流データおよび電圧データを生成するアナログ/デジタル変換部と、
 前記送電線の第2端子に設けられた第2の電流差動リレーから前記第2端子の電流データおよび電圧データを受信する受信機と、
 前記第1端子と前記第2端子とを接続する線路を単一のT形回路または直列接続された複数のT形回路として模擬することによって、前記第2端子の電流データおよび電圧データから前記第1端子の電圧を計算する電圧演算部と、
 前記電圧演算部によって計算された前記第1端子の電圧と実際の前記第1端子の電圧との位相差を計算する位相差演算部と、
 前記位相差に対応する時間に基づいて前記第1端子の電流および電圧のサンプリング時刻を調整する同期処理部とを備える、電流差動リレー。
[請求項7]
 前記電流差動リレーは、前記第1端子の電流データおよび電圧データとともに第1のタイミング信号を前記第2の電流差動リレーに送信する送信機をさらに備え、
 前記受信機は、前記第2端子の電流データおよび電圧データとともに第2のタイミング信号を前記第2の電流差動リレーから受信し、
 前記同期処理部は、
 前記送信機が前記第1のタイミング信号を送信してから前記受信機が前記第2のタイミング信号を受信するまでの第1の時間間隔と、前記第2の電流差動リレーが前記第2のタイミング信号を送信してから前記第1のタイミング信号を受信するまでの第2の時間間隔とが等しくなるように、前記第1端子の電流および電圧のサンプリング時刻を制御する第1ステップと、
 前記第1の時間間隔と前記第2の時間間隔とが等しいときに前記位相差演算部によって計算された位相差に対応する時間を、第3の時間間隔として記憶する第2ステップと、
 前記第1の時間間隔と前記第2の時間間隔とが前記第3の時間間隔の2倍だけ異なるように、前記第1端子の電流および電圧のサンプリング時刻を制御する第3ステップとを実行するように構成される、請求項1~6のいずれか1項に記載の電流差動リレー。
[請求項8]
 前記同期処理部は、前記第1の時間間隔と前記第2の時間間隔とが前記第3の時間間隔の2倍だけ異なっているときに前記位相差演算部によって計算された位相差に対応する時間を用いて、前記第3の時間間隔を補正する第4ステップをさらに実行するように構成され、
 前記第3ステップでは、前記第4ステップによって補正された前記第3の時間間隔が用いられる、請求項7に記載の電流差動リレー。
[請求項9]
 前記同期処理部は、前記送電線の正常時には、前記第4ステップを繰り返し実行することによって前記第3の時間間隔を継続的に補正するように構成され、
 前記同期処理部は、前記送電線の故障時には、前記第4ステップを実行せず、前記送電線の故障発生の直前に補正された前記第3の時間間隔を用いて前記第3ステップを実行するように構成される、請求項8に記載の電流差動リレー。
[請求項10]
 前記同期処理部は、前記送電線の正常時に、前記第1ステップおよび前記第2ステップを実行した後、前記位相差演算部によって計算された位相差に対応する時間が0となるように、前記第1端子の電流および電圧のサンプリング時刻を制御する第5ステップを実行するように構成され、
 前記同期処理部は、前記送電線の故障時に、前記第5ステップに代えて前記第3ステップを実行するように構成される、請求項7に記載の電流差動リレー。
[請求項11]
 送電線の第1端子の電流および電圧をサンプリングして電流データおよび電圧データを生成するステップと、
 前記送電線の第2端子の電流および電圧をサンプリングして電流データおよび電圧データを生成するステップと、
 前記第1端子の電流データおよび電圧データから、前記送電線の前記第1端子と前記第2端子との間の特定点における電圧を第1特定点電圧として計算するステップと、
 前記第2端子の電流データおよび電圧データから、前記特定点の電圧を第2特定点電圧として計算するステップとを備え、
 前記第1特定点電圧および前記第2特定点電圧を計算するステップでは、前記第1端子と前記特定点とを接続する第1線路および前記第2端子と前記特定点とを接続する第2線路の各々は、前記送電線全体を単一のπ形回路としたときの当該π形回路の一部であるL形回路として、または単一のT形回路として、または直列接続された複数のT形回路として模擬され、
 さらに、前記第1特定点電圧と前記第2特定点電圧との位相差を第1の位相差として計算するステップと、
 前記第1の位相差に対応する時間に基づいて前記第1端子の電流および電圧のサンプリング時刻を調整するステップと備える、サンプリング同期方法。
[請求項12]
 前記送電線は、前記特定点と第3線路を介して接続された第3端子をさらに含み、
 前記サンプリング同期方法は、さらに、
 前記第3端子の電流および電圧をサンプリングして電流データおよび電圧データを生成するステップと、
 前記第3線路をπ形回路の一部である単一のL形回路としてまたは単一のT形回路としてまたは直列接続された複数のT形回路として模擬することによって、前記第3端子の電流データおよび電圧データから、前記特定点の電圧を第3特定点電圧として計算するステップと、
 前記第2特定点電圧と前記第3特定点電圧との位相差を第2の位相差として計算するステップと、
 前記第2の位相差に対応する時間に基づいて前記第3端子の電流および電圧のサンプリング時刻を調整するステップと備える、請求項11に記載のサンプリング同期方法。
[請求項13]
 前記サンプリング同期方法は、
 前記第1端子に設けられた第1の送受信機から前記第2端子に設けられた第2の送受信機に前記第1端子の電流データおよび電圧データとともに第1のタイミング信号を送信するステップと、
 前記第2の送受信機から前記第1の送受信機に前記第2端子の電流データおよび電圧データとともに第2のタイミング信号を送信するステップとをさらに備え、
 前記第1端子の電流および電圧のサンプリング時刻を調整するステップは、
 前記第1の送受信機が前記第1のタイミング信号を送信してから前記第2のタイミング信号を受信するまでの第1の時間間隔と、前記第2の送受信機が前記第2のタイミング信号を送信してから前記第1のタイミング信号を受信するまでの第2の時間間隔とが等しくなるように、前記第1端子の電流および電圧のサンプリング時刻を制御する第1ステップと、
 前記第1の時間間隔と前記第2の時間間隔とが等しいときに前記第1の位相差に対応する時間を、第3の時間間隔として記憶する第2ステップと、
 前記第1の時間間隔と前記第2の時間間隔とが前記第3の時間間隔の2倍だけ異なるように、前記第1端子の電流および電圧のサンプリング時刻を制御する第3ステップとを含む、請求項11または12に記載のサンプリング同期方法。
[請求項14]
 前記第1端子の電流および電圧のサンプリング時刻を調整するステップは、さらに、
 前記第1の時間間隔と前記第2の時間間隔とが前記第3の時間間隔の2倍だけ異なっているときに計算された前記第1の位相差に対応する時間を用いて、前記第3の時間間隔を補正する第4ステップを含み、
 前記第3ステップでは、前記第4ステップによって補正された前記第3の時間間隔が用いられる、請求項13に記載のサンプリング同期方法。
[請求項15]
 前記第1端子の電流および電圧のサンプリング時刻を調整するステップでは、
 前記送電線の正常時には、前記第4ステップが繰り返し実行されることによって前記第3の時間間隔が継続的に補正され、
 前記送電線の故障時には、前記第4ステップは実行されず、前記送電線の故障発生の直前に補正された前記第3の時間間隔を用いて前記第3ステップが実行される、請求項14に記載のサンプリング同期方法。
[請求項16]
 前記第1端子の電流および電圧のサンプリング時刻を調整するステップでは、
 前記送電線の正常時に、前記第1ステップおよび前記第2ステップが実行された後に、前記第1の位相差に対応する時間が0となるように、前記第1端子の電流および電圧のサンプリング時刻を制御する第5ステップが実行され、
 前記送電線の異常時に、前記第5ステップに代えて前記第3ステップが実行される、請求項13に記載のサンプリング同期方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]

[ 図 20]

[ 図 21]

[ 図 22]

[ 図 23]

[ 図 24]

[ 図 25]

[ 図 26]

[ 図 27]

[ 図 28]

[ 図 29]