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1. (WO2018216226) FILM-FORMING DEVICE AND FILM-FORMING METHOD
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明 細 書

発明の名称 成膜装置及び成膜方法

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

非特許文献

0004  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0005  

課題を解決するための手段

0006  

図面の簡単な説明

0007  

発明を実施するための形態

0008  

実施例

0009  

符号の説明

0010  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24   25   26   27   28   29   30   31   32   33   34   35   36   37   38   39   40   41  

明 細 書

発明の名称 : 成膜装置及び成膜方法

技術分野

[0001]
 本発明は、成膜装置及び成膜方法に関する。

背景技術

[0002]
 基板と、基板上に形成された導電膜と、導電膜上に形成された圧電膜と、を有する膜構造体として、基板と、基板上に形成された白金を含む導電膜と、導電膜上に形成されたチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を含む圧電膜と、を有する膜構造体が知られている。
 国際公開第2016/009698号(特許文献1)には、強誘電体セラミックスにおいて、Pb(Zr 1−ATi )O 膜と、当該Pb(Zr 1−ATi )O 膜上に形成されたPb(Zr 1−xTi )O 膜と、を具備し、A及びxが、0≦A≦0.1及び0.1<x<1を満たす技術が開示されている。
 特開2014−84494号公報(特許文献2)には、シリコン基板(Si)上に予めYSZ(8%Y +92%ZrO )、CeO 、LaSrCoO の膜を順次積層して形成したバッファ層上にPZTの薄膜を形成する技術が開示されている。また、特許文献2には、LaSrCoO (LSCO)は、他の膜に対して45°格子回転している技術が開示されている。
 非特許文献1には、シリコン基板上に、YSZ、CeO 、La 0.5Sr 0.5CoO (LSCO)、SrRuO (SRO)が順次積層されたバッファ層が形成され、そのバッファ層上に、c軸配向した0.06Pb(Mn 1/3,Nb 2/3)O −0.94Pb(Zr 0.5Ti 0.5)O (PMnN−PZT)エピタキシャル薄膜が形成される技術が開示されている。非特許文献1には、PMnN−PZTの結晶格子が面内方向でSiに対して45°回転している技術が開示されている。
 非特許文献2には、MgO単結晶るつぼを用いてフラックス法により育成したPbTiO の比誘電率が室温で150であり、純粋なPbTiO 単結晶の比誘電率の1.5倍である技術が開示されている。
 チタン酸ジルコン酸鉛を含む圧電膜において、圧電膜の結晶性等の品質が良好でない場合には、圧電膜の圧電特性は低下する。一方、圧電膜の結晶性等の品質が良好な場合には、圧電膜の圧電特性は向上するものの、圧電膜の比誘電率が小さくならないと、例えば当該圧電膜を圧力センサとして用いる場合に、例えば圧力センサの容量が大きくなる等の理由により、圧力センサの検出感度が低下し、当該圧力センサの検出回路の設計が困難になるおそれがある。
 ところが、従来の成膜装置を用いて、このような結晶性等の品質が良好なチタン酸ジルコン酸鉛を含む圧電膜を成膜することは、困難であった。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 国際公開第2016/009698号
特許文献2 : 特開2014−84494号公報

非特許文献

[0004]
非特許文献1 : S.Yoshida et al.,“Fabrication and characterization of large figure−of−merit epitaxial PMnN−PZT/Si transducer for piezoelectric MEMS sensors”,Sensors and Actuators A 239(2016)201−208
非特許文献2 : 小舟正文、外1名、「MgO単結晶製るつぼによるPbTiO3単結晶の育成及び評価」、窯業協会誌、1987年、第95巻、第11号、p.1053−1058

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0005]
 本発明の一態様は、結晶性が良好な膜を成膜できる成膜装置または成膜方法を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

[0006]
 以下に、本発明の種々の態様について説明する。
[1]接地電位に電気的に接続されるチャンバーと、
 前記チャンバー内に配置されたターゲットと、
 前記ターゲットに高周波電力を供給する電力供給部と、
 前記チャンバー内にガスを供給するガス供給部と、
 前記チャンバー内に配置され、基板を前記ターゲットに対向させて保持する絶縁性基板保持部と、
 前記絶縁性基板保持部を支持する導電性支持部と、
 前記導電性支持部と前記チャンバーとの間に配置された第1絶縁性部材と、
を有し、
 前記導電性支持部は前記第1絶縁性部材によって前記チャンバーに対して電気的に浮遊しており、
 前記基板の外周部が前記絶縁性基板保持部と接触することで、前記絶縁性基板保持部に前記基板が保持され、前記基板は前記導電性支持部に対して電気的に浮遊しており、
 前記絶縁性基板保持部は、平面視において前記基板の中央部と重ならない、成膜装置。
 上記[1]の成膜装置によれば、チャンバーに対して電気的に浮遊させた導電性支持部によって絶縁性基板保持部を支持し、その絶縁性基板保持部に保持した基板を導電性支持部に対して電気的に浮遊させることで、成膜時に基板に蓄積された電荷を接地電位に逃がさないようにする。これにより、基板に多量の電荷を蓄積させることができ、その結果、結晶性が良好な膜を成膜することが可能となる。
[2]上記[1]に記載の成膜装置において、
 前記ターゲットと前記基板との間に配置され、前記基板から30mm以内の距離に位置する導電性防着板を有し、
 前記導電性防着板は前記チャンバーに対して電気的に浮遊している、成膜装置。
 上記[2]の成膜装置によれば、導電性防着板を基板から30mm以内の距離に配置しても、その導電性防着板をチャンバーに対して電気的に浮遊させることで、成膜時に基板に蓄積された電荷を導電性防着板に逃がさないようにすることができる。
[3]上記[2]に記載の成膜装置において、
 前記導電性防着板は水冷されている、成膜装置。
[4]上記[2]または[3]に記載の成膜装置において、
 前記チャンバーと前記導電性防着板との間に配置された第2絶縁性部材を有する、成膜装置。
[5]上記[1]乃至[4]のいずれか一項に記載の成膜装置において、
 前記基板と前記絶縁性基板保持部との接触面積は20mm 以下である、成膜装置。
 上記[4]の成膜装置によれば、基板と絶縁性基板保持部との接触面積を20mm 以下と小さくすることにより、基板への熱絶縁と電気絶縁を同時に取ることができる。
[6]上記[1]乃至[5]のいずれか一項に記載の成膜装置において、
 前記絶縁性基板保持部は角が曲面を有する、成膜装置。
[7]上記[1]乃至[6]のいずれか一項に記載の成膜装置において、
 前記導電性支持部は、前記絶縁性基板保持部を支持する第1導電性部材を含み、
 前記第1導電性部材は、第1軸を中心として前記絶縁性基板保持部と一体的に回転可能に設けられ、
 前記第1導電性部材と前記絶縁性基板保持部との間に配置された第3絶縁性部材を有し、
 前記成膜装置は、更に、前記第1導電性部材を回転駆動する回転駆動部を有する、成膜装置。
[8]上記[1]乃至[6]のいずれか一項に記載の成膜装置において、
 前記導電性支持部は、前記絶縁性基板保持部を支持する第2導電性部材を含み、
 前記第2導電性部材は、第2軸を中心として前記絶縁性基板保持部と一体的に回転可能に設けられ、
 前記第1絶縁性部材は、前記チャンバーと前記第2導電性部材との間に介在し、
 前記第2導電性部材は、電気的に浮遊し、
 前記成膜装置は、更に、前記第2導電性部材を回転駆動する回転駆動部を有する、成膜装置。
[9]上記[7]に記載の成膜装置において、
 前記基板を加熱する基板加熱部を有し、
 前記第3絶縁性部材は、平面視において前記基板を囲む囲み部を有し、
 前記絶縁性基板保持部は、平面視において前記囲み部から前記基板の中心側に向かってそれぞれ突出した複数の突出部を有し、
 前記絶縁性基板保持部は、前記基板の外周部が前記複数の突出部の各々と接触した状態で、前記基板を保持する、成膜装置。
[10]上記[1]乃至[9]のいずれか一項に記載の成膜装置において、
 前記チャンバー内で前記ターゲットを保持するターゲット保持部と、
 前記ターゲットに磁界を印加する磁界印加部と、
 を有し、
 前記磁界が印加されている前記ターゲットの表面の水平磁場は、140~220Gである、成膜装置。
[11]上記[10]に記載の成膜装置において、
 前記ターゲットの表面における前記磁界は、前記ターゲットの表面に沿っている、成膜装置。
[12]上記[1]乃至[11]のいずれか一項に記載の成膜装置において、
 前記成膜装置は、チタン酸ジルコン酸鉛を含有する前記ターゲットの表面をスパッタすることにより前記基板の表面にチタン酸ジルコン酸鉛を含有する膜を成膜する、成膜装置。
[13]上記[1]乃至[12]のいずれか一項に記載の成膜装置において、
 前記成膜装置は、前記チャンバー内で前記基板の下面と対向配置された前記ターゲットの上面をスパッタすることにより前記基板の下面に膜を成膜する、成膜装置。
[14]接地電位に電気的に接続されたチャンバー内で、基板の外周部が絶縁性基板保持部と接触することで、前記基板を前記絶縁性基板保持部により保持し、
 前記チャンバー内でターゲットの表面をスパッタすることにより前記基板の表面に膜を成膜し、
 前記絶縁性基板保持部は、前記チャンバーに対して電気的に浮遊した導電性支持部により支持され、
 前記基板は前記導電性支持部に対して電気的に浮遊しており、
 前記絶縁性基板保持部は、平面視において前記基板の中央部と重ならない、成膜方法。
[15]上記[14]に記載の成膜方法において、
 前記ターゲットと前記基板との間に導電性防着板が配置され、前記導電性防着板は前記基板から30mm以内の距離に位置し、
 前記導電性防着板は前記チャンバーに対して電気的に浮遊している、成膜方法。
[16]上記[14]に記載の成膜方法において、
 前記導電性防着板は水冷されている、成膜方法。
[17]上記[14]乃至[16]のいずれか一項に記載の成膜方法において、
 前記基板と前記絶縁性基板保持部との接触面積は20mm 以下である、成膜方法。
[18]上記[14]乃至[17]のいずれか一項に記載の成膜方法において、
 前記ターゲットに磁界印加部により磁界を印加し、且つ、前記ターゲットに電力供給部により高周波電力を供給した状態で、前記ターゲットの表面をスパッタすることにより、前記基板の表面に前記膜を成膜し、
 前記磁界が印加されている前記ターゲットの表面の水平磁場は、140~220Gである、成膜方法。
[19]上記[18]に記載の成膜方法において、
 前記ターゲットの表面における前記磁界は、前記ターゲットの表面に沿っている、成膜方法。
[20]上記[14]乃至[19]のいずれか一項に記載の成膜方法において、
 前記ターゲットはチタン酸ジルコン酸鉛を含有し、
 前記ターゲットの表面をスパッタすることにより前記基板の表面にチタン酸ジルコン酸鉛を含有する前記膜を成膜する、成膜方法。
[21]上記[20]に記載の成膜方法において、
 前記基板は、
 (100)面よりなる主面を含むシリコン基板と、
 前記主面上に形成され、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向した酸化ジルコニウム膜を含む第1膜と、
 前記第1膜上に形成され、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向した白金膜を含む第1導電膜と、
 を含み、
 前記酸化ジルコニウム膜は、前記酸化ジルコニウム膜の前記主面に沿った<100>方向が、前記シリコン基板の前記主面に沿った<100>方向と平行になるように、配向し、
 前記白金膜は、前記白金膜の前記主面に沿った<100>方向が、前記シリコン基板の前記主面に沿った<100>方向と平行になるように、配向し、
 前記ターゲットの表面をスパッタすることにより、前記第1導電膜上に、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向した第1チタン酸ジルコン酸鉛膜を含む第1圧電膜を形成し、
 前記第1チタン酸ジルコン酸鉛膜は、下記一般式(化1)で表されるチタン酸ジルコン酸鉛よりなる第1複合酸化物を有し、
Pb(Zr 1−xTi )O ・・・(化1)
 前記第1チタン酸ジルコン酸鉛膜は、前記第1チタン酸ジルコン酸鉛膜の前記主面に沿った<100>方向が、前記シリコン基板の前記主面に沿った<100>方向と平行になるように、配向し、
 前記xは、0.32≦x≦0.52を満たす、成膜方法。
[22]上記[14]乃至[21]のいずれか一項に記載の成膜方法において、
 前記チャンバー内で前記基板の下面と対向配置された前記ターゲットの上面をスパッタすることにより前記基板の下面に膜を成膜する、成膜方法。
 本発明の一態様を適用することで、結晶性が良好な膜を成膜できる成膜装置または成膜方法を提供することができる。

図面の簡単な説明

[0007]
 図1は、実施の形態の膜構造体の断面図である。
 図2は、実施の形態の膜構造体が上部電極としての導電膜を有する場合の、膜構造体の断面図である。
 図3は、図2に示す膜構造体から基板及び配向膜を除去した場合の、膜構造体の断面図である。
 図4は、実施の形態の膜構造体の他の例の断面図である。
 図5は、実施の形態の膜構造体に含まれる2つの圧電膜の断面構造を模式的に示す図である。
 図6は、実施の形態の膜構造体に含まれる圧電膜の分極の電界依存性を模式的に示すグラフである。
 図7は、実施の形態の膜構造体に含まれる各層の膜がエピタキシャル成長した状態を説明する図である。
 図8は、実施の形態の成膜装置を模式的に示す断面図である。
 図9は、実施の形態の成膜装置を模式的に示す断面図である。
 図10(A)は実施の形態の成膜装置が有する基板保持部を示す平面図であり、図10(B)~(D)は図10(A)に示す突出部25bの形状を示す図である。
 図11は、実施の形態の膜構造体の製造工程中の断面図である。
 図12は、実施の形態の膜構造体の製造工程中の断面図である。
 図13は、実施の形態の膜構造体の製造工程中の断面図である。
 図14は、実施の形態の膜構造体の製造工程中の断面図である。
 図15は、実施の形態の変形例の膜構造体の断面図である。
 図16は、実施例1の膜構造体のXRD法によるθ−2θスペクトルの例を示すグラフである。
 図17は、実施例1の膜構造体のXRD法によるθ−2θスペクトルの例を示すグラフである。
 図18は、比較例1の膜構造体のXRD法によるθ−2θスペクトルの例を示すグラフである。
 図19は、比較例1の膜構造体のXRD法によるθ−2θスペクトルの例を示すグラフである。
 図20は、実施例1の膜構造体のXRD法による極点図の例を示すグラフである。
 図21は、実施例1の膜構造体のXRD法による極点図の例を示すグラフである。
 図22は、実施例1の膜構造体のXRD法による極点図の例を示すグラフである。
 図23は、実施例1の膜構造体のXRD法による極点図の例を示すグラフである。
 図24は、実施例1としての17枚のウェハの各々に形成された膜構造体の各々のX線回折パターンにおける回折角度2θ 004を示すグラフである。
 図25は、実施例1としての12枚のウェハの各々に形成された膜構造体の各々のX線回折パターンにおける回折角度2θ 004を示すグラフである。
 図26は、実施例1の膜構造体の分極の電圧依存性を示すグラフである。
 図27は、比較例1の膜構造体の分極の電圧依存性を示すグラフである。
 図28は、実施例2の膜構造体の分極の電圧依存性を示すグラフである。
 図29は、実施例3の膜構造体の分極の電圧依存性を示すグラフである。
 図30は、実施例4の膜構造体の分極の電圧依存性を示すグラフである。
 図31は、実施例5の膜構造体の分極の電圧依存性を示すグラフである。
 図32は、実施例1、実施例6乃至実施例8、比較例1及び比較例2についての、成膜条件、並びに、PZTの回折角度2θ 004及び比誘電率ε 等の測定結果をまとめた表を示す。
 図33は、実施例6の膜構造体のXRD法によるθ−2θスペクトルの例を示すグラフである。
 図34は、実施例7の膜構造体のXRD法によるθ−2θスペクトルの例を示すグラフである。
 図35は、実施例8の膜構造体のXRD法によるθ−2θスペクトルの例を示すグラフである。
 図36は、比較例2の膜構造体の分極の電圧依存性を示すグラフである。
 図37は、実施例6の膜構造体の分極の電圧依存性を示すグラフである。
 図38は、実施例7の膜構造体の分極の電圧依存性を示すグラフである。
 図39は、実施例8の膜構造体の分極の電圧依存性を示すグラフである。
 図40は、実施例9の膜構造体の分極の電圧依存性を示すグラフである。
 図41は、実施例10の膜構造体の分極の電圧依存性を示すグラフである。

発明を実施するための形態

[0008]
 以下では、本発明の実施形態及び実施例について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施形態の記載内容及び実施例に限定して解釈されるものではない。
 また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
 また本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
 更に、実施の形態で用いる図面においては、構造物を区別するために付したハッチング(網掛け)を図面に応じて省略する場合もある。
 なお、以下の実施の形態においてA~Bとして範囲を示す場合には、特に明示した場合を除き、A以上B以下を示すものとする。
 (実施の形態)
 <膜構造体>
 初めに、本発明の一実施形態である実施の形態の膜構造体について説明する。図1は、実施の形態の膜構造体の断面図である。図2は、実施の形態の膜構造体が上部電極としての導電膜を有する場合の、膜構造体の断面図である。図3は、図2に示す膜構造体から基板及び配向膜を除去した場合の、膜構造体の断面図である。図4は、実施の形態の膜構造体の他の例の断面図である。
 図1に示すように、本実施の形態の膜構造体10は、基板11と、配向膜12と、導電膜13と、膜14と、圧電膜15と、を有する。配向膜12は、基板11上に形成されている。導電膜13は、配向膜12上に形成されている。膜14は、導電膜13上に形成されている。圧電膜15は、膜14上に形成されている。
 なお、図2に示すように、本実施の形態の膜構造体10は、導電膜18を有してもよい。導電膜18は、圧電膜15上に形成されている。このとき、導電膜13は、下部電極としての導電膜であり、導電膜18は、上部電極としての導電膜である。また、図3に示すように、本実施の形態の膜構造体10は、基板11(図2参照)及び配向膜12(図2参照)を有さず、下部電極としての導電膜13と、膜14と、圧電膜15と、上部電極としての導電膜18と、のみを有するものでもよい。
 また、図4に示すように、本実施の形態の膜構造体10は、基板11と、配向膜12と、導電膜13と、のみを有するものであってよい。このような場合、膜構造体10を圧電膜15を形成するための電極基板として用いることができ、導電膜13上に、エピタキシャル成長し、且つ、良好な圧電特性を有する圧電膜15を容易に形成することができる。
 基板11は、シリコン(Si)単結晶よりなるシリコン基板である。シリコン基板としての基板11は、(100)面よりなる主面としての上面11aを含む。配向膜12は、上面11a上に形成され、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向した酸化ジルコニウムを含む。導電膜13は、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向した白金を含む。これにより、圧電膜15が、ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物を含む場合に、圧電膜15を、基板11上で、正方晶表示で(001)配向又は擬立方晶表示で(100)配向させることができる。
 ここで、配向膜12が(100)配向している、とは、立方晶の結晶構造を有する配向膜12の(100)面が、シリコン基板である基板11の、(100)面よりなる主面としての上面11aに沿っていることを意味し、好適には、シリコン基板である基板11の、(100)面よりなる上面11aに平行であることを意味する。また、配向膜12の(100)面が基板11の(100)面よりなる上面11aに平行であるとは、配向膜12の(100)面が基板11の上面11aに完全に平行な場合のみならず、基板11の上面11aに完全に平行な面と配向膜12の(100)面とのなす角度が20°以下であるような場合を含む。また、配向膜12のみならず、他の層の膜の配向についても同様である。
 或いは、配向膜12として、単層膜よりなる配向膜12に代え、積層膜よりなる配向膜12が、基板11上に形成されていてもよい。
 好適には、配向膜12は、基板11の上面11a上にエピタキシャル成長し、導電膜13は、配向膜12上にエピタキシャル成長している。これにより、圧電膜15が、ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物を含む場合に、圧電膜15を導電膜13上にエピタキシャル成長させることができる。
 ここで、基板11の主面としての上面11a内で互いに直交する2つの方向を、X軸方向及びY軸方向とし、上面11aに垂直な方向をZ軸方向としたとき、ある膜がエピタキシャル成長しているとは、その膜が、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のいずれの方向にも配向していることを意味する。なお、好適な上面11a内の配向方向については、後述する図7を用いて説明する。
 膜14は、下記一般式(化4)で表され、且つ、擬立方晶表示で(100)配向した複合酸化物を含む。
Sr(Ti 1−zRu )O ・・・(化4)
ここで、zは、0≦z≦1を満たす。なお、以下では、zがz=0を満たすときのSr(Ti 1−zRu )O 即ちSrTiO を、STOと称し、zが0<z<1を満たすときのSr(Ti 1−zRu )O を、STROと称し、zがz=1を満たすときのSr(Ti 1−zRu )O 即ちSrRuO を、SROと称する場合がある。
 SROは、金属導電性を有し、STOは半導性又は絶縁性を有する。そのため、zが1に近づくほど、膜14の導電性が向上するため、膜14を、導電膜13を含む下部電極の一部として用いることができる。
 ここで、膜14が、スパッタリング法により形成される場合、zは、0≦z≦0.4を満たすことが好ましく、0.05≦z≦0.2を満たすことがより好ましい。zが0.4を超える場合、上記一般式(化4)で表される複合酸化物が粉になり、十分に固まらないおそれがあり、スパッタリングターゲットを製造することが困難になるからである。
 一方、膜14が、例えばゾルゲル法などの塗布法により形成される場合は、z>0.4であっても容易に形成することができる。
 上記一般式(化4)で表示され、ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物が擬立方晶表示で(100)配向しているとは、以下のような場合を意味する。
 まず、3次元に配列された単位格子を含み、一般式ABO で表示されるペロブスカイト型構造の結晶格子において、単位格子が1個の原子A、1個の原子B及び3個の酸素原子を含む場合を考える。
 このような場合、擬立方晶表示で(100)配向しているとは、当該単位格子が、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向している場合を意味する。このとき、当該単位格子の1辺の長さを、格子定数a とする。
 一方、上記一般式(化4)で表示され、ペロブスカイト型構造を有する複合酸化物が、斜方晶の結晶構造を有する場合を考える。そして、斜方晶の3つの格子定数のうち1番目の格子定数a が擬立方晶の格子定数a の2 1/2倍に略等しく、斜方晶の3つの格子定数のうち2番目の格子定数b が擬立方晶の格子定数a の2倍に略等しく、斜方晶の3つの格子定数のうち3番目の格子定数c が擬立方晶の格子定数a の2 1/2倍に略等しい場合を考える。なお、本願明細書では、数値V1と数値V2とが略等しい、とは、数値V1と数値V2との平均に対する、数値V1と数値V2との差の比が、5%程度以下であることを意味する。
 このとき、擬立方晶表示で(100)配向しているとは、斜方晶表示で(101)配向又は(020)配向していることを意味する。
 膜14が、上記一般式(化4)で表され、0≦z≦1を満たすことにより、擬立方晶の格子定数a が0.390nm≦a ≦0.393nmを満たすため、後述する図7を用いて説明するように、膜14を、導電膜13上に、擬立方晶表示で(100)配向させることができる。
 圧電膜15は、導電膜13上に膜14を介して形成され、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向した複合酸化物としてのチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を含む。或いは、圧電膜15に含まれるPZTが、正方晶の結晶構造を有する部分と、菱面体晶の結晶構造を有する部分と、を含む場合には、圧電膜15は、導電膜13上に膜14を介して形成され、且つ、疑立方晶表示で(100)配向した複合酸化物としてのチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を含んでもよい。
 圧電膜15がPZTを含むとは、圧電膜15が下記一般式(化5)で表される複合酸化物を含むことを意味する。
Pb(Zr 1−uTi )O ・・・(化5)
uは、0<u<1を満たす。
 また、圧電膜15が、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向したPZTを含む場合、本実施の形態では、CuKα線を用いたθ−2θ法による圧電膜15のX線回折パターンにおいて、チタン酸ジルコン酸鉛の正方晶表示における(004)面の回折ピークの回折角度を2θ 004としたとき、2θ 004は、下記式(数1)を満たす。
2θ 004≦96.5°・・・(数1)
 これにより、チタン酸ジルコン酸鉛の正方晶表示における(004)面の間隔が長くなる。或いは、圧電膜15中における、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向(c軸配向)したチタン酸ジルコン酸鉛の含有率を、圧電膜15中における、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向(a軸配向)したチタン酸ジルコン酸鉛の含有率に比べて大きくすることができる。従って、圧電膜15に含まれる複数の結晶粒の各々における分極方向を揃えることができるので、圧電膜15の圧電特性を向上させることができる。
 一方、圧電膜15が、擬立方晶表示で(100)配向したPZTを含む場合には、以下のように考えることができる。
 圧電膜15に含まれるPZTが、正方晶の結晶構造を有し、正方晶の2つの格子定数がa 及びc であり、a 及びc がc >a を満たし、単位格子が、互いに直交する3つの辺の長さがa 、a 及びc である直方体である場合を考える。そして、正方晶の格子定数a が擬立方晶の格子定数a に略等しく、正方晶の格子定数c が擬立方晶の格子定数a に略等しい場合を考える。このような場合、PZTが疑立方晶表示で(100)配向するとは、PZTが正方晶表示で(100)配向(a軸配向)するか、又は、(001)配向(c軸配向)することを意味する。
 一方、圧電膜15に含まれるPZTが、菱面体晶の結晶構造を有し、菱面体晶の格子定数がa である場合を考える。そして、菱面体晶の格子定数a が擬立方晶の格子定数a に略等しい場合を考える。このような場合、PZTが疑立方晶表示で(100)配向するとは、PZTが菱面体晶表示で(100)配向することを意味する。
 このような場合、本実施の形態では、CuKα線を用いたθ−2θ法による圧電膜15のX線回折パターンにおいて、チタン酸ジルコン酸鉛の擬立方晶表示における(400)面の回折ピークの回折角度を2θ 400としたとき、2θ 400は、上記式(数1)において、2θ 004に代えて2θ 400と置き換えた式(2θ 400≦96.5°)を満たすことになる。そして、これにより、チタン酸ジルコン酸鉛の擬立方晶表示における(400)面の間隔が長くなる。そのため、圧電膜15中における、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向したチタン酸ジルコン酸鉛の含有率を、圧電膜15中における、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向したチタン酸ジルコン酸鉛の含有率に比べて大きくすることができる。従って、圧電膜15に含まれる複数の結晶粒の各々における分極方向を揃えることができるので、圧電膜15の圧電特性を向上させることができる。
 また、本実施の形態では、圧電膜15の比誘電率をε としたとき、ε は、下記式(数2)を満たす。
ε ≦450・・・(数2)
 これにより、膜構造体10を、例えば圧電効果を用いた圧力センサとして用いる場合に、検出感度を向上させることができ、当該圧力センサの検出回路を容易に設計することができる。或いは、膜構造体10を、例えば逆圧電効果を用いた超音波振動子として用いる場合に、発振回路を容易に設計することができる。
 チタン酸ジルコン酸鉛を含む圧電膜を有する膜構造体において、例えば膜密度が小さいか、又は、チタン酸ジルコン酸鉛の含有量が少ない等の理由により、圧電膜の結晶性等の品質が良好でない場合には、圧電膜の圧電特性は低下する。一方、チタン酸ジルコン酸鉛を含む圧電膜を有する膜構造体において、例えば膜密度が大きいか、又は、チタン酸ジルコン酸鉛の含有量が多い等の理由により、圧電膜の結晶性等の品質が良好な場合には、圧電膜の圧電特性は向上するものの、圧電膜の比誘電率が小さくならないことがある。
 このように、チタン酸ジルコン酸鉛を含む圧電膜を有する膜構造体においては、圧電膜の圧電特性を向上させたときに、圧電膜の比誘電率が小さくならない場合がある。そして、圧電膜の比誘電率が小さくならないと、例えば当該圧電膜を圧力センサとして用いる場合に、例えば圧力センサの容量が大きくなる等の理由により、圧力センサの検出感度が低下し、当該圧力センサの検出回路の設計が困難になるおそれがある。
 本実施の形態の膜構造体10では、2θ 004が上記式(数1)を満たし、且つ、ε が上記式(数2)を満たす。2θ 004が上記式(数1)を満たすことにより、圧電膜15中における、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向したチタン酸ジルコン酸鉛の含有率が大きくなるので、圧電特性を向上させることができる。また、ε が上記式(数2)を満たすことにより、比誘電率が小さくなるので、圧力センサの検出感度を大きくすることができる。従って、本実施の形態の膜構造体10によれば、圧電特性を向上させることができ、且つ、圧電効果を用いたセンサの検出感度を向上させることができる。即ち、チタン酸ジルコン酸鉛を含む圧電膜を有する膜構造体において、圧電膜の圧電特性を向上させ、且つ、当該圧電膜を用いた圧力センサの検出感度を向上させることができる。
 上記非特許文献2に記載されているように、PbTiO では、単結晶状になって、配向性等を含めた結晶性が向上すると、比誘電率が低くなる。従って、PZTでも、PbTiO と同様に、薄膜の配向性を含めた結晶性が向上することにより、比誘電率が低くなると考えられる。即ち、膜構造体10の比誘電率ε が450以下に低くなることは、チタン酸ジルコン酸鉛を含む圧電膜である圧電膜15が単結晶状になることを示している。
 好適には、膜構造体10が導電膜18を有する場合、導電膜13と導電膜18との間に1kHzの周波数を有する交流電圧を印加して測定される圧電膜15の比誘電率をε としたとき、圧電膜15のε は、上記式(数2)を満たす。このような周波数を有する交流電圧での比誘電率が小さくなることにより、例えば検出回路のクロック周波数を高めることができ、膜構造体10を用いた圧力センサの応答速度を向上させることができる。
 膜構造体10が導電膜18を有する場合、導電膜13、圧電膜15及び導電膜18により強誘電体キャパシタCP1が形成される。そして、圧電膜15のε は、導電膜13と導電膜18との間に1kHzの周波数を有する交流電圧を印加したときの強誘電体キャパシタCP1の静電容量に基づいて算出される。
 好適には、圧電膜15の残留分極値をP としたとき、P は、下記式(数3)を満たす。
≧28μC/cm ・・・(数3)
 残留分極値は、強誘電体でもある圧電体の強誘電特性の指標となる値であるが、一般的には、強誘電特性に優れた圧電膜は、圧電特性にも優れる。従って、圧電膜15のP が上記式(数3)を満たすことにより、圧電膜15の強誘電特性を向上させることができるので、圧電膜15の圧電特性も向上させることができる。
 なお、P は、P ≧40μC/cm を満たすことが好ましく、P ≧50μC/cm を満たすことがより好ましく、P ≧55μC/cm を満たすことが更により好ましい。P が大きくなるほど、圧電膜15の強誘電特性を更に向上させることができるので、圧電膜15の圧電特性も更に向上させることができる。
 膜構造体10が導電膜18を有する場合、導電膜13と導電膜18との間に印加される電圧を変化させたときの圧電膜15の分極の変化を示す分極電圧ヒステリシス曲線(後述する図6参照)を測定する際に、導電膜13と導電膜18との間に印加される電圧を0から正側に増加させて再び0まで戻したときの分極値が、圧電膜15の残留分極値P である。また、導電膜13と導電膜18との間に印加する電圧を0から負側に減少させて再び0まで戻したときの分極値が、圧電膜15の残留分極値−P である。
 即ち、圧電膜15に印加される電界を変化させたときの圧電膜15の分極の変化を示す分極電界ヒステリシス曲線を測定する際に、圧電膜15に印加する電圧を0から正側に増加させて再び0まで戻したときの分極が、圧電膜15の残留分極値P である。また、圧電膜15に印加される電界を0から負側に減少させて再び0まで戻したときの分極が、圧電膜15の残留分極値−P である。
 図2に示すように、膜構造体10が導電膜18を有する場合、導電膜13、圧電膜15及び導電膜18により強誘電体キャパシタCP1が形成される。このような場合、圧電膜15のP は、強誘電体キャパシタCP1の残留分極値である。
 好適には、圧電膜15は、圧電膜16と、圧電膜17と、を含む。圧電膜16は、膜14上に形成されたチタン酸ジルコン酸鉛よりなる複合酸化物を含む。圧電膜17は、圧電膜16上に形成されたチタン酸ジルコン酸鉛よりなる複合酸化物を含む。圧電膜16は、圧縮応力を有し、圧電膜17は、引っ張り応力を有する。
 圧電膜16が引っ張り応力を有し、圧電膜17が引っ張り応力を有する場合を考える。このような場合、膜構造体10は、基板11の上面11aを主面としたときに、下に凸の形状を有するように、反りやすい。そのため、例えば膜構造体10をフォトリソグラフィ技術を用いて加工する場合の形状精度が低下し、膜構造体10を加工して形成される圧電素子の特性が低下する。
 また、圧電膜16が圧縮応力を有し、圧電膜17が圧縮応力を有する場合を考える。このような場合、膜構造体10は、基板11の上面11aを主面としたときに、上に凸の形状を有するように、反りやすい。そのため、例えば膜構造体10をフォトリソグラフィ技術を用いて加工する場合の形状精度が低下し、膜構造体10を加工して形成される圧電素子の特性が低下する。
 一方、本実施の形態では、圧電膜16は、圧縮応力を有し、圧電膜17は、引っ張り応力を有する。これにより、圧電膜16及び圧電膜17のいずれも引っ張り応力を有する場合に比べて、膜構造体10が反る反り量を低減することができ、圧電膜16及び圧電膜17のいずれも圧縮応力を有する場合に比べて、膜構造体10が反る反り量を低減することができる。そのため、例えば膜構造体10をフォトリソグラフィ技術を用いて加工する場合の形状精度を向上させることができ、膜構造体10を加工して形成される圧電素子の特性を向上させることができる。
 なお、圧電膜16が圧縮応力を有し、圧電膜17が引っ張り応力を有することは、例えば膜構造体10から圧電膜17及び圧電膜16を順次除去する際に、圧電膜17の除去の前後で基板11が下に凸側から上に凸側に変形し、圧電膜16の除去の前後で基板11が上に凸側から下に凸側に変形することにより、確認することができる。
 好適には、圧電膜16は、下記一般式(化6)で表され、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)よりなる複合酸化物を含む。
Pb(Zr 1−xTi )O ・・・(化6)
ここで、xは、0.32≦x≦0.52を満たす。
 このうち、xが0.32≦x≦0.48を満たす場合、圧電膜16に含まれるPZTは、本来菱面体晶の結晶構造を有する組成ではあるものの、主として基板11からの拘束力等により、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向しやすくなる。そして、PZTを含む圧電膜16は、膜14上にエピタキシャル成長する。なお、xが0.48<x≦0.52を満たす場合、圧電膜16に含まれるPZTは、本来正方晶の結晶構造を有する組成であるため、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向する。そして、PZTを含む圧電膜16は、膜14上にエピタキシャル成長する。これにより、圧電膜16に含まれるチタン酸ジルコン酸鉛の分極軸を、上面11aに略垂直に配向させることができるので、圧電膜16の圧電特性を向上させることができる。
 また、好適には、圧電膜17は、下記一般式(化7)で表され、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)よりなる複合酸化物を含む。
Pb(Zr 1−yTi )O ・・・(化7)
ここで、yは、0.32≦y≦0.52を満たす。
 このうち、yが0.32≦y≦0.48を満たす場合、圧電膜17に含まれるPZTは、本来菱面体晶の結晶構造を有する組成ではあるものの、主として基板11からの拘束力等により、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向しやすくなる。そして、PZTを含む圧電膜17は、圧電膜16上にエピタキシャル成長する。なお、yが0.48<y≦0.52を満たす場合、圧電膜17に含まれるPZTは、本来正方晶の結晶構造を有する組成であるため、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向する。そして、PZTを含む圧電膜17は、圧電膜16上にエピタキシャル成長する。これにより、圧電膜17に含まれるチタン酸ジルコン酸鉛の分極軸を、上面11aに略垂直に配向させることができるので、圧電膜17の圧電特性を向上させることができる。
 後述する図14を用いて説明するように、圧縮応力を有する圧電膜16を、例えばスパッタリング法により形成することができる。また、膜構造体の製造工程を説明する際に、図1を用いて説明するように、引っ張り応力を有する圧電膜17を、例えばゾルゲル法などの塗布法により形成することができる。
 図5は、実施の形態の膜構造体に含まれる2つの圧電膜の断面構造を模式的に示す図である。図5は、図1に示す実施の形態の膜構造体10に含まれる基板11を劈開することによって形成された断面、即ち破断面を、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)により観察した観察像のうち、圧電膜16及び圧電膜17を、模式的に示している。
 図6は、実施の形態の膜構造体に含まれる圧電膜の分極の電界依存性を模式的に示すグラフである。図6は、図2に示す実施の形態の膜構造体10に含まれる下部電極(導電膜13)と上部電極(導電膜18)との間の電界を変化させたときの圧電膜15の分極の変化を示す分極電界ヒステリシス曲線を模式的に示すグラフである。
 図5に示すように、圧電膜16をスパッタリング法により形成した場合、圧電膜16は、圧電膜16の下面から上面までそれぞれ一体的に形成された複数の結晶粒16gを含む。また、基板11の主面(図1の上面11a)内で互いに隣り合う2つの結晶粒16gの間には、空孔又は空隙が残りにくい。そのため、SEMで観察するための断面を、集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)法により加工して圧電膜16に形成する場合には、当該断面が単一の断面に見えやすくなり、結晶粒16gが観察されにくくなる。
 一方、圧電膜17を塗布法により形成した場合、圧電膜17は、圧電膜17の厚さ方向に互いに積層された層としての膜17fを複数含む。複数の層の各々としての膜17fは、1層の膜17fの下面から上面までそれぞれ一体的に形成された複数の結晶粒17gを含む。また、圧電膜17の厚さ方向で互いに隣り合う2つの膜17fの間には、空孔又は空隙が残ることがある。
 図5に示すように、好適には、複数の結晶粒の各々は、自発分極を有する。この自発分極は、圧電膜16の厚さ方向に平行な分極成分P1を含み、複数の結晶粒の各々が有する自発分極に含まれる分極成分P1は、互いに同じ方向を向いている。
 このような場合、図6に示すように、初期状態において、圧電膜15は、大きな自発分極を有する。そのため、電界が0の起点SPから電界を正側に増加させて再び0まで戻した後、電界を負側に減少させて再び0の終点EPまで戻した場合の、圧電膜15の分極の電界依存性を示すヒステリシス曲線は、原点から離れた点を起点SPとした曲線を示す。したがって、本実施の形態の膜構造体10を圧電素子として使用する場合、使用前に、圧電膜15に分極処理を施す必要がない。
 このように圧電膜15が初期状態において大きな自発分極を有することは、例えば、後述する図8乃至図10を用いた説明するRFスパッタリング装置としての成膜装置を用いて圧電膜16を形成する際に、プラズマ又は電子が、接地電位(零電位)の影響を受けにくく、ターゲットと基板との間に安定して閉じ込められることで、基板に多量の電荷を蓄積させることができるためと考えられる。
 図7は、実施の形態の膜構造体に含まれる各層の膜がエピタキシャル成長した状態を説明する図である。なお、図7では、基板11、配向膜12、導電膜13、膜14及び圧電膜15の各層を、模式的に示している。
 基板11に含まれるSiの格子定数、配向膜12に含まれるZrO の格子定数、導電膜13に含まれるPtの格子定数、膜14に含まれるSROの格子定数、及び、圧電膜15に含まれるPZTの格子定数を、表1に示す。
[表1]


 表1に示すように、Siの格子定数は、0.543nmであり、ZrO の格子定数は、0.511nmであり、Siの格子定数に対するZrO の格子定数の不整合は6.1%と小さいため、Siの格子定数に対するZrO の格子定数の整合性がよい。そのため、図7に示すように、ZrO を含む配向膜12を、シリコン単結晶を含む基板11の(100)面よりなる主面としての上面11a上にエピタキシャル成長させることができる。従って、ZrO を含む配向膜12を、シリコン単結晶を含む基板11の(100)面上に、立方晶の結晶構造で(100)配向させることができ、配向膜12の結晶性を向上させることができる。
 配向膜12が、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向した酸化ジルコニウム膜12aを含むものとする。このような場合、酸化ジルコニウム膜12aは、酸化ジルコニウム膜12aの、シリコン基板よりなる基板11の主面としての上面11aに沿った<100>方向が、基板11自身の上面11aに沿った<100>方向と平行になるように、配向する。
 なお、酸化ジルコニウム膜12aの、基板11の上面11aに沿った<100>方向が、シリコン基板よりなる基板11自身の上面11aに沿った<100>方向と平行であるとは、酸化ジルコニウム膜12aの<100>方向が基板11自身の上面11aに沿った<100>方向と完全に平行な場合のみならず、酸化ジルコニウム膜12aの<100>方向と基板11自身の上面11aに沿った<100>方向とのなす角度が20°以下であるような場合を含む。また、酸化ジルコニウム膜12aのみならず、他の層の膜の面内の配向についても同様である。
 一方、表1に示すように、ZrO の格子定数は、0.511nmであり、Ptの格子定数は、0.392nmであるものの、Ptが平面内で45°回転すると、対角線の長さは、0.554nmとなり、ZrO の格子定数に対する当該対角線の長さの不整合は8.1%と小さいため、Ptを含む導電膜13を、ZrO を含む配向膜12の(100)面上にエピタキシャル成長させることができるとも考えられる。例えば上記特許文献2及び上記非特許文献1には、Pt膜ではないものの、Ptの格子定数と同程度の格子定数(0.381nm)を有するLSCOよりなるLSCO膜の面内における<100>方向が、シリコン基板の主面内における<110>方向と平行になるように、配向していることが報告されている。
 しかし、本発明者らは、ZrO の格子定数に対するPtの格子定数の不整合は26%と大きいものの、Ptを含む導電膜13を、Ptが平面内で45°回転せずに、シリコン基板上にエピタキシャル成長させることができることを初めて見出した。即ち、導電膜13が、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向した白金膜13aを含むものとする。このような場合、白金膜13aは、白金膜13aの、シリコン基板よりなる基板11の上面11aに沿った<100>方向が、基板11自身の上面11aに沿った<100>方向と平行になるように、配向する。このようにして、Ptを含む導電膜13を、ZrO を含む配向膜12の(100)面上に、立方晶の結晶構造で(100)配向させることができ、導電膜13の結晶性を向上させることができることが明らかになった。
 なお、ZrO を形成する際の条件、又は、Ptを形成する際の条件を調整することにより、Ptを含む導電膜13を、Ptが平面内で45°回転した状態で、即ち、基板11の主面内において、Ptの<100>方向がSiの<110>方向に沿った状態で、ZrO を含む配向膜12の(100)面上にエピタキシャル成長させることもできる。
 また、表1に示すように、Ptの格子定数は、0.392nmであり、SROの格子定数は、0.390~0.393nmであり、Ptの格子定数に対するPZTの格子定数の不整合は0.5%以下と小さいため、Ptの格子定数に対するSROの格子定数の整合性がよい。そのため、図7に示すように、SROを含む膜14を、Ptを含む導電膜13の(100)面上にエピタキシャル成長させることができる。従って、SROを含む膜14を、Ptを含む導電膜13の(100)面上に、擬立方晶表示で(100)配向させることができ、膜14の結晶性を向上させることができる。
 膜14が、擬立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向したSRO膜14aを含むものとする。このような場合、SRO膜14aは、SRO膜14aの、シリコン基板よりなる基板11の上面11aに沿った<100>方向が、基板11自身の上面11aに沿った<100>方向と平行になるように、配向する。
 また、表1に示すように、SROの格子定数は、0.390~0.393nmであり、PZTの格子定数は、0.411nmであり、SROの格子定数に対するPZTの格子定数の不整合は4.5~5.2%と小さいため、SROの格子定数に対するPZTの格子定数の整合性がよい。そのため、図7に示すように、PZTを含む圧電膜15を、SROを含む膜14の(100)面上にエピタキシャル成長させることができる。従って、PZTを含む圧電膜15を、SROを含む膜14の(100)面上に、正方晶表示で(001)配向又は擬立方晶表示で(100)配向させることができ、圧電膜15の結晶性を向上させることができる。
 圧電膜15が、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向したチタン酸ジルコン酸鉛膜15aを含むものとする。このような場合、チタン酸ジルコン酸鉛膜15aは、チタン酸ジルコン酸鉛膜15aの、シリコン基板よりなる基板11の上面11aに沿った<100>方向が、基板11自身の上面11aに沿った<100>方向と平行になるように、配向する。
 このように、本発明者らは、チタン酸ジルコン酸鉛を含む圧電膜15を、チタン酸ジルコン酸鉛が平面内で45°回転せずに、シリコン基板上にエピタキシャル成長させることができることを初めて見出した。これは、例えば上記特許文献2及び上記非特許文献1に記載されていた面内配向の関係と全く異なる関係である。
 なお、膜14と圧電膜15との間に、チタン酸ジルコン酸鉛を含む膜が形成されていてもよい。当該膜は、下記一般式(化8)で表され、且つ、擬立方晶表示で(100)配向した複合酸化物を含んでもよい。
Pb(Zr 1−vTi )O ・・・(化8)
ここで、vは、0≦v≦0.1を満たす。
 これにより、PZTを含む圧電膜15を、SROを含む膜14の(100)面上に、更に容易に正方晶表示で(001)配向又は擬立方晶表示で(100)配向させることができ、圧電膜15の結晶性を更に容易に向上させることができる。
 <成膜装置>
 次に、前述した、圧電膜の圧電特性を向上させ、且つ、当該圧電膜を用いた圧力センサの検出感度を向上させることができる膜構造体に含まれる圧電膜15のうち、圧電膜16を形成するための成膜装置について説明する。当該成膜装置は、チャンバー内でチタン酸ジルコン酸鉛を含有するターゲットの表面をスパッタすることにより基板の表面にチタン酸ジルコン酸鉛を含有する膜を成膜するスパッタリング装置である。
 なお、以下では、圧電膜16を形成するための成膜装置として、チャンバー内で基板の下面と対向配置されたターゲットの上面をスパッタすることにより基板の下面に膜を成膜する、所謂フェイスダウン型のスパッタリング装置に適用した例を説明する。しかし、圧電膜16を形成するための成膜装置は、チャンバー内で基板の上面と対向配置されたターゲットの下面をスパッタすることにより基板の上面に膜を成膜する、所謂フェイスアップ型のスパッタリング装置にも適用可能である。
 図8及び図9は、実施の形態の成膜装置を模式的に示す断面図である。図9は、図8の断面図のうち基板保持部25及び支持部26付近を拡大して示す。図10は、実施の形態の成膜装置が有する基板保持部を示す平面図である。
 図8に示すように、成膜装置20は、チャンバー21と、真空排気部22と、ガス供給部23及び24と、基板保持部25と、支持部26と、回転駆動部27と、基板加熱部28と、防着板29と、ターゲット保持部31と、電力供給部32と、を有する。基板保持部25は、基板SBを保持する。基板SBとして、例えば前述した基板11上に配向膜12、導電膜13及び膜14が形成された膜構造体を用いることができる。
 チャンバー21は、真空排気可能に設けられている。真空排気部22は、チャンバー21を真空排気する。ガス供給部23は、チャンバー21内に例えばアルゴン(Ar)ガス等の希ガスを供給する。ガス供給部24は、チャンバー21内に例えば酸素(O )ガス又は窒素(N )ガス等の原料ガスを供給する。
 チャンバー21は、例えば底板部21aと、側板部21bと、天板部21cと、を含む。側板部21bには、開口OP1が形成され、開口OP1には、チャンバー21を真空排気する真空排気部22が接続されている。真空排気部22として、例えばクライオポンプを用いることができる。
 図8に示す例では、天板部21cには、開口OP2が設けられ、チャンバー21は、開口OP2を気密に塞ぐ蓋部21dを含む。蓋部21dは、例えば側板部21eと、天板部21fと、を含む。チャンバー21内に形成された空間は、側板部21eと天板部21fとにより囲まれた空間と連通する。天板部21fには、開口OP3が設けられている。なお、図示は省略するが、側板部21bには、基板SBをチャンバー21内に搬入するための搬入口が形成されている。
 ガス供給部23は、流量制御器23aを介してガス供給管23bに接続され、ガス供給部23から供給された希ガスは、流量制御器23aで流量が調整され、ガス供給管23bからチャンバー21内に供給される。また、ガス供給部24は、流量制御器24aを介してガス供給管24bに接続され、ガス供給部24から供給された原料ガスは、流量制御器24aで流量が調整され、ガス供給管24bからチャンバー21内に供給される。なお、図8に示す例では、ガス供給管23bとガス供給管24bとが同一である場合を図示しているが、ガス供給管23bとガス供給管24bとは、別々に設けられていてもよい。
 基板保持部25は、チャンバー21内で基板SBを保持する。図8乃至図10に示すように、基板保持部25は、基板SBの外周部が基板保持部25と接触し、且つ、基板SBの中央部が基板保持部25と離隔した状態で、基板SBを保持する。
 基板保持部25が例えば平面視において基板SBの下面全面と重なる場合であって、且つ、基板保持部25が例えば基板SBの下面全面と接触している場合を考える。このような場合には、基板SBの中央部は、基板保持部25と熱的に絶縁されにくく、基板保持部25から熱的な影響を受けやすい。また、基板SBの中央部が基板保持部25の熱容量の影響を受けやすいので、基板SBの中央部の温度を制御しにくい。そのため、基板SBを基板加熱部28により加熱する際に、基板SBの中央部の実際の温度が目標温度からずれること等により、基板SBの表面に成膜される膜の結晶性等品質にばらつきが発生する。
 一方、本実施の形態では、基板SBの外周部は基板保持部25と接触するが、基板SBの中央部は基板保持部25と離隔している。このような場合には、基板SBの中央部は、基板保持部25と熱的に絶縁されやすく、基板保持部25から熱的な影響を受けにくい。また、基板SBの中央部が基板保持部25の熱容量の影響を受けにくいので、基板SBの中央部の温度を制御しやすい。そのため、基板SBを基板加熱部28により加熱する際に、基板SBの中央部の実際の温度が目標温度からずれることを防止又は抑制することができ、基板SBの表面に成膜される膜の結晶性等品質にばらつきが発生することを防止又は抑制することができる。
 前述したように、本実施の形態の成膜装置20は、チャンバー21内で基板SBの下面と対向配置されたターゲットTGの上面をスパッタすることにより基板SBの下面に膜を成膜する、所謂フェイスダウン型のスパッタリング装置である。このような場合には、基板保持部25が例えば平面視において基板SBの下面と重ならないことにより、基板SBの下面の中央部に膜が成膜できることになる。
 基板保持部25の形状は特に限定されないものの、基板保持部25は、絶縁性部材よりなり、且つ、平面視において基板SBを囲む絶縁性囲み部25aと、絶縁性部材よりなり、且つ、平面視において絶縁性囲み部25aから基板SBの中心側に向かってそれぞれ突出した複数の突出部25bと、を含むことが好ましい。即ち、基板保持部25は、所謂五徳の形状を有することが好ましい(図10(A)参照)。また、基板保持部25は、基板SBの下面の外周部(外縁部)が複数の突出部25bの各々の上面と接触した状態で、基板SBを保持することが好ましい。複数の突出部25bは、複数の突出部25bにより保持された基板SBの重心が、平面視において、複数の突出部25bを順に結んで形成される多角形の内部に配置されるように、配置されることが好ましい。
 一つの突出部25bが基板SBと接触する面積は小さいほど成膜時の基板SBへの熱的影響及び電気的影響を少なくすることができ、その接触面積は20mm 以下であることが好ましい。つまり、基板SBと突出部25bとの接触面積をできるだけ小さくすることで、熱絶縁と電気絶縁を同時に取ることができ、プラズマの電子を基板にチャージしながら、基板に蓄積された熱を逃がさないようにすることができる。
 突出部25bは、図10(B)~(D)に示す形状を有する。図10(B)は突出部25bの正面図であり、図10(C)は突出部25bの上面図であり、図10(D)は突出部25bの側面図である。突出部25bの角25b1は、尖っておらず、曲面を有する。角が尖っていると、その角に成膜された膜が剥がれ落ちやすくなるのに対し、角が曲面を有すると、その角に成膜された膜が剥がれにくくなり、パーティクルを減少させることができる。
 なお、突出部25bは絶縁性基板保持部と読み替えてもよいし、絶縁性囲み部25aと突出部25bを合わせて絶縁性基板保持部と読み替えてもよい。絶縁性囲み部25aは第3絶縁性部材と読み替えてもよい。
 このような場合、基板SBの中央部下には、基板保持部25のいずれの部分も配置されていないので、基板SBの中央部は、基板保持部25と熱的に更に絶縁されやすく、基板保持部25から熱的な影響を更に受けにくい。また、基板SBの中央部が基板保持部25の熱容量の影響を更に受けにくいので、基板SBの中央部の温度を更に制御しやすい。そのため、基板SBを基板加熱部28により加熱する際に、基板SBの中央部の実際の温度が目標温度からずれることを更に防止又は抑制することができ、基板SBの表面に成膜される膜の結晶性等品質にばらつきが発生することを更に防止又は抑制することができる。
 絶縁性囲み部25aの絶縁性部材、及び、複数の突出部25bの各々の絶縁性部材については、特に限定されないものの、例えば、溶融石英若しくは合成石英等の石英、又は、アルミナ(酸化アルミニウム)を用いることが好ましい。このうち、基板SBがシリコン基板よりなる場合には、基板SBと接触しても基板SBを汚染させないという観点から、複数の突出部25bの各々の絶縁性部材は、石英よりなることが、より好ましい。
 また、基板保持部25は、更に、導電性部材よりなり、絶縁性囲み部25aを囲む導電性囲み部25cを含んでもよい。導電性囲み部25cの内縁部には段差部25dが形成され、絶縁性囲み部25aの外縁部が段差部25dに保持されることにより、基板保持部25が形成されていてもよい。
 基板保持部25が保持する基板SBとして、平面視において円形形状を有するウェハよりなる基板SBを用いることができる。このとき、基板保持部25は、回転軸RA1が基板SBの表面の中心CN1(図10参照)を通っている状態で、基板SBを回転可能に保持する。
 なお、回転軸RA1が延在する方向を、鉛直方向と平行な方向とすることができる。このとき、基板保持部25に保持されている基板SBの表面は、水平面に平行である。
 支持部26は、チャンバー21に取り付けられ、且つ、チャンバー21内で基板保持部25を支持する。支持部26は、チャンバー21に取り付けられ、且つ、チャンバー21内で基板保持部25を支持する導電性部材(後述する導電性部材41及び42)を含む。支持部26は、基板SBの表面に垂直な回転軸RA1を中心として、基板保持部25と一体的に回転可能に設けられている。回転駆動部27は、支持部26を回転駆動する。
 図8及び図9に示す例では、支持部26は、導電性部材として、チャンバー21に取り付けられた導電性部材41と、導電性部材41に取り付けられた導電性部材42と、を含む。導電性部材41及び42は、回転軸RA1を中心として基板保持部25と一体的に回転可能に設けられている。回転駆動部27は、導電性部材41及び42を回転駆動する。
 なお、導電性部材42は導電性支持部と読み替えてもよいし、導電性部材42と導電性囲み部25cを合わせて導電性支持部と読み替えてもよい。また、導電性囲み部材25cは第1導電性部材と読み替えても良い。また、導電性部材42は第2導電性部材と読み替えてもよい
 導電性部材41は、円筒形状を有する基部41aと、円筒形状を有し、基部41aと一体的に回転可能に設けられ、且つ、基部41aの直径よりも小さな直径を有する軸部41bと、を含む。また、導電性部材41は、環状形状を有し、基部41aと軸部41bとを接続する接続部41cを含む。基部41a、軸部41b及び接続部41cは、一体的に形成され、基部41a、軸部41b及び接続部41cは、例えばステンレス鋼等の金属よりなる。
 導電性部材41は、軸部41bが蓋部21dの開口OP3から上方に突出するように設けられており、開口OP3から上方に突出した軸部41bは、例えば磁性流体シールよりなるシール部CE1により、開口OP3に気密に取り付けられている。また、軸部41bは、シール部CE1により、基板SBの表面に垂直な回転軸RA1を中心として回転可能に設けられている。そのため、軸部41bは、蓋部21d即ちチャンバー21に取り付けられている。このとき、軸部41bは、チャンバー21と電気的に接続されている。前述したように、チャンバー21は例えばステンレス鋼等の金属よりなり、接地されている。そのため、導電性部材41も接地されている。
 回転駆動部27は、例えばモータ27aと、ベルト27bと、プーリー27cと、を含む。軸部41bは、プーリー27c及びベルト27bを介してモータ27aの回転軸27dに接続されている。モータ27aの回転駆動力が、ベルト27b及びプーリー27cを介して、軸部41bに伝達されることにより、回転駆動部27は、回転軸RA1を中心として、導電性部材41を回転駆動する。
 導電性部材42は、円筒形状を有する基部42aと、円筒形状を有し、基部42aと一体的に回転可能に設けられ、且つ、基部42aの直径よりも小さな直径を有する軸部42bと、を含む。また、導電性部材42は、環状形状を有し、基部42aと軸部42bとを接続する接続部42cを含む。基部42a、軸部42b及び接続部42cは、一体的に形成され、基部42a、軸部42b及び接続部42cは、例えばステンレス鋼等の金属よりなる。
 基部42aは、基部42aの外周面が基部41aの内周面と対向するように、基部41aと同心に設けられている。軸部42bは、軸部42bの外周面が軸部41bの内周面と対向するように、軸部41bと同心に設けられている。接続部42cは、絶縁性部材51により接続部41cに固定されており、これにより、導電性部材42は、導電性部材41と一体的に回転可能に設けられている。絶縁性部材51として、例えばアルミナ(酸化アルミニウム)よりなる絶縁性部材を用いることができる。
 基部42aは、例えば導電性部材よりなるネジ43を用いて基板保持部25に固定されている。そのため、基板保持部25が導電性囲み部25cを有する場合、即ち導電性を有する場合には、導電性囲み部25c、即ち基板保持部25の電位は、基部42a、即ち導電性部材42の電位と等しくなる。或いは、基板保持部25が導電性囲み部25cを有しない場合、即ち導電性を有しない場合には、基板保持部25のネジ43と接触した部分の電位が、基部42a、即ち導電性部材42の電位と等しくなる。
 また、前述したように、導電性部材42が、例えば導電性部材よりなるネジ43を用いて基板保持部25に固定されていることにより、チャンバー21に取り付けられた導電性部材41は、絶縁性部材51、導電性部材42及びネジ43を介して、基板保持部25を支持することになる。このとき、導電性部材41と基板保持部25との間に、絶縁性部材51が介在することになる。
 また、導電性部材42は、ネジ43を介して基板保持部25を支持することになる。このとき、チャンバー21と導電性部材42との間に、絶縁性部材53が介在し、導電性部材42がチャンバー21に対して電気的に浮遊することになる。
 なお、導電性部材よりなるネジ43の周りには、絶縁性部材52が設けられている。絶縁性部材52として、例えばアルミナよりなる絶縁性部材を用いることができる。このとき、絶縁性部材52は、導電性部材41と基板保持部25との間に配置されているため、導電性部材41と基板保持部25との間に絶縁性部材52が介在する、ということもできる。
 導電性部材41と基板保持部25との間に絶縁性部材51が介在せず、導電性部材41と基板保持部25とが電気的に接触している場合を考える。このような場合であって、基板保持部25が導電性囲み部25cを有する場合、即ち導電性を有する場合には、導電性囲み部25c、即ち基板保持部25が接地された状態になり、導電性囲み部25c、即ち基板保持部25の電位が零電位になる。そのため、チャンバー21内にプラズマを発生させてターゲットTGをスパッタする際に、プラズマ又は電子が、接地電位(零電位)の影響を受けやすく、ターゲットTGと基板SBとの間に安定して閉じ込められにくい。従って、例えばチタン酸ジルコン酸鉛のような圧電膜を形成する場合には、成膜中の圧電膜の電荷の分布が一定になりにくく、結晶性等の膜の品質が向上しにくい。
 また、基板保持部25が導電性囲み部25cを有しない場合、即ち導電性を有しない場合であっても、プラズマ又は電子が、依然として接地電位(零電位)の影響を受けやすく、依然としてターゲットTGと基板SBとの間に安定して閉じ込められにくい。
 一方、本実施の形態では、導電性部材41と基板保持部25との間に絶縁性部材52が介在している。このような場合であって、基板保持部25が導電性囲み部25cを有する場合、即ち導電性を有する場合には、導電性囲み部25c、即ち基板保持部25が電気的に浮遊した状態になる。そのため、チャンバー21内にプラズマを発生させてターゲットTGをスパッタする際に、プラズマ又は電子が、接地電位(零電位)の影響を受けにくく、ターゲットTGと基板SBとの間に安定して閉じ込められやすい。従って、例えばチタン酸ジルコン酸鉛のような圧電膜を形成する場合には、成膜中の圧電膜の電荷の分布が一定になりやすく、結晶性等の膜の品質が向上しやすい。
 なお、絶縁性部材53は第1絶縁性部材と読み替えてもよいし、絶縁性部材52は第1絶縁性部材と読み替えてもよいし、絶縁性部材53と絶縁性部材52を合わせて第1絶縁性部材と読み替えてもよい。
 また、基板保持部25が導電性囲み部25cを有しない場合、即ち導電性を有しない場合であっても、導電性部材41と基板保持部25との間に絶縁性部材52が介在しない場合に比べれば、プラズマ又は電子が、接地電位(零電位)の影響を受けにくく、ターゲットTGと基板SBとの間に安定して閉じ込められやすい。
 なお、ある部材が導電性を有するとは、その部材の電気抵抗率が例えば10 −6Ωm以下である場合を意味する。一方、ある部材が絶縁性を有するとは、その部材の電気抵抗率が例えば10 Ωm以上である場合を意味する。
 前述したように、チャンバー21と導電性部材42との間には、絶縁性部材52,53が介在し、導電性部材42は、電気的に浮遊している。
 チャンバー21と導電性部材42との間に絶縁性部材53が介在せず、チャンバー21と導電性部材42とが電気的に接触している場合を考える。このような場合であって、基板保持部25が導電性囲み部25cを有する場合、即ち導電性を有する場合には、導電性囲み部25c、即ち基板保持部25が接地された状態になり、導電性囲み部25c、即ち基板保持部25の電位が零電位になる。そのため、チャンバー21内にプラズマを発生させてターゲットをスパッタする際に、プラズマ又は電子が、接地電位(零電位)の影響を受けやすく、ターゲットTGと基板SBとの間に安定して閉じ込められにくい。
 また、基板保持部25が導電性囲み部25cを有しない場合、即ち導電性を有しない場合であっても、プラズマ又は電子が、依然として零電位の影響を受けやすく、依然としてターゲットTGと基板SBとの間に安定して閉じ込められにくい。
 一方、本実施の形態では、チャンバー21と導電性部材42との間に絶縁性部材53が介在し、導電性部材42が電気的に浮遊している。このような場合であって、基板保持部25が導電性囲み部25cを有する場合、即ち導電性を有する場合には、導電性囲み部25c、即ち基板保持部25が電気的に浮遊した状態になる。そのため、チャンバー21内にプラズマを発生させてターゲットTGをスパッタする際に、プラズマ又は電子が、接地電位(零電位)の影響を受けにくく、ターゲットTGと基板SBとの間に安定して閉じ込められやすい。従って、例えばチタン酸ジルコン酸鉛のような圧電膜を形成する場合には、成膜中の圧電膜の電荷の分布が一定になりやすく、結晶性等の膜の品質が向上しやすい。
 また、基板保持部25が導電性囲み部25cを有しない場合、即ち導電性を有しない場合であっても、チャンバー21と導電性部材42との間に絶縁性部材53が介在しない場合に比べれば、プラズマ又は電子が、接地電位(零電位)の影響を受けにくく、ターゲットTGと基板SBとの間に安定して閉じ込められやすい。
 なお、絶縁性部材53は、例えば軸部41bの上端部と軸部42bとの間、軸部41bの下端部と軸部42bの下端部との間、及び、接続部41cの下面と接続部42cの上面との間それぞれに配置されているとよい。絶縁性部材53として、例えばPEEK(Poly Ether Ether Keton)樹脂又はアルミナよりなる絶縁性部材を用いることができる。
 また、導電性部材42の軸部42bを囲むスリップリング44が設けられていてもよい。スリップリング44の内周面は、軸部42bの外周面に接触する。このような場合、スリップリング44を介して軸部42bの電位を自在に制御することができるので、導電性部材42の電位が一定の電位に等しくなるように制御することもできる。
 図8及び図9に示すように、支持部26は、基板保持部25を支持する導電性部材45を含んでもよい。導電性部材45は、円筒形状を有する基部45aと、円筒形状を有し、基部45aと一体的に回転可能に設けられ、且つ、基部45aの直径よりも小さな直径を有する軸部45bと、を含む。また、導電性部材45は、環状形状を有し、基部45aと軸部45bとを接続する接続部45cを含む。基部45a、軸部45b及び接続部45cは、一体的に形成され、基部45a、軸部45b及び接続部45cは、例えばステンレス鋼等の金属よりなる。
 図8及び図9に示す例では、基部45aは、基部45aの外周面が基部42aの内周面と対向するように、基部42a及び基部41aと同心に設けられている。軸部45bは、軸部45bの外周面が軸部42bの内周面と対向するように、軸部42b及び軸部41bと同心に設けられている。接続部45cは、絶縁性部材54により接続部42c及び接続部41cに固定されており、これにより、導電性部材45は、導電性部材42及び導電性部材41と一体的に回転可能に設けられている。
 また、前述したように、導電性部材42が、例えば導電性部材よりなるネジ43を用いて基板保持部25に固定されていることにより、導電性部材45は、絶縁性部材51、導電性部材42及びネジ43を介して、基板保持部25を支持することになる。このとき、導電性部材45と基板保持部25との間に、絶縁性部材52が介在することになる。
 また、前述したように、導電性部材よりなるネジ43の周りには、絶縁性部材52が設けられている。このとき、絶縁性部材52は、導電性部材45と基板保持部25との間に配置されているため、導電性部材45と基板保持部25との間に絶縁性部材52が介在する、ということもできる。
 なお、軸部42bの上端部と軸部45bとの間、軸部42bの下端部と軸部45bの下端部との間、及び、接続部42cの下面と接続部45cの上面との間には、絶縁性部材54が介在してもよい。絶縁性部材54として、例えばPEEK樹脂又はアルミナよりなる絶縁性部材を用いることができる。
 基板加熱部28は、基板SBを加熱する。基板加熱部28は、基板保持部25に保持されている基板SBの上面と対向配置され、且つ、支持部26と一体的に回転可能に設けられている。基板加熱部28として、例えば赤外線ランプを備えたランプユニットを用いることができる。
 防着板29は、チャンバー21に取り付けられた導電性部材よりなる。防着板29は、成膜装置20が、ターゲットTGの表面をスパッタすることにより基板SBの表面に成膜材料を付着させて膜を成膜する場合において、チャンバー21内の成膜材料を付着させたくない部分に成膜材料が付着することを防止するものである。本実施の形態では、防着板29は、平面視において、基板保持部25に保持されている基板SBの周囲に配置されている部分に成膜材料が付着することを防止する。図8に示す例では、防着板29は、基板保持部25に成膜材料が付着することを防止する。防着板29を構成する導電性部材として、ステンレス鋼よりなる導電性部材を用いることができる。これにより、例えば防着板29の温度を例えば冷却水が通水された冷却管29aにより容易に調整することができるので、基板保持部25に保持された基板SBの温度に防着板29が与える影響を低減することができる。
 また、防着板29は基板SBから30mm以内(好ましくは25mm以内、更に好ましくは20mm以内)の距離に配置されている。
 また、防着板29を水冷することが好ましい理由は次のとおりである。防着板を水冷しないと防着板に付着した膜の硬度が高くなってしまい、剥離しやすくなるのに対し、防着板29を水冷すると防着板29の表面に膜が成長する時の熱エネルギーが下がるため、膜応力も小さくなり、付着した膜が剥離しにくくなる。その結果、成膜装置のメンテナンス期間を延ばすことができる。
 なお、防着板29は、導電性防着板と読み替えてもよい。
 また、チャンバー21と防着板29との間には、絶縁性部材55が介在しており、防着板29は、電気的に浮遊している。なお、チャンバー21と絶縁性部材55との間には、導電性部材46が介在し、絶縁性部材55と防着板29との間には、導電性部材47が介在し、導電性部材46と導電性部材47とは、絶縁性部材55を介した状態で、絶縁性部材よりなるネジ56を用いて締結されていてもよい。
 チャンバー21と防着板29との間に絶縁性部材55が介在せず、チャンバー21と防着板29とが電気的に接触している場合を考える。このような場合には、防着板29が接地された状態になり、防着板29の電位が零電位になる。そのため、チャンバー21内にプラズマを発生させてターゲットTGをスパッタする際に、プラズマ又は電子が、接地電位(零電位)の影響を受けやすく、ターゲットTGと基板SBとの間に安定して閉じ込められにくい。従って、例えばチタン酸ジルコン酸鉛のような圧電膜を形成する場合には、成膜中の圧電膜の電荷の分布が一定になりにくく、結晶性等の膜の品質が向上しにくい。
 また、基板SBから30mm以内の距離に配置した防着板29を接地電位にして基板SBに圧電膜を成膜すると、基板SBの端に位置する圧電膜が白濁することがある。防着板29を30mmより遠くに離せば防着板が接地電位でも圧電膜は白濁しないが、そのように離れた位置にある防着板では、防着板としての機能を十分に果たすことができない。
 なお、絶縁性部材55は、第2絶縁性部材と読み替えてもよい。
 一方、本実施の形態では、チャンバー21と防着板29との間に絶縁性部材55が介在している。このような場合には、防着板29が電気的に浮遊した状態になる。そのため、チャンバー21内にプラズマを発生させてターゲットTGをスパッタする際に、プラズマ又は電子が、接地電位(零電位)の影響を受けにくく、ターゲットTGと基板SBとの間に安定して閉じ込められやすい。従って、例えばチタン酸ジルコン酸鉛のような圧電膜を形成する場合には、成膜中の圧電膜の電荷の分布が一定になりやすく、結晶性等の膜の品質が向上しやすい。
 このように、本実施の形態の成膜装置20は、基板SBの付近に(具体的には基板SBからの距離が30mm以下、好ましくは25mm以下、より好ましくは20mm以下の範囲に)導電性部材を配置しないか、又は、基板SBの付近に導電性部材を配置する場合でも電気的に浮遊した状態にすることで、ターゲットTGと基板SBとの間にプラズマ又は電子を安定して閉じ込めるようにしたものである。これにより、本発明者らは、例えばチタン酸ジルコン酸鉛のような圧電膜を形成する場合に、成膜中の圧電膜の電荷の分布が一定になりやすく、結晶性等の膜の品質が向上し、形成された圧電膜の強誘電性及び圧電性が優れていることを、初めて見出した。これにより、チタン酸ジルコン酸鉛を含む圧電膜を成膜する成膜装置において、結晶性等の品質が良好な圧電膜を成膜することができる。
 また、本実施の形態によれば、チャンバー21に対して電気的に浮遊させた支持部26によって基板保持部25を支持し、その基板保持部25に保持した基板SBを支持部26に対して電気的に浮遊させている。このように二重に浮遊させることで、成膜時に基板SBに蓄積された電荷を接地電位に逃がさないようにすることができ。これにより、基板に多量の電荷を蓄積させることができ、その結果、結晶性が良好な膜を成膜することが可能となる。
 別言すれば、基板SBを支持部26から浮遊させることで、プラズマの電子による基板からの電子漏れを防ぐことができる。基板に電荷が多量に蓄積されると、プラズマは基板から電荷を接地電位に逃がしたり、異常放電させる性質があるため、それをなるべく抑えることで結晶性の良好な膜を成膜できる。
 また、接地電位に接続された導電性部材を基板SBから離すことで、基板に成膜される圧電膜の白濁を無くすことが可能となる。
 ターゲット保持部31は、チャンバー21内で、ターゲットTGを保持する。また、ターゲットTGは、バッキングプルートBP1と、バッキングプレートBP1の一方の側に固定されたターゲット材TM1と、を含む。ターゲット保持部31に保持されているターゲットTGの表面は、基板SBの表面と対向している。図8に示す例では、ターゲット保持部31は、基板保持部25よりも下方に設けられ、ターゲット保持部31に保持されているターゲットTGの上面が基板保持部25に保持されている基板SBの下面と対向している。
 電力供給部32は、ターゲットTGに、高周波電力を供給する。電力供給部32によりターゲットTGに高周波電力が供給されることにより、ターゲットTGがスパッタされる。即ち、本実施の形態の成膜装置20は、RF(Radio Frequency)スパッタリング装置である。
 電力供給部32は、高周波電源32aと、整合器32bと、を有する。好適には、高周波電源32aは、高周波電力をパルス状に変調するパルス変調機能付き高周波電源である。高周波電源32aは、整合器32bに接続され、整合器32bは、ターゲットTGのバッキングプレートBP1に接続されている。なお、本実施の形態では、電力供給部32は、高周波電力を、ターゲット保持部31を介してターゲットTGに供給するが、電力供給部32は、高周波電力を、ターゲットTGに直接供給してもよい。
 また、成膜装置は、電力供給部32により高周波電力を供給する際にターゲットTGに発生する直流成分である電圧V DCを−200V以上−80V以下に制御するV DC制御部33を有してもよい。V DC制御部33は、V DCセンサを有し、電力供給部32に電気的に接続されている。
 好適には、成膜装置20は、磁石部34と、磁石回転駆動部35と、を有する。磁石部34は、例えば回転軸RA1を中心として回転可能に設けられている。磁石回転駆動部35は、回転軸RA1を中心として磁石部34を回転駆動し、回転駆動されている磁石部34により、ターゲットTGに磁界を印加する。即ち、本実施の形態の成膜装置は、RFマグネトロンスパッタリング装置である。また、磁石部34又は磁石回転駆動部35は、ターゲットTGに磁界を印加する磁界印加部である。
 好適には、磁界が印加されているターゲットTGの表面(図8に示す例では上面)の水平磁場は、140~220Gである。ターゲットTGの表面の水平磁場を220Gより大きくすると、ターゲットTGの表面のエネルギーが高くなりすぎ、基板上の膜全体が白濁してしまい、140Gより小さくするとターゲットTGの表面エネルギーが小さく成り過ぎて、成膜レートが低下してしまって実用的でなくなり、結晶性も低下するためである。ターゲットTGの表面の水平磁場が140G以上の場合、ターゲットTGの表面における磁束密度が140G未満の場合に比べて、プラズマ又は電子が、ターゲットTGの表面近傍に安定して閉じ込められる。一方、ターゲットTGの表面の水平磁場が220G以下の場合、ターゲットTGの表面の水平磁場が220Gを超える場合に比べて、プラズマ又は電子が、ターゲットTGの表面に集中しすぎず、適切な密度で閉じ込められる。なお、ターゲットTGの表面における磁界は、ターゲットTGの表面に沿っていることが好ましい。
 <膜構造体の製造方法>
 次に、本実施の形態の膜構造体の製造方法を説明する。図11乃至図14は、実施の形態の膜構造体の製造工程中の断面図である。
 まず、図11に示すように、基板11を用意する(ステップS1)。ステップS1では、例えばシリコン(Si)単結晶よりなるシリコン基板である基板11を用意する。シリコン単結晶よりなる基板11は、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)面よりなる主面としての上面11aを有する。基板11がシリコン基板である場合、基板11の上面11a上には、SiO 膜などの酸化膜が形成されていてもよい。
 なお、基板11として、シリコン基板以外の各種の基板を用いることができ、例えばSOI(Silicon on Insulator)基板、シリコン以外の各種の半導体単結晶よりなる基板、サファイアなど各種の酸化物単結晶よりなる基板、又は、表面にポリシリコン膜が形成されたガラス基板よりなる基板等を用いることができる。
 図11に示すように、シリコン単結晶よりなる基板11の(100)面よりなる上面11a内で互いに直交する2つの方向を、X軸方向及びY軸方向とし、上面11aに垂直な方向をZ軸方向とする。
 次に、図12に示すように、基板11上に、配向膜12を形成する(ステップS2)。以下では、ステップS2において、電子ビーム蒸着法を用いて配向膜12を形成する場合を例示して説明するが、例えばスパッタリング法など各種の方法を用いて形成することができる。
 ステップS2では、まず、基板11を一定の真空雰囲気中に配置した状態で、基板11を例えば700℃に加熱する。
 ステップS2では、次に、ジルコニウム(Zr)単結晶の蒸着材料を用いた電子ビーム蒸着法によりZrを蒸発させる。このとき、蒸発したZrが例えば700℃に加熱された基板11上で酸素と反応することにより、酸化ジルコニウム(ZrO )膜となって成膜される。そして、単層膜としてのZrO 膜よりなる配向膜12が形成される。
 配向膜12は、シリコン単結晶よりなる基板11の(100)面よりなる主面としての上面11a上に、エピタキシャル成長する。配向膜12は、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向した酸化ジルコニウム(ZrO )を含む。即ち、シリコン単結晶よりなる基板11の、(100)面よりなる上面11a上に、(100)配向した酸化ジルコニウム(ZrO )を含む単層膜よりなる配向膜12が、形成される。
 前述した図11を用いて説明したように、シリコン単結晶よりなる基板11の(100)面よりなる上面11a内で互いに直交する2つの方向を、X軸方向及びY軸方向とし、上面11aに垂直な方向をZ軸方向とする。このとき、ある膜がエピタキシャル成長するとは、その膜が、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のいずれの方向にも配向することを意味する。
 配向膜12が、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向した酸化ジルコニウム膜12a(図7参照)を含むものとする。このような場合、酸化ジルコニウム膜12aは、酸化ジルコニウム膜12aの、シリコン基板よりなる基板11の主面としての上面11aに沿った<100>方向が、基板11自身の上面11aに沿った<100>方向と平行になるように、配向する。
 配向膜12の膜厚は、2~100nmであることが好ましく、10~50nmであることがより好ましい。このような膜厚を有することにより、エピタキシャル成長し、単結晶に極めて近い配向膜12を形成することができる。
 次に、図4に示すように、導電膜13を形成する(ステップS3)。
 このステップS3では、まず、配向膜12上にエピタキシャル成長した、下部電極の一部としての導電膜13を形成する。導電膜13は、金属よりなる。金属よりなる導電膜13として、例えば白金(Pt)を含む導電膜が用いられる。
 導電膜13として、Ptを含む導電膜を形成する場合、配向膜12上に、450~600℃の温度で、スパッタリング法により、エピタキシャル成長した導電膜13を、下部電極の一部として形成する。Ptを含む導電膜13は、配向膜12上にエピタキシャル成長する。また、導電膜13に含まれるPtは、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向する。
 導電膜13が、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向した白金膜13a(図7参照)を含むものとする。このような場合、白金膜13aは、白金膜13aの、シリコン基板よりなる基板11の上面11aに沿った<100>方向が、基板11自身の上面11aに沿った<100>方向と平行になるように、配向する。
 なお、金属よりなる導電膜13として、白金(Pt)を含む導電膜に代えて、例えばイリジウム(Ir)を含む導電膜を用いることもできる。
 このステップS3では、次に、導電膜13を450~600℃の温度で熱処理する。具体的には、導電膜13を450~600℃の温度でスパッタリング法により形成した後、引き続いて450~600℃の温度に10~30分間保持して熱処理することが好ましい。
 導電膜13を熱処理する温度が450℃未満の場合、温度が低すぎるため、導電膜13に含まれる白金の結晶性を向上させることができず、導電膜13上に膜14を介して形成される圧電膜15の結晶性を向上させることができない。導電膜13を熱処理する温度が600℃を超える場合、温度が高すぎ、導電膜13に含まれる白金の結晶粒が成長するために、却って白金の結晶性を向上させることができず、導電膜13上に膜14を介して形成される圧電膜15の結晶性を向上させることができない。一方、導電膜13を450~600℃の温度で熱処理する場合、導電膜13に含まれる白金の結晶性を向上させることができ、導電膜13上に膜14を介して形成される圧電膜15の結晶性を向上させることができる。
 また、導電膜13を450~600℃の温度で熱処理する場合、10~30分間保持して熱処理することが好ましい。導電膜13を熱処理する時間が10分未満の場合、時間が短すぎ、導電膜13に含まれる白金の結晶性を向上させることができず、導電膜13上に膜14を介して形成される圧電膜15の結晶性を向上させることができない。導電膜13を熱処理する時間が30分を超える場合、時間が長すぎ、導電膜13に含まれる白金の結晶粒が成長するために、却って白金の結晶性を向上させることができず、導電膜13上に膜14を介して形成される圧電膜15の結晶性を向上させることができない。
 次に、図13に示すように、膜14を形成する(ステップS4)。このステップS4では、上記一般式(化4)で表される複合酸化物を含む膜14を、導電膜13上に、形成する。上記一般式(化4)で表される複合酸化物として、例えばチタン酸ストロンチウム(STO)、チタン酸ルテニウム酸ストロンチウム(STRO)、又はルテニウム酸ストロンチウム(SRO)を含む導電膜を形成することができる。上記一般式(化4)で表された複合酸化物としてSROを含む導電膜を形成する場合、ステップS4では、導電膜13上に、下部電極の一部としての導電膜としての膜14を形成することになる。なお、上記一般式(化4)において、zは、0≦z≦1を満たす。
 膜14として、STO、STRO又はSROを含む導電膜を形成する場合、導電膜13上に、600℃程度の温度で、スパッタリング法により、エピタキシャル成長した膜14を、下部電極の一部として形成する。STO、STRO又はSROを含む膜14は、導電膜13上にエピタキシャル成長する。また、膜14に含まれるSTO、STRO又はSROは、擬立方晶表示又は立方晶表示で(100)配向する。
 膜14が、擬立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向したSRO膜14a(図7参照)を含むものとする。このような場合、SRO膜14aは、SRO膜14aの、シリコン基板よりなる基板11の上面11aに沿った<100>方向が、基板11自身の上面11aに沿った<100>方向と平行になるように、配向する。
 また、スパッタリング法に代え、例えばゾルゲル法などの塗布法により、膜14を形成することができる。このような場合、ステップS4では、まず、膜14上に、ストロンチウム及びルテニウム、ストロンチウム、チタン及びルテニウム、又は、ストロンチウム及びチタンを含有する溶液を塗布することにより、上記一般式(化4)で表される複合酸化物の前駆体を含む膜を形成する。また、塗布法により膜14を形成する場合、ステップS4では、次に、膜を熱処理して前駆体を酸化して結晶化することにより、上記一般式(化4)で表される複合酸化物を含む膜14を形成する。
 次に、図14に示すように、圧電膜16を形成する(ステップS5)。このステップS5は、上記一般式(化6)で表され、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)よりなる複合酸化物を含む圧電膜16を、膜14上に、スパッタリング法により形成する。ここで、上記一般式(化6)において、xは、0.32≦x≦0.52を満たす。
 このうち、xが0.32≦x≦0.48を満たす場合、圧電膜16に含まれるPZTは、本来菱面体晶の結晶構造を有する組成ではあるものの、主として基板11からの拘束力等により、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向しやすくなる。そして、PZTを含む圧電膜16は、膜14上にエピタキシャル成長する。なお、xが0.48<x≦0.52を満たす場合、圧電膜16に含まれるPZTは、本来正方晶の結晶構造を有する組成であるため、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向する。そして、PZTを含む圧電膜16は、膜14上にエピタキシャル成長する。これにより、圧電膜16に含まれるチタン酸ジルコン酸鉛の分極軸を、上面11aに略垂直に配向させることができるので、圧電膜16の圧電特性を向上させることができる。
 圧電膜16が、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向したチタン酸ジルコン酸鉛膜16a(図7参照)を含むものとする。このような場合、チタン酸ジルコン酸鉛膜16aは、チタン酸ジルコン酸鉛膜16aの、シリコン基板よりなる基板11の上面11aに沿った<100>方向が、基板11自身の上面11aに沿った<100>方向と平行になるように、配向する。
 例えば、圧電膜16をスパッタリング法により形成する際に、プラズマによって圧電膜16に含まれる複数の結晶粒16g(図5参照)の各々を分極させることができる。したがって、成膜された圧電膜16に含まれる複数の結晶粒16gの各々は、自発分極を有する。また、複数の結晶粒16gの各々が有する自発分極は、圧電膜16の厚さ方向に平行な分極成分P1(図5参照)を含む。そして、複数の結晶粒16gの各々が有する自発分極に含まれる分極成分P1は、互いに同じ方向を向いている。その結果、形成された圧電膜16は、分極処理をする前から、圧電膜16全体として、自発分極を有する。
 即ち、ステップS5では、圧電膜16をスパッタリング法により形成する際に、プラズマによって圧電膜16を分極させることができる。その結果、図6を用いて説明したように、本実施の形態の膜構造体10を圧電素子として使用する場合、使用前に、圧電膜16に分極処理を施す必要がない。
 また、ステップS5では、スパッタリング法により圧電膜16を形成する際に、例えば、圧電膜16内にスパッタ粒子及びアルゴン(Ar)ガスが入射されて圧電膜16が膨張することにより、圧電膜16は、圧縮応力を有する。
 好適には、ステップS5では、425~475℃の温度で、且つ、0.29nm/s以下の成膜速度で、複合酸化物としてのPZTを含む膜を成膜し、成膜された膜よりなる圧電膜16を形成する。このような条件により、上記式(数1)及び式(数2)を満たす膜構造体を容易に得ることができる。
 或いは、好適には、ステップS5では、425~475℃の温度で、且つ、0.29nm/s以下の第1成膜速度で、複合酸化物としてのPZTを含む下層膜を成膜する。そして、その下層膜の上に、425~475℃の温度で、且つ、第1成膜速度よりも小さい第2成膜速度で、複合酸化物としてのPZTを含む上層膜を成膜し、成膜された下層膜及び上層膜よりなる圧電膜16を形成する。このような条件により、上記式(数1)及び式(数2)を満たす膜構造体を容易に得ることができる。
 ここで、前述した図8乃至図10を用いて説明した成膜装置20を用いて圧電膜16を成膜する成膜方法を説明する。
 まず、チャンバー21内でターゲットTGをターゲット保持部31により保持する。
 次に、チャンバー21内で基板SBを基板保持部25により保持する。基板SBとして、例えば前述した基板11上に配向膜12、導電膜13及び膜14が形成された膜構造体を用いることができる。基板保持部25は、チャンバー21に取り付けられた支持部26により支持され、支持部26と基板保持部25との間、又は、チャンバー21と支持部26との間に、絶縁性部材51が介在している。また、基板保持部25は、基板SBの外周部が基板保持部25と接触し、且つ、基板SBの中央部が基板保持部25と離隔した状態で、基板SBを保持する。支持部26は、導電性部材41及び42を含む。導電性部材41及び42は、回転軸RA1を中心として基板保持部25と一体的に回転可能に設けられている。導電性部材42は、電気的に浮遊している。これにより、プラズマ又は電子が、接地電位(零電位)の影響を受けにくく、ターゲットTGと基板SBとの間に安定して閉じ込められやすい。
 基板保持部25は、絶縁性部材よりなり、且つ、平面視において基板SBを囲む絶縁性囲み部25aと、絶縁性部材よりなり、且つ、平面視において絶縁性囲み部25aから基板SBの中心側に向かってそれぞれ突出した複数の突出部25bと、を含む。基板保持部25は、基板SBの下面の外周部(外縁部)が複数の突出部25bの各々の上面と接触した状態で、基板SBを保持する。これにより、基板SBを基板加熱部28により加熱する際に、基板SBの中央部の実際の温度が目標温度からずれることを防止又は抑制することができる。
 次に、基板SBを基板加熱部28により加熱し、導電性部材41及び42を回転駆動部27により回転駆動し、ターゲットTGに磁石部34により磁界を印加し、且つ、ターゲットTGに電力供給部32により高周波電力を供給した状態で、チャンバー21内でターゲットTGの表面をスパッタすることにより基板SBの表面に圧電膜16を成膜する。
 なお、成膜装置20は、ターゲットTGの表面をスパッタすることにより基板SBの表面に成膜材料を付着させて圧電膜16を成膜するものであるが、その際、チャンバー21に取り付けられた導電性部材よりなる防着板29により、基板保持部25に成膜材料が付着することを防止する。この防着板29とチャンバー21との間には、絶縁性部材55が介在し、防着板29は、電気的に浮遊している。これにより、プラズマ又は電子が、接地電位(零電位)の影響を受けにくく、ターゲットTGと基板SBとの間に安定して閉じ込められやすい。
 次に、図1に示すように、圧電膜17を形成する(ステップS6)。このステップS6では、上記一般式(化7)で表され、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)よりなる複合酸化物を含む圧電膜17を、圧電膜16上に、例えばゾルゲル法などの塗布法により形成する。以下では、ゾルゲル法により圧電膜17を形成する方法について説明する。
 ステップS6では、まず、圧電膜16上に、鉛、ジルコニウム及びチタンを含有する溶液を塗布することにより、PZTの前駆体を含む膜を形成する。なお、鉛、ジルコニウム及びチタンを含有する溶液を塗布する工程を、複数回繰り返してもよく、これにより、互いに積層された複数の膜を含む膜を形成する。
 ステップS6では、次に、膜を熱処理して前駆体を酸化して結晶化することにより、PZTを含む圧電膜17を形成する。ここで、上記一般式(化7)において、yは、0.32≦y≦0.48を満たす。
 このうち、yが0.32≦y≦0.48を満たす場合、圧電膜17に含まれるPZTは、本来菱面体晶の結晶構造を有する組成ではあるものの、主として基板11からの拘束力等により、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向しやすくなる。そして、PZTを含む圧電膜17は、圧電膜16上にエピタキシャル成長する。なお、yが0.48<y≦0.52を満たす場合、圧電膜17に含まれるPZTは、本来正方晶の結晶構造を有する組成であるため、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向する。そして、PZTを含む圧電膜17は、圧電膜16上にエピタキシャル成長する。これにより、圧電膜17に含まれるチタン酸ジルコン酸鉛の分極軸を、上面11aに略垂直に配向させることができるので、圧電膜17の圧電特性を向上させることができる。
 圧電膜17が、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向したチタン酸ジルコン酸鉛膜17a(図7参照)を含むものとする。このような場合、チタン酸ジルコン酸鉛膜17aは、チタン酸ジルコン酸鉛膜17aの、シリコン基板よりなる基板11の上面11aに沿った<100>方向が、基板11自身の上面11aに沿った<100>方向と平行になるように、配向する。
 正方晶の結晶構造を有するPZTが(001)配向している場合、[001]方向に平行な分極方向と、圧電膜15の厚さ方向に平行な電界方向とが互いに平行になるので、圧電特性が向上する。即ち、正方晶の結晶構造を有するPZTでは、[001]方向に沿った電界が印加される場合に、大きな絶対値の圧電定数d 33及びd 31が得られる。そのため、圧電膜15の圧電定数を、更に大きくすることができる。なお、本願明細書では、圧電定数d 31については、本来その符号は負になるものの、符号を省略して絶対値で表記する場合がある。
 ステップS6では、例えば、熱処理の際に溶液中の溶媒が蒸発することにより、又は、前駆体が酸化されて結晶化される際に膜が収縮することにより、圧電膜17は、引っ張り応力を有する。
 このようにして、圧電膜16及び圧電膜17を含む圧電膜15が形成され、図1に示す膜構造体10が形成される。即ち、ステップS5及びステップS6は、導電膜13上に、膜14を介して、正方晶表示で(001)配向又は擬立方晶表示で(100)配向し、エピタキシャル成長したチタン酸ジルコン酸鉛を含む圧電膜15を形成する工程に含まれる。
 次に、θ−2θ法を用いたX線回折測定により、圧電膜15の回折パターンを測定する(ステップS7)。
 圧電膜15が、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向したPZTを含む場合、本実施の形態では、CuKα線を用いたθ−2θ法による圧電膜15のX線回折パターンにおいて、チタン酸ジルコン酸鉛の正方晶表示における(004)面の回折ピークの回折角度を2θ 004としたとき、2θ 004は、下記式(数1)を満たす。
2θ 004≦96.5°・・・(数1)
 これにより、チタン酸ジルコン酸鉛の正方晶表示における(004)面の間隔が長くなる。或いは、圧電膜15中における、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向したチタン酸ジルコン酸鉛の含有率を、圧電膜15中における、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向したチタン酸ジルコン酸鉛の含有率に比べて大きくすることができる。従って、圧電膜15に含まれる複数の結晶粒の各々における分極方向を揃えることができるので、圧電膜15の圧電特性を向上させることができる。
 一方、圧電膜15が、擬立方晶表示で(100)配向したPZTを含む場合、本実施の形態では、CuKα線を用いたθ−2θ法による圧電膜15のX線回折パターンにおいて、チタン酸ジルコン酸鉛の擬立方晶表示における(400)面の回折ピークの回折角度を2θ 400としたとき、2θ 400は、上記式(数1)において、2θ 004に代えて2θ 400と置き換えた式(2θ 400≦96.5°)を満たすことになる。
 また、本実施の形態では、圧電膜15の比誘電率をε としたとき、ε は、下記式(数2)を満たす。
ε ≦450・・・(数2)
 これにより、膜構造体10を、例えば圧電効果を用いた圧力センサとして用いる場合に、検出感度を向上させることができ、当該圧力センサの検出回路を容易に設計することができる。或いは、膜構造体10を、例えば逆圧電効果を用いた超音波振動子として用いる場合に、発振回路を容易に設計することができる。
 なお、圧電膜17を形成した後、圧電膜17上に、上部電極としての導電膜18(図2参照)を形成してもよい(ステップS8)。これにより、圧電膜17に厚さ方向に電界を印加することができる。
 また、導電膜18を形成した後、導電膜13と導電膜18との間に1kHzの周波数を有する交流電圧を印加して比誘電率を測定してもよい(ステップS9)。
 好適には、膜構造体10が導電膜18を有する場合、導電膜13と導電膜18との間に1kHzの周波数を有する交流電圧を印加して測定される圧電膜15の比誘電率をε としたとき、圧電膜15のε は、上記式(数2)を満たす。
 このような周波数を有する交流電圧での比誘電率が小さくなることにより、例えば検出回路のクロック周波数を高めることができ、膜構造体10を用いた圧力センサの応答速度を向上させることができる。
 好適には、圧電膜15の残留分極値をP としたとき、P は、下記式(数3)を満たす。
≧28μC/cm ・・・(数3)
 これにより、圧電膜15の強誘電特性を向上させることができるので、圧電膜15の圧電特性も向上させることができる。
 なお、膜14と圧電膜15との間に、チタン酸ジルコン酸鉛を含む膜を形成してもよい。当該膜は、上記一般式(化8)で表され、且つ、擬立方晶表示で(100)配向した複合酸化物を含んでもよい。
 <実施の形態の変形例>
 実施の形態では、図1に示したように、圧電膜16及び圧電膜17を含む圧電膜15が形成されていた。しかし、圧電膜15は、圧電膜16のみを含むものであってもよい。このような例を、実施の形態の変形例として説明する。
 図15は、実施の形態の変形例の膜構造体の断面図である。
 図15に示すように、本変形例の膜構造体10は、基板11と、配向膜12と、導電膜13と、膜14と、圧電膜15と、を有する。配向膜12は、基板11上に形成されている。導電膜13は、配向膜12上に形成されている。膜14は、導電膜13上に形成されている。圧電膜15は、膜14上に形成されている。圧電膜15は、圧電膜16を含む。
 即ち、本変形例の膜構造体10は、圧電膜15が、圧電膜17(図1参照)を含まず、圧電膜16のみを含む点を除いて、実施の形態の膜構造体10と同様である。
 圧電膜15が、圧縮応力を有する圧電膜16を含むが、引っ張り応力を有する圧電膜17(図1参照)を含まない場合、圧電膜15が、圧縮応力を有する圧電膜16及び引っ張り応力を有する圧電膜17(図1参照)のいずれも含む場合に比べ、膜構造体10が反る反り量が増加する。しかし、例えば圧電膜15の厚さが薄い場合には、膜構造体10が反る反り量を低減させることができる。そのため、圧電膜15が圧電膜16のみを含む場合でも、例えば膜構造体10をフォトリソグラフィ技術を用いて加工する場合の形状精度を向上させることができ、膜構造体10を加工して形成される圧電素子の特性を向上させることができる。
 なお、本変形例の膜構造体10も、実施の形態の膜構造体10と同様に、導電膜18(図2参照)を有してもよい。
実施例
[0009]
 以下、実施例に基づいて本実施の形態を更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
 (実施例1及び比較例1)
 以下では、実施の形態で図1を用いて説明した膜構造体10を、実施例1の膜構造体として形成した。実施例1の膜構造体は、CuKα線を用いたθ−2θ法による圧電膜15のX線回折パターンにおいて、チタン酸ジルコン酸鉛の正方晶表示における(004)面の回折ピークの回折角度を2θ 004としたとき、2θ 004が上記式(数1)を満たすものである。また、実施例1の膜構造体は、圧電膜15の比誘電率をε としたとき、ε が上記式(数2)を満たすものである。一方、2θ 004が上記式(数1)を満たさない膜構造体を、比較例1の膜構造体とした。
 以下では、実施例1の膜構造体の形成方法について説明する。なお、比較例1の膜構造体の形成方法は、RFスパッタリング装置を用いて圧電膜16を形成する際に、供給される高周波電力(パワー)が2750Wである点において、供給される高周波電力(パワー)が2250Wである実施例1の条件と異なる。
 まず、図11に示したように、基板11として、(100)面よりなる主面としての上面11aを有し、6インチのシリコン単結晶よりなるウェハを用意した。
 次に、図12に示したように、基板11上に、配向膜12として、酸化ジルコニウム(ZrO )膜を、電子ビーム蒸着法により形成した。この際の条件を、以下に示す。
 装置 : 電子ビーム蒸着装置
 圧力 : 7.00×10 −3Pa
 蒸着源 : Zr+O
 加速電圧/エミッション電流 : 7.5kV/1.80mA
 厚さ : 24nm
 成膜速度 : 0.005nm/s
 酸素流量 : 7sccm
 基板温度 : 500℃
 次に、図4に示したように、配向膜12上に、導電膜13として、白金(Pt)膜を、スパッタリング法により形成した。この際の条件を、以下に示す。
 装置 : DCスパッタリング装置
 圧力 : 1.20×10 −1Pa
 蒸着源 : Pt
 電力 : 100W
 厚さ : 150nm
 成膜速度 : 0.14nm/s
 Ar流量 : 16sccm
 基板温度 : 450~600℃
 次に、Pt膜を熱処理した。この際の条件を、以下に示す。
 装置 : DCスパッタリング装置
 基板温度(熱処理温度) : 450~600℃
 熱処理時間 : 10~30分
 次に、図13に示したように、導電膜13上に、膜14として、SRO膜を、スパッタリング法により形成した。この際の条件を、以下に示す。
 装置 : RFマグネトロンスパッタリング装置
 パワー : 300W
 ガス : Ar
 圧力 : 1.8Pa
 基板温度 : 600℃
 成膜速度 : 0.11nm/s
 厚さ : 20nm
 次に、図14に示したように、膜14上に、圧電膜16として、1μmの膜厚を有するPb(Zr 0.58Ti 0.42)O 膜(PZT膜)を、スパッタリング法により形成した。この際の条件を、以下に示す。
 装置 : RFマグネトロンスパッタリング装置
 パワー : 2250W
 ガス : Ar/O
 圧力 : 0.6Pa
 基板温度 : 425℃
 成膜速度 : 0.29nm/s
 Ar流量 : 66sccm
 酸素流量 : 6sccm
 成膜時間 : 4200s
 次に、図1に示したように、圧電膜16上に、圧電膜17として、Pb(Zr 0.58Ti 0.42)O 膜(PZT膜)を、塗布法により形成した。この際の条件を、以下に示す。
 Pb、Zr及びTiの有機金属化合物をPb:Zr:Ti=100+δ:58:42の組成比になるように混合し、エタノールと2−n−ブトキシエタノールの混合溶媒に、Pb(Zr 0.58Ti 0.42)O としての濃度が0.35mol/lになるように溶解させた原料溶液を調整した。δについては、δ=20とした。そして、原料溶液には更に20gの重量の、K値が27~33のポリピロリドンを溶解させた。
 次に、調製した原料溶液のうち3mlの原料溶液を、6インチのウェハよりなる基板11上に滴下し、3000rpmで10秒間回転させ、基板11上に原料溶液を塗布することにより、前駆体を含む膜を形成した。そして、200℃の温度のホットプレート上に、基板11を30秒間載置し、更に450℃の温度のホットプレート上に、基板11を30秒間載置することにより、溶媒を蒸発させて膜を乾燥させた。その後、0.2MPaの酸素(O )雰囲気中、600~700℃で60秒間熱処理して前駆体を酸化して結晶化させることにより、30nmの膜厚を有する圧電膜17を形成した。
 実施例1及び比較例1の各々について、圧電膜17としてのPZT膜までが形成された膜構造体のXRD法によるθ−2θスペクトルを測定した。即ち、実施例1及び比較例1の各々について、θ−2θ法によるX線回折測定を行った。
 図16乃至図19の各々は、PZT膜までが形成された膜構造体のXRD法によるθ−2θスペクトルの例を示すグラフである。図16乃至図19の各々のグラフの横軸は、角度2θを示し、図16乃至図19の各々のグラフの縦軸は、X線の強度を示す。図16及び図17は、実施例1についての結果を示し、図18及び図19は、比較例1についての結果を示す。図16及び図18は、20°≦2θ≦50°の範囲を示し、図17及び図19は、90°≦2θ≦110°の範囲を示している。
 図16及び図17に示す例(実施例1)では、θ−2θスペクトルにおいて、立方晶の結晶構造を有するPtの(200)面及び(400)面に相当するピーク、並びに、正方晶表示におけるPZTの(001)面、(002)面及び(004)面に相当するピークが観測された。そのため、図16及び図17に示す例(実施例1)では、導電膜13が、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向したPtを含み、圧電膜15が、正方晶表示で(001)配向したPZTを含むことが分かった。
 また、図17に示す例(実施例1)では、PZTの正方晶表示における(004)面の回折ピークの回折角度を2θ 004としたとき、2θ 004=96.5°であった。そのため、図16及び図17に示す例(実施例1)では、2θ 004は、2θ 004≦96.5°を満たし、上記式(数1)を満たすことが分かった。
 図18及び図19に示す例(比較例1)でも、図16及び図17に示す例(実施例1)と同様に、θ−2θスペクトルにおいて、立方晶の結晶構造を有するPtの(200)面及び(400)面に相当するピーク、並びに、正方晶表示におけるPZTの(001)面、(002)面及び(004)面に相当するピークが観測された。そのため、図18及び図19に示す例(比較例1)でも、図16及び図17に示す例(実施例1)と同様に、導電膜13が、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向したPtを含み、圧電膜15が、正方晶表示で(001)配向したPZTを含むことが分かった。
 しかし、図19に示す例(比較例)では、図17に示す例(実施例1)と異なり、PZTの正方晶表示における(004)面の回折ピークの回折角度を2θ 004としたとき、2θ 004=96.7°であった。そのため、図18及び図19に示す例(比較例1)では、2θ 004は、2θ 004≦96.5°を満たさず、上記式(数1)を満たさないことが分かった。
 実施例1については、XRD法による極点図の測定を行って、各層の膜の面内の配向の関係を調べた。図20乃至図23の各々は、実施例1の膜構造体のXRD法による極点図の例を示すグラフである。図20は、Si(220)面の極点図であり、図21は、ZrO (220)面の極点図であり、図22は、Pt(220)面の極点図であり、図23は、PZT(202)面の極点図である。
 前述したように、配向膜12が、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向した酸化ジルコニウム膜12aを含むものとする(図7参照)。このような場合、図20及び図21に示すように、酸化ジルコニウム膜12aは、酸化ジルコニウム膜12aの、シリコン基板よりなる基板11の主面としての上面11aに沿った<100>方向が、基板11自身の上面11aに沿った<100>方向と平行になるように、配向していることが明らかになった。言い換えれば、酸化ジルコニウム膜12aは、酸化ジルコニウム膜12aの、シリコン基板よりなる基板11の主面としての上面11aに沿った<110>方向が、基板11自身の上面11aに沿った<110>方向と平行になるように、配向していることが明らかになった。
 また、導電膜13が、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向した白金膜13aを含むものとする(図7参照)。このような場合、図20及び図22に示すように、白金膜13aは、白金膜13aの、シリコン基板よりなる基板11の上面11aに沿った<100>方向が、基板11自身の上面11aに沿った<100>方向と平行になるように、配向していることが明らかになった。言い換えれば、白金膜13aは、白金膜13aの、シリコン基板よりなる基板11の上面11aに沿った<110>方向が、基板11自身の上面11aに沿った<110>方向と平行になるように、配向していることが明らかになった。
 また、圧電膜15が、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向したチタン酸ジルコン酸鉛膜15aを含むものとする。このような場合、図20及び図23に示すように、チタン酸ジルコン酸鉛膜15aは、チタン酸ジルコン酸鉛膜15aの、シリコン基板よりなる基板11の上面11aに沿った<100>方向が、基板11自身の上面11aに沿った<100>方向と平行になるように、配向していることが明らかになった。言い換えれば、チタン酸ジルコン酸鉛膜15aは、チタン酸ジルコン酸鉛膜15aの、シリコン基板よりなる基板11の上面11aに沿った<110>方向が、基板11自身の上面11aに沿った<110>方向と平行になるように、配向していることが明らかになった。
 実施例1については、No.1乃至No.17の17枚のウェハの各々の上に同条件で圧電膜17としてのPZT膜までの膜構造体を形成し、形成された膜構造体のXRD法によるθ−2θスペクトルを測定した。即ち、実施例1として17枚の膜構造体について、θ−2θ法によるX線回折測定を行った。
 図24は、実施例1としてのNo.1乃至No.17の17枚のウェハの各々に形成された膜構造体の各々のX線回折パターンにおける回折角度2θ 004を示すグラフである。図24では、ある膜構造体の回折角度2θ 004について、ウェハ中心部における回折角度2θ 004を左側に示し、ウェハ外周部における回折角度2θ 004を右側に示している。
 図24に示すように、実施例1としての17枚のウェハの各々に形成された膜構造体において、回折角度2θ 004は、いずれも95.9°よりも大きく、96.4°未満であった。従って、実施例1としての17枚のウェハにおいては、回折角度2θ 004は、上記式(数1)を満たすことが分かった。
 また、実施例1については、更に、No.21乃至No.32の12枚のウェハの各々の上に同条件で圧電膜17としてのPZT膜までの膜構造体を形成し、形成された膜構造体のXRD法によるθ−2θスペクトルを測定した。即ち、実施例1として12枚の膜構造体について、θ−2θ法によるX線回折測定を行った。
 図25は、実施例1としてのNo.21乃至No.32の12枚のウェハの各々に形成された膜構造体の各々のX線回折パターンにおける回折角度2θ 004を示すグラフである。図25でも、図24と同様に、ある膜構造体の回折角度2θ 004について、ウェハ中心部における回折角度2θ 004を左側に示し、ウェハ外周部における回折角度2θ 004を右側に示している。
 図25に示すように、実施例1としての12枚のウェハの各々に形成された膜構造体において、回折角度2θ 004は、いずれも96.0°よりも大きく、96.25°未満であった。従って、実施例1としての17枚のウェハにおいては、回折角度2θ 004は、上記式(数1)を満たすことが分かった。
 なお、図18及び図19のθ−2θスペクトルにおいて、PZTの正方晶表示で(00n)面(nは自然数)の高角側に、ピークが観測されている。これは、例えば正方晶の結晶構造を有するPZTの(100)配向した部分が微量の含有率で存在し、当該部分が応力緩和層として機能しているものと考えられる。
 次に、図2に示したように、圧電膜15上に、導電膜18として、白金(Pt)膜を、スパッタリング法により形成した。その後、導電膜13と導電膜18との間に電圧を印加して分極の電圧依存性を測定した。
 図26は、実施例1の膜構造体の分極の電圧依存性を示すグラフである。図27は、比較例1の膜構造体の分極の電圧依存性を示すグラフである。図26及び図27の各々のグラフの横軸は、電圧を示し、図26及び図27の各々のグラフの縦軸は、分極を示す(以下の分極の電圧依存性を示すグラフにおいても同様。)。
 図26によれば、実施例1の膜構造体においては、比誘電率ε は、450以下であり(実測値450)、残留分極値P は、28μC/cm 以上であった(実測値28μC/cm )。また、カンチレバーを形成し、形成されたカンチレバーを用いて圧電定数d 31を測定したところ、圧電定数d 31は、200pm/Vであった。
 一方、図27によれば、比較例1の膜構造体においては、比誘電率ε は、450を超えており(実測値800)、残留分極値P は、28μC/cm 未満であった(実測値10μC/cm )。また、実施例1と同様にして圧電定数d 31を測定したところ、圧電定数d 31は、140pm/Vであった。前述したように、比較例1の膜構造体の形成方法は、RFスパッタリング装置を用いて圧電膜16を形成する際に供給される高周波電力(パワー)が2750Wである点において、供給される高周波電力が2250Wである実施例1の条件と異なる。
 従って、実施例1及び比較例1によれば、本実施の形態の膜構造体において、圧電膜16を形成する際に供給される高周波電力が一定の範囲内であるときに、比誘電率ε が上記式(数2)を満たし、残留分極値P が上記式(数3)を満たすことが、明らかになった。そこで、以下では、実施例2乃至実施例9及び比較例2の膜構造体を形成し、比誘電率ε が上記式(数2)を満たし、残留分極値P が上記式(数3)を満たす条件を詳細に調べた。
 (実施例2及び実施例3)
 実施例1の膜構造体の製造方法において、圧電膜16を形成する際の基板温度を、425℃から450℃に変更したこと以外は、実施例1の膜構造体の製造方法と同様にして、実施例2の膜構造体を形成した。また、実施例1の膜構造体の製造方法において、圧電膜16を形成する際の基板温度を、425℃から475℃に変更したこと以外は、実施例1の膜構造体の製造方法と同様にして、実施例3の膜構造体を形成した。
 実施例2及び実施例3の膜構造体について、導電膜13と導電膜18との間に電圧を印加して分極の電圧依存性を測定した。図28は、実施例2の膜構造体の分極の電圧依存性を示すグラフである。図29は、実施例3の膜構造体の分極の電圧依存性を示すグラフである。
 図28によれば、実施例2の膜構造体においては、比誘電率ε は、450以下であり、残留分極値P は、28μC/cm 以上であった(実測値41μC/cm )。また、図29によれば、実施例3の膜構造体においては、比誘電率ε は、450以下であり、残留分極値P は、28μC/cm 以上であった(実測値45μC/cm )。
 従って、実施例1乃至実施例3によれば、供給される高周波電力が2250Wの場合、圧電膜16を形成する際の基板温度が425~475℃の範囲で、450以下の比誘電率ε が得られ、28μC/cm 以上の残留分極値P が得られることが明らかになった。なお、詳細な説明は省略するが、圧電膜16を形成する際の基板温度が425℃未満の場合、又は、圧電膜16を形成する際の基板温度が475℃を超える場合は、450以下の比誘電率ε を得ることは困難であった。
 (実施例4及び実施例5)
 実施例1の膜構造体の製造方法において、圧電膜16を形成する際に供給される高周波電力(パワー)を、2250Wから2000Wに変更したこと以外は、実施例1の膜構造体の製造方法と同様にして、実施例4の膜構造体を形成した。このとき、成膜速度は、0.20nm/sとなり、実施例1における0.29nm/sよりも小さくなった。
 また、実施例1の膜構造体の製造方法において、圧電膜16を形成する際に供給される高周波電力(パワー)を、2250Wから1750Wに変更したこと以外は、実施例1の膜構造体の製造方法と同様にして、実施例5の膜構造体を形成した。このとき、成膜速度は、0.17nm/sとなり、実施例1における0.29nm/sよりも小さくなった。
 実施例4及び実施例5の膜構造体について、導電膜13と導電膜18との間に電圧を印加して分極の電圧依存性を測定した。図30は、実施例4の膜構造体の分極の電圧依存性を示すグラフである。図31は、実施例5の膜構造体の分極の電圧依存性を示すグラフである。
 図30によれば、実施例4の膜構造体においては、比誘電率ε は、450以下であり、残留分極値P は、28μC/cm 以上であった(実測値45μC/cm )。また、図31によれば、実施例5の膜構造体においては、比誘電率ε は、450以下であり、残留分極値P は、28μC/cm 以上であった(実測値50μC/cm )。
 従って、実施例1、実施例4及び実施例5によれば、基板温度が425℃の場合、圧電膜16を形成する際に供給される高周波電力が1750~2250Wの範囲で、450以下の比誘電率ε が得られ、28μC/cm 以上の残留分極値P が得られることが明らかになった。これは、高周波電力が1750~2250Wの範囲では、高周波電力の値が小さくなるほど、成膜速度が遅くなり、圧電膜16がゆっくりと結晶成長するため、圧電膜16の単結晶性が向上し、残留分極値P が向上したためと考えられる。
 (実施例6乃至実施例8及び比較例2)
 実施例1の膜構造体の製造方法において、圧電膜16を形成する際に供給される高周波電力(パワー)の値を、2250Wから2500Wに変更したこと以外は、実施例1の膜構造体の製造方法と同様にして、比較例2の膜構造体を形成した。これらの条件を、図32に示す。なお、図32は、実施例1、実施例6乃至実施例8、比較例1及び比較例2についての、成膜条件、並びに、PZTの回折角度2θ 004及び比誘電率ε 等の測定結果をまとめた表を示す。
 また、実施例1の膜構造体の製造方法において、圧電膜16を形成する際に供給される高周波電力(パワー)について、後の工程で供給される高周波電力が前の工程で供給される高周波電力の値よりも小さくなるように、複数の工程に分けて値を変更して供給したこと以外は、実施例1の膜構造体の製造方法と同様にして、実施例6乃至実施例8の膜構造体を形成した。
 このように、高周波電力について、複数の工程に分けて値を変更して供給する理由は、圧電膜16を形成する工程において、最初から供給される高周波電力の値を小さくして成膜速度を小さくすると、量産性が低下するからである。一方、圧電膜16の上層部のみをゆっくりと成長させることにより、全体としては比較的速い成膜速度で良好な単結晶状の圧電膜16が得られ、良好な強誘電性を得ることができる。
 具体的には、実施例6の膜構造体の製造方法では、圧電膜16を形成する工程のうち、1番目の工程では、供給される高周波電力の値を2250Wとし、基板温度を450℃とし、成膜時間を2100sとして、500nmの膜厚を有するPb(Zr 0.58Ti 0.42)O 膜(下層PZT膜)を成膜した。次に、圧電膜16を形成する工程のうち、2番目の工程では、供給される高周波電力の値を2000Wとし、基板温度を450℃とし、成膜時間を2300sとして、500nmの膜厚を有するPb(Zr 0.58Ti 0.42)O 膜(上層PZT膜)を成膜した。これにより、下層PZT膜及び上層PZT膜よりなる圧電膜16を形成した。これらの条件を、図32に示す。なお、図32には、高周波電力として、上層PZT膜を形成する工程における値(2000W)のみを示す。
 また、実施例7の膜構造体の製造方法では、圧電膜16を形成する工程のうち、1番目の工程では、供給される高周波電力の値を2250Wとし、基板温度を450℃とし、成膜時間を4200sとして、1μmの膜厚を有するPb(Zr 0.58Ti 0.42)O 膜(下層PZT膜)を成膜した。次に、圧電膜16を形成する工程のうち、2番目の工程では、供給される高周波電力の値を1750Wとし、基板温度を450℃とし、成膜時間を2300sとして、500nmの膜厚を有するPb(Zr 0.58Ti 0.42)O 膜(中層PZT膜)を成膜した。更に、圧電膜16を形成する工程のうち、3番目の工程では、供給される高周波電力の値を1750Wとし、基板温度を425℃とし、成膜時間を2300sとして、500nmの膜厚を有するPb(Zr 0.58Ti 0.42)O 膜(上層PZT膜)を成膜した。これにより、下層PZT膜、中層PZT膜及び上層PZT膜よりなる圧電膜16を形成した。成膜時間の合計は、8800sであった。これらの条件を、図32に示す。なお、図32には、高周波電力として、上層PZT膜を形成する工程における値(1750W)のみを示す。
 また、実施例8の膜構造体の製造方法では、圧電膜16を形成する工程のうち、1番目の工程では、供給される高周波電力の値を1750Wとし、基板温度を450℃とし、成膜時間を2300sとして、500nmの膜厚を有するPb(Zr 0.58Ti 0.42)O 膜(下層PZT膜)を成膜した。次に、圧電膜16を形成する工程のうち、2番目の工程では、供給される高周波電力の値を1750Wとし、基板温度を425℃とし、成膜時間を2100sとして、400nmの膜厚を有するPb(Zr 0.58Ti 0.42)O 膜(中層PZT膜)を成膜した。更に、圧電膜16を形成する工程のうち、3番目の工程では、供給される高周波電力の値を1500Wとし、基板温度を475℃とし、成膜時間を900sとして、100nmの膜厚を有するPb(Zr 0.58Ti 0.42)O 膜(上層PZT膜)を成膜した。これにより、下層PZT膜、中層PZT膜及び上層PZT膜よりなる圧電膜16を形成した。成膜時間の合計は、5300sであった。これらの条件を、図32に示す。なお、図32には、高周波電力として、上層PZT膜を形成する工程における値(1500W)のみを示す。
 実施例6乃至実施例8の各々について、圧電膜17としてのPZT膜までが形成された膜構造体のXRD法によるθ−2θスペクトルを測定した。即ち、実施例6乃至実施例8の各々について、θ−2θ法によるX線回折測定を行った。
 図33乃至図35の各々は、PZT膜までが形成された膜構造体のXRD法によるθ−2θスペクトルの例を示すグラフである。図33乃至図35の各々のグラフの横軸は、角度2θを示し、図16乃至図19の各々のグラフの縦軸は、X線の強度を示す。図33は、実施例6についての結果を示し、図34は、実施例7についての結果を示し、図35は、実施例8についての結果を示す。また、図33乃至図35は、90°≦2θ≦110°の範囲を示している。
 更に、図17、図19及び図33乃至図35から得られた2θ 004を、図32に示す。なお、θ−2θスペクトルの図示は省略するが、比較例2の膜構造体についても、XRD法によるθ−2θスペクトルを測定を行って得られた2θ 004を、図32に示す。
 図33乃至図35及び図32に示すように、実施例6の膜構造体においては、2θ 004=96.4°であり、実施例7の膜構造体においては、2θ 004=96.1°であり、実施例8の膜構造体においては、2θ 004=95.9°であった。また、前述したように、実施例1の膜構造体においては、2θ 004=96.5°であり、詳細の説明は省略するが、実施例2乃至実施例5の膜構造体においても、2θ 004は、2θ 004≦96.5°を満たしていた。そのため、実施例1乃至実施例8の膜構造体においては、2θ 004は、2θ 004≦96.5°を満たし、上記式(数1)を満たすことが分かった。
 また、比較例2及び実施例6乃至実施例8の膜構造体について、導電膜13と導電膜18との間に電圧を印加して分極の電圧依存性を測定した。図36は、比較例2の膜構造体の分極の電圧依存性を示すグラフである。図37は、実施例6の膜構造体の分極の電圧依存性を示すグラフである。図38は、実施例7の膜構造体の分極の電圧依存性を示すグラフである。図39は、実施例8の膜構造体の分極の電圧依存性を示すグラフである。
 図36及び図32によれば、比較例2の膜構造体においては、比誘電率ε は、450を超えており(実測値580)、残留分極値P は、28μC/cm 未満であった(実測値18μC/cm )。また、カンチレバーを形成し、形成されたカンチレバーを用いて圧電定数d 31を測定したところ、圧電定数d 31は、178pm/Vであった。
 図37及び図32によれば、実施例6の膜構造体においては、比誘電率ε は、450以下であり(実測値330)、残留分極値P は、28μC/cm 以上であった(実測値39μC/cm )。また、比較例2と同様にして圧電定数d 31を測定したところ、圧電定数d 31は、210pm/Vであった。
 また、図38及び図32によれば、実施例7の膜構造体においては、比誘電率ε は、450以下であり(実測値263)、残留分極値P は、28μC/cm 以上であった(実測値48μC/cm )。また、比較例2と同様にして圧電定数d 31を測定したところ、圧電定数d 31は、220pm/Vであった。
 また、図39及び図32によれば、実施例8の膜構造体においては、比誘電率ε は、450以下であり(実測値216)、残留分極値P は、28μC/cm 以上であった(実測値57μC/cm )。また、比較例2と同様にして圧電定数d 31を測定したところ、圧電定数d 31は、230pm/Vであった。
 従って、実施例1乃至実施例8によれば、比誘電率ε は、ε ≦450を満たし、残留分極値P は、P ≧28μC/cm を満たし、圧電定数d 31は、d 31≧200pm/Vを満たし、上記式(数1)及び式(数2)を満たすことが分かった。
 前述したように、PZTでも、PbTiO と同様に、薄膜の配向性を含めた結晶性が向上することにより、比誘電率が低くなると考えられる。即ち、実施例1乃至実施例8において、比誘電率ε が450以下に低くなることは、圧電膜15が単結晶状になることを示している。
 圧電現象とは、圧電体に応力が印加されたときに、圧電体の結晶格子が歪むことにより、その歪みに応じた電荷が圧電体に発生する現象である。従って、圧電歪みは、圧電体に発生する電荷密度を、圧電体に印加された応力で除した値であり、圧電体が強誘電体である場合には、残留分極値に比例する。
 また、誘電体と、誘電体の上下に形成された2つの電極よりなるコンデンサの容量は、誘電体の比誘電率と2つの電極の各々の面積に比例し、誘電体の厚さ、即ち2つの電極の間の距離に逆比例する。このことと、前述した、圧電体に応力が印加されたときに電荷が発生することにより、圧電歪みは、圧電体よりなる誘電体の比誘電率に比例する。
 比較例1及び比較例2、並びに、実施例1及び実施例6乃至実施例8において、残留分極値P と比誘電率ε との積(P ・ε )を求めたところ、図32に示すように、P ・ε の値と圧電定数d 31とは、良好な比例関係にあった。従って、前述したように、圧電歪みが、残留分極値に比例し、且つ、比誘電率に比例することが、確認された。
 なお、破断面を、SEMにより観察した。その結果、詳細な説明は省略するものの、実施例1及び実施例6乃至実施例8では、圧電膜16が良好な単結晶性を有するのに対し、比較例1及び比較例2では、圧電膜16において、主面に沿った方向において隣り合う2つの結晶粒の間に、圧電膜16の厚さ方向に延在するクラック(ひび割れ)が観察され、圧電膜15の単結晶性が低下したことが分かった。図32では、クラックが観察された場合を×で示し、クラックが観察されない場合を○で示している。
 以上の結果より、膜構造体が有する圧電膜が、上記式(数1)及び式(数2)を満たすことにより、高品質の単結晶膜よりなる圧電膜が得られ、圧電膜の比誘電率を低減し、且つ、圧電膜の圧電特性を向上させることができるので、圧電膜の圧電特性を向上させ、且つ、当該圧電膜を用いた圧力センサの検出感度を向上させることが明らかになった。
 (実施例9及び実施例10)
 実施例1の膜構造体の製造方法と同様にして、実施例9の膜構造体を形成した。また、実施例1の膜構造体の製造方法において、PZTの組成をx=0.42からx=0.48に変更したこと以外は、実施例1の膜構造体の製造方法と同様にして、実施例10の膜構造体を形成した。実施例9及び実施例10の膜構造体について、導電膜13と導電膜18との間に電圧を印加して分極の電圧依存性を測定した。図40は、実施例9の膜構造体の分極の電圧依存性を示すグラフである。図41は、実施例10の膜構造体の分極の電圧依存性を示すグラフである。
 また、実施例9及び実施例10についての、強誘電特性及び圧電特性等を測定した結果を、表2に示す。表2には、残留分極値P 、比誘電率ε 、誘電正接tanδ、圧電定数d 31、圧電定数g 31、圧電定数e 31及び膜厚を示す。なお、表2では、圧電定数d 31、圧電定数g 31及び圧電定数e 31について、絶対値ではなく、符号を付して示す。
[表2]


 図40及び表2に示すように、x=0.42(実施例9)の場合には、残留分極値P は、50μC/cm であり、比誘電率ε は、200であり、tanδは、0.01%であり、圧電定数d 31は、−200pm/Vであり、圧電定数g 31は、−100×10 Vm/Nであり、圧電定数e 31は、−25C/m であり、良好な特性が得られた。また、図41及び表2に示すように、x=0.48の場合でも、残留分極値P は、60μC/cm であり、比誘電率ε は、300であり、tanδは、0.01%であり、圧電定数d 31は、−250pm/Vであり、圧電定数g 31は、−80×10 Vm/Nであり、圧電定数e 31は、−27C/m であり、良好な特性が得られた。また、詳細の説明は省略するが、0.32≦x≦0.52の範囲でxの値を変更した場合でも、良好な特性が得られた。以上の結果より、x=0.42、0.48の場合を含め、0.32≦x≦0.52の範囲で、良好な特性が得られることが明らかになった。
 以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
 本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
 例えば、前述の各実施の形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。

符号の説明

[0010]
10 膜構造体
11 基板
11a 上面
12 配向膜
12a 酸化ジルコニウム膜
13、18 導電膜
13a 白金膜
14、17f 膜
14a SRO膜
15、16、17 圧電膜
15a、16a、17a チタン酸ジルコン酸鉛膜
16g、17g 結晶粒
20 成膜装置
21 チャンバー
21a 底板部
21b、21e 側板部
21c、21f 天板部
21d 蓋部
22 真空排気部
23、24 ガス供給部
23a、24a 流量制御器
23b、24b ガス供給管
25 基板保持部
25a 絶縁性囲み部
25b 突出部
25c 導電性囲み部
25d 段差部
25b1 角
26 支持部
27 回転駆動部
27a モータ
27b ベルト
27c プーリー
27d 回転軸
28 基板加熱部
29 防着板
29a 冷却管
31 ターゲット保持部
32 電力供給部
32a 高周波電源
32b 整合器
33 V DC制御部
34 磁石部
35 磁石回転駆動部
41、42、45、46、47 導電性部材
41a、42a、45a 基部
41b、42b、45b 軸部
41c、42b、45c 接続部
43、56 ネジ
44 スリップリング
51、52、53、54、55 絶縁性部材
BP1 バッキングプレート
CE1 シール部
CN1 中心
CP1 強誘電体キャパシタ
EP 終点
OP1、OP2、OP3 開口
P1 分極成分
RA1 回転軸
SB 基板
SP 起点
TG ターゲット
TM1 ターゲット材

請求の範囲

[請求項1]
 接地電位に電気的に接続されるチャンバーと、
 前記チャンバー内に配置されたターゲットと、
 前記ターゲットに高周波電力を供給する電力供給部と、
 前記チャンバー内にガスを供給するガス供給部と、
 前記チャンバー内に配置され、基板を前記ターゲットに対向させて保持する絶縁性基板保持部と、
 前記絶縁性基板保持部を支持する導電性支持部と、
 前記導電性支持部と前記チャンバーとの間に配置された第1絶縁性部材と、
を有し、
 前記導電性支持部は前記第1絶縁性部材によって前記チャンバーに対して電気的に浮遊しており、
 前記基板の外周部が前記絶縁性基板保持部と接触することで、前記絶縁性基板保持部に前記基板が保持され、前記基板は前記導電性支持部に対して電気的に浮遊しており、
 前記絶縁性基板保持部は、平面視において前記基板の中央部と重ならない、成膜装置。
[請求項2]
 請求項1に記載の成膜装置において、
 前記ターゲットと前記基板との間に配置され、前記基板から30mm以内の距離に位置する導電性防着板を有し、
 前記導電性防着板は前記チャンバーに対して電気的に浮遊している、成膜装置。
[請求項3]
 請求項2に記載の成膜装置において、
 前記導電性防着板は水冷されている、成膜装置。
[請求項4]
 請求項2または3に記載の成膜装置において、
 前記チャンバーと前記導電性防着板との間に配置された第2絶縁性部材を有する、成膜装置。
[請求項5]
 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の成膜装置において、
 前記基板と前記絶縁性基板保持部との接触面積は20mm 以下である、成膜装置。
[請求項6]
 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の成膜装置において、
 前記絶縁性基板保持部は角が曲面を有する、成膜装置。
[請求項7]
 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の成膜装置において、
 前記導電性支持部は、前記絶縁性基板保持部を支持する第1導電性部材を含み、
 前記第1導電性部材は、第1軸を中心として前記絶縁性基板保持部と一体的に回転可能に設けられ、
 前記第1導電性部材と前記絶縁性基板保持部との間に配置された第3絶縁性部材を有し、
 前記成膜装置は、更に、前記第1導電性部材を回転駆動する回転駆動部を有する、成膜装置。
[請求項8]
 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の成膜装置において、
 前記導電性支持部は、前記絶縁性基板保持部を支持する第2導電性部材を含み、
 前記第2導電性部材は、第2軸を中心として前記絶縁性基板保持部と一体的に回転可能に設けられ、
 前記第1絶縁性部材は、前記チャンバーと前記第2導電性部材との間に介在し、
 前記第2導電性部材は、電気的に浮遊し、
 前記成膜装置は、更に、前記第2導電性部材を回転駆動する回転駆動部を有する、成膜装置。
[請求項9]
 請求項7に記載の成膜装置において、
 前記基板を加熱する基板加熱部を有し、
 前記第3絶縁性部材は、平面視において前記基板を囲む囲み部を有し、
 前記絶縁性基板保持部は、平面視において前記囲み部から前記基板の中心側に向かってそれぞれ突出した複数の突出部を有し、
 前記絶縁性基板保持部は、前記基板の外周部が前記複数の突出部の各々と接触した状態で、前記基板を保持する、成膜装置。
[請求項10]
 請求項1乃至9のいずれか一項に記載の成膜装置において、
 前記チャンバー内で前記ターゲットを保持するターゲット保持部と、
 前記ターゲットに磁界を印加する磁界印加部と、
 を有し、
 前記磁界が印加されている前記ターゲットの表面の水平磁場は、140~220Gである、成膜装置。
[請求項11]
 請求項10に記載の成膜装置において、
 前記ターゲットの表面における前記磁界は、前記ターゲットの表面に沿っている、成膜装置。
[請求項12]
 請求項1乃至11のいずれか一項に記載の成膜装置において、
 前記成膜装置は、チタン酸ジルコン酸鉛を含有する前記ターゲットの表面をスパッタすることにより前記基板の表面にチタン酸ジルコン酸鉛を含有する膜を成膜する、成膜装置。
[請求項13]
 請求項1乃至12のいずれか一項に記載の成膜装置において、
 前記成膜装置は、前記チャンバー内で前記基板の下面と対向配置された前記ターゲットの上面をスパッタすることにより前記基板の下面に膜を成膜する、成膜装置。
[請求項14]
 接地電位に電気的に接続されたチャンバー内で、基板の外周部が絶縁性基板保持部と接触することで、前記基板を前記絶縁性基板保持部により保持し、
 前記チャンバー内でターゲットの表面をスパッタすることにより前記基板の表面に膜を成膜し、
 前記絶縁性基板保持部は、前記チャンバーに対して電気的に浮遊した導電性支持部により支持され、
 前記基板は前記導電性支持部に対して電気的に浮遊しており、
 前記絶縁性基板保持部は、平面視において前記基板の中央部と重ならない、成膜方法。
[請求項15]
 請求項14に記載の成膜方法において、
 前記ターゲットと前記基板との間に導電性防着板が配置され、前記導電性防着板は前記基板から30mm以内の距離に位置し、
 前記導電性防着板は前記チャンバーに対して電気的に浮遊している、成膜方法。
[請求項16]
 請求項14に記載の成膜方法において、
 前記導電性防着板は水冷されている、成膜方法。
[請求項17]
 請求項14乃至16のいずれか一項に記載の成膜方法において、
 前記基板と前記絶縁性基板保持部との接触面積は20mm 以下である、成膜方法。
[請求項18]
 請求項14乃至17のいずれか一項に記載の成膜方法において、
 前記ターゲットに磁界印加部により磁界を印加し、且つ、前記ターゲットに電力供給部により高周波電力を供給した状態で、前記ターゲットの表面をスパッタすることにより、前記基板の表面に前記膜を成膜し、
 前記磁界が印加されている前記ターゲットの表面の水平磁場は、140~220Gである、成膜方法。
[請求項19]
 請求項18に記載の成膜方法において、
 前記ターゲットの表面における前記磁界は、前記ターゲットの表面に沿っている、成膜方法。
[請求項20]
 請求項14乃至19のいずれか一項に記載の成膜方法において、
 前記ターゲットはチタン酸ジルコン酸鉛を含有し、
 前記ターゲットの表面をスパッタすることにより前記基板の表面にチタン酸ジルコン酸鉛を含有する前記膜を成膜する、成膜方法。
[請求項21]
 請求項20に記載の成膜方法において、
 前記基板は、
 (100)面よりなる主面を含むシリコン基板と、
 前記主面上に形成され、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向した酸化ジルコニウム膜を含む第1膜と、
 前記第1膜上に形成され、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向した白金膜を含む第1導電膜と、
 を含み、
 前記酸化ジルコニウム膜は、前記酸化ジルコニウム膜の前記主面に沿った<100>方向が、前記シリコン基板の前記主面に沿った<100>方向と平行になるように、配向し、
 前記白金膜は、前記白金膜の前記主面に沿った<100>方向が、前記シリコン基板の前記主面に沿った<100>方向と平行になるように、配向し、
 前記ターゲットの表面をスパッタすることにより、前記第1導電膜上に、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向した第1チタン酸ジルコン酸鉛膜を含む第1圧電膜を形成し、
 前記第1チタン酸ジルコン酸鉛膜は、下記一般式(化1)で表されるチタン酸ジルコン酸鉛よりなる第1複合酸化物を有し、
Pb(Zr 1−xTi )O ・・・(化1)
 前記第1チタン酸ジルコン酸鉛膜は、前記第1チタン酸ジルコン酸鉛膜の前記主面に沿った<100>方向が、前記シリコン基板の前記主面に沿った<100>方向と平行になるように、配向し、
 前記xは、0.32≦x≦0.52を満たす、成膜方法。
[請求項22]
 請求項14乃至21のいずれか一項に記載の成膜方法において、
 前記チャンバー内で前記基板の下面と対向配置された前記ターゲットの上面をスパッタすることにより前記基板の下面に膜を成膜する、成膜方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]

[ 図 20]

[ 図 21]

[ 図 22]

[ 図 23]

[ 図 24]

[ 図 25]

[ 図 26]

[ 図 27]

[ 図 28]

[ 図 29]

[ 図 30]

[ 図 31]

[ 図 32]

[ 図 33]

[ 図 34]

[ 図 35]

[ 図 36]

[ 図 37]

[ 図 38]

[ 図 39]

[ 図 40]

[ 図 41]