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1. (WO2018159610) SOFT MAGNETIC FLAT POWDER HAVING HIGH MAGNETIC PERMEABILITY AND HIGH WEATHER RESISTANCE, AND SOFT MAGNETIC RESIN COMPOSITION CONTAINING SOFT MAGNETIC FLAT POWDER
Document

明 細 書

発明の名称 高透磁率及び高耐候性を有する軟磁性扁平粉末及びこれを含有する軟磁性樹脂組成物 0001  

技術分野

0002  

背景技術

0003   0004   0005   0006   0007  

先行技術文献

特許文献

0008  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0009   0010  

課題を解決するための手段

0011   0012   0013   0014   0015  

発明の効果

0016  

図面の簡単な説明

0017  

発明を実施するための形態

0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060  

実施例

0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103  

符号の説明

0104  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17  

図面

1  

明 細 書

発明の名称 : 高透磁率及び高耐候性を有する軟磁性扁平粉末及びこれを含有する軟磁性樹脂組成物

関連出願の相互参照

[0001]
 本出願は、2017年2月28日に出願された日本国特許出願2017-35634号に基づく優先権を主張するものであり、その開示内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる。

技術分野

[0002]
 本発明は、各種の電子デバイス等に使用される、高透磁率及び高耐候性を有する軟磁性扁平粉末並びにこれを含有する軟磁性樹脂組成物及び磁性シートに関する。

背景技術

[0003]
 近年、スマートフォン、携帯電話、ノート型パーソナルコンピューター、タブレット型パーソナルコンピューター等の各種の電子機器が普及し、その小型化による電磁干渉が問題となったり、通信の高速化による高周波化が進むことによって、高周波で高い透磁率の実数部(以下「μ’」と記す場合がある)を示す軟磁性樹脂組成物及び磁性シートの要求が高まっている。これら電子機器の中で、軟磁性樹脂組成物及び磁性シートは、電磁波吸収体、RFID(Radio Frequency Identification)用アンテナ、デジタイザ用シート、インダクタ用部材等に使用され、Fe-Si-Al系合金等の軟磁性扁平粉末を、ゴム、樹脂等と混練して製造された軟磁性樹脂組成物、及び、該軟磁性樹脂組成物をシート状にして製造された磁性シートが広く使用されている。
[0004]
 なお、ここで言う軟磁性樹脂組成物とは、軟磁性フィラーと、ゴム、樹脂等との混合物であり、シート状、フィルム状、ブロック状に塗布及び成形されて使用されることが可能である。いわゆる、Ollendorfの式に示されるように、高いμ’を有する軟磁性樹脂組成物及び磁性シートを実現するためには、高いアスペクト比及び高い初透磁率を有する軟磁性フィラーを外部磁場方向に配向させて高充填することが有利であることが知られている。
[0005]
 また、高いアスペクト比の粉末を得るために、鋳造粉砕法又は各種のアトマイズ法により製造されたFe-Si-Al系等の合金粉末を原料粉末とし、各種のボールミル法により扁平化させて使用することが知られている。さらに、ボールミル法による扁平化の際には、原料粉末とボール(粉砕メディア)とを、各種有機溶媒中で強制撹拌することが多く提案されている。
[0006]
 前述のように、高いアスペクト比を有する扁平粉末の製造には、各種ボールミル法による扁平化加工が適用され、この加工には各種有機溶媒が使用される。例えば、特開2016-72577号公報(特許文献1)には、扁平加工に有機溶媒を使用することが好ましいことが記載されており、実施例では工業用エタノールが使用されている。また、特開2009-266960号公報(特許文献2)にも有機溶媒を使用することが好ましいことが記載されており、実施例では、トルエン、2-プロパノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール、イソブタノール等が使用されている。さらに、特開2010-196123号公報(特許文献3)では、実施例においてナフテゾールが使用されている。
[0007]
 一方、これら特許文献1~3には、扁平加工後に行われる有機溶媒と扁平粉末との分離についての詳細な記述はない。一般に、扁平加工後に、扁平粉末と有機溶媒との混合物を取り出し、各種の濾過機又は分離機により、扁平粉末と有機溶媒とを分離した後、これを、例えば特許文献1の実施例のように、80℃で24時間のような条件で乾燥させて使用される。ここで、有機溶媒の沸点は一般に200℃程度以下であること、及び、本発明が対象とするような著しく高μ’を狙う扁平粉末の場合、ボールミルによる扁平加工により導入された歪みを高温(特許文献1~3の実施例においては700℃以上)の熱処理により除去することが必須であることから、この高温熱処理工程で200℃程度の低沸点の有機溶媒は完全に蒸発してしまうと考えられてきた。

先行技術文献

特許文献

[0008]
特許文献1 : 特開2016-72577号公報
特許文献2 : 特開2009-266960号公報
特許文献3 : 特開2010-196123号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0009]
 軟磁性樹脂組成物及び磁性シートは、使用環境によっては発銹することが問題となり、高い耐候性が要求される場合もある。特に近年、磁性シートの高μ’化及び薄肉化の要求が極めて強く、磁性シート中の軟磁性フィラー充填率を極限まで増加させたものが使用されるようになってきている。そのため、軟磁性フィラーの発銹を抑制するような添加剤を磁性シートに添加することは難しくなり、また、逆に樹脂の体積率を減少せざるを得なくなり、軟磁性フィラー全体が必ずしも樹脂で取り囲まれておらず、シート表面にむき出しになったり、樹脂と軟磁性フィラーとの界面に隙間ができ、軟磁性フィラー表面が酸化雰囲気に晒されやすくなる等、磁性シートに含有される軟磁性フィラーにとって、より発銹しやすい使用環境になってきつつある。
[0010]
 従来、球状、扁平状を問わず金属粉末の耐候性を改善するための方法として、主に、金属粉末の合金組成として高い耐候性を有するものを使用する方法か、粉末表面にNiメッキをはじめとした高耐候性皮膜を形成する方法が採用されるのが一般である。しかしながら、本発明が対象とする極めて高いμ’を必要とする扁平粉末、軟磁性樹脂組成物及び磁性シートにおいては、いわゆる電磁ステンレスのような高耐候性合金ではμ’が十分ではなく、一方、パーマロイ等の耐候性の高いFe-Ni系合金は原材料費が高価であるため適用が困難である。また、高耐候性皮膜の形成のための従来のメッキ法は著しく高価であるとともに、皮膜形成にともなう歪み導入の影響により著しくμ’が減少するため、やはり、本発明が対象とするような高μ’を示す扁平粉末、軟磁性樹脂組成物及び磁性シートに適用することは困難である。

課題を解決するための手段

[0011]
 本発明者らは、従来、問題とならなかった軟磁性扁平粉末、軟磁性樹脂組成物及び磁性シートの発銹を抑制することを目的として鋭意検討した結果、高い初透磁率を示すFe-Si-Al系合金の扁平粉末に、極めて安価で、かつ、耐候性改善に有効な表面皮膜を形成し、高いμ’及び耐候性を両立させた軟磁性扁平粉末並びにこれを含有する軟磁性樹脂組成物及び磁性シートを完成させた。
[0012]
 扁平加工工程後に行われる熱処理工程において、熱処理温度は、扁平加工工程に使用される有機溶媒の沸点より著しく高いため、熱処理後に有機溶媒の残渣が残るとは考えられていなかった。このため、有機溶媒中での扁平加工後の扁平粉末と有機溶媒との分離には、従来、大きな注意が払われておらず、分離後の乾燥時間短縮のため、十分な濾過又は分離が行われるのが通常であった。しかしながら、本発明者らは、鋭意検討の結果、扁平加工後に濾過及び乾燥した扁平粉末を、十分に高温で熱処理した後も、有機溶媒の主成分であるCが扁平粉末表面から検出されることを見出し、また、そのC量が、乾燥工程前の有機溶媒の残量とともに増加することを見出し、さらには、この扁平粉末表面から検出されるCが形成していると考えられる皮膜が、耐候性の改善に極めて有効であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
[0013]
 従来、このような一連の知見は知られておらず、したがって、実際に扁平粉末と有機溶媒との濾過、分離工程後の有機溶媒の残量を検討された例や、さらには、その残量と、扁平粉末、軟磁性樹脂組成物及び磁性シートの耐候性との関係を検討された例は過去にない。また、本発明で問題視している磁性シートの発銹については、近年の磁性シートの著しい高μ’化、薄肉化の要求にともなうもので、従来は問題となっていなかった点であり、したがって、前述のように、扁平粉末の有機溶媒からの濾過、分離工程にも十分な注意を払われていなかったのが実状である。
[0014]
 これに対し、本発明において最も重要なパラメータである、「複数の軟磁性扁平粒子の被覆層に含まれる合計C量(質量%)/軟磁性扁平粉末のBET比表面積(m 2/g)」をモニタリングすることは、実量産工程で製造される扁平粉末のロット毎の耐候性を把握するうえでも、極めて重要な手法とすることができるとともに、安定した耐候性の扁平粉末の管理手法とすることもできる。
[0015]
 本発明は、以下の軟磁性扁平粉末、軟磁性樹脂組成物及び磁性シートを包含する。
[1]複数の軟磁性扁平粒子の集合体である軟磁性扁平粉末であって、
 前記複数の軟磁性扁平粒子のそれぞれが、Fe-Si-Al系扁平粒子と、前記Fe-Si-Al系扁平粒子の表面に形成された被覆層とを備え、
 前記複数の軟磁性扁平粒子の被覆層に含まれる合計C量(質量%)/前記軟磁性扁平粉末のBET比表面積(m 2/g)が、0.01~1.00(質量%・g/m )である、前記軟磁性扁平粉末。
[2]前記被覆層に含まれるCが、有機溶媒に由来する、[1]に記載の軟磁性扁平粉末。
[3]前記複数の軟磁性扁平粒子の被覆層に含まれる合計C量が、0.01~1.00質量%である、[1]又は[2]に記載の軟磁性扁平粉末。
[4]前記軟磁性扁平粉末のBET比表面積が、0.5~1.5m 2/gである、[1]~[3]のいずれか一つに記載の軟磁性扁平粉末。
[5]前記被覆層の厚さが、0.1nm超5nm未満である、[1]~[4]のいずれか一つに記載の軟磁性扁平粉末。
[6]前記Fe-Si-Al系扁平粒子が、質量%で、Si:6.5~11%、Al:4~10%を含み、残部がFe及び不可避的不純物である、[1]~[5]のいずれか一つに記載の軟磁性扁平粉末。
[7]前記軟磁性扁平粉末の平均粒径が、20~100μmである、[1]~[6]のいずれか一つに記載の軟磁性扁平粉末。
[8]前記軟磁性扁平粉末のタップ密度が、0.50~1.50Mg/m 3である、[1]~[7]のいずれか一つに記載の軟磁性扁平粉末。
[9]前記軟磁性扁平粒子の長手方向に磁場を印加して測定される保磁力が、24~800A/mである、[1]~[8]のいずれか一つに記載の軟磁性扁平粉末。
[10]前記軟磁性扁平粒子の厚さ方向に磁場を印加して測定される保磁力が、48~2000A/mである、[1]~[9]のいずれか一つに記載の軟磁性扁平粉末。
[11]前記軟磁性扁平粒子の厚さ方向に磁場を印加して測定される保磁力の、前記軟磁性扁平粒子の長手方向に磁場を印加して測定される保磁力に対する比が、1.5~4.0である、[1]~[10]のいずれか一つに記載の軟磁性扁平粉末。
[12]前記軟磁性扁平粉末の酸素量が、1.5質量%以下である、[1]~[11]のいずれか一つに記載の軟磁性扁平粉末。
[13]前記軟磁性扁平粉末の窒素量が、0.50質量%以下である、[1]~[12]のいずれか一つに記載の軟磁性扁平粉末。
[14]前記軟磁性扁平粉末の平均アスペクト比が、5以上である、[1]~[13]のいずれか一つに記載の軟磁性扁平粉末。
[15][1]~[14]のいずれか一つに記載の軟磁性扁平粉末を含有する、軟磁性樹脂組成物。
[16][1]~[14]のいずれか一つに記載の軟磁性扁平粉末を含有する、磁性シート。
[17]前記磁性シートの実部透磁率μ’が、10~300である、[16]に記載の磁性シート。

発明の効果

[0016]
 上述したように、本発明により、各種の電子デバイス等に使用される、高透磁率及び高耐候性を有する軟磁性扁平粉末並びにこれを含有する軟磁性樹脂組成物及び磁性シートが提供される。

図面の簡単な説明

[0017]
[図1] 図1は、本発明に係る軟磁性扁平粒子の一実施形態の特徴を示す概念的な説明図である。

発明を実施するための形態

[0018]
 以下、本発明について説明する。なお、本明細書において、範囲を表すために使用される「数値A~数値B」という表現は、別段規定される場合を除き、数値A以上かつ数値B以下を意味する。
[0019]
 本発明の軟磁性扁平粉末は、複数の軟磁性扁平粒子の集合体であり、それぞれの軟磁性扁平粒子は、Fe-Si-Al系扁平粒子と、該Fe-Si-Al系扁平粒子の表面に形成された被覆層とを備える。なお、本発明の軟磁性扁平粉末には、被覆層を有しない軟磁性扁平粒子(例えば、被覆層を有しないFe-Si-Al系扁平粒子)が含まれていてもよいが、本発明の軟磁性扁平粉末を構成する全ての軟磁性扁平粒子が、被覆層を有することが好ましい。
[0020]
 本発明の軟磁性扁平粉末において、複数の軟磁性扁平粒子(軟磁性扁平粉末を構成する軟磁性扁平粒子のうち、被覆層を有する全ての軟磁性扁平粒子)の被覆層に含まれる合計C量(質量%)/軟磁性扁平粉末のBET比表面積(m 2/g)(以下「本発明のパラメータ」という)は、0.01~1.00(質量%・g/m 2)である。
[0021]
[Fe-Si-Al系扁平粒子]
 Fe-Si-Al系扁平粒子は、軟磁性扁平粒子の母体である。Fe-Si-Al系扁平粒子を構成するFe-Si-Al系合金の組成は、軟磁性を有する限り特に限定されない。Fe-Si-Al系合金の組成(質量%)において、Siの含有量は、好ましくは6.5~11質量%、さらに好ましくは7~9.5質量%、さらに一層好ましくは7.5~8質量%であり、Alの含有量は、好ましくは4~10質量%、さらに好ましくは5.5~9.5質量%、さらに一層好ましくは7~9質量%であり、残部は、好ましくはFe及び不可避的不純物である。
[0022]
 Fe、Si及びAl以外の元素の添加は、Fe-Si-Al系合金が元々有する実部透磁率μ’に大きな影響を与えない範囲で可能である。例えば、Mn、Cr、Ni、Cuの1種又は2種以上を添加することができる。Fe-Si-Al系合金の組成(質量%)において、Fe、Si及びAl以外の元素の合計添加量(質量%)は、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、さらに一層好ましくは0質量%(無添加)である。
[0023]
[被覆層]
 図1は、本発明に係る軟磁性扁平粒子の一実施形態の特徴を示す概念的な説明図である。図1に示すように、Fe-Si-Al系扁平粒子1の表面には、被覆層2が形成されている。
[0024]
 被覆層は、Fe-Si-Al系扁平粒子の表面に形成されており、軟磁性扁平粒子の表面の少なくとも一部は、被覆層により形成されている。被覆層は、Fe-Si-Al系扁平粒子の表面の全体に形成されていてもよいし、Fe-Si-Al系扁平粒子の表面の一部に形成されていてもよい。被覆層がFe-Si-Al系扁平粒子の表面の一部に形成されている場合、Fe-Si-Al系扁平粒子の表面の残部(Fe-Si-Al系扁平粒子の表面のうち被覆層が形成されていない部分)は、Fe-Si-Al系扁平粒子の表面がそのまま露出した状態であってもよいし、Fe-Si-Al系扁平粒子の表面に酸化物層が形成された状態であってもよい。酸化物層は、例えば、被覆層の形成前又は後に大気雰囲気中で行われる熱処理によって、Fe-Si-Al系扁平粒子に含まれる元素が酸化されることにより形成される。
[0025]
 被覆層は、炭素(C)を含む。Cは、通常、Fe-Si-Al系扁平粒子及び/又は被覆層に含まれるその他の元素と結合した状態で被覆層に含まれる。被覆層に含まれるCの少なくとも一部(好ましくは全部)は、有機溶媒に由来する。後述するように、本発明の軟磁性扁平粉末は、原料粉末準備工程、扁平加工工程、有機溶媒量調整工程及び熱処理工程を含む方法により製造することができ、この方法において、扁平加工が、有機溶媒を使用した湿式で行われた後、熱処理が、有機溶媒の沸点よりも十分に高い温度で行われる。このように有機溶媒の沸点よりも十分に高い温度での熱処理の後も、Fe-Si-Al系扁平粒子の表面に、有機溶媒に由来するCが残留し、有機溶媒に由来するCを含む被覆層が形成される。その原因の詳細は不明であるが、以下のことが推測される。ボールミル等による扁平加工により、原料粉末は著しく大きな加工を受ける。この際、原料粉末の表面に存在する有機溶媒の一部は、原料粉末の表面と反応を起こしたり、原料粉末の結晶粒界に侵入したりして、変質している可能性が考えられる。さらに、熱処理による乾燥時には、その変質物の層が残留する有機溶媒と接触した状態で、温度が上昇することにより、さらなる変質物の層の形成が促進している可能性が考えられる。
[0026]
 被覆層の厚さは、好ましくは0.1nm超5nm未満、さらに好ましくは0.3~3.5nm、さらに一層好ましくは0.5~2nmである。被覆層の厚さは、オージェ分析により測定される。被覆層の詳細な構造及び成分は不明であるが、被覆層が、Fe-Si-Al系扁平粒子と、外気及び腐食性液との接触を抑制し、耐候性の改善に寄与していると考えられる。
[0027]
[本発明のパラメータ]
 本発明のパラメータは、軟磁性扁平粉末の単位表面積当たりの、Cを含む被覆層の量(すなわち、耐候性皮膜の量)と関連する。
[0028]
 本発明のパラメータは、0.01(質量%・g/m 2)以上である。本発明のパラメータは、好ましくは0.05(質量%・g/m 2)以上、さらに好ましくは0.07(質量%・g/m 2)以上である。本発明のパラメータが0.01(質量%・g/m 2)未満であると、十分な耐候性改善効果が得られない。これに対して、本発明のパラメータが0.01(質量%・g/m 2)以上であると、十分な耐候性改善効果が得られる。
[0029]
 本発明のパラメータは、1.00(質量%・g/m 2)以下である。本発明のパラメータは、好ましくは0.75(質量%・g/m 2)以下、さらに好ましくは0.50(質量%・g/m 2)以下である。本発明のパラメータが1.00(質量%・g/m 2)を超えると、本発明のパラメータの増加に見合う耐候性改善効果が得られない。また、本発明のパラメータが1.00(質量%・g/m 2)を超えると、軟磁性扁平粉末のうち、Fe-Si-Al系合金部分の体積割合が減少する。このため、軟磁性扁平粒子の母体であるFe-Si-Al系扁平粒子の集合体(以下「基準粉末」という)が元々有する実部透磁率μ’(初透磁率)よりも、軟磁性扁平粉末の実部透磁率μ’が顕著に減少する。これに対して、本発明のパラメータが1.00(質量%・g/m 2)以下であると、軟磁性扁平粉末の実部透磁率μ’を基準粉末の実部透磁率μ’(初透磁率)と同程度に維持することができる。本発明の軟磁性扁平粉末の実部透磁率μ’の、基準粉末の実部透磁率μ’に対する比(本発明の軟磁性扁平粉末の実部透磁率μ’/基準粉末の実部透磁率μ’)は、好ましくは0.85~1.10、さらに好ましくは0.90~1.05である。なお、基準粉末としては、本発明のパラメータを0.01(質量%・g/m 2)未満(好ましくは0.00(質量%・g/m 2))に調整した点(すなわち、熱処理工程の開始時にFe-Si-Al系扁平粒子の表面に残留する有機溶媒の量をゼロ又はほぼゼロにした点)を除き、本発明の軟磁性扁平粉末と同様の方法で製造された軟磁性扁平粉末を使用することができる。
[0030]
[合計C量]
 複数の軟磁性扁平粒子(軟磁性扁平粉末を構成する軟磁性扁平粒子のうち、被覆層を有する全ての軟磁性扁平粒子)の被覆層に含まれる合計C量は、それぞれの軟磁性扁平粒子の被覆層に含まれるC量の合計である。その単位は質量%であり、本発明の軟磁性扁平粉末の総質量を基準として算出される。合計C量は、好ましくは0.01~1.00質量%、さらに好ましくは0.10~0.80質量%、さらに一層好ましくは0.30~0.60質量%である。合計C量は、軟磁性扁平粉末全体のC量から、有機溶媒を使用した扁平加工前の原料粉末全体のC量を減ずることにより、すなわち、式:軟磁性扁平粉末全体のC量-有機溶媒を使用した扁平加工前の原料粉末全体のC量に基づいて、算出することができる。軟磁性扁平粉末全体のC量、及び、有機溶媒を使用した扁平加工前の原料粉末全体のC量は、燃焼赤外線吸収法(JIS G 1211)により測定することができる。
[0031]
[BET比表面積(BET値)]
 本発明の軟磁性扁平粉末のBET比表面積は、好ましくは0.5~1.5m 2/g、さらに好ましくは0.6~1.3m 2/g、さらに一層好ましくは0.8~1.2m 2/gである。BET比表面積は、BET法で測定した比表面積であり、JIS Z 8830:2013の規定に準拠して測定される。
[0032]
 本発明では、従来から提案されているFe-Si-Al系合金の扁平粉末において、その高い実部透磁率μ’を同程度に維持したまま耐候性を改善することができるため、扁平粉末の表面の物性である「複数の軟磁性扁平粒子の被覆層に含まれる合計C量(質量%)/軟磁性扁平粉末のBET比表面積(m 2/g)」以外の、扁平粉末に関する物性値については、従来例のものを適用することが可能であるが、高い実部透磁率μ’を得るために好ましい各種物性値の範囲は以下の通りである。但し、これらの各種物性値の範囲により、本発明の範囲が限定的に解釈されるべきではない。
[0033]
[平均粒径]
 本発明の軟磁性扁平粉末の平均粒径は、好ましくは20~100μm、さらに好ましくは35~80μm、さらに一層好ましくは50~70μmである。平均粒径は、合金粉末の全体積を100%として求められる体積基準の累積度数分布曲線において、累積体積が50%である点の粒径である。平均粒径は、レーザー回折散乱法によって測定される。この測定に適した装置として、日機装社のレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置「マイクロトラックMT3000」が挙げられる。
[0034]
[タップ密度]
 本発明の軟磁性扁平粉末のタップ密度は、好ましくは0.50~1.50Mg/m 3、さらに好ましくは0.55~1.00Mg/m 3、さらに一層好ましくは0.60~0.80Mg/m 3である。タップ密度は、JIS Z2512の規定に準拠して測定される。
[0035]
[保磁力]
 軟磁性扁平粒子の長手方向に磁場(144kA/m)を印加して測定される保磁力(以下「長手方向の保磁力」という)は、好ましくは24~800A/m、さらに好ましくは32~240A/m、さらに一層好ましくは40~120A/mである。軟磁性扁平粒子の厚さ方向に磁場(144kA/m)を印加して測定された保磁力(以下「厚さ方向の保磁力」という)は、好ましくは48~2000A/m、さらに好ましくは64~1000A/m、さらに一層好ましくは80~320A/mである。保磁力は、樹脂製容器に軟磁性扁平粉末を充填し、容器の直径方向に磁化した場合の値に基づいて算出される。容器に充填された軟磁性扁平粒子の長手方向及び厚さ方向は、それぞれ、容器の直径方向及び高さ方向と相当するので、容器の直径方向に磁化した場合の値が長手方向の保持力となり、容器の高さ方向に磁化した場合の値が厚さ方向の保持力となる。
[0036]
[保磁力の比]
 厚さ方向の保磁力の、長手方向の保磁力に対する比(厚さ方向の保磁力/長手方向の保磁力)は、好ましくは1.5~4.0、さらに好ましくは2.0~3.5、さらに一層好ましくは2.3~3.3である。
[0037]
[酸素量]
 本発明の軟磁性扁平粉末に含まれる酸素量は、好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以下、さらに一層好ましくは0.7質量%以下である。
[0038]
[窒素量]
 本発明の軟磁性扁平粉末に含まれる窒素量は、好ましくは0.50質量%以下、さらに好ましくは0.10質量%以下、さらに一層好ましくは0.03質量%以下である。
[0039]
[平均アスペクト比]
 本発明の軟磁性扁平粉末の平均アスペクト比は、好ましくは5以上、さらに好ましくは15以上、さらに一層好ましく30以上である。本発明の軟磁性扁平粉末の平均アスペクト比の上限値は特に限定されないが、本発明の軟磁性扁平粉末の平均アスペクト比は、好ましくは80以下、さらに好ましくは55以下である。軟磁性扁平粒子のアスペクト比は、軟磁性扁平粒子の長手方向の長さと、軟磁性扁平粒子の厚さとの比(長手方向の長さ/厚さ)である。軟磁性扁平粒子のアスペクト比は、次のようにして算出される。軟磁性扁平粒子を樹脂に埋め込んで研磨し、研磨面を光学顕微鏡で観察する。光学顕微鏡像に基づいて、軟磁性扁平粒子の長手方向と厚さ方向を特定し、無作為に抽出した50個の軟磁性扁平粒子について、長さ/厚さを算出し、その平均を平均アスペクト比とする。
[0040]
[実部透磁率μ’]
 複素透磁率μは、μ=μ’-jμ’’(式中、μ’は実部、μ’’は虚部、jは虚数単位((j) =-1)を表す)で表される。なお、本明細書において、透磁率μ、実部透磁率μ’及び虚部透磁率μ’’はいずれも、真空の透磁率との比である比透磁率であり、単位は無次元である。軟磁性扁平粉末を含んでなる磁性シートの実部透磁率μ’は、好ましくは10~300、さらに好ましくは45~270、さらに一層好ましくは150~230である。複素透磁率μは、軟磁性扁平粉末を含んでなる磁性シート(磁性シート中の扁平粉末の体積充填率は約50%)から、外径7mm、内径3mmのドーナツ状のサンプルを切り出し、インピーダンス測定器を使用して、室温で1~5MHzにおけるインピーダンス特性を測定し、その平均値として算出される。
[0041]
[軟磁性扁平粉末の製造方法]
 本発明の軟磁性扁平粉末は、原料粉末準備工程、扁平加工工程、有機溶媒量調整工程及び熱処理工程を含む方法により製造することができる。
[0042]
<原料粉末準備工程>
 原料粉末としては、軟磁性合金粉末が使用される。原料粉末として使用される軟磁性合金粉末は、Fe-Si-Al系合金粉末である。Fe-Si-Al系合金粉末は、軟磁性合金粉末である限り特に限定されないが、保磁力が低く、飽和磁化の値が高い粉末であることが好ましい。Fe-Si-Al系合金粉末は、複数のFe-Si-Al系合金粒子の集合体であり、それぞれのFe-Si-Al系合金粒子の形状は、例えば、球状である。Fe-Si-Al系合金粒子を構成するFe-Si-Al系合金の組成は、軟磁性を有する限り特に限定されない。Fe-Si-Al系合金の組成(質量%)において、Siの含有量は、好ましくは6.5~11%、さらに好ましくは7~9.5%、さらに一層好ましくは7.5~8%であり、Alの含有量は、好ましくは4~10%、さらに好ましくは5.5~9.5%、さらに一層好ましくは7~9%であり、残部は、好ましくはFe及び不可避的不純物である。
[0043]
 Fe-Si-Al系合金粉末は、例えば、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法、ディスクアトマイズ法等の各種アトマイズ法、又は、溶融による合金化後に実施される粉砕法によって作製することができる。Fe-Si-Al系合金粉末の含有酸素量は少ない方が好ましいため、Fe-Si-Al系合金粉末は、ガスアトマイズ法によって製造することが好ましく、不活性ガスを使用したガスアトマイズ法によって製造することがさらに好ましい。Fe-Si-Al系合金粉末は、ディスクアトマイズ法又は水アトマイズ法によっても問題なく製造することができるが、量産性の観点からは、ガスアトマイズ法が優れている。アトマイズ法により製造された粉末は形状が球状に近いことから、アトライタ加工等を使用した粉砕法より製造された粉末よりも扁平化が進行しやすい。粉砕法により製造された粉末は粒径がアトマイズ粉末よりも小さいことから、磁性シート表面の突起発生が抑制される傾向がある。
[0044]
 Fe-Si-Al系合金粉末の粒度は特に限定されないが、扁平後の平均粒径を調整する目的、含有酸素量の多い粉末を除去する目的、その他の製造上の目的等に応じて、所望の粒度に分級されたFe-Si-Al系合金粉末を原料粉末として使用してもよい。
[0045]
 Fe-Si-Al系合金粉末には、扁平加工工程前に熱処理を加えてもよい。熱処理温度は、好ましくは500~1000℃、さらに好ましくは600~900℃であり、熱処理時間は、好ましくは0.5~10時間、さらに好ましくは1~5時間である。扁平加工工程前に熱処理を行うことにより、原料粉末の格子欠陥が回復し、扁平加工後の軟磁性扁平粒子の保磁力を低くすることができる。
[0046]
<扁平加工工程>
 原料粉末準備工程の後、Fe-Si-Al系合金粉末を扁平化する。これにより、Fe-Si-Al系合金扁平粉末が得られる。扁平加工は、有機溶媒を使用した湿式で行われる。扁平加工は、例えば、アトライタ、ボールミル、振動ミル等を使用して行うことができる。中でも、比較的扁平加工能力に優れるアトライタを使用することが好ましい。
[0047]
 湿式の扁平加工で使用される有機溶媒の種類は特に限定されない。有機溶媒は、極性有機溶媒であってもよいし、非極性有機溶媒であってもよい。有機溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール(1-プロパノール、2-プロパノール)、ブタノール(1-ブタノール、イソブタノール等)等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。その他の有機溶媒としては、例えば、パラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系等の有機溶媒が挙げられる。例えば、以下の商品名で販売されているものが挙げられる。テクリーンN-16、テクリーンN-20、テクリーンN-22、ナフテゾールL、ナフテゾールM、ナフテゾールH、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH、アイソゾール300、アイソゾール400、AFソルベント4号、AFソルベント5号、AFソルベント6号、AFソルベント7号、カクタスノルマルパラフィンN12、N13、N14、YHNP、SHNP(いずれもJX日鉱日石エネルギー株式会社製);アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、エクソールD40、エクソールD80、エクソールD100、エクソールD130、及びエクソールD140(いずれも東燃ゼネラル石油株式会社製)。
[0048]
 有機溶媒の添加量は、Fe-Si-Al系合金粉末100質量部に対して、好ましくは100質量部以上、さらに好ましくは200質量部以上である。有機溶媒の添加量の上限は特に限定されず、求められる扁平粉末の大きさ及び形状と、生産性とのバランスに応じて適宜調整が可能である。有機溶媒は、含水有機溶媒であってもよいが、酸素含有量を低くするために、有機溶媒中の水分濃度は、有機溶媒100質量部に対して、好ましくは0.002質量部以下である。有機溶媒とともに扁平化助剤を使用してもよいが、酸化を抑えるために、扁平化助剤の添加量は、Fe系合金粉末100質量部に対して、好ましくは5質量部以下である。
[0049]
<有機溶媒量調整工程>
 熱処理工程前に、熱処理工程の開始時にFe-Si-Al系合金扁平粉末の表面(Fe-Si-Al系合金扁平粉末を構成する扁平粒子の表面)に残留する有機溶媒の量を、本発明のパラメータが所望の範囲となるように調整する。例えば、扁平加工工程の後、濾過等により、Fe-Si-Al系合金扁平粉末と有機溶媒との混合物から有機溶媒を適度に除去することにより、Fe-Si-Al系合金扁平粉末の表面に残留する有機溶媒の量を調整することができる。また、扁平加工工程の後、濾過等により、Fe-Si-Al系合金扁平粉末と有機溶媒との混合物から有機溶媒を十分に除去し、熱処理工程の開始前に、Fe-Si-Al系合金扁平粉末に適量の有機溶媒を再度添加することにより、Fe-Si-Al系合金扁平粉末の表面に残留する有機溶媒の量を調整することができる。Fe-Si-Al系合金扁平粉末の表面に残留する有機溶媒の量を調整した後、Fe-Si-Al系合金扁平粉末は、熱処理工程の開始前に、必要に応じて乾燥させてもよい。乾燥温度は、通常50~300℃、乾燥時間は、通常60~600分である。
[0050]
<熱処理工程>
 有機溶媒量調整工程の後、Fe-Si-Al系合金扁平粉末を熱処理する。有機溶媒が残留するFe-Si-Al系合金扁平粉末を熱処理することにより、Fe-Si-Al系合金扁平粉末を構成する扁平粒子の表面に被覆層が形成される。また、Fe-Si-Al系合金扁平粉末を熱処理することにより、アトライタ加工等の扁平加工で発生したFe-Si-Al系合金扁平粉末中の格子欠陥が回復し、Fe-Si-Al系合金扁平粉末の保磁力が低下し、Fe-Si-Al系合金扁平粉末の透磁率が向上する。熱処理装置は、所望の熱処理温度を実現し得る限り特に限定されない。熱処理温度は、好ましくは500~1000℃、さらに好ましくは600~900℃である。熱処理時間は特に限定されず、処理量、生産性等に応じて適宜調整することができる。但し、熱処理時間が長くなると、生産性が低下するため、熱処理時間は、好ましくは0.5~10時間、さらに好ましくは1~5時間である。
[0051]
 熱処理工程において、熱処理雰囲気が大気の場合、Fe-Si-Al系合金扁平粉末の酸化が進む。したがって、Fe-Si-Al系合金扁平粉末の酸化を抑えるために、Fe-Si-Al系合金扁平粉末を真空中又は不活性ガス(例えば、アルゴン、窒素)中で熱処理することが好ましい。表面処理の観点からは、Fe-Si-Al系合金扁平粉末を窒素ガス中で熱処理してもよいが、その場合は、保磁力の値が上昇し、透磁率が真空で熱処理された場合に比べて低下する傾向にある。
[0052]
<軟磁性樹脂組成物>
 本発明の軟磁性樹脂組成物は、本発明の軟磁性扁平粉末を含有する。本発明の軟磁性樹脂組成物は、例えば、本発明の軟磁性扁平粉末が、樹脂中に分散した形態を有する。樹脂は適宜選択可能であり、1種の樹脂を使用してもよいし、2種以上の樹脂を使用してもよい。軟磁性樹脂組成物に含まれる軟磁性扁平粉末の量は、適宜調整可能であるが、軟磁性樹脂組成物の総体積を基準として、通常20~65体積%である。
[0053]
 樹脂成分は、熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。
[0054]
 熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。
[0055]
 熱可塑性樹脂としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、(メタ)アクリル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂(6-ナイロン、6,6-ナイロンなど)、フェノキシ樹脂、飽和ポリエステル樹脂(PET、PBT等)、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
[0056]
 軟磁性樹脂組成物は、熱硬化触媒を含有してもよい。熱硬化触媒は、加熱により熱硬化性樹脂の硬化を促進する触媒であり、例えば、イミダゾール系化合物、トリフェニルフォスフィン系化合物、トリフェニルボラン系化合物、アミノ基含有化合物等が挙げられる。
[0057]
 軟磁性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、その他の添加剤を含有することもできる。添加剤としては、例えば、架橋剤、無機充填材等が挙げられる。
[0058]
<磁性シート>
 本発明の磁性シートは、本発明の軟磁性扁平粉末を含有する。本発明の磁性シートは、例えば、本発明の軟磁性扁平粉末が、ゴム、エラストマー、樹脂等のマトリックス材料中に分散した構造を有する。マトリックス材料は適宜選択可能であり、1種のマトリックス材料を使用してもよいし、2種以上のマトリックス材料を使用してもよい。本発明の磁性シートは、本発明の軟磁性樹脂組成物を使用して製造することができる。
[0059]
 磁性シートに含まれる軟磁性扁平粉末の量は、要求される透磁率特性等を考慮して適宜調整することができる。磁性シートに含まれる軟磁性扁平粉末の量(磁性シート中の軟磁性扁平粉末の体積充填率)は、好ましくは20~60体積%、例えば20~40体積%又は40~60体積%である。
[0060]
 軟磁性扁平粉末を含んでなる磁性シートの製造は、軟磁性扁平粉末を使用して、従来提案されている方法に従って行うことが可能である。例えば、軟磁性樹脂組成物を溶媒に溶解又は分散させ、得られた軟磁性樹脂組成物溶液を離型基材の表面に塗布し、乾燥させ、得られた半硬化状態の軟磁性フィルムを複数枚積層し、熱プレスすることにより製造することができる。具体的には、トルエンに塩素化ポリエチレン等を溶解したものに軟磁性扁平粉末を混合し、これをポリエステル樹脂等の合成樹脂製の基材に塗布し、乾燥させたものを、各種プレス、ロール等で圧縮することにより製造可能である。
実施例
[0061]
 以下、本発明について実施例によって具体的に説明する。なお、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[0062]
[扁平粉末の作製]
 水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、ディスクアトマイズ法又は溶融による合金化後の粉砕法(鋳造粉砕法)のいずれかにより、表1、3、5、7、9、11、13、15、17及び19に示す所定の組成の合金粉末を作製し、150μm以下に分級した。各種アトマイズは従来提案されている一般的な方法で実施可能である。水アトマイズ法、ガスアトマイズ法及びディスクアトマイズ法は、アルミナ製坩堝を溶解に使用し、坩堝下の直径2mmのノズルから合金溶湯を出湯した後、水アトマイズ法では高圧水を噴霧して溶湯を分断することにより、ガスアトマイズ法では高圧ガス(アルゴン又は窒素)を噴霧して溶湯を分断することにより、ディスクアトマイズ法では回転ディスク(回転速度:5000~100000rpm)による遠心力で溶湯を分断することにより実施した。製造された合金粉末の一部には、扁平加工の前に熱処理を施した。これらを原料粉末として、扁平加工を実施した。扁平加工は従来提案されている一般的な方法で可能である。本実施例では、アトライタ加工により扁平加工を実施し、アトライタ加工は、SUJ2製の直径4.8mmのボールを、原料粉末100g及び有機溶媒とともに攪拌容器に投入し、羽根の回転数を300rpmとして実施した。
[0063]
 有機溶媒の添加量は、原料粉末100質量部に対し、100質量部とした。扁平加工時間とともにタップ密度は低下していくが、扁平加工中に少量の粉末をサンプリングし、所定のタップ密度(表2,4,6,8,10,12,14,16,18,20に記載の通り)が得られた時点で扁平加工を完了した。扁平加工後に、扁平粉末及び有機溶媒をビーカーに取り出し、上澄み液を捨てた後、目開き1000μmの分級網の上に敷いた紙ウエスの上に取り出し、常温常圧で所定の時間放置し、有機溶媒を濾過した(最大1時間濾過)。一部の粉末(1時間濾過し余剰の有機溶媒が十分に除去されたもの)については、濾過後に所定の重量の有機溶媒を再度滴下し、有機溶媒の含有量を増加させた。
[0064]
 以上のように、扁平粉末に有機溶媒が残留している状態で、これらをステンレス製の皿に移し、80℃で24時間乾燥させた。さらに、このようにして得られた扁平粉末を真空中、アルゴン中又は窒素中で熱処理し、各種評価に使用した。
[0065]
[扁平粉末の評価]
 熱処理後の扁平粉末に関し、平均粒径、タップ密度、保磁力(長手方向の保磁力及び厚さ方向の保磁力)、酸素値、窒素値、BET比表面積(BET値)、被覆層の厚さ、及び、被覆層に含まれる合計C量を測定した。
[0066]
 平均粒径は、レーザー回折法(日機装社製 マイクロトラックMT3000)で評価した。
[0067]
 タップ密度は、約20gの扁平粉末を、容積100cm 3のシリンダーに充填し、落下高さ10mm、タップ回数200回の時の充填密度で評価した。
[0068]
 保磁力は、市販の保磁力メータ(Qumano社製 COERCIMETER HC 801)で評価した。具体的には、直径6mm、高さ8mmの樹脂製容器に扁平粉末を充填し、この容器の高さ方向に磁化した場合と、直径方向に磁化した場合の保磁力を測定した。保磁力の測定は、印加磁場144kA/mで実施した。なお、扁平粉末は充填された円柱の高さ方向が厚さ方向となっているため、容器の高さ方向に磁化した場合が扁平粉末の厚さ方向、容器の直径方向に磁化した場合が扁平粉末の長手方向の保磁力となる。
[0069]
 酸素量は、不活性ガス融解、赤外線吸収法(JIS Z 2613)により測定した。
[0070]
 窒素量は、不活性ガス融解、熱伝導度法(JIS G 1228)により測定した。
[0071]
 BET比表面積(BET値)は、日本ベル社製BELSORP-miniIIにより測定した。
[0072]
 被覆層の厚さは、オージェ分析(アルバック・ファイ社製Model680)により測定した。
[0073]
 熱処理後の扁平粉末のC量及び扁平加工前の原料粉末のC量を評価し、その差分(熱処理後の扁平粉末のC量-扁平加工前の原料粉末のC量)を算出し、扁平粉末の被覆層に含まれる合計C量(「表面C量」ともいう)とした。熱処理後の扁平粉末のC量及び扁平加工前の原料粉末のC量は、燃焼赤外線吸収法(JIS G 1211)により測定した。
[0074]
[磁性シートの作製]
 扁平粉末以外の磁性シートの構成としては、従来提案されている一般的な構成が適用可能であり、磁性シート作製も従来提案されている一般的な方法で実施可能である。本実施例では、トルエンに塩素化ポリエチレンを溶解し、これに得られた扁平粉末を混合、分散させた。この分散液をポリエステル樹脂シートに厚さ100μm程度で塗布し、常温常湿で乾燥させた。その後、130℃、15MPaの圧力でプレス加工し、磁性シートを得た。磁性シートのサイズは150mm×150mmで厚さは50μmである。なお、磁性シート中の扁平粉末の体積充填率はいずれも約50%であった。
[0075]
[実部透磁率μ’及び平均アスペクト比の評価]
 得られた磁性シートを使用して、磁性シートの透磁率及び扁平粉末の平均アスペクト比を評価した。
[0076]
 複素透磁率μは、μ=μ’-jμ’’(式中、μ’は実部、μ’’は虚部、jは虚数単位((j) =-1)を表す)で表される。なお、本明細書において、透磁率μ、実部透磁率μ’及び虚部透磁率μ”はいずれも、真空の透磁率との比である比透磁率であり、単位は無次元である。複素透磁率μ(複素透磁率の実数部:μ’、複素透磁率の虚数部:μ’’)は、磁性シートから、外径7mm、内径3mmのドーナツ状のサンプルを切り出し、インピーダンス測定器(KEYSIGHT社製 E4991Bインピーダンス・アナライザ)により、室温で1~5MHzにおけるインピーダンス特性を測定し、その結果から算出した。ここで、実部透磁率μ’は、1~5MHzの平均値を使用して評価した。また、それぞれの扁平粉末の実部透磁率μ’の、基準粉末の実部透磁率μ’に対する比を算出し、それぞれの扁平粉末の実部透磁率μ’が、基準粉末の実部透磁率μ’と同程度に維持されているか、あるいは、顕著に減少しているかを評価した。
[0077]
 また、得られた磁性シートの厚さ方向が観察できる樹脂埋め研磨試料を作製し、SEM観察により無作為に選んだ50個の粒子について、画像解析から平均厚さ及び平均アスペクト比を算出した。なお、アスペクト比は、「扁平粉末の長手方向長さ/扁平粉末の厚さ」である。
[0078]
[磁性シートの耐候性評価]
 得られた磁性シートから、20mm×20mmのサンプルを切り抜き、20%NaCl水溶液に、60℃で100時間浸漬し、その後の発銹状態を観察した。磁性シートに発銹が全く見られないものを「A」、一部に点状の茶褐色の変色が見られたものを「B」、全面が茶褐色に変色したものを「C」として評価した。
[0079]
[表1]


[0080]
[表2]


[0081]
[表3]


[0082]
[表4]


[0083]
[表5]


[0084]
[表6]


[0085]
[表7]


[0086]
[表8]


[0087]
[表9]


[0088]
[表10]


[0089]
[表11]


[0090]
[表12]


[0091]
[表13]


[0092]
[表14]


[0093]
[表15]


[0094]
[表16]


[0095]
[表17]


[0096]
[表18]


[0097]
[表19]


[0098]
[表20]


[0099]
 表1~20のうち、表1、3、5、7、9、11、13、15、17、19は、原料粉末の合金組成及び製造条件を示し、表2、4、6、8、10、12、14、16、18、20は、製造された扁平粉末の特性、性能等を示す。
[0100]
 表2に示す比較例No.1は、表面C量/BET値が1.00(質量%・g/m )を超えるため、μ’の値が基準粉末(比較例No.6)のμ’の値よりも顕著に減少している。また、比較例No.6は、表面C量/BET値が0であるため、耐候性が悪い(耐候性の評価:C)。同様に、表4、表6、表8、表10、表12、表14に示す比較例No.7、13、19、25、31、37は、表面C量/BET値が1.00(質量%・g/m )を超えるため、μ’の値が基準粉末(比較例No.12、18、24、30、36、42)のμ’の値よりも顕著に減少している。また、比較例No.12、18、24、30、36、42は、表面C量/BET値が0のため、耐候性が悪い(耐候性の評価:C)。
[0101]
 また、表16、表18、表20に示す比較例No.43、49、55は、表面C量/BET値が0であるため、耐候性が悪い(耐候性の評価:C)。比較例No.48、54、60は、表面C量/BET値が1.00(質量%・g/m )を超えるため、μ’の値が基準粉末(比較例No.6、12、30)のμ’の値よりも顕著に減少している。
[0102]
 これに対して、本発明例No.2~5、8~11、14~17、20~23、26~29、32~35、38~41、44~47、50~53、56~59は、いずれも本発明の条件を満足していることで、μ’の値が基準粉末のμ’の値と同程度に維持されており、高耐候性も優れていることが分かる。
[0103]
 以上に説明したように、Fe-Si-Al系合金粉末を、有機溶媒中で扁平化処理し、その後、有機溶媒の濾過工程で適量の有機溶媒を残存させたまま乾燥させることにより、Fe-Si-Al系扁平粉末の表面にC含有層を生成することができ、これにより、Fe-Si-Al系合金粉末が本来有する透磁率(μ’)を維持しつつ、安価に耐候性の改善を実現することができる。このように、本発明は、極めて優れた効果を奏するものである。

符号の説明

[0104]
1 Fe-Si-Al系合金扁平粒子
2 被覆層

請求の範囲

[請求項1]
 複数の軟磁性扁平粒子の集合体である軟磁性扁平粉末であって、
 前記複数の軟磁性扁平粒子のそれぞれが、Fe-Si-Al系扁平粒子と、前記Fe-Si-Al系扁平粒子の表面に形成された被覆層とを備え、
 前記複数の軟磁性扁平粒子の被覆層に含まれる合計C量(質量%)/前記軟磁性扁平粉末のBET比表面積(m 2/g)が、0.01~1.00(質量%・g/m )である、前記軟磁性扁平粉末。
[請求項2]
 前記被覆層に含まれるCが、有機溶媒に由来する、請求項1に記載の軟磁性扁平粉末。
[請求項3]
 前記複数の軟磁性扁平粒子の被覆層に含まれる合計C量が、0.01~1.00質量%である、請求項1又は2に記載の軟磁性扁平粉末。
[請求項4]
 前記軟磁性扁平粉末のBET比表面積が、0.5~1.5m 2/gである、請求項1~3のいずれか一項に記載の軟磁性扁平粉末。
[請求項5]
 前記被覆層の厚さが、0.1nm超5nm未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の軟磁性扁平粉末。
[請求項6]
 前記Fe-Si-Al系扁平粒子が、質量%で、Si:6.5~11%、Al:4~10%を含み、残部がFe及び不可避的不純物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の軟磁性扁平粉末。
[請求項7]
 前記軟磁性扁平粉末の平均粒径が、20~100μmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の軟磁性扁平粉末。
[請求項8]
 前記軟磁性扁平粉末のタップ密度が、0.50~1.50Mg/m 3である、請求項1~7のいずれか一項に記載の軟磁性扁平粉末。
[請求項9]
 前記軟磁性扁平粒子の長手方向に磁場を印加して測定される保磁力が、24~800A/mである、請求項1~8のいずれか一項に記載の軟磁性扁平粉末。
[請求項10]
 前記軟磁性扁平粒子の厚さ方向に磁場を印加して測定される保磁力が、48~2000A/mである、請求項1~9のいずれか一項に記載の軟磁性扁平粉末。
[請求項11]
 前記軟磁性扁平粒子の厚さ方向に磁場を印加して測定される保磁力の、前記軟磁性扁平粒子の長手方向に磁場を印加して測定される保磁力に対する比が、1.5~4.0である、請求項1~10のいずれか一項に記載の軟磁性扁平粉末。
[請求項12]
 前記軟磁性扁平粉末の酸素量が、1.5質量%以下である、請求項1~11のいずれか一項に記載の軟磁性扁平粉末。
[請求項13]
 前記軟磁性扁平粉末の窒素量が、0.50質量%以下である、請求項1~12のいずれか一項に記載の軟磁性扁平粉末。
[請求項14]
 前記軟磁性扁平粉末の平均アスペクト比が、5以上である、請求項1~13のいずれか一項に記載の軟磁性扁平粉末。
[請求項15]
 請求項1~14のいずれか一項に記載の軟磁性扁平粉末を含有する、軟磁性樹脂組成物。
[請求項16]
 請求項1~14のいずれか一項に記載の軟磁性扁平粉末を含有する、磁性シート。
[請求項17]
 前記磁性シートの実部透磁率μ’が、10~300である、請求項16に記載の磁性シート。

図面

[ 図 1]